■週報:世界の防衛,最新11論点
今回は空軍関連の11論点を。最初にサウジアラビアの早期警戒管制機の話題なのですが航空自衛隊も将来にE-767後継機が必要となる訳でどういった機体に代わるのでしょうか。
サウジアラビア空軍はE-3早期警戒管制機近代化改修へボーイング社と契約を結びました。これは総額3億9792万ドルに達する契約で、2026年2月21日に近代化改修を完了する計画です。この改修によりアメリカ空軍早期警戒機との相互運用能力を確保し、また現在予定されています2040年の運用寿命まで第一線の性能を維持できるとされています。
E-3早期警戒管制機はサウジアラビア空軍が1983年より5機を導入、警戒管制機として8時間に渡り滞空し空中警戒管制に当る事が可能で、サウジアラビアでは当時イラン空軍など脅威増大に対応したもので、、また現在はイエメン内戦に伴う武装勢力によるサウジアラビア石油関連施設への長距離無人機攻撃への警戒監視に必要不可欠の装備となっています。
KC-135空中給油機の派生型であるボーイング707旅客機が原型というE-3早期警戒管制機は1977年よりアメリカで配備開始、1992年までに68機が生産され、アメリカ空軍が34機、NATO直轄機が18機、イギリス空軍が7機、そしてサウジアラビア空軍が5機とフランス空軍が4機を運用していますが、老朽化も進みイギリスでは退役が始っています。
■ラピットドラゴンのC-130
C-130輸送機も爆撃機にという運用は何か1964年の映画”モスラ対ゴジラ”のC-46輸送機改造爆撃機を思い出す。
アメリカ空軍はC-130輸送機からの長距離ミサイル運用ラピットドラゴン計画試験を実施しました。今後太平洋で想定される中国軍との最大規模の軍事衝突に際しては、長射程地対空ミサイルの大量投入によりアメリカ空軍が誇る輸送機はほとんど役に立ちません、その為に大量に保有される輸送機を輸送完了後はミサイル母機に用いる事としたわけです。
C-130輸送機のラピットドラゴン試験は2021年12月16日にエグリン空軍基地沖合において実施され、評価試験は空軍特殊戦コマンドが協力して実施しており、MC-130J特殊戦輸送機は4セルの長射程ミサイルコンテナ2基を搭載しました。パラシュート投下したコンテナはミサイルを分離の後点火、正確に飛翔した後に目標へ正確に命中したとのことです。
■フィンランドF-35導入決定
F-18の後継機に一時ラファールと云われたフィンランドも急浮上したF-35導入に決定ですね。
フィンランド空軍は次期戦闘機としてF-35A戦闘機を選定しました。フィンランド空軍は現在F-18戦闘機を運用しています、このF-18戦闘機とは隣国ロシアを刺激しないようF/A-18C/D戦闘攻撃機から攻撃を示す“A”を省いたもので、周辺国への配慮が示されていましたが、今回は統合打撃戦闘機として開発された第五世代戦闘機F-35を選んだ訳です。
F-35A戦闘機をフィンランド空軍は64機導入することとなります。フィンランドの隣国である中立政策で知られるスウェーデンはJAS-39戦闘機を製造していますが、フィンランド周辺諸国ではノルウェー空軍やオランダ空軍、イギリス空軍などがF-35戦闘機を運用しています。フィンランドはF-35用にデジタル装備品の一部を下請け生産しているとのこと。
F-35A戦闘機が評価された背景には第五世代戦闘機で運用に際し教育や整備の包括的支援を受けられるとともに、少なくとも2070年まで運用され、現時点で21か国が730機を運用しているという実績とともに世界で最も先進的で、空軍が想定する任務の全てに対応すると共にフィンランド軍の様々な装備との連携が可能である事を理由として発表しました。
■ミラージュ2000戦闘機退役へ
ミラージュ2000はまだまだ新しい機体ですが恐らく中古の機体を販売してその先の後継機にラファールの販路を開拓するのか。
フランス空軍は今後14年間でミラージュ2000戦闘機を完全に退役させる、これはフランス国防省が2022年1月にフランスの防衛大手ダッソー社との長期整備及びシステム管理に関するBALZAC契約により明らかとなった。フランス空軍ではミラージュF-1戦闘機は退役したもののラファール戦闘機量産が進む中、ミラージュ2000は重要な戦力である。
