■考えたくない事を直視
ヘリコプター搭載護衛艦の強みは航空機を入れ替えるだけで様々な任務に対応する点であり、航空機は艦艇よりも素早く長距離を移動できるのが強みです。
ひゅうが型護衛艦でも、F-35Bを5機搭載するならば、甲板耐熱加工さえ行えば十分可能です。短距離滑走する際に搭載するミサイルや燃料に制限は加わるでしょうが、F-35Bにはイージス艦のスタンダードSM-6のイルミネーター機能があり、その気になれば搭載ミサイルを最小限とした場合でもイージス艦の目となり、任務遂行が可能ということになる。
F-35B,それでは5機でなんでもできるのかといわれれば、限界があることはたしかです、しかし、航空機なのですから増派すれば良い、F-35Bは超音速巡航さえ可能であり、30ノットの護衛艦よりは迅速に展開できる、航空機が載りきらなくなればSH-60KやMCH-101を陸上の航空基地などに飛行させF-35Bと交代させることができる、航空機なのですから。
VLS垂直発射装置もVアスロックやトマホークやスタンダードSM-3,SM-6を載せ替える事だけで様々な任務が可能となりますが、載せ替えるとなりますと一旦帰港するか、困難な洋上での弾薬換装を行う必要が出てきます、これを考えると発着だけで能力を転換できるヘリコプター搭載護衛艦には柔軟性と任務冗長性がある、だから増強すべきなのです。
センサーノード機、という運用なのですが、このほかF-35BにはEO-DAS分散型複合光学監視システムというレーダーに頼らない索敵能力もあり、艦隊が若干数でもF-35Bを装備している場合と、そうでない場合とでは全くその能力が異なる。この点に着目すれば、ひゅうが型は船体が小さくとも十分F-35Bの艦隊戦闘システムとして参画できる。
台湾海峡有事を、たとえば懲罰爆撃的な一過性の攻撃や機雷敷設などによる海上封鎖に限定するならば、最大級の非難とともに拡大抑止に取り組むことができる。しかし、海峡有事ではなく全面戦争を試みる台湾有事が起こるならば、全力で抑止しなければなりません。すると、全面戦争を阻止するには、こうしたシーレーンの認識が必要だと考えるのです。
800名の増員と岸壁の整備、ヘリコプター搭載護衛艦の増強には確かに難しい部分はある、けれども、沖縄戦を反省すべきだ。日本は太平洋戦争においてフィリピンの占領地とともに日本本土である沖縄を失陥したことで完全にシーレーンを絶たれた、南方資源地帯をどれだけ占領しても、本土の工場に送れねばそれは材料に過ぎません。これが先の大戦だ。
沖縄か台湾か。1945年に連合軍が計画したアイスバーグ作戦では沖縄か台湾のどちらかを占領することで、日本本土侵攻への拠点を整備できるとしていました、台湾方面軍が増強されたことで沖縄の防衛が手薄になり、結果沖縄戦の悲劇が起きました。この点も猛省すべきですが、重ねていま台湾がこちらの世界から切り離されたならば、何が起こるのか。
海洋自由原則は一つの国際公序ですが、中国は南シナ海人工島造成など、海洋自由原則ではなく海洋閉塞主義により、自国以外の海洋利用を制限、いや拒否する方策を世界に押しつけています。すると、台湾有事により台湾が失陥した場合、世界は利用できない海を突きつけられる、そこに日本の最も重要なシーレーンが通っているのだという認識が要る。
平和主義としましても、平和は目的であるべきで、平和を手段として結果として戦争に巻き込まれてしまっては、戦災に命を落とす人々は胸を張って散れるのでしょうか、命こそ宝、とは沖縄の方言にあるとおりですが、そのためには平和を目的とすべきであり手段は二次的だ、手段としてあたかも戦争を周辺国が行う余地を与えてしまっては、ならない。
新しい88艦隊について。もう一つ留意しなければならないのはロシアの存在です。有事の際にウラジオストックに反撃だ、というならば北海道に配備される改良型地対艦誘導弾だけで事足りるのですが果たして日本が隣国ロシアから大規模攻撃を受けた場合、沿海州への反撃だけで国家指導部の意志決定を左右できるのでしょうか。方法を考えねばならない。
