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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

プリゴジン氏死亡-民間軍事会社ワグネルトップの搭乗機モスクワ離陸後に墜落,ロシア軍に大粛軍の嵐の懸念

2023-08-24 20:00:12 | 国際・政治
■ロシア国営通信が発表
 今朝は驚かされる事が多かったのです。6月にクーデター未遂事件を起こしベラルーシに出国した後はアフリカやロシアでも目撃されていたプリゴジン氏についてです。

 ワグネルグループトップのプリゴジン氏が死亡しました。搭乗していたプライベートジェットが墜落したためで、航空機はモスクワからサンクトペテルブルグへ向かう航路を飛行、その途中のトベリ州上空で墜落し、煙をあげながら墜落し地上に激突ののち炎上する様子がSNS動画で拡散しています。ロシア国営テレビは乗客乗員10名の搭乗を報道した。

 プリゴジン氏の死亡はロシア国営テレビが続報として墜落したプライベートジェットの乗客名簿を発表する形で死亡を報道、全世界の旅客機位置を公開しているフライトレーダー24によれば現地時間0611時にモスクワ州の上空を高度8500mまで上昇した時点で航路が途切れており、墜落したものと思われます。撃墜か爆発物か機械的故障かは不明です。

 ワグネルクーデターとして、6月24日、ロシア連邦史上最大の反乱事件を主導した民間軍事会社ワグネルのトップであるプリゴジン氏は、6月25日にモスクワへ向かったワグネル部隊を撤収させ、ロシア大統領府は“誰も罪には問われないだろう”との声明を発表、反乱に参加したワグネル部隊の多くはロシアから隣国のベラルーシに移動していました。

 ロシア軍に粛軍の嵐が吹き荒れるのではないか。危惧する点はここです。既にロシア航空宇宙軍司令官のスロヴィキン上級大将が、ワグネルクーデターに関係した疑いで消息不明となっています。スロヴィキン上級大将、ワグネルクーデター後早い段階で軟禁状態にあるともされていましたが、8月23日、ロシアのRBK紙が司令官の解任を報じました。

 セルゲイスロヴィキン上級大将はロシア航空中軍司令官であり、モスクワ防空の全般に責任を持つとともに、現在はウクライナ特別軍事作戦派遣軍司令官とされており、ウクライナでの苦戦とともにモスクワに飛来する無人機攻撃からの防空でも苦戦しています。そして懸念するのは前任の特別軍事作戦派遣軍司令官もつい最近死亡しているのです。

 ゲンナディジトコ陸軍大将の死亡、もう一つ粛軍を思わせる報道はロシア国営タス通信が18日に、ウクライナ特別軍事作戦指揮を執った東部軍管区司令官でウクライナ戦域司令官のゲンナディジトコ陸軍大将の死亡です。ゲンナディジトコ陸軍大将はロシア軍のキエフ攻略失敗後に司令官に着任し、国防省次官も兼任しましたが、昨年10月に解任された。

 ロシア国営タス通信によれば、長い闘病の末に死亡したという表現を用いていますが、解任は昨年10月であり、長い闘病というには無理がある表現です。しかしタス通信が公開したジトコ大将の経歴にはウクライナでの司令官という言及は無く、過去にシリアでの作戦経験があるとしており、事実上ウクライナでの作戦経験は無かったことにされている。

 粛軍の嵐というのは、ロシア政府、より踏み込んだ表現ではプーチン政権の視点としては二度とプリゴジン氏のワグネルクーデターのような事態を起こさせないという事に繋がるでしょう。しかし問題は現在、ロシアウクライナ戦争の最中であり、軍隊の待遇改善という選択肢は執れない事に在ります。その為のウクライナ撤退という選択肢はありません。

 ウクライナ第一線でのロシア死傷者は既に25万とも30万とも言われています、無論、ロシアではモスクワ及びサンクトペテルブルク居住民とロシア連邦構成国の数多い自治共和国民とは、成文化されていない格差があり、これは徴兵対象者や社会保障公的年金やインフラ整備などあらゆる点で格差があります、しかし、それでもこの損害は大きすぎる。

 不満を蓄積するなという事は土台無理な話であり、自治共和国としてロシア連邦を構成する国以外の旧ソ連構成国で独立国である幾つかの国はトルコや中国との関係を強化し、ロシアから距離を置こうとしている現状です。すると、大損害を出してウクライナから撤退することとなればこの距離感は確実となり、損害を積み重ねるほか選択肢がありません。

 粛軍の嵐は、不満を漏らした指揮官、高級将校や将官も含めて粛清するという、これもスターリン粛軍の再来にはならないと思いたいのですが、既に複数の将官が粛清には至っていないものの長期療養や不審な事故死に繋がっています。ただ、これでは現代的な指揮系統と参謀体系に装備体系と補給系統からなる軍隊を構成するのは難しいといえるでしょう。

 民主主義国家は選挙で政権が敗れるが、権威主義国家では占拠である日突然政権が崩壊する。粛軍がどの段階で完了するかはわかりません、それは粛軍を行うことで忖度を行う制度が暴走する為であり、粛軍と精強な軍隊を天秤にかけた状態ですので、粛軍による反乱を起こさない軍隊を強権に進めることを優先したため、簡単には引き返せないのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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北朝鮮偵察衛星打ち上げ失敗-日本時間24日0400時前,発射後複数に分離し我が国EEZ外に落下

