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【京都発幕間旅情】豊橋吉田城(今橋城),三河と遠州結ぶ豊橋は五〇〇年にわたる東海道の要衝

2019-10-30 20:08:11 | 旅行記
■豊橋創った城郭と城下町
 愛知県豊橋市、東海道という東京と京阪神や名古屋を結ぶ交通の要衝に在ります。そしてこの地には街道への守りへ実に500年以上前から城郭があるのです。

 豊橋吉田城、東海道本線を新快速で東下り、と東京へ楽しんでいますと韋駄天の如き新快速が急減速する境界線が此処、浜松から先は東京まで基本各駅停車のみ。東海道新幹線ですと、のぞみ号通過、ぷらっとこだま利用では通過列車待ちの駅という豊橋駅がある。

 豊橋市、散策してみますと歴史街道を歩む馥郁とした機運に満ちた素晴らしい街でして、豊橋駅に新幹線と東海道本線に飯田線、名鉄線と豊橋鉄道が集い、駅前からは路面電車が広い道路を、隣接する豊川市には豊川稲荷と豊川駐屯地、不思議な活気に満ちた印象です。

 吉田城が造営されたのは永正年間1505年頃と云い、牧野古白により築城されました。牧野古白の系譜は牟呂八幡宮宮司として足利将軍家より讃岐よりこの地へ移った牧野成富の嫡男として、現在はお隣豊川市となった牧野城に生まれた武将です。そして1505年の時代だ。

 応仁の乱にて京都が壊滅状態となった後に騒擾が収まったのは1477年、吉田城築城の1505年はまだ騒擾の小火が残る不穏な時代、三河守護職という官職は非常に不安定な状況にありました。事実1493年に明応の政変として室町将軍職を巡る騒乱があり、影響は全国へ。

 三河守護職一色時家により重用された牧野成富は、しかし主君一色時家が元々相模守護でありながら1438年の永享の乱により落ち延びた後に三河の実力者波多野全慶により討たれ主君を失います。そこで明応の政変が在り、将軍職支持の相違を前に波多野全慶と戦う。

 牧野成富はこの戦いに勝利すると共に駿河守護の今川氏親の下に就き、今川氏親は対立する西三河の松平氏への抑えとして、複数の城郭造営を命じました。その一つが、この豊橋吉田城です。しかし、牧野古白は築城翌年の1506年に松平氏との戦いであっさり討死する。

 豊橋は三河地方と遠州を結ぶ地狭という戦略上の要衝であり、牧野古白を破った戸田宣成が城主となりますが天正年間の1546年には今川氏が反撃に転じます。そして松平氏は今川氏の配下となり、新たに三河地方を押えた今川氏には織田氏と向き合う岡崎城への後詰へ。

 桶狭間の戦い、永禄年間1560年に今川義元が討死すると松平家康即ち後の徳川家康が離反、重臣酒井忠次を置き要衝の防衛に充てています。家康は吉田城と長篠城に野田城と浜松城に二俣城と高天神城として防衛線を築き、次なる脅威、甲斐の武田信玄へ備えた訳ですね。

 池田輝政は天正年間1590年、小田原征伐の勲功を以て関東一円を下賜した徳川家康に代わり、東三河15万2千石城主として吉田城へ入りました。池田輝政は吉田城を前線拠点ではなく本拠地として城下町や吉田大橋の都市開発を行い、現在の豊橋市基盤を造り上げます。

 姫路城築城で知られる池田輝政は慶長年間1598年の豊臣秀吉死去と共に豊橋の地に所縁深い徳川家康と親交を深め、関ヶ原の戦いでの勲功を以て播磨姫路52万石に加増移封されたのは歴史が示す通り。ただ、その移封の時点で、まだ吉田城は築城の途中だったという。

 吉田藩の政庁として江戸時代に完成を見た吉田城は、家康との所縁から親しい大名の居城となり、老中や大坂城代に京都所司代の要職を務めた譜代大名が藩主に充てられ、出世城、と呼ばれるようになりました。岡崎城も同じ出世城、家康と所縁ある城郭の特徴ですね。

 吉田城は別名今橋城、といいまして東海道の橋梁という戦略要衝を護る要地でした。そして明治維新の後は城下町と共に陸軍駐屯地に適しているとされ、歩兵第一八連隊本営が置かれる事となります。現構造物は1954年再建の隅櫓で、豊橋に城郭の気風を伝えています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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