■ロシアとNATO東方拡大
ルビコン川を最早わたってしまい後戻りできない時代であるのは関係修復の可能性は残っているのか。
ウクライナのNATO加盟問題について、一つ大きな視座はNATOはロシアとの関係を修復する余地を考えていないのか、という問題です。発言から一ヶ月以上を経てもストルテンベルク事務総長からの修正発言が出されないことを考えれば、これは事務総長の視座ではなくNATO全体の意志であることを示しています。むろん時期は明確には示さないが。
ロシアとの関係、少なくともプーチン政権の統一ロシアとの関係を考えれば、ロシア-ウクライナ戦争の開戦がウクライナからのロシアへの攻撃という一種の陰謀論、ウクライナがNATOに加盟しウクライナにアメリカの攻撃兵器が置かれるという陰謀論、これがキューバ危機などと異なるのはロシアが証拠を示さず開戦後実際無かったためですが。
NATOへのウクライナ加盟を政治的な論点に持ち上げた背景を考えれば、次にロシアがウクライナへ侵攻した場合は第三次世界大戦の覚悟がある、という決意にほかならないとともに、ロシアとNATOとの関係はプーチン政権が存続する間は修正しない決意の表明にもほかならず、いわばNATO側から新しい冷戦構造の醸成を覚悟することにほかなりません。
難しい視点は、G7がG8であった時代にはロシアは世界政治において安全保障上の問題には思い切った行動をとることで知られていました、いちばんの筆頭はシリア介入、ISILが跳梁跋扈しアメリカが介入するまでは、ISILは一種無敵に近い状態で数年後にはウィーンを包囲するのではという、歴史に影響されたような想像力のある警鐘もありました。
ISILへのシリア介入は、アメリカがシリア内戦とアサド政権の関係、そしてイラク治安作戦を2003年以来継続し膨大な戦死者から厭戦機運の高まりとともにアメリカのオバマ政権が躊躇していたなか、先陣を切って爆撃機を派遣したのはロシアであり、いわばウクライナ支援におけるイギリスのような役割をG8加盟国では果たしていたのですね。
ロシアとNATO,もちろん関係が開戦前にもどることはありません、次はスヴァルキギャップかポーランドか、特にポーランドは1939年にソ連に侵攻された経験、スヴァルキギャップに隣接するバルト三国もソ連に併合された歴史があり、そしてなによりもカリーニングラードとの関係を考えれば警戒を強化するのはむしろ当然ではあるのですが。
NATO東方拡大、プーチン大統領が批判していますが、わたしはロシア自身がNATOオブザーバー国として准加盟国の位置へ進んだ、つまり2007年にNATOオブザーバー国を離脱するまでの期間でしたが、あの行動をもってロシアがNATO東方拡大を批判することができなくなったように思います、あのときはロシアはNATO加盟へ進んでいましたから。
歴史、という分野になるのでしょうか、1990年代にはロシアのNATO加盟が現実的な流れとなっていて、これが実現するならばNATOの仮想敵国は日本なのか、と少々笑い話的に議論されていた、トムクランシー氏が小説"日米開戦"を発表したのはこのころでしたから。マイナーだが大石英司氏の”第二次太平洋戦争”もこのころの発表でしたか。
まさか、ロシアがNATOへ接近したことをロシアがNATO東方拡大だ、と批判することはできないでしょう、何よりこの施策はロシア政府自身が進めたのですから。逆に東欧諸国はロシアとともにNATOへ向かう、それはソ連時代の厳しい教訓を反映するものでしょうし、逆にロシアがNATOに向かう以上、自国も向かわねば仮想敵国となりかねません。
ロシアとの決別の覚悟があるのではないか、というNATOの姿勢ですが、同時に隔靴掻痒もあるのでしょうか。ウクライナ空軍の戦力不足などが背景にありますが、今回のロシアウクライナ戦争はNATOが重視するエアランドバトル、航空打撃力とヘリボーン戦力を最大限活用し第二梯団を叩く戦術を多用するならば、短期的に勝利を得られた、という。
仮にNATOへのウクライナ加盟が実現し、その上で次の戦争となれば、今のように支援を長期にわたり行うことなく、通常戦力でも短期的にロシア軍に決定的な打撃を加えて領域外に追い出し、一方でロシアの切り札という核戦力はNATO自身の持つ強力な核戦力により抑止力を行使し、脅し以上に使わせない、という選択肢をとることができます。
70歳、さて長期戦となればロシアは勝てるという指摘があるようですが、プーチン大統領は今70歳でまもなく71歳です、仮に十年単位の戦争となれば80歳、しかもおなじく高齢のバイデン大統領とは異なり彼は選挙ではなく政変で政権が変わる権威主義国家の大統領です、十年二十年、戦えるほど若くはない点を加味する必要があるでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ルビコン川を最早わたってしまい後戻りできない時代であるのは関係修復の可能性は残っているのか。