ミラージュ2000はBALZAC契約により退役するまでの14年間の間にダッソー社の支援を受けるとしており、これは第四世代戦闘機のシステムインテグレータ部分の整備が含まれるが、これが14年後に終了するという事は自動的にその退役時期を示唆している。尚近年、フランス政府はミラージュ2000を採用した各国へもラファールを売り込んでいる。
■フランス次期戦闘機エンジン
F-22のような第五世代戦闘機開発に完全な後れを取っているフランスは背伸びしたいが出来ない中で苦労を続ける。
フランス国防省は次期戦闘機FCAS/SCAF戦闘機用エンジン試作型の試験を本格化させました、これは2021年12月から開始されたもので、実験はDGA国防装備総局が担当しています。エンジンはラファール戦闘機に採用されたM88エンジンを原型として推力強化等を期して2015年より開発開始、2019年には実試作への第二段階に進んでいました。
FCAS/SCAF戦闘機はラファール戦闘機に続く将来戦闘機であり、F-35のような第五世代戦闘機を保有しないフランスでは、この戦闘機を欧州共通戦闘機としたい狙いもあり、フランス空軍に加え建造計画が進む将来航空母艦へも搭載を目指しています。新エンジンは推力12tと1700度タービン耐熱を目指しており、フランスの技術的に可能な水準という。
■ドイツF/A-18E巡り再度混乱
ドイツは本音ではF-35を必要としているのですが空軍のF-35導入派を更迭するような一幕もありましたのでもう滅茶苦茶だ。
ドイツ空軍が次期戦闘機に選定したF/A-18E/Fがメルケル政権の交代により影響、白紙撤回の可能性が生じています。与党キリスト教民主同盟は選挙の敗北後に連立政権との間で欧州製ではなくアメリカ製戦闘機導入に対しての連立与党構成政党に否定的な動きが生じている為で、ドイツ政府はボーイング社と正式契約に進まない可能性を示唆しています。
F/A-18E/Fスーパーホーネットは、ドイツ空軍では有事の際にNATOニュークリアシェアリングにおいて使用可能となるアメリカ製B-61核爆弾が使用できるとして採用に繋がりましたが、アメリカ海軍はB-61核爆弾運用能力を海軍ではステルス機であるF-35Cに統合する方針で、システム改良の際にF/A-18E/FのB-61運用能力解除の可能性もあるようです。
■パキスタンJ-10C戦闘機導入
J-10CはF-16Vに匹敵する4.5世代機に成長しており輸出されないものと思っていました。
パキスタンは中国よりJ-10C戦闘機の導入を決定したもよう、これは2022年初頭のパキスタン内務大臣発言として2021年末に25機導入が成約したとされる。またこれは2022年3月23日のパキスタン国軍記念日閲兵式における祝賀飛行に間に合うよう、急速に配備される計画とされる。J-10C戦闘機は成都航空機製造により開発された多機能戦闘機である。
J-10C戦闘機はA型やB型が制空戦闘に特化した戦闘機であったのに対し対地攻撃能力が強化され、中国がパキスタンと共同開発し幅広く輸出しているJF-17戦闘機よりも高性能機である。パキスタン空軍は同時多発テロ後のアメリカとの関係悪化により運用するF-16戦闘機の更新不能が問題となっており、2021年10月にJ-10C導入交渉の急展開が在った。
J-10C戦闘機のパキスタン配備は既に緊迫化する中印関係の悪化を促進しかねない、何故ならばJ-10C戦闘機は性能でインド空軍が配備を開始したラファール戦闘機に対抗し得るもので、これは中印国境防空へインド空軍が36機の導入を決定したのだが、インドとの対立関係にあるパキスタンへ最新鋭戦闘機を供与することは火に油を注ぐ結果となるためだ。
■クウェートからマレーシアへ
回教国同士の横のつながりと云う印象で今後東南アジアの回教国が危機に見舞われますと中古のユーロファイターあたりが急に現れるのかもしれない。
