■アフリカ騒擾と梯子外し
日本の資源外交は新しい最前線をアフリカとして様々な活動を進めていますが、アフリカは政情不安のリスクが大きく仮に日本がこの地域での活動を展開する場合には邦人救出を常に考えねばなりません。そのリスクについて。
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ロシアで死亡した民間軍事会社ワグネル元トップのプリゴジン氏は、ニジェールでのクーデターを受け、アフリカをより自由にする、としてワグネルなどロシア民間軍事会社によるアフリカ地域でのこれまでの活動を更に強化する姿勢を示唆していました。この状況でワグネルが混乱する場合には、アフリカ情勢全般に大きな影響を及ぼす懸念さえある。
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ECOWAS西アフリカ共同体は既にニジェールへの軍事介入を示唆しており、ニジェール軍事政権は3年以内に民政移管を行うとして軍事介入を思いとどまるよう牽制していますが、ECOWASはこれを拒否する姿勢を示唆しています。クーデター政権を容認するならば自国へもクーデターが波及することを警戒しての西アフリカ諸国の強硬姿勢といえます。
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ECOWASが軍事介入を示唆しつつ、しかし実際に実行に移らない背景には既に軍事クーデターを起こし軍政を開始した諸国からニジェール支援の動きがあり、これは陳腐な表現かもしれませんが、第一次アフリカ大戦ともなりかねない脅威があります。他方、こうした軍事クーデターへ直接乃至間接的に関与しうるのが、ワグネルの支援であったわけです。
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ニジェール情勢など、アフリカ地域への今回の事件影響を懸念します。こういいますのも、ワグネルはロシアの民間軍事会社ではあるもののロシア国内法では民間軍事会社そのものが許可されていないという特別な事情の上にワグネルの公然とした活動がありました。そしてもともと、プリゴジン氏は軍人ではなく飲食店経営者という出自があります。
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ワグネルという公然たる民間軍事会社が黙認される背景には、“ロシア軍が軍事介入しにくい地域にロシア軍の代行として派遣される戦力”という意味合いがある。つまり、アフリカ地域へロシア軍が正規軍を派遣し地域の一部や鉱山などを占拠した場合は軍事介入と非難されますが、民間軍事会社であれば警備を請け負っているだけとの方便が成り立つ。
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アフリカ地域、それでは民間軍事会社という名の非正規軍を派遣する背景とは。ロシアからアフリカを見た場合に少なくない権威主義国家が存在し、つい先日もニジェールにおいて軍事クーデターが発生しています。そして同時にアフリカは地下資源の宝庫でもあり、実はこの権威主義国家と地下資源という二つの要素の連環がロシアを注目させている。
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圧政国家とは西側諸国は取引をしない。かつて2000年代にスーダンなどが例として挙げられていましたが、アメリカやヨーロッパと日本やオセアニアといったいわゆる価値観を共有する西側諸国は、圧政国家から資源を購入することはありません、その収益が武器購入などに充てられ更なる圧政を生む為という理由で、これには権威主義国家の一部を含む。
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資源外交の観点から考えれば、民主化しない国が増えればそれだけ鉱物資源や希少資源を独占できるという方便に繋がります。そしてそのための安定化、権威主義国家の独裁政権を安定化させるということは、反発するテロリストと民主化運動を同時に、独裁政権の意のままにする、という意味があるのですが、こうした安定化政策をワグネルは主導した。
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反欧米親ロシア政権がアフリカに増えているというもう一つの背景に、人道に関する欧米とロシアの認識が根本から異なる点が挙げられます。これが如実に表れるのはテロ対策だ。マリ共和国は現在、反フランス政権が親ロシア政策を堅持しています。しかし、2013年にはマリ国内で武装勢力による騒擾から国家危機を迎え、マリはフランスに頼りました。
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サーバル作戦としてフランスの軍事行動により武装勢力は一掃されましたが、実はこのサーバル作戦の成功が長期的に見てマリ世論を反フランスとした背景があります。こう説明しますと、フランス軍の残虐行為が世論を離反させたのかと早合点しますが、実際は逆で、残虐行為を行わなかったことがマリ世論の離反を招いたという、皮肉な結果でした。
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テロ対策では、アフリカ地域ではテロリストを捕縛しても転向は不可能であり全員処刑して二度とテロを起こせないようにしてほしいという世論がある、これは過去何度も釈放された武装勢力構成員が再武装しテロを行った歴史に基づくのですが、しかし、フランス軍は戦時捕虜、ジュネーヴ条約に基づく交戦団体要員として捕虜扱いしました、当然のこと。
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ワグネルがアフリカ地域において支持を勝ち得たのは、捕まえた捕虜の処遇です。Webでは書きにくいのですが武装勢力構成員がワグネルに捕縛されると二度と戻ってくることはありません。そして、この強圧的な手法によりアフリカは、力づくでも戦争のない状態を強いられていた構図ですが、ワグネルの衰退が進めば、また紛争の時代に戻りかねません。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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日本の資源外交は新しい最前線をアフリカとして様々な活動を進めていますが、アフリカは政情不安のリスクが大きく仮に日本がこの地域での活動を展開する場合には邦人救出を常に考えねばなりません。そのリスクについて。
