■NATO-ロシア緊張激化
ロシアは日本にとっても隣国であり緊張は容易く太平洋正面へも波及するという前提で、現在の緊張を見てゆく必要があります。
NATOは冷戦後最大の空母戦闘部隊ネプチューンストライク2022を編成しました。これはロシアのウクライナ侵攻兆候を受けてのウクライナ危機を前に1月24日に加盟国より空母部隊を参集させ編成、世界初の10万トン級空母であるニミッツ級後期型の原子力空母ハリーシップトルーマンも同日を以てアメリカ第六艦隊からNATO直轄運用へと移行した。
ネプチューンストライク2022の旗艦はアメリカ海軍指揮艦マウントホイットニーが第六艦隊司令部共々NATOへ参加し、イギリスからは極東回航帰国間もない空母クイーンエリザベス、フランスからは唯一の空母である原子力空母シャルルドゴール、イタリアからはF-35B戦闘機運用能力のIOC初度能力獲得間もない空母カブール、空母4隻が揃いました。
ハリーシップトルーマンはアメリカ海軍巡洋艦に加えて護衛へノルウェー海軍はイージス艦ナンセンを地中海へ派遣しています。ネプチューンストライクは2021年にもNATO図上演習において編成が研究されていますが、実際に編成され実任務に臨むのは今回が初めてで、当面は2月4日まで地中海において空母群による海上からの抑止力を行使します。
ロシア航空宇宙軍は2月10日から20日まで実施するユニオンカレイジ2022“大規模合同演習”ベラルーシへSu-35戦闘機を演習に派遣を開始しました。Su-35戦闘機の派遣はロシア国防省の発表によれば二段階ある展開計画の第一段階となり12機が派遣されているとのこと。Su-35戦闘機はAESAレーダーにより400kmの索敵能力を持つ新鋭戦闘機です。
ユニオンカレイジ2022演習はロシアのドマノフスキー演習場、ギジスキー演習場、オブズレスノフスキー演習場、ブレストスキー演習場、オシポビッチスキー演習場、そしてベラルーシ国内の演習場が演習地として予定されています。この演習は、ロシア軍のウクライナ侵攻への準備演習、若しくはそのまま軍事行動へ発展する事が警戒されている演習です。
OSCE全欧安全保障協力機構は、ロシア軍からの演習実施通知を受けていません。ロシア国防省によれば、演習の規模はOSCEの2021年ウィーン文書に基づく通知が必要な演習規模を下回る為としていますが、遠州地域付近には別名目の演習で展開したロシア軍部隊が展開しており、複数の演習が同時多発的に並行して行われる可能性も憂慮されています。
ロシア極東の東部軍管区からベラルーシウクライナ国境地域へ軍用車両を積載した貨物列車が到着した、フランスF2ニュースが26日付で報道しています。ベラルーシはロシアの友好国であるとともに、ウクライナの首都キエフ最寄りの国境はロシアウクライナ国境よりもベラルーシウクライナ国境地域であり、ロシア軍のキエフ首都侵攻が懸念されます。
アレクサンドルフォミン国防副大臣の発言によれば、今回派遣された装備はS-400地対空ミサイルシステムとパンツィーリ複合防空システムからなる2個部隊で、任務は友好国であるベラルーシへ敵対的航空戦力が及んだ状況に対応するとしています。S-400ミサイルは射程が極めて長い地対空ミサイルであり、その射程は400kmに達するとされています。
ロシア東部軍管区は旧極東軍管区であり、中ロ国境及び太平洋沿海地域を防衛する重要な部隊ですが、中ロ関係の良好化と、北京五輪2022を控えた緊張緩和の情勢があり、ベラルーシへ展開する余裕が生じたのでしょう。この東部軍管区部隊到着前にもロシアウクライナ国境地域に展開しているロシア軍は10万規模に達しており、今回更に増強された構図だ。