マレーシア空軍はクウェートよりF/A-18C/D戦闘攻撃機中古機33機を導入する。既に運用しているF/A-18C/D戦闘攻撃機を増強するかたちとなるが、マレーシア空軍は耐用年数延長計画に基づき当初想定よりも長期に当る2035年までのF/A-18C/D戦闘攻撃機運用を想定している。これらはマレーシア空軍ホーク軽攻撃機の潜在的な後継機ともなりえる。
F/A-18D戦闘攻撃機は制空戦闘と航空打撃任務両方に用いられる多機能戦闘機であることから輸出に成功した戦闘機の一つであるが、拡大改良型のE/F型以外は寿命を迎えている、例えばカナダ空軍などはその後継機が全て費用高騰となったために選定に難渋しているが、マレーシアとクウェートは同じ回教国というイスラムの互助精神が反映されたのだろうか。
クウェート空軍は1988年にF/A-18C/D戦闘攻撃機40機を導入、納入は湾岸戦争のイラク軍クウェート侵攻に間に合わず1991年10月から1993年にかけ行われたが、2021年よりF/A-18E/F戦闘攻撃機へ更新が開始され余剰となった形だ。マレーシア空軍はF/A-18C/Dと同時にロシアからMiG-29を導入した事で知られ後者はSu-30戦闘機へ更新されている。
■フィリピンが退役機再生
COIN機というか一応ジェット機なのですがほとんどCOIN機のような機体を掻き集める程情勢は悪化しているのか。
フィリピン空軍は退役し保管状態にあったアエルマッキSF-260軽攻撃機を再活性化させました。アエルマッキSF-260はイタリアのアレニアアエルマッキが1964年に開発した単発練習機で、民間アクロバット飛行などにも供されていますが、エンジン出力の余裕から軽攻撃機、所謂COIN機としても活用され、フィリピンも1971年に取得しています。
フィリピン空軍は48機のSF-260を導入していますが、旧式化と空軍規模縮小を受け退役していました。しかし、周辺情勢悪化を受けフィリピン政府は2011年にSF-260を18機新規取得を決定、退役機からも48機の内、どうにか12機は修理する事で飛行が可能と判断、再稼働となりました。新造分と含め30機は練習機と軽攻撃機任務に就く事となります。
■セルビアはラファール希望
ラファールは一時期鳴かず飛ばずでしたが日本のF-2戦闘機よりも初期の性能定評はいまいちでしたが四世代ほど改良を重ね今に至る秀才型ですね。
セルビア空軍は次期戦闘機としてラファールを希望しているが政治的問題に直面しているようです。次期戦闘機にはフランス製ラファール戦闘機とロシア製Su-30SM戦闘機が候補にあげられており、空軍はラファール戦闘機が最も任務に適していると評価し国防大臣と大統領にもそれを進言しています。なおSu-30SMはSu-30戦闘機の最新改良型です。
ラファール戦闘機、しかし導入が難しい背景には二つの問題があり、一つはSu-30SMに対してラファール戦闘機の方が遥かに高価であるということ。もう一つはセルビアの旧ユーゴスラビアとソ連の関係が延長線上にロシアとの関係があるということですセルビアの国防大臣は2021年12月29日、国営放送でラファール優位と決定延期を発表しています。
■アントノフAn-178-100R
アントノフと云えば巨人輸送機と云う印象があるのですがAn-178はコンパクトでウクライナ版C-1輸送機というところでしょうか。
ウクライナ軍はアントノフ社よりAn-178-100R輸送機初号機を受領しました。これは旧式化したAn-12輸送機やAn-26輸送機とAn-32輸送機等を置換える構想で、T字尾翼に複合素材と軽合金を組み合わせた双発ジェット輸送機、ウクライナ空軍は当面An-178-100R輸送機3機を導入する構想、アントノフ社では続いて2号機の組み立てを開始しています。
An-178-100R輸送機は最大搭載能力18tで18t搭載時の航続距離は1000km、搭載量を4tまで抑えた場合には航続距離は5500kmに達する。アントノフ社はソ連機という印象が強いが、ソ連崩壊後はウクライナ企業となっており、中でも今回納入された最新型のAn-178-100Rはカナダや欧州製部品でロシア製部品を一切用いていない特色があります。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今回は空軍関連の11論点を。最初にサウジアラビアの早期警戒管制機の話題なのですが航空自衛隊も将来にE-767後継機が必要となる訳でどういった機体に代わるのでしょうか。