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ロシアで死亡した民間軍事会社ワグネル元トップのプリゴジン氏は、ニジェールでのクーデターを受け、アフリカをより自由にする、としてワグネルなどロシア民間軍事会社によるアフリカ地域でのこれまでの活動を更に強化する姿勢を示唆していました。この状況でワグネルが混乱する場合には、アフリカ情勢全般に大きな影響を及ぼす懸念さえある。
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ECOWAS西アフリカ共同体は既にニジェールへの軍事介入を示唆しており、ニジェール軍事政権は3年以内に民政移管を行うとして軍事介入を思いとどまるよう牽制していますが、ECOWASはこれを拒否する姿勢を示唆しています。クーデター政権を容認するならば自国へもクーデターが波及することを警戒しての西アフリカ諸国の強硬姿勢といえます。
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ECOWASが軍事介入を示唆しつつ、しかし実際に実行に移らない背景には既に軍事クーデターを起こし軍政を開始した諸国からニジェール支援の動きがあり、これは陳腐な表現かもしれませんが、第一次アフリカ大戦ともなりかねない脅威があります。他方、こうした軍事クーデターへ直接乃至間接的に関与しうるのが、ワグネルの支援であったわけです。
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ニジェール情勢など、アフリカ地域への今回の事件影響を懸念します。こういいますのも、ワグネルはロシアの民間軍事会社ではあるもののロシア国内法では民間軍事会社そのものが許可されていないという特別な事情の上にワグネルの公然とした活動がありました。そしてもともと、プリゴジン氏は軍人ではなく飲食店経営者という出自があります。
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ワグネルという公然たる民間軍事会社が黙認される背景には、“ロシア軍が軍事介入しにくい地域にロシア軍の代行として派遣される戦力”という意味合いがある。つまり、アフリカ地域へロシア軍が正規軍を派遣し地域の一部や鉱山などを占拠した場合は軍事介入と非難されますが、民間軍事会社であれば警備を請け負っているだけとの方便が成り立つ。
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アフリカ地域、それでは民間軍事会社という名の非正規軍を派遣する背景とは。ロシアからアフリカを見た場合に少なくない権威主義国家が存在し、つい先日もニジェールにおいて軍事クーデターが発生しています。そして同時にアフリカは地下資源の宝庫でもあり、実はこの権威主義国家と地下資源という二つの要素の連環がロシアを注目させている。
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圧政国家とは西側諸国は取引をしない。かつて2000年代にスーダンなどが例として挙げられていましたが、アメリカやヨーロッパと日本やオセアニアといったいわゆる価値観を共有する西側諸国は、圧政国家から資源を購入することはありません、その収益が武器購入などに充てられ更なる圧政を生む為という理由で、これには権威主義国家の一部を含む。
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資源外交の観点から考えれば、民主化しない国が増えればそれだけ鉱物資源や希少資源を独占できるという方便に繋がります。そしてそのための安定化、権威主義国家の独裁政権を安定化させるということは、反発するテロリストと民主化運動を同時に、独裁政権の意のままにする、という意味があるのですが、こうした安定化政策をワグネルは主導した。
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反欧米親ロシア政権がアフリカに増えているというもう一つの背景に、人道に関する欧米とロシアの認識が根本から異なる点が挙げられます。これが如実に表れるのはテロ対策だ。マリ共和国は現在、反フランス政権が親ロシア政策を堅持しています。しかし、2013年にはマリ国内で武装勢力による騒擾から国家危機を迎え、マリはフランスに頼りました。
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サーバル作戦としてフランスの軍事行動により武装勢力は一掃されましたが、実はこのサーバル作戦の成功が長期的に見てマリ世論を反フランスとした背景があります。こう説明しますと、フランス軍の残虐行為が世論を離反させたのかと早合点しますが、実際は逆で、残虐行為を行わなかったことがマリ世論の離反を招いたという、皮肉な結果でした。
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テロ対策では、アフリカ地域ではテロリストを捕縛しても転向は不可能であり全員処刑して二度とテロを起こせないようにしてほしいという世論がある、これは過去何度も釈放された武装勢力構成員が再武装しテロを行った歴史に基づくのですが、しかし、フランス軍は戦時捕虜、ジュネーヴ条約に基づく交戦団体要員として捕虜扱いしました、当然のこと。
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ワグネルがアフリカ地域において支持を勝ち得たのは、捕まえた捕虜の処遇です。Webでは書きにくいのですが武装勢力構成員がワグネルに捕縛されると二度と戻ってくることはありません。そして、この強圧的な手法によりアフリカは、力づくでも戦争のない状態を強いられていた構図ですが、ワグネルの衰退が進めば、また紛争の時代に戻りかねません。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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