北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新しい88艦隊と反撃能力整備【3】国際公序海洋自由原則への脅威と権威主義国家政策決定への反撃能力

2023-08-12 20:23:02 | 北大路機関特別企画
■考えたくない事を直視
 ヘリコプター搭載護衛艦の強みは航空機を入れ替えるだけで様々な任務に対応する点であり、航空機は艦艇よりも素早く長距離を移動できるのが強みです。

 ひゅうが型護衛艦でも、F-35Bを5機搭載するならば、甲板耐熱加工さえ行えば十分可能です。短距離滑走する際に搭載するミサイルや燃料に制限は加わるでしょうが、F-35Bにはイージス艦のスタンダードSM-6のイルミネーター機能があり、その気になれば搭載ミサイルを最小限とした場合でもイージス艦の目となり、任務遂行が可能ということになる。

 F-35B,それでは5機でなんでもできるのかといわれれば、限界があることはたしかです、しかし、航空機なのですから増派すれば良い、F-35Bは超音速巡航さえ可能であり、30ノットの護衛艦よりは迅速に展開できる、航空機が載りきらなくなればSH-60KやMCH-101を陸上の航空基地などに飛行させF-35Bと交代させることができる、航空機なのですから。

 VLS垂直発射装置もVアスロックやトマホークやスタンダードSM-3,SM-6を載せ替える事だけで様々な任務が可能となりますが、載せ替えるとなりますと一旦帰港するか、困難な洋上での弾薬換装を行う必要が出てきます、これを考えると発着だけで能力を転換できるヘリコプター搭載護衛艦には柔軟性と任務冗長性がある、だから増強すべきなのです。

 センサーノード機、という運用なのですが、このほかF-35BにはEO-DAS分散型複合光学監視システムというレーダーに頼らない索敵能力もあり、艦隊が若干数でもF-35Bを装備している場合と、そうでない場合とでは全くその能力が異なる。この点に着目すれば、ひゅうが型は船体が小さくとも十分F-35Bの艦隊戦闘システムとして参画できる。

 台湾海峡有事を、たとえば懲罰爆撃的な一過性の攻撃や機雷敷設などによる海上封鎖に限定するならば、最大級の非難とともに拡大抑止に取り組むことができる。しかし、海峡有事ではなく全面戦争を試みる台湾有事が起こるならば、全力で抑止しなければなりません。すると、全面戦争を阻止するには、こうしたシーレーンの認識が必要だと考えるのです。

 800名の増員と岸壁の整備、ヘリコプター搭載護衛艦の増強には確かに難しい部分はある、けれども、沖縄戦を反省すべきだ。日本は太平洋戦争においてフィリピンの占領地とともに日本本土である沖縄を失陥したことで完全にシーレーンを絶たれた、南方資源地帯をどれだけ占領しても、本土の工場に送れねばそれは材料に過ぎません。これが先の大戦だ。

 沖縄か台湾か。1945年に連合軍が計画したアイスバーグ作戦では沖縄か台湾のどちらかを占領することで、日本本土侵攻への拠点を整備できるとしていました、台湾方面軍が増強されたことで沖縄の防衛が手薄になり、結果沖縄戦の悲劇が起きました。この点も猛省すべきですが、重ねていま台湾がこちらの世界から切り離されたならば、何が起こるのか。

 海洋自由原則は一つの国際公序ですが、中国は南シナ海人工島造成など、海洋自由原則ではなく海洋閉塞主義により、自国以外の海洋利用を制限、いや拒否する方策を世界に押しつけています。すると、台湾有事により台湾が失陥した場合、世界は利用できない海を突きつけられる、そこに日本の最も重要なシーレーンが通っているのだという認識が要る。

 平和主義としましても、平和は目的であるべきで、平和を手段として結果として戦争に巻き込まれてしまっては、戦災に命を落とす人々は胸を張って散れるのでしょうか、命こそ宝、とは沖縄の方言にあるとおりですが、そのためには平和を目的とすべきであり手段は二次的だ、手段としてあたかも戦争を周辺国が行う余地を与えてしまっては、ならない。