エストニア政府はドイツ政府に対しウクライナへの旧東ドイツ軍装備譲渡を要請しました。エストニア軍は旧東ドイツ製のD-30榴弾砲を49門運用しています。これは元々、東西ドイツ統合により余剰となったものをフィンランド軍が取得したものですが、フィンランド軍でも余剰となったことから2009年にエストニア軍が導入し現在も運用中の火砲です。
D-30榴弾砲は122mm榴弾砲で通常榴弾射程は15.4kmとRAP弾では21km、設計は1960年ですが堅実な設計と確実な作動で定評があります。エストニアがウクライナ防衛協力を求める背景には、ロシア軍侵攻の恐れのあるウクライナは、スバルキラインというロシアの想定侵攻地域上に隣接するエストニアも運命共同体との認識があり緊張下に在る為です。
アメリカ政府はウクライナへ対戦車ミサイルジャベリンなどを供与しこの程搬入されたとのこと。これは26日付アメリカABC報道で、今回搬入された装備はジャベリン対戦車ミサイル240基とAT-4個人携帯対戦車弾800発。空輸によりウクライナ軍へ配備され、ウクライナ軍は先行供与されたジャベリンによる訓練を既に開始していると発表されている。
ジャベリン対戦車ミサイルは射程1500mの携帯式対戦車ミサイルで赤外線画像誘導方式により戦車等から発する赤外線を認識し撃ち放し式にて戦車の弱点とされる上部装甲を狙う。AT-4はスウェーデンが開発したグラスファイバー製発射筒に装填された84mm無反動砲弾です。ただロシア戦車はシリア内戦の戦訓を反映し対戦車兵器へ防御が強化されています。
ウクライナ軍はトルコ製バイラクタルTB2無人機による黒海上空哨戒飛行を開始したとのこと。バイラクタルTB2は2020年にアゼルバイジャンとアルメニアとの間で勃発したナゴルノカラバフ紛争においてイスラエル製ハーピー徘徊式弾薬とともに猛威を振るった無人航空機の一つで、150kgまでのセンサーや弾薬を搭載、自爆攻撃も可能というもの。
バイラクタルTB2無人機はウクライナ軍がロシア軍によるクリミア併合を受け2019年に防衛力強化の一環として12機を導入、運用実績の高さから2020年に5機を追加しており、また開発メーカーであるトルコのバイカル社はウクライナへ更に48機の現地生産を目指す合弁会社を創設しています。ロシア圧力が高まるウクライナの防衛への新しい一歩です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ロシアは日本にとっても隣国であり緊張は容易く太平洋正面へも波及するという前提で、現在の緊張を見てゆく必要があります。
NATOは冷戦後最大の空母戦闘部隊ネプチューンストライク2022を編成しました。これはロシアのウクライナ侵攻兆候を受けてのウクライナ危機を前に1月24日に加盟国より空母部隊を参集させ編成、世界初の10万トン級空母であるニミッツ級後期型の原子力空母ハリーシップトルーマンも同日を以てアメリカ第六艦隊からNATO直轄運用へと移行した。
ネプチューンストライク2022の旗艦はアメリカ海軍指揮艦マウントホイットニーが第六艦隊司令部共々NATOへ参加し、イギリスからは極東回航帰国間もない空母クイーンエリザベス、フランスからは唯一の空母である原子力空母シャルルドゴール、イタリアからはF-35B戦闘機運用能力のIOC初度能力獲得間もない空母カブール、空母4隻が揃いました。
ハリーシップトルーマンはアメリカ海軍巡洋艦に加えて護衛へノルウェー海軍はイージス艦ナンセンを地中海へ派遣しています。ネプチューンストライクは2021年にもNATO図上演習において編成が研究されていますが、実際に編成され実任務に臨むのは今回が初めてで、当面は2月4日まで地中海において空母群による海上からの抑止力を行使します。
