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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

大水害時代にLAV-25とBvS.10が必要だ【3】水陸両用車と全地形車両阻む国内関連法規の壁

2020-08-20 20:11:04 | 防災・災害派遣
■道交法と海上衝突予防法
 水陸両用車、消防ではブロンコ全地形車両実績に基づきアメリカ製ハイドラトレックが全国に少数配備され成果を上げているという。

 水陸両用車両を大量配備するには、実は面倒な法的手続きがあります、これは94式水際地雷敷設車の実例なのですが、水陸両用車両というものは船舶なのか自動車なのか、という法律上の問題です。自動車学校では水上バイクが道路上を走る際の問題を指摘しません、なぜならば通常、水上バイクは道路上を走らない為なのです。この法律の問題とはなにか。

 94式水際地雷敷設車の場合は、船舶でもあり自動車でもある、という玉虫色の法的区分となっています、嘘だと思ったらばどの中隊の車両でもよいのですが、94式水際地雷敷設車の写真を見ていただければわかります、車体には車両ナンバーが装着されていますが、側面には船舶登録番号が明記されているのですね、法律上自動車でもあり船でもあるのです。

 水陸両用バスというようなものも神戸市や東京などで観光用に運用されていまして、あれももともとは米軍余剰の水陸両用輸送車を払い下げ取得し転用したものなのですけれども、あの車両も船舶登録がある、そして船舶は自動車免許では運転できないのですね、船舶免許がなければ操縦できません、みなさまお手元免許証をみますとこの点は明白でしょう。

 船舶免許。特殊船舶免許で運航できるかと問われますと、LAV-25軽装甲車もBvS.10全地形車両も水上バイクよりも大型で当然重さもありますので、二級小型船舶操縦士の免許が必要です。二級小型船舶免許は20t未満乃至全長24m、免許取得すればAAV-7両用強襲車でも重量は26tですが全長は8.16mですので海上航行は可能となります。この点について。

 BvS.10,こちらについてはただし、船舶なのか、という素朴な疑問がないでもありません、スクリューが無く要するに自動車が水上でも水没しないまま進んでいるものであり、船舶の定義を満たしていないためです、自動車も水没するまで車内空気で浮力を有していますが、水害で浮いた車がタイヤで水を掻いても海上保安庁には摘発されることは、ない。

 ただ、LAV-25については推進装置を有していますので、船舶とみられるのではないでしょうか、逆に73式装甲車などは浮航キットが無ければ、特に波切り板、推進できませんので、船舶としての登録や免許は不要であったようにも思います。実際、船検でも航行能力のないものを対象とした検査は、そもそもで船定義になく、検査も無かったようにも思います。

 二級小型船舶操縦士。取得は面倒ではあるのですが、しかし、自衛隊に入れば免許が取れる、として一昔は機甲科や輸送科と施設科隊員は全員、ほぼすべての職種で陸曹までに大型免許が国費で取得できることが一つの魅力として広報されていました、敢えてこの気候変動と水害の時代なのです、自衛隊で取得できる免許種類をもう一つ加えては、と思う。

 陸上自衛隊に入れば二級小型船舶操縦士資格が取れるよ、大型免許も取れるよ、と追加して広報することは、一つの自衛隊という職域の魅力度合いを高める一つの選択肢になるのかな、とも考えるのですね。しかし免許以外、自動車をお持ちの方はきになるでしょう、その通りです、水陸両用車は自動車の車検だけでは、維持することはできないのですね。

 船検。船舶安全法において定期検査が義務づけられています。これは面倒なものでして、航行灯や錨設備と救命浮環の整備状態も検査されます、つまり水陸両用車両としてLAV-25を導入する際はカラフルな浮き輪や砲塔に航行灯、面倒でもアンカーを設置しなければなりません、車検を担う方面後方支援隊には即ち、船検という新しい負担がのしかかります。

 BBCの人気番組トップギア、あの番組でトヨタピックアップトラックを水陸両用車に改造する企画がありましたが、この船舶操縦士や船検の負担まで考えますと、それよりは手軽に改造車で対応してみたくなるほどに手続きは煩雑ではありますが、もう一つ必要であると考えるのは法整備です、水没した道路の法律は道交法か海上衝突予防法か、というもの。

 水没の定義が問題ですので、安易にはいえないのですが道路交通法と海上衝突予防法では右側通行と左側通行という違いがありまして、この部分を災害救助法などで水陸両用車両の位置を定義し、そもそも上掲の命題、水陸両用車は船舶であり車両であるという不思議な制度を含めて、定義しておかなければ、通行帯で重複する部分が生じてくるのですよね。

 法整備が必要であるといえるのは、水陸両用車が水没地域に隣接した沿岸部を航行する場合、小型船舶と水陸両用車がともに海上衝突予防法と道路交通法を守った場合、衝突してしまう、という問題が生じるのです。すると、水陸両用特殊車両交通規則というようなものを再定義する必要もあるのかもしれません。そしてその時期を迎えているとも思います。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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