北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ワグネル民間軍事会社影響力とアフリカ情勢-ニジェールクーデターとECOWAS西アフリカ共同体の緊張

2023-08-26 20:22:28 | 国際・政治
■アフリカ騒擾と梯子外し
 日本の資源外交は新しい最前線をアフリカとして様々な活動を進めていますが、アフリカは政情不安のリスクが大きく仮に日本がこの地域での活動を展開する場合には邦人救出を常に考えねばなりません。そのリスクについて。

 ロシアで死亡した民間軍事会社ワグネル元トップのプリゴジン氏は、ニジェールでのクーデターを受け、アフリカをより自由にする、としてワグネルなどロシア民間軍事会社によるアフリカ地域でのこれまでの活動を更に強化する姿勢を示唆していました。この状況でワグネルが混乱する場合には、アフリカ情勢全般に大きな影響を及ぼす懸念さえある。

 ECOWAS西アフリカ共同体は既にニジェールへの軍事介入を示唆しており、ニジェール軍事政権は3年以内に民政移管を行うとして軍事介入を思いとどまるよう牽制していますが、ECOWASはこれを拒否する姿勢を示唆しています。クーデター政権を容認するならば自国へもクーデターが波及することを警戒しての西アフリカ諸国の強硬姿勢といえます。

 ECOWASが軍事介入を示唆しつつ、しかし実際に実行に移らない背景には既に軍事クーデターを起こし軍政を開始した諸国からニジェール支援の動きがあり、これは陳腐な表現かもしれませんが、第一次アフリカ大戦ともなりかねない脅威があります。他方、こうした軍事クーデターへ直接乃至間接的に関与しうるのが、ワグネルの支援であったわけです。

 ニジェール情勢など、アフリカ地域への今回の事件影響を懸念します。こういいますのも、ワグネルはロシアの民間軍事会社ではあるもののロシア国内法では民間軍事会社そのものが許可されていないという特別な事情の上にワグネルの公然とした活動がありました。そしてもともと、プリゴジン氏は軍人ではなく飲食店経営者という出自があります。

 ワグネルという公然たる民間軍事会社が黙認される背景には、“ロシア軍が軍事介入しにくい地域にロシア軍の代行として派遣される戦力”という意味合いがある。つまり、アフリカ地域へロシア軍が正規軍を派遣し地域の一部や鉱山などを占拠した場合は軍事介入と非難されますが、民間軍事会社であれば警備を請け負っているだけとの方便が成り立つ。

 アフリカ地域、それでは民間軍事会社という名の非正規軍を派遣する背景とは。ロシアからアフリカを見た場合に少なくない権威主義国家が存在し、つい先日もニジェールにおいて軍事クーデターが発生しています。そして同時にアフリカは地下資源の宝庫でもあり、実はこの権威主義国家と地下資源という二つの要素の連環がロシアを注目させている。

 圧政国家とは西側諸国は取引をしない。かつて2000年代にスーダンなどが例として挙げられていましたが、アメリカやヨーロッパと日本やオセアニアといったいわゆる価値観を共有する西側諸国は、圧政国家から資源を購入することはありません、その収益が武器購入などに充てられ更なる圧政を生む為という理由で、これには権威主義国家の一部を含む。

 資源外交の観点から考えれば、民主化しない国が増えればそれだけ鉱物資源や希少資源を独占できるという方便に繋がります。そしてそのための安定化、権威主義国家の独裁政権を安定化させるということは、反発するテロリストと民主化運動を同時に、独裁政権の意のままにする、という意味があるのですが、こうした安定化政策をワグネルは主導した。

 反欧米親ロシア政権がアフリカに増えているというもう一つの背景に、人道に関する欧米とロシアの認識が根本から異なる点が挙げられます。これが如実に表れるのはテロ対策だ。マリ共和国は現在、反フランス政権が親ロシア政策を堅持しています。しかし、2013年にはマリ国内で武装勢力による騒擾から国家危機を迎え、マリはフランスに頼りました。

 サーバル作戦としてフランスの軍事行動により武装勢力は一掃されましたが、実はこのサーバル作戦の成功が長期的に見てマリ世論を反フランスとした背景があります。こう説明しますと、フランス軍の残虐行為が世論を離反させたのかと早合点しますが、実際は逆で、残虐行為を行わなかったことがマリ世論の離反を招いたという、皮肉な結果でした。

 テロ対策では、アフリカ地域ではテロリストを捕縛しても転向は不可能であり全員処刑して二度とテロを起こせないようにしてほしいという世論がある、これは過去何度も釈放された武装勢力構成員が再武装しテロを行った歴史に基づくのですが、しかし、フランス軍は戦時捕虜、ジュネーヴ条約に基づく交戦団体要員として捕虜扱いしました、当然のこと。

 ワグネルがアフリカ地域において支持を勝ち得たのは、捕まえた捕虜の処遇です。Webでは書きにくいのですが武装勢力構成員がワグネルに捕縛されると二度と戻ってくることはありません。そして、この強圧的な手法によりアフリカは、力づくでも戦争のない状態を強いられていた構図ですが、ワグネルの衰退が進めば、また紛争の時代に戻りかねません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】榛名さんの総監部グルメ日誌:京都-三条,雪ノ下さんのところでイチゴのかき氷を頂いたよ

2023-08-26 14:15:07 | グルメ
榛名さんの総監部グルメ日誌
 蝉も泣けない程の熱さから台風一過は蝉が鳴ける暑さとなり夜に鈴虫や蟋蟀の声も聞こえる程となったけれども、未だアツイ。

