北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新しい88艦隊と反撃能力整備【5】ラジカルに平和を考える-敵意を突き付け過ぎないヘリコプター搭載護衛艦

2023-08-19 20:10:44 | 北大路機関特別企画
■大西洋と新しい88艦隊
 ロシアウクライナ戦争が無ければこうした主張を展開する事は無かったでしょうし、今ほど台湾海峡有事が台湾有事となる事への世界の警戒感も無かったかもしれません。

 新しい88艦隊としてヘリコプター搭載護衛艦の8隻態勢を確立できるならば、隔年で大西洋方面へF-35Bを搭載した有力な艦隊を派遣することが可能です。ヘリコプター搭載護衛艦とイージス艦に2隻の汎用護衛艦、こうした規模の部隊がイギリスやノーフォークや北欧諸国に定期的に親善訪問しインド洋には常駐する事が可能、大きなポテンシャルとなる。

 ロシアがこれをどう受け止めるかは別問題です。いや、もしウクライナ戦争が停戦し終戦協定まで進み、ウクライナと和解する未来があるならば、かつてロシア海軍は何度も太平洋艦隊旗艦のミサイル巡洋艦ワリャーグを親善訪問に派遣してくれましたから、日本もリバウ基地を親善訪問する未来はくるのかもしれません。しかし未来にはその逆もあり得る。

 北海道にロシア軍が上陸することなどキエフを陥落さえさせられないロシア軍にはあり得ない、という主張はありますが冷戦時代のような圧倒的な軍事力をロシア軍が既に保持していない時代においては説得力があります、しかし問題は、イエメンのフーシ派がサウジアラビアやアラブ首長国連邦などに行う様な自爆型無人機をロシアが注力するということ。

 使わせないようにするには、ロシアの国家指導部が戦争以外の選択肢を考えるようになるほかありません、この為に、大西洋上に展開できるポテンシャル、いやもう少し進んだプレゼンスという視点から、ヘリコプター搭載護衛艦を挙げました。ヘリコプター搭載護衛艦を航空母艦と受け止めるかは相手次第、日本側は敢えて大きなDD,駆逐艦で通したい。

 ロシアがどう受け止めるのか、脅威として認識するならば抑止力となりますが、任務は親善訪問と、また欧州各国が日本へ航空母艦を何度も派遣してくれるとともに極東地域にプレゼンスを公使してくれるのですから、その返礼的な意味も含めて重要です、こうしたものは相互主義で成り立つ、幸い日本はそのための造船力と経済力、手段があるのだから。

 ウォーデンレッグ作戦という、PLOの爆弾テロに悩まされるイスラエルが1985年に実施したPLO本部爆撃作戦がありました、これは今考えても驚くのですがイスラエルは2500km離れたチュニジアのチュニスにあるPLO本部をF-15で空爆したものです。当時戦闘爆撃機型のF-15Eは配備されておらず、制空戦闘機のF-15に爆弾を搭載し実施した。

 PLOトップの無力化には失敗しましたが、チュニスでもイスラエルの手は届くということを明白に示すこととなりPLOに衝撃を与えました。イスラエルは国際的非難にさらされていますが、PLOのアラファト議長には爆弾テロに代えて中東和平を模索させることとなり8年後にノーベル平和賞級のイスラエルとの和平合意へつながる遠因となっています。

 F-35は日本上空を探知されずに飛行可能だ、こう数年前に当時のトランプ大統領が発言し、ホワイトハウス広報が大慌てで火消しに走り回る一幕がありました。これは冗談での所謂放言ですが、ロシアにとりF-35Bのステルス性能は一つの不確定要素となる。必要ならば日本版ウォーデンレッグ作戦が可能、少なくとも能力を有する、と思わせる事が重要だ。

 トマホークミサイル搭載のコロンビア級戦略ミサイル原潜を購入し北極海に遊弋させた方がバレンツ海からモスクワを叩く方が、モスクワに近い分有用ではないか、こうした反論はあるかもしれません。つまり、ヘリコプター搭載護衛艦は最小限の数に抑えて、別の選択肢があるのではないか、という視点で先ずコロンビア級戦略ミサイル原潜を挙げました。