ウクライナのNATO加盟問題について、一つ大きな視座はNATOはロシアとの関係を修復する余地を考えていないのか、という問題です。発言から一ヶ月以上を経てもストルテンベルク事務総長からの修正発言が出されないことを考えれば、これは事務総長の視座ではなくNATO全体の意志であることを示しています。むろん時期は明確には示さないが。
ロシアとの関係、少なくともプーチン政権の統一ロシアとの関係を考えれば、ロシア-ウクライナ戦争の開戦がウクライナからのロシアへの攻撃という一種の陰謀論、ウクライナがNATOに加盟しウクライナにアメリカの攻撃兵器が置かれるという陰謀論、これがキューバ危機などと異なるのはロシアが証拠を示さず開戦後実際無かったためですが。
NATOへのウクライナ加盟を政治的な論点に持ち上げた背景を考えれば、次にロシアがウクライナへ侵攻した場合は第三次世界大戦の覚悟がある、という決意にほかならないとともに、ロシアとNATOとの関係はプーチン政権が存続する間は修正しない決意の表明にもほかならず、いわばNATO側から新しい冷戦構造の醸成を覚悟することにほかなりません。
難しい視点は、G7がG8であった時代にはロシアは世界政治において安全保障上の問題には思い切った行動をとることで知られていました、いちばんの筆頭はシリア介入、ISILが跳梁跋扈しアメリカが介入するまでは、ISILは一種無敵に近い状態で数年後にはウィーンを包囲するのではという、歴史に影響されたような想像力のある警鐘もありました。
ISILへのシリア介入は、アメリカがシリア内戦とアサド政権の関係、そしてイラク治安作戦を2003年以来継続し膨大な戦死者から厭戦機運の高まりとともにアメリカのオバマ政権が躊躇していたなか、先陣を切って爆撃機を派遣したのはロシアであり、いわばウクライナ支援におけるイギリスのような役割をG8加盟国では果たしていたのですね。
ロシアとNATO,もちろん関係が開戦前にもどることはありません、次はスヴァルキギャップかポーランドか、特にポーランドは1939年にソ連に侵攻された経験、スヴァルキギャップに隣接するバルト三国もソ連に併合された歴史があり、そしてなによりもカリーニングラードとの関係を考えれば警戒を強化するのはむしろ当然ではあるのですが。
NATO東方拡大、プーチン大統領が批判していますが、わたしはロシア自身がNATOオブザーバー国として准加盟国の位置へ進んだ、つまり2007年にNATOオブザーバー国を離脱するまでの期間でしたが、あの行動をもってロシアがNATO東方拡大を批判することができなくなったように思います、あのときはロシアはNATO加盟へ進んでいましたから。
歴史、という分野になるのでしょうか、1990年代にはロシアのNATO加盟が現実的な流れとなっていて、これが実現するならばNATOの仮想敵国は日本なのか、と少々笑い話的に議論されていた、トムクランシー氏が小説"日米開戦"を発表したのはこのころでしたから。マイナーだが大石英司氏の”第二次太平洋戦争”もこのころの発表でしたか。
まさか、ロシアがNATOへ接近したことをロシアがNATO東方拡大だ、と批判することはできないでしょう、何よりこの施策はロシア政府自身が進めたのですから。逆に東欧諸国はロシアとともにNATOへ向かう、それはソ連時代の厳しい教訓を反映するものでしょうし、逆にロシアがNATOに向かう以上、自国も向かわねば仮想敵国となりかねません。
ロシアとの決別の覚悟があるのではないか、というNATOの姿勢ですが、同時に隔靴掻痒もあるのでしょうか。ウクライナ空軍の戦力不足などが背景にありますが、今回のロシアウクライナ戦争はNATOが重視するエアランドバトル、航空打撃力とヘリボーン戦力を最大限活用し第二梯団を叩く戦術を多用するならば、短期的に勝利を得られた、という。
仮にNATOへのウクライナ加盟が実現し、その上で次の戦争となれば、今のように支援を長期にわたり行うことなく、通常戦力でも短期的にロシア軍に決定的な打撃を加えて領域外に追い出し、一方でロシアの切り札という核戦力はNATO自身の持つ強力な核戦力により抑止力を行使し、脅し以上に使わせない、という選択肢をとることができます。
70歳、さて長期戦となればロシアは勝てるという指摘があるようですが、プーチン大統領は今70歳でまもなく71歳です、仮に十年単位の戦争となれば80歳、しかもおなじく高齢のバイデン大統領とは異なり彼は選挙ではなく政変で政権が変わる権威主義国家の大統領です、十年二十年、戦えるほど若くはない点を加味する必要があるでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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