サウジアラビア空軍はE-3早期警戒管制機近代化改修へボーイング社と契約を結びました。これは総額3億9792万ドルに達する契約で、2026年2月21日に近代化改修を完了する計画です。この改修によりアメリカ空軍早期警戒機との相互運用能力を確保し、また現在予定されています2040年の運用寿命まで第一線の性能を維持できるとされています。
E-3早期警戒管制機はサウジアラビア空軍が1983年より5機を導入、警戒管制機として8時間に渡り滞空し空中警戒管制に当る事が可能で、サウジアラビアでは当時イラン空軍など脅威増大に対応したもので、、また現在はイエメン内戦に伴う武装勢力によるサウジアラビア石油関連施設への長距離無人機攻撃への警戒監視に必要不可欠の装備となっています。
KC-135空中給油機の派生型であるボーイング707旅客機が原型というE-3早期警戒管制機は1977年よりアメリカで配備開始、1992年までに68機が生産され、アメリカ空軍が34機、NATO直轄機が18機、イギリス空軍が7機、そしてサウジアラビア空軍が5機とフランス空軍が4機を運用していますが、老朽化も進みイギリスでは退役が始っています。
■ラピットドラゴンのC-130
C-130輸送機も爆撃機にという運用は何か1964年の映画”モスラ対ゴジラ”のC-46輸送機改造爆撃機を思い出す。
アメリカ空軍はC-130輸送機からの長距離ミサイル運用ラピットドラゴン計画試験を実施しました。今後太平洋で想定される中国軍との最大規模の軍事衝突に際しては、長射程地対空ミサイルの大量投入によりアメリカ空軍が誇る輸送機はほとんど役に立ちません、その為に大量に保有される輸送機を輸送完了後はミサイル母機に用いる事としたわけです。
C-130輸送機のラピットドラゴン試験は2021年12月16日にエグリン空軍基地沖合において実施され、評価試験は空軍特殊戦コマンドが協力して実施しており、MC-130J特殊戦輸送機は4セルの長射程ミサイルコンテナ2基を搭載しました。パラシュート投下したコンテナはミサイルを分離の後点火、正確に飛翔した後に目標へ正確に命中したとのことです。
■フィンランドF-35導入決定
F-18の後継機に一時ラファールと云われたフィンランドも急浮上したF-35導入に決定ですね。
フィンランド空軍は次期戦闘機としてF-35A戦闘機を選定しました。フィンランド空軍は現在F-18戦闘機を運用しています、このF-18戦闘機とは隣国ロシアを刺激しないようF/A-18C/D戦闘攻撃機から攻撃を示す“A”を省いたもので、周辺国への配慮が示されていましたが、今回は統合打撃戦闘機として開発された第五世代戦闘機F-35を選んだ訳です。
F-35A戦闘機をフィンランド空軍は64機導入することとなります。フィンランドの隣国である中立政策で知られるスウェーデンはJAS-39戦闘機を製造していますが、フィンランド周辺諸国ではノルウェー空軍やオランダ空軍、イギリス空軍などがF-35戦闘機を運用しています。フィンランドはF-35用にデジタル装備品の一部を下請け生産しているとのこと。
F-35A戦闘機が評価された背景には第五世代戦闘機で運用に際し教育や整備の包括的支援を受けられるとともに、少なくとも2070年まで運用され、現時点で21か国が730機を運用しているという実績とともに世界で最も先進的で、空軍が想定する任務の全てに対応すると共にフィンランド軍の様々な装備との連携が可能である事を理由として発表しました。
■ミラージュ2000戦闘機退役へ
ミラージュ2000はまだまだ新しい機体ですが恐らく中古の機体を販売してその先の後継機にラファールの販路を開拓するのか。
フランス空軍は今後14年間でミラージュ2000戦闘機を完全に退役させる、これはフランス国防省が2022年1月にフランスの防衛大手ダッソー社との長期整備及びシステム管理に関するBALZAC契約により明らかとなった。フランス空軍ではミラージュF-1戦闘機は退役したもののラファール戦闘機量産が進む中、ミラージュ2000は重要な戦力である。