 新しい88艦隊について。もう一つ留意しなければならないのはロシアの存在です。有事の際にウラジオストックに反撃だ、というならば北海道に配備される改良型地対艦誘導弾だけで事足りるのですが果たして日本が隣国ロシアから大規模攻撃を受けた場合、沿海州への反撃だけで国家指導部の意志決定を左右できるのでしょうか。方法を考えねばならない。

 ロシアウクライナ戦争における戦訓は、ロシア最高指導部とその支持層の多くはモスクワ周辺とサンクトペテルブルク周辺に居住しており、反撃能力はここまで到達させなければならないということ。しかし、弾道ミサイルでこの射程を達成するには9000kmが必要となり、これでは大陸間弾道弾という射程で、こんなもの撃てば核戦争を誘発しかねません。

 ロシアが日本へ大規模攻撃を加えることがあるのか、懸念するのは能力でいまやさすがに北海道に第1親衛戦車軍や第8諸兵科連合軍が上陸するという状況は考えにくい、自衛隊の戦車はロシア軍の大規模上陸という可能性も考慮すべきとは思いますが、危機の蓋然性からは離島配備の地対艦ミサイル部隊防衛や対空挺侵攻等への機動打撃対処が現実的です。

 ランセット無人機、問題はこちらの方です、イラン製シャヘド136は射程2000km以上でロシアウクライナ戦争開戦前はイエメンからサウジアラビアやアラブ首長国連邦などの石油施設を狙って使用されていましたが、イランがロシアに大量供与したものがウクライナ攻撃に用いられ、射程の長さからドナウ川沿岸まで到達する大変な脅威となっています。

 イランの協力を受けロシアはシャヘド136のロシア国産化へ工場を建設中、年間千数百から数千発を量産するとおもわれる。現状ではその多くはウクライナへ使用されるのでしょうが、停戦が実現した後には、なにしろ十年で一万発以上が整備されるのだ、これが日本まで届く。日本への攻撃手段に用いられれば、日本の防空システムは飽和されかねない。

 反撃能力で沿海州の無人機部隊を叩こうにも、発射設備が軽トラックで運べる故に、沿海州から東シベリア地域すべての車両を監視識別し反撃するのは不可能ですし、なによりこちらも数万発の反撃能力を整備しなければなりません、数千発ならば可能かもしれませんが、その十倍となっては不可能です。そしてさすがにここまでの反撃は憲法を意識する。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都発幕間旅情】JR西日本,サンダーバード-北陸トンネル幽霊列車騒動と鎮魂の日航ジャンボ123便墜落38年

2023-08-12 14:41:02 | コラム
■北陸トンネル幽霊列車
 今日は日航ジャンボ123便墜落事故慰霊の日ですがお盆ということでもう一つ考えさせられる出来事の話題を。あれさえなければ普通の無線故障事故だったのかもしれませんが心に響く。

 北陸トンネルに幽霊列車がでたという、一昨日はそんな話題でWeb上が盛り上がりました。ただそんななか、実は私はもう少し盛り上がる予定でした、福井でお寺と恐竜と美味しい焼き鳥でもいただく算段をしていましたが、ちょっと昨日寝坊し、目的地を変えたゆえ。

 幽霊列車、それも影響は甚大でなんでも特急が120分以上遅れた、つまり特急料金払い戻し対象となるほど、列車が運行できなかったのだとか。ゴーストバスターズかダムバスターズの出番か、後者だともっと列車が遅れそうですが、もう少し話はお盆らしい。

 列車防護無線が作動していて、つまり事故が発生したと知らせる緊急通知が北陸トンネルから発せられたが、JR西日本が困惑したのは、列車防護無線が列車のいない状態でも北陸トンネルから発せられ続けた、という。このトンネルの全長は13.9kmもあります。