 VPNヴァージニアペイロードモジュールというVLS方式のトマホークランチャーがあり、これをヴァージニア級攻撃型原潜ですと3基しか搭載出来ませんがコロンビア級戦略ミサイル原潜に搭載したならば、96発のトマホークミサイルを投射可能となる。別に護衛艦に拘らずとも、日本本土から大陸間弾道弾を整備しても良いではないか、と反論はあり得る。

 ヘリコプター搭載護衛艦を敢えて推すのは、ヘリコプター搭載護衛艦は多機能艦であり、敵意を突き付け過ぎない、という利点がある点をここで強調します。明らかに用途が攻撃しか生まない装備を突き付ける事は、逆に対立を招きかねない。実際、ロシアウクライナ戦争は2022年に始まりましたが、そのはじまりはロシアとNATOとの対立でしたから。

 NATOとロシアはパートナーシップ協定を締結し、ロシア軍はその際にT-90に続く戦車として中古のレオパルド2A4を検討していましたし、T-72の後継にイタリアのチェンタウロをロシア国内でイヴェコ社の協力を受け評価試験さえしており、将来のNATO加盟も在り得ていました。そして1998年コソボPKOではロシア軍はNATOと協力関係にあった。

 ロシアウクライナ戦争に続く遠因となったのは、2007年のイランミサイル脅威に対応する東欧ミサイル防衛システム配備でした、これをロシアはロシアの戦術ミサイル無力化に繋がる脅威と認識した。NATOの東方拡大をロシアウクライナ戦争の要因と主張する自称識者もいますが、ロシア自身がNATOに接近したのだから、東欧諸国もこれに倣ったかたち。

 NATOにロシアが接近した際に将来のNATOロシア加盟さえ想定された1990年代末には、すると仮想敵国は日本になるのかい、と冗談が通じた時代ですが、ロシアがNATOに接近する様に東欧諸国もNATO加盟を希望し、その上でNATO加盟に必要な民主化を進め東欧諸国が加盟を実現、ロシアは権威主義体制とNATOの公序の違いから引いたに過ぎません。

 ヘリコプター搭載護衛艦は、対水上戦闘や戦力投射はもちろん、人道支援から平和維持活動まで幅広く運用できる、これは相手がどう解釈するかは別として、なんなら親善訪問で一般公開してもいい、敵意を突き付け過ぎないという利点があります。開戦を決意して準備するのではなく、将来の戦争を回避する為の抑止力を整備するならば、新しい88艦隊の大西洋展開はその選択肢だと考えるのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】京福電鉄-嵐電,大宮から延伸すれば市営地下鉄と阪急電鉄にJR西日本と京阪電鉄という夢

2023-08-19 14:10:52 | コラム
■灼熱挟み討つ真夏の夢の昼
 真夏の最中に少しでも歩くと危険な熱さの道路から輻射熱と頭上の太陽熱に挟まれて思うのは夢のような話ですが、もう少し路線が伸びていたならなあ。

 嵐電の併用区間がもう少し伸びていたらなあ、四条大宮が始発駅となる嵐電を利用する際、どうしてもそんな事を考えてしまうのです。そう、ここから阪急は乗換えられるけれども、京都中心部から嵐山に行く際、阪急と嵐電を乗り継ぐ場合は初乗り料金が二回分という。

 阪急ならば当然、いったん桂駅まで出て嵐山線を利用する選択肢なのでしょうが、しかし阪急嵐山駅と嵐電嵐山とでは距離が有りまして、せめて阪急が渡月橋の手前まで伸びていればと思ってしまうのです。京阪沿線から嵐山というのは更に遠く、初乗りは三回分です。

 大宮駅から阪急が河原町まで延伸した際に、嵐電も四条通を京阪四条まで延伸していればなあ、と思うのだけれど、そうした場合は祇園祭の山鉾巡行の際に架線が問題になってしまうから無理だという事は分かるのですが。山鉾をレールに載せれば引くのは楽そうかな。