ミラージュ2000はBALZAC契約により退役するまでの14年間の間にダッソー社の支援を受けるとしており、これは第四世代戦闘機のシステムインテグレータ部分の整備が含まれるが、これが14年後に終了するという事は自動的にその退役時期を示唆している。尚近年、フランス政府はミラージュ2000を採用した各国へもラファールを売り込んでいる。
■フランス次期戦闘機エンジン
F-22のような第五世代戦闘機開発に完全な後れを取っているフランスは背伸びしたいが出来ない中で苦労を続ける。
フランス国防省は次期戦闘機FCAS/SCAF戦闘機用エンジン試作型の試験を本格化させました、これは2021年12月から開始されたもので、実験はDGA国防装備総局が担当しています。エンジンはラファール戦闘機に採用されたM88エンジンを原型として推力強化等を期して2015年より開発開始、2019年には実試作への第二段階に進んでいました。
FCAS/SCAF戦闘機はラファール戦闘機に続く将来戦闘機であり、F-35のような第五世代戦闘機を保有しないフランスでは、この戦闘機を欧州共通戦闘機としたい狙いもあり、フランス空軍に加え建造計画が進む将来航空母艦へも搭載を目指しています。新エンジンは推力12tと1700度タービン耐熱を目指しており、フランスの技術的に可能な水準という。
■ドイツF/A-18E巡り再度混乱
ドイツは本音ではF-35を必要としているのですが空軍のF-35導入派を更迭するような一幕もありましたのでもう滅茶苦茶だ。
ドイツ空軍が次期戦闘機に選定したF/A-18E/Fがメルケル政権の交代により影響、白紙撤回の可能性が生じています。与党キリスト教民主同盟は選挙の敗北後に連立政権との間で欧州製ではなくアメリカ製戦闘機導入に対しての連立与党構成政党に否定的な動きが生じている為で、ドイツ政府はボーイング社と正式契約に進まない可能性を示唆しています。
F/A-18E/Fスーパーホーネットは、ドイツ空軍では有事の際にNATOニュークリアシェアリングにおいて使用可能となるアメリカ製B-61核爆弾が使用できるとして採用に繋がりましたが、アメリカ海軍はB-61核爆弾運用能力を海軍ではステルス機であるF-35Cに統合する方針で、システム改良の際にF/A-18E/FのB-61運用能力解除の可能性もあるようです。
■パキスタンJ-10C戦闘機導入
J-10CはF-16Vに匹敵する4.5世代機に成長しており輸出されないものと思っていました。
パキスタンは中国よりJ-10C戦闘機の導入を決定したもよう、これは2022年初頭のパキスタン内務大臣発言として2021年末に25機導入が成約したとされる。またこれは2022年3月23日のパキスタン国軍記念日閲兵式における祝賀飛行に間に合うよう、急速に配備される計画とされる。J-10C戦闘機は成都航空機製造により開発された多機能戦闘機である。
J-10C戦闘機はA型やB型が制空戦闘に特化した戦闘機であったのに対し対地攻撃能力が強化され、中国がパキスタンと共同開発し幅広く輸出しているJF-17戦闘機よりも高性能機である。パキスタン空軍は同時多発テロ後のアメリカとの関係悪化により運用するF-16戦闘機の更新不能が問題となっており、2021年10月にJ-10C導入交渉の急展開が在った。
J-10C戦闘機のパキスタン配備は既に緊迫化する中印関係の悪化を促進しかねない、何故ならばJ-10C戦闘機は性能でインド空軍が配備を開始したラファール戦闘機に対抗し得るもので、これは中印国境防空へインド空軍が36機の導入を決定したのだが、インドとの対立関係にあるパキスタンへ最新鋭戦闘機を供与することは火に油を注ぐ結果となるためだ。
■クウェートからマレーシアへ
回教国同士の横のつながりと云う印象で今後東南アジアの回教国が危機に見舞われますと中古のユーロファイターあたりが急に現れるのかもしれない。