 暑さも彼岸過ぎまで。昔の方はこう述べられたそうですがお盆も日本社会の西洋化に適合するように欧州のお盆に当たるハロウィーンまで暑さが続くことになるのでしょうか。ハロウィーンといえば10月31日、今年は火曜日だそうだけれど、まだ先だなあ。

 三条堀川の交差点、しかし涼し気なアーケード街ではなく東へ三条通を辿ってゆきますと、道なりに起伏があり京都も高低差があるなあ、というその先に古民家を改造したお店がありまして、改造という割には鉄階段を取り付けた力業の改造階段の上にその店が。

 雪ノ下というお店、完熟もも氷、というのを頂くのは目的だったのだけれども、この日は完売という。かつらむきの様な仕上がりで、しかし完売ならば仕方ないということでコーヒー氷か完熟苺ミルク氷かを悩んだのですが、ビタミンを補給ならばイチゴだよね、と。

 完熟苺ミルク氷、かき氷というのは、冷たさを味わうのではなくて、どちらかというと食道と胃の中から体を冷却させるという、原子炉の非常冷却装置のような役割なのだよなあ、溶けてしまいそうな真夏の灼熱にメルトダウンを想像してしまう、だからおいしい。

 かき氷というと時代はミルクフラッペなのかなあ、と感じる今日この頃、具体的に言えば喫茶店など、付加価値を強くしたいところではクラッシュアイス的なかき氷ではなくミルクフラッペの方がウケが良い、ということになるのでしょうか。でも美味しいのでいいや。

 真夏対策、いままではバッテリー式の携帯扇風機は仕事中にパソコン冷却へ活用する程度でしたが、今年はとうとう携帯してしまった。だけれども灼熱の最中に温風を吹き付けてもさすがに涼しさは得られない、そうなってしまうと、もう氷で冷やすほかないのだなあ。

 雪ノ下。ぜったいこれ名前で選んで入った店だろうよ、なあ、と思われるかもしれませんが。雪ノ下雪乃さんとは無関係、ただ、祇園祭の山鉾撮影の際に人ごみに当てられて混雑していない場所を探していて見つけた際に、おお雪ノ下か、とおもったのは事実だけどね。

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ウクライナ戦争-東部戦線一週間以上の膠着と両国悩ます予備戦力枯渇,進むウクライナ用レオパルト1戦車訓練

2023-08-26 07:00:44 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 ウクライナにおいて供与装備や保管装備をもとに新設旅団が次々新編されている様子をみますと、日本も用途廃止装備の扱い方を考えるべきだと思う。

 東部戦線は一週間以上膠着している、イギリス国防省ウクライナ戦況報告8月19日発表として示されました。東部戦線でもロシア軍はクピアンスク地方での威力偵察を続けており、これが攻撃の兆候である可能性はあるのですが、際立った前進などは見られないと分析、陽動であるのか再攻撃の兆候かまでは不明ですが現状で再攻撃は行われていません。

 南部戦線においてはウクライナ軍がモクリヤリー川沿いに前進を続けウロジャイン村を奪還したと分析しています。ただ、重ねてイギリスの分析では、ウクライナ軍はロシア軍の構築した防御線陣地からの激しい抵抗を受けているとしており、モクリヤリー川沿いにウクライナ軍が更なる戦果拡張を行うには容易ではないという視点も付け加えています。
■共に予備戦力に余裕なく
 この予備戦力枯渇というてんでは日本も同じですね戦争していませんけれども。

 ウクライナ軍とロシア軍の共通する要素は二つある、イギリス国防省ウクライナ戦況報告8月19日発表では両軍の再攻勢や反転攻勢が進まない背景を分析しています。一つは共に予備戦力に余裕がなく攻勢を展開することの難しさがあるということ。もう一つはロシア軍もウクライナ軍も2022年末の防衛線をそうとう強化しているということ。

 2022年冬までに両軍は攻撃前進をいったん棚上げしており、特にロシア軍はウクライナ軍の春季攻勢を想定し防衛線を強化、ウクライナ軍も戦車が動きやすい冬季での攻撃を想定し防御を掃討強化していました。これにより地雷と塹壕に対戦車火器などを複々線以上にわたり巡らせている防御陣地帯を突破することは共に容易ではない、という点です。
■レオパルド1戦車訓練
 民間企業が保管していたレオパルト1が相当数あるというのが凄い話で74式戦車も万一の際に緊急に世界から戦車を調達する費用を考えれば倉庫代など大したことはないように思うのだけれど。

 ドイツ国防省はウクライナ供与予定のレオパルド1戦車訓練状況を報道公開しました。これはNHKが8月18日0623時に報道したもので、演習ではドイツ東部のザクセンアンハルト州演習場における訓練の様子が紹介、所謂NATO迷彩ではなくOD単色迷彩のレオパルド1A4戦車と思われる戦車が戦車砲を射撃する様子などが紹介されています。

 レオパルド1は第二世代戦車、陸上自衛隊の74式戦車と同世代の戦車ですが、暗視装置が改良されています。ただ、第二世代戦車の限界として防御力は徹甲弾の直撃に耐えるものではなく、一方で訓練を支援する連邦軍のマーロー中将の話として、レオパルド1の強みは三桁を供与できることだとしており、ドイツは100両を供与する計画とのことです。

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