ロシアウクライナ戦争における戦訓は、ロシア最高指導部とその支持層の多くはモスクワ周辺とサンクトペテルブルク周辺に居住しており、反撃能力はここまで到達させなければならないということ。しかし、弾道ミサイルでこの射程を達成するには9000kmが必要となり、これでは大陸間弾道弾という射程で、こんなもの撃てば核戦争を誘発しかねません。
ロシアが日本へ大規模攻撃を加えることがあるのか、懸念するのは能力でいまやさすがに北海道に第1親衛戦車軍や第8諸兵科連合軍が上陸するという状況は考えにくい、自衛隊の戦車はロシア軍の大規模上陸という可能性も考慮すべきとは思いますが、危機の蓋然性からは離島配備の地対艦ミサイル部隊防衛や対空挺侵攻等への機動打撃対処が現実的です。
ランセット無人機、問題はこちらの方です、イラン製シャヘド136は射程2000km以上でロシアウクライナ戦争開戦前はイエメンからサウジアラビアやアラブ首長国連邦などの石油施設を狙って使用されていましたが、イランがロシアに大量供与したものがウクライナ攻撃に用いられ、射程の長さからドナウ川沿岸まで到達する大変な脅威となっています。
イランの協力を受けロシアはシャヘド136のロシア国産化へ工場を建設中、年間千数百から数千発を量産するとおもわれる。現状ではその多くはウクライナへ使用されるのでしょうが、停戦が実現した後には、なにしろ十年で一万発以上が整備されるのだ、これが日本まで届く。日本への攻撃手段に用いられれば、日本の防空システムは飽和されかねない。
反撃能力で沿海州の無人機部隊を叩こうにも、発射設備が軽トラックで運べる故に、沿海州から東シベリア地域すべての車両を監視識別し反撃するのは不可能ですし、なによりこちらも数万発の反撃能力を整備しなければなりません、数千発ならば可能かもしれませんが、その十倍となっては不可能です。そしてさすがにここまでの反撃は憲法を意識する。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
ヘリコプター搭載護衛艦の強みは航空機を入れ替えるだけで様々な任務に対応する点であり、航空機は艦艇よりも素早く長距離を移動できるのが強みです。
ひゅうが型護衛艦でも、F-35Bを5機搭載するならば、甲板耐熱加工さえ行えば十分可能です。短距離滑走する際に搭載するミサイルや燃料に制限は加わるでしょうが、F-35Bにはイージス艦のスタンダードSM-6のイルミネーター機能があり、その気になれば搭載ミサイルを最小限とした場合でもイージス艦の目となり、任務遂行が可能ということになる。
F-35B,それでは5機でなんでもできるのかといわれれば、限界があることはたしかです、しかし、航空機なのですから増派すれば良い、F-35Bは超音速巡航さえ可能であり、30ノットの護衛艦よりは迅速に展開できる、航空機が載りきらなくなればSH-60KやMCH-101を陸上の航空基地などに飛行させF-35Bと交代させることができる、航空機なのですから。
VLS垂直発射装置もVアスロックやトマホークやスタンダードSM-3,SM-6を載せ替える事だけで様々な任務が可能となりますが、載せ替えるとなりますと一旦帰港するか、困難な洋上での弾薬換装を行う必要が出てきます、これを考えると発着だけで能力を転換できるヘリコプター搭載護衛艦には柔軟性と任務冗長性がある、だから増強すべきなのです。
センサーノード機、という運用なのですが、このほかF-35BにはEO-DAS分散型複合光学監視システムというレーダーに頼らない索敵能力もあり、艦隊が若干数でもF-35Bを装備している場合と、そうでない場合とでは全くその能力が異なる。この点に着目すれば、ひゅうが型は船体が小さくとも十分F-35Bの艦隊戦闘システムとして参画できる。
台湾海峡有事を、たとえば懲罰爆撃的な一過性の攻撃や機雷敷設などによる海上封鎖に限定するならば、最大級の非難とともに拡大抑止に取り組むことができる。しかし、海峡有事ではなく全面戦争を試みる台湾有事が起こるならば、全力で抑止しなければなりません。すると、全面戦争を阻止するには、こうしたシーレーンの認識が必要だと考えるのです。