ロシア航空宇宙軍は2月10日から20日まで実施するユニオンカレイジ2022“大規模合同演習”ベラルーシへSu-35戦闘機を演習に派遣を開始しました。Su-35戦闘機の派遣はロシア国防省の発表によれば二段階ある展開計画の第一段階となり12機が派遣されているとのこと。Su-35戦闘機はAESAレーダーにより400kmの索敵能力を持つ新鋭戦闘機です。
ユニオンカレイジ2022演習はロシアのドマノフスキー演習場、ギジスキー演習場、オブズレスノフスキー演習場、ブレストスキー演習場、オシポビッチスキー演習場、そしてベラルーシ国内の演習場が演習地として予定されています。この演習は、ロシア軍のウクライナ侵攻への準備演習、若しくはそのまま軍事行動へ発展する事が警戒されている演習です。
OSCE全欧安全保障協力機構は、ロシア軍からの演習実施通知を受けていません。ロシア国防省によれば、演習の規模はOSCEの2021年ウィーン文書に基づく通知が必要な演習規模を下回る為としていますが、遠州地域付近には別名目の演習で展開したロシア軍部隊が展開しており、複数の演習が同時多発的に並行して行われる可能性も憂慮されています。
ロシア極東の東部軍管区からベラルーシウクライナ国境地域へ軍用車両を積載した貨物列車が到着した、フランスF2ニュースが26日付で報道しています。ベラルーシはロシアの友好国であるとともに、ウクライナの首都キエフ最寄りの国境はロシアウクライナ国境よりもベラルーシウクライナ国境地域であり、ロシア軍のキエフ首都侵攻が懸念されます。
アレクサンドルフォミン国防副大臣の発言によれば、今回派遣された装備はS-400地対空ミサイルシステムとパンツィーリ複合防空システムからなる2個部隊で、任務は友好国であるベラルーシへ敵対的航空戦力が及んだ状況に対応するとしています。S-400ミサイルは射程が極めて長い地対空ミサイルであり、その射程は400kmに達するとされています。
ロシア東部軍管区は旧極東軍管区であり、中ロ国境及び太平洋沿海地域を防衛する重要な部隊ですが、中ロ関係の良好化と、北京五輪2022を控えた緊張緩和の情勢があり、ベラルーシへ展開する余裕が生じたのでしょう。この東部軍管区部隊到着前にもロシアウクライナ国境地域に展開しているロシア軍は10万規模に達しており、今回更に増強された構図だ。
エストニア政府はドイツ政府に対しウクライナへの旧東ドイツ軍装備譲渡を要請しました。エストニア軍は旧東ドイツ製のD-30榴弾砲を49門運用しています。これは元々、東西ドイツ統合により余剰となったものをフィンランド軍が取得したものですが、フィンランド軍でも余剰となったことから2009年にエストニア軍が導入し現在も運用中の火砲です。
D-30榴弾砲は122mm榴弾砲で通常榴弾射程は15.4kmとRAP弾では21km、設計は1960年ですが堅実な設計と確実な作動で定評があります。エストニアがウクライナ防衛協力を求める背景には、ロシア軍侵攻の恐れのあるウクライナは、スバルキラインというロシアの想定侵攻地域上に隣接するエストニアも運命共同体との認識があり緊張下に在る為です。
アメリカ政府はウクライナへ対戦車ミサイルジャベリンなどを供与しこの程搬入されたとのこと。これは26日付アメリカABC報道で、今回搬入された装備はジャベリン対戦車ミサイル240基とAT-4個人携帯対戦車弾800発。空輸によりウクライナ軍へ配備され、ウクライナ軍は先行供与されたジャベリンによる訓練を既に開始していると発表されている。
ジャベリン対戦車ミサイルは射程1500mの携帯式対戦車ミサイルで赤外線画像誘導方式により戦車等から発する赤外線を認識し撃ち放し式にて戦車の弱点とされる上部装甲を狙う。AT-4はスウェーデンが開発したグラスファイバー製発射筒に装填された84mm無反動砲弾です。ただロシア戦車はシリア内戦の戦訓を反映し対戦車兵器へ防御が強化されています。
ウクライナ軍はトルコ製バイラクタルