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【京都発幕間旅情】八幡城址,滋賀近江を安土城に代わり守った豊臣秀次城主の遺構と瑞龍寺

2020-08-19 20:10:55 | 旅行記
■近江八幡の美しい俯瞰風景
 歴史街道散策の深みは歴史の遺構と遺功が思いもしない旅先にてふと巡りあう瞬間でしょうか。

 滋賀県近江八幡市、新快速で東海道本線を疾走していますと琵琶湖を湛える滋賀県の美しい緑と山々が眩しいですが、その中で近江八幡駅が近づいて参りますと、峰の頂上までロープウェーが結ぶ風景に気付かされます。その頂は八幡山城の城址公園となっている。

 瑞龍寺はその城址に在る日蓮宗門跡寺院、遠く湖南と琵琶湖を望む山頂の寺院は、京都の墨染寺再興等で知られる豊臣秀吉の同父姉で豊臣秀次の母、日秀尼により建立されました。桜花の季節は過ぎ、拝観の刻限を過ぎていましたが、桜寺の墨染寺を思い出させる桜花が。

 東海道本線近江八幡駅から山麓まで実に3kmを隔てていますが、ロープウェー山頂駅からもう少しだけ歩みを進めて出会う俯瞰風景はその道中の町々を一望の内に収めており、恰も安土桃山時代都市計画の先進性を良く区画整備された街並みから読み取れる印象ですね。

 城郭の遺構というよりは展望台的な観光地として整備されていますが、城郭遺構は石垣などに見出す事が出来、文禄年間1595年に行われた破却の後に実に四百年以上を経ても遺構が自然に帰っていない保存状態は、近江八幡の城下町が破却後も維持された為といえます。

 八幡山城、豊臣秀次の城郭でした。豊臣秀次は豊臣秀吉世継ぎ問題に翻弄された戦国乱世末期悲劇の武将であり、実はこの八幡山城の廃城もその悲劇と密接に関わりがあります、豊臣秀吉は、豊臣秀次へ切腹を命じると共に重ねて所縁ある城郭の破却を命じたのですね。

 日牟禮八幡宮、近江八幡の愛称で知られる八幡宮が見上げる峰が八幡山城祉です。標高は283mあり、ただこの当たりは山麓の標高もありますがそれでも比高で100mという一際高い立地です。山頂の八幡山城祉は、しかし前述のロープウェーにより結ばれていまして。

 安土城址に近い立地で、実際新快速停車駅である近江八幡駅、指呼の距離に新快速が通過する安土駅があります。八幡山城址は安土城址と距離と共に所縁も近しい関係にありまして、豊臣秀吉が天正年間1585年、この地の城郭造営背景には安土城の焼失が挙げられます。

 本能寺の変、1582年の織田信長戦死に伴う明智光秀による安土城破壊、その後の後継者争い、所謂清州会議にて戦国の主導権を握った豊臣秀吉は新たに北陸の虎柴田勝家への牽制を含め、近江という要衝の地に消滅した安土城に代わる新たな城郭造営を必要としました。

 八幡山は安土城と並び琵琶湖を天然の防衛に用い、城下町を広く構築した策源地として造営されています。ただ、惜しむべき難点は安土城が安土山を全て城郭構造とした点に対し、八幡山は峻険な地形故に城塞化が難しく、頂に天守を頂く象徴的といえるものだった、と。

 八幡堀、近江八幡は水路の街、とはよく言われるところですけれども、元々この八幡堀は豊臣秀次による城下町整備の際に琵琶湖水運最大限の活用を期して構築したものであり、城下町の規模こそが策源地として、有事の際の戦力集結を支えると考えた故の物でした。

 瑞龍寺は豊臣秀次を悼み建立された寺院です。元々は京都市内に永くあり、その始まりは嵯峨野、江戸初期に西陣へ遷座しています。しかし、1961年に八幡山への遷座を当時の日浄尼が決意、京都の建築物を滋賀へ移設する一大事業を始めます。虎口跡等はその一つ。

 大規模土砂災害、八幡山は1967年の集中豪雨により大規模土砂災害に見舞われ、特に山頂部の崩落が八幡城居館跡を直撃する等大きな被害がありましたが、日浄尼から法主を継いだ日凰尼によりその再興は進められ、移築成った本堂等が恰も城郭の賑わいを伝えるようです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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