 京都市電四条線、私の生まれる遥か前に廃線になっているけれども、この四条線は祇園祭山鉾巡行に対応させるべく、片持ち式架線柱という、いまの四条通の信号機のように山鉾巡行の際には降ろして格納できる方式が採用され、巡行当日は運休にしていたという。

 嵐電が地下鉄と阪急と京阪を結ぶ路線になっていれば、と思うのは、1972年に京都市電が全廃になった時代の、増える一方の自動車という利便性重視の時代と、鉄道という環境負荷の少なさが重視されるようになった現代の世界の風潮との違いを思い浮かべるためです。

 四条通を伸びていれば、と考える一方で、いま京福電鉄がこれを行う経営体力なんてものは、場所が場所だけに不可能ですし、この区間を京都市交通局が路線整備し上下分離式で嵐電が乗り入れるというのも交通局自身の赤字により不可能でしょうが、現状不便ですよ。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-ベラルーシ国防省第6独立親衛機械化旅団国境地域へ前進と激戦地ザポリージャ州ロシア軍動静

2023-08-19 07:00:20 | 防衛・安全保障
■防衛情報ーウクライナ戦争
 自衛隊もロシア軍が沿海州や北方領土において演習を行う場合には対抗演習を実施し相手が演習を装って攻撃を加える事を警戒しています。

 ベラルーシ国防省は第6独立親衛機械化旅団をポーランド及びリトアニアとの国境地域へ前進させ演習を行う計画を発表した、8月11日付イギリス国防省ウクライナ戦況報告によれば、ベラルーシ軍の行動は8月7日に発表されたもので、ベラルーシ国防省によれば予定される演習はロシア軍ウクライナ侵攻における戦訓を反映したものとしています。

 第6独立親衛機械化旅団について、イギリス国防省は第6独立親衛機械化旅団がポーランド及びリトアニア国境地域に平時より駐屯しており、前進させるという表現はベラルーシ国防省によるものであって実態は平時における演習と変化はないとしています。その背景にはロシア側の要望によりベラルーシ軍をNATOへの牽制に利用した可能性を指摘する。

 ポーランド及びリトアニアとの国境地域での演習について、イギリス国防省は可能性としてロシアよりベラルーシに移動している民間軍事会社ワグネルグループのアドバイザーが少数参加していると指摘しています。ベラルーシ軍はここ最近、ポーランド領空へのヘリコプター部隊領空侵犯など意図的な挑発行動を継続している点も留意すべきでしょう。
■ザポリージャ州
 ウクライナ軍の攻撃前進は南部で停滞する中、ドイツのラインメタル社などは旧式ですが稼働率が確実とされるレオパルド1などを多数供与する準備を進めており、これは世代的に74式戦車と同じなのですが戦争の長期化が予見されます。

 ロシア軍は空挺軍部隊をヘルソン州占領地からザポリージャ州オリキウ地区へ転進させた可能性が高い、8月12日付イギリス国防省ウクライナ戦況報告が最新分析を公表しました。オリキウ地区はロシア軍第58諸兵科連合軍が占領中ですがウクライナ軍の反転攻勢を受け激戦となり、補給不足を訴えた軍司令官が解任されたことで知られている。

 第58諸兵科連合軍は既にかなりの損耗を強いられているようで、ウクライナ軍はこの地域においてドニエプル川を渡河、解任された軍司令官が損耗の激しい部隊の新部隊への交代も求めていました。第58諸兵科連合軍のなかでも第70自動車化狙撃連隊と第71自動車化狙撃連隊の損耗度が高く、転進した空挺軍はこれらの補填に充てられる見通し。

 ザポリージャ州オリキウ地区はウクライナ軍ドニエプル川渡河作戦の正面にあるとともに、ロシア軍が爆破したカホフカダムによる大規模洪水の影響から大量の地雷が散乱している状況でロシア軍自身の移動をも阻んでいる状況で、ウクライナ軍は軽歩兵部隊を主体とした水陸両用作戦を各所で展開し、また西岸地区からの長距離砲兵射撃を加えている。

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