マレーシア空軍はクウェートよりF/A-18C/D戦闘攻撃機中古機33機を導入する。既に運用しているF/A-18C/D戦闘攻撃機を増強するかたちとなるが、マレーシア空軍は耐用年数延長計画に基づき当初想定よりも長期に当る2035年までのF/A-18C/D戦闘攻撃機運用を想定している。これらはマレーシア空軍ホーク軽攻撃機の潜在的な後継機ともなりえる。
F/A-18D戦闘攻撃機は制空戦闘と航空打撃任務両方に用いられる多機能戦闘機であることから輸出に成功した戦闘機の一つであるが、拡大改良型のE/F型以外は寿命を迎えている、例えばカナダ空軍などはその後継機が全て費用高騰となったために選定に難渋しているが、マレーシアとクウェートは同じ回教国というイスラムの互助精神が反映されたのだろうか。
クウェート空軍は1988年にF/A-18C/D戦闘攻撃機40機を導入、納入は湾岸戦争のイラク軍クウェート侵攻に間に合わず1991年10月から1993年にかけ行われたが、2021年よりF/A-18E/F戦闘攻撃機へ更新が開始され余剰となった形だ。マレーシア空軍はF/A-18C/Dと同時にロシアからMiG-29を導入した事で知られ後者はSu-30戦闘機へ更新されている。
■フィリピンが退役機再生
COIN機というか一応ジェット機なのですがほとんどCOIN機のような機体を掻き集める程情勢は悪化しているのか。
フィリピン空軍は退役し保管状態にあったアエルマッキSF-260軽攻撃機を再活性化させました。アエルマッキSF-260はイタリアのアレニアアエルマッキが1964年に開発した単発練習機で、民間アクロバット飛行などにも供されていますが、エンジン出力の余裕から軽攻撃機、所謂COIN機としても活用され、フィリピンも1971年に取得しています。
フィリピン空軍は48機のSF-260を導入していますが、旧式化と空軍規模縮小を受け退役していました。しかし、周辺情勢悪化を受けフィリピン政府は2011年にSF-260を18機新規取得を決定、退役機からも48機の内、どうにか12機は修理する事で飛行が可能と判断、再稼働となりました。新造分と含め30機は練習機と軽攻撃機任務に就く事となります。
■セルビアはラファール希望
ラファールは一時期鳴かず飛ばずでしたが日本のF-2戦闘機よりも初期の性能定評はいまいちでしたが四世代ほど改良を重ね今に至る秀才型ですね。
セルビア空軍は次期戦闘機としてラファールを希望しているが政治的問題に直面しているようです。次期戦闘機にはフランス製ラファール戦闘機とロシア製Su-30SM戦闘機が候補にあげられており、空軍はラファール戦闘機が最も任務に適していると評価し国防大臣と大統領にもそれを進言しています。なおSu-30SMはSu-30戦闘機の最新改良型です。
ラファール戦闘機、しかし導入が難しい背景には二つの問題があり、一つはSu-30SMに対してラファール戦闘機の方が遥かに高価であるということ。もう一つはセルビアの旧ユーゴスラビアとソ連の関係が延長線上にロシアとの関係があるということですセルビアの国防大臣は2021年12月29日、国営放送でラファール優位と決定延期を発表しています。
■アントノフAn-178-100R
アントノフと云えば巨人輸送機と云う印象があるのですがAn-178はコンパクトでウクライナ版C-1輸送機というところでしょうか。
ウクライナ軍はアントノフ社よりAn-178-100R輸送機初号機を受領しました。これは旧式化したAn-12輸送機やAn-26輸送機とAn-32輸送機等を置換える構想で、T字尾翼に複合素材と軽合金を組み合わせた双発ジェット輸送機、ウクライナ空軍は当面An-178-100R輸送機3機を導入する構想、アントノフ社では続いて2号機の組み立てを開始しています。
An-178-100R輸送機は最大搭載能力18tで18t搭載時の航続距離は1000km、搭載量を4tまで抑えた場合には航続距離は5500kmに達する。アントノフ社はソ連機という印象が強いが、ソ連崩壊後はウクライナ企業となっており、中でも今回納入された最新型のAn-178-100Rはカナダや欧州製部品でロシア製部品を一切用いていない特色があります。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)