800名の増員と岸壁の整備、ヘリコプター搭載護衛艦の増強には確かに難しい部分はある、けれども、沖縄戦を反省すべきだ。日本は太平洋戦争においてフィリピンの占領地とともに日本本土である沖縄を失陥したことで完全にシーレーンを絶たれた、南方資源地帯をどれだけ占領しても、本土の工場に送れねばそれは材料に過ぎません。これが先の大戦だ。
沖縄か台湾か。1945年に連合軍が計画したアイスバーグ作戦では沖縄か台湾のどちらかを占領することで、日本本土侵攻への拠点を整備できるとしていました、台湾方面軍が増強されたことで沖縄の防衛が手薄になり、結果沖縄戦の悲劇が起きました。この点も猛省すべきですが、重ねていま台湾がこちらの世界から切り離されたならば、何が起こるのか。
海洋自由原則は一つの国際公序ですが、中国は南シナ海人工島造成など、海洋自由原則ではなく海洋閉塞主義により、自国以外の海洋利用を制限、いや拒否する方策を世界に押しつけています。すると、台湾有事により台湾が失陥した場合、世界は利用できない海を突きつけられる、そこに日本の最も重要なシーレーンが通っているのだという認識が要る。
平和主義としましても、平和は目的であるべきで、平和を手段として結果として戦争に巻き込まれてしまっては、戦災に命を落とす人々は胸を張って散れるのでしょうか、命こそ宝、とは沖縄の方言にあるとおりですが、そのためには平和を目的とすべきであり手段は二次的だ、手段としてあたかも戦争を周辺国が行う余地を与えてしまっては、ならない。
新しい88艦隊について。もう一つ留意しなければならないのはロシアの存在です。有事の際にウラジオストックに反撃だ、というならば北海道に配備される改良型地対艦誘導弾だけで事足りるのですが果たして日本が隣国ロシアから大規模攻撃を受けた場合、沿海州への反撃だけで国家指導部の意志決定を左右できるのでしょうか。方法を考えねばならない。
ロシアウクライナ戦争における戦訓は、ロシア最高指導部とその支持層の多くはモスクワ周辺とサンクトペテルブルク周辺に居住しており、反撃能力はここまで到達させなければならないということ。しかし、弾道ミサイルでこの射程を達成するには9000kmが必要となり、これでは大陸間弾道弾という射程で、こんなもの撃てば核戦争を誘発しかねません。
ロシアが日本へ大規模攻撃を加えることがあるのか、懸念するのは能力でいまやさすがに北海道に第1親衛戦車軍や第8諸兵科連合軍が上陸するという状況は考えにくい、自衛隊の戦車はロシア軍の大規模上陸という可能性も考慮すべきとは思いますが、危機の蓋然性からは離島配備の地対艦ミサイル部隊防衛や対空挺侵攻等への機動打撃対処が現実的です。
ランセット無人機、問題はこちらの方です、イラン製シャヘド136は射程2000km以上でロシアウクライナ戦争開戦前はイエメンからサウジアラビアやアラブ首長国連邦などの石油施設を狙って使用されていましたが、イランがロシアに大量供与したものがウクライナ攻撃に用いられ、射程の長さからドナウ川沿岸まで到達する大変な脅威となっています。
イランの協力を受けロシアはシャヘド136のロシア国産化へ工場を建設中、年間千数百から数千発を量産するとおもわれる。現状ではその多くはウクライナへ使用されるのでしょうが、停戦が実現した後には、なにしろ十年で一万発以上が整備されるのだ、これが日本まで届く。日本への攻撃手段に用いられれば、日本の防空システムは飽和されかねない。
反撃能力で沿海州の無人機部隊を叩こうにも、発射設備が軽トラックで運べる故に、沿海州から東シベリア地域すべての車両を監視識別し反撃するのは不可能ですし、なによりこちらも数万発の反撃能力を整備しなければなりません、数千発ならば可能かもしれませんが、その十倍となっては不可能です。そしてさすがにここまでの反撃は憲法を意識する。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)