2023-08-24 07:30:12 | 国際・政治
■臨時情報-ミサイル防衛
 北朝鮮が二度目の軍事偵察衛星打ち上げを今朝行い失敗しました。

 防衛省によれば本日0400時頃、北朝鮮から飛翔体が発射されましたが、複数に分離した後に我が国EEZ外の三か所に分かれて落下しました。飛翔体は朝鮮半島からフィリピン沖へ、我が国南西諸島上空を通過したものとみられますが、政府によれば自衛隊による破壊措置命令は執られていないとのことです。また落下物による被害は出ていません。

 飛翔体発射はトンチャンリ付近から。飛翔体落下は0358時頃に朝鮮半島西方300kmの黄海に最初のものが落下、0359時頃に朝鮮半島南西沖350kmの東シナ海へ落下、そして0405時頃にフィリピン東方600kmの太平洋上に落下したものとみられ、落下物はありませんでしたが0400時頃に沖縄県と宮古島の中間空域上空を通過したものとみられています。

 政府は0538時に国家安全保障会議を緊急招集しています。沖縄県による各自治体からの報告の集計でも飛翔体落下物への被害情報は出ていません、また海上保安庁も船舶などへの被害は出ていません、更に飛翔体による落下物は航空航路などを逸れており、全日空や日本航空といった沖縄からの航空便は24日朝から平常通り運行されているとのこと。
■十月に再度実施へ
 北朝鮮は朝鮮労働党創立記念日の月でもある10月に再度打ち上げるとしています。

北朝鮮の朝鮮中央通信は打ち上げ失敗を認める報道を行いました。これによれば、今回打ち上げられたのはマルリギョンⅠ号軍事偵察衛星で、打ち上げに用いられたのは新型ロケットというチョルリマⅠ号、三段式ロケットだとしています。一段目と二段目の切り離しには成功したものの、三段目の切り離しにおいてエラーが発生したとしています。

三度目の打ち上げは10月に実施する、朝鮮中央通信によれば切り離しシステムの不具合であり、エンジンそのものには問題はないとしている事から対策を講じた上で10月にも三度目の打ち上げを行うとしています。ただ、前回の発射失敗も今回の発射失敗も切り離しのシステムに問題が生じており、前回よりは落下物が遠方に飛散した程度でしかありません。

軍事偵察衛星はその能力以上に国威発揚を目的としたもので、人工衛星を軌道に乗せる技術は再突入体により核弾頭を目標付近へ到達させる技術を誇示する用途にも用いられるため、今後北朝鮮は成功するまで継続するのでしょう。他方、繰り返し失敗する事での技術への周辺国の疑義は、他の技術が確立したミサイル演習強化に繋がるのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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北朝鮮第二次軍事偵察衛星打ち上げ予告期間-前回は韓国西方沖落下,沖縄南西諸島ミサイル防衛部隊厳重警戒

2023-08-24 07:00:09 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ミサイル防衛
 夏休みの観光シーズンである沖縄県に緊張が走っています。

 北朝鮮は本日8月24日から31日にかけ、軍事偵察衛星打ち上げを行うと我が国海上保安庁へ通告しました。軍事偵察衛星の打ち上げロケットは朝鮮半島から沖縄県に向け発射され、切り離したロケットはフィリピン近海に落下するとされています。ただ、5月にも同様の発射を行い失敗、その結果朝鮮半島西方沖に落下し大量の破片が回収されました。

 マルリギョンⅠ号偵察衛星という、5月の打ち上げ失敗は、新型ロケットチョルリマⅠ型が二段エンジン点火に失敗し落下したという実情があります。なお、ロケットの日本本土への落下を警戒し政府は自衛隊へ破壊措置命令を発令、周辺海域にイージス艦を遊弋させるとともに南西諸島へペトリオットミサイル部隊を派遣し、警戒を強化しています。
■沖縄県が危険
 ロケット打ち上げの何が危険なのかについて。

 人工衛星について、留意すべき点は多段式ロケットを用いて偵察衛星の周回軌道に乗せるために沖縄県上空を飛翔する点で、特に前回失敗したロケット打ち上げの際には韓国軍が洋上でその残骸を回収しており、液体燃料ロケットであった事が燃料タンクから判明しています。宇宙を目指すロケットは酸化剤を添加しなければ酸素がなく燃焼できません。

 ロケットの燃料タンクが落下した場合は酸化剤を添加されたロケット燃料が拡散することとなり、ロケット燃料の酸化ヒドラシンなどは発癌性を持つ有害物質となっています。これが人口密集地域へ落下する可能性は高いとは断言できないのですが、上昇中に空中分解した場合は広範囲に破片が拡散する為、その経路上の沖縄県が危険だとされる所以です。
■沖縄県での迎撃態勢
 イージス艦とペトリオットミサイルが備えています。

 沖縄県での迎撃態勢について。石垣島では沿岸部へペトリオットミサイル部隊が展開しており、ミサイルが配置される射撃陣地は市道と接している為、ミサイル発射時にはブラスト被害などが発生する懸念があるため、発射時には自衛隊員が指導を通行しないよう呼びかけるとしており、市道通行に対しては射撃の際を除いて交通規制は行われないという。

 宮古島では航空自衛隊のレーダーサイトが置かれる宮古島分屯基地へペトリオットミサイルPAC-3-MSEが展開しているもようで、MSEはPAC-3よりも射程が延伸しており周辺地域の防空が可能とのこと。与那国島では自治体情報連絡室が置かれ24時間体制で警戒態勢を執り、ロケット発射の場合には防災無線により退避を呼びかけるとのことです。

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