 きたぐに、日本海、実は1962年に開通した北陸トンネルはトンネル内火災事故にさらされていまして1972年には死傷者744名という北陸トンネル火災事故が発生、内死者数は30名で原因は食堂車からの火災という。しかし少し前に似たような事故がありました。

 日本海、1969年に寝台特急日本海が同じ北陸トンネルを走行中に漏電火災に見舞われ、当時の国鉄規則では直ぐに停止が求められるところをトンネル内での消火は不可能と判断し、トンネルを出て非常停車、死傷者は出ませんでしたが運転士ら乗務員は処分されている。

 日航ジャンボ機墜落事故38年の慰霊の日でもある8月12日、幽霊列車の件は単なる無線中継器誤作動でけが人も居ませんでしたが、上記火災事故は人命よりも規則を優先した結果の大参事で、これが記憶されているからこそいまでも語られる一例なのでしょうね。

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ウクライナ情勢-東部戦線クピャンスク北東戦域の戦闘とロシア揚陸艦オレネゴルスキーゴルニャクがUSV攻撃を受け大破

2023-08-12 07:00:41 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 ウクライナ軍とロシア軍の戦闘は双方の情報が確認できない状況となっていますが共通点は双方ともに顕著な前進は無いという。

 東部戦線クピャンスク北東戦域においてロシア軍が確認できない前進などを繰り返し主張しています、ISWアメリカ戦争研究所がこの情報を8月5日にまとめ発表しています。この意図が例えば南部戦線のウクライナ軍反撃を分散させるための戦果強調、欺瞞工作であるのか歩兵などによる浸透作戦が成果を伸ばしているのかが、わかりません。

 ロシア軍は兵站線が疲弊する南部戦線と異なり、ロシア軍はロシア本土から補給を受けられる東部戦線での戦果を強調しますが、確認ができないのです。スヴァトヴェとクレムミナ線でのウクライナ軍攻撃はある程度成功しているとされ、8月4日にウクライナ軍が発表した映像では周辺地形や建物などからクレミンナの南18kmまで進出している。

 クレミンナの南18km、ヴェルフノカミアンスケまで前進していることを示しており、逆にこの方面のロシア軍はスヴァトフとクレミンナ線のジェレベツ川付近で前進の兆候があるもよう。ここはカルマジニフカの西にあたり、一方ロシア軍は部隊の突出を警戒しているのか、東部戦線の南端地域ではこの数日間顕著な動きがみられないもようです。
■ロシア揚陸艦大破
 オレネゴルスキーゴルニャクは現在浮きドックへ収容されているという。

 ロシア海軍の揚陸艦オレネゴルスキーゴルニャクがウクライナ海軍USV水上無人艇の攻撃を受け大破した、イギリス国防省ウクライナ戦況報告8月5日付の発表で分析結果が公表されました。攻撃は黒海艦隊のロシア本土側の基地であるノヴォローシスク基地付近、公開された映像からは船体が30度から40度傾き深刻な被害がうかがえます。

 ノヴォローシスク基地は、イギリス国防省の分析としてクリミア半島のセヴァストポリ軍港がウクライナの攻撃圏内に入る可能性から、ロシア黒海艦隊はその主力を後方に下げており、今回後方と考えられたノヴォローシスク基地付近が攻撃を受けたことは大きな衝撃でしょう。これら揚陸艦は開戦前の昨年2月に黒海へ送られた6隻のうちの一つ。

 オレネゴルスキーゴルニャクの損傷は、同艦が排水量3600tと2022年4月の黒海艦隊旗艦巡洋艦モスクワ撃沈以降、ロシア海軍が被った損傷艦艇としては最大の艦艇となっています、黒海艦隊はクリミア大橋など占領地とロシア本土を結ぶ橋梁が攻撃を受けた際、トラック輸送や鉄道貨物輸送を補完する海上輸送手段として運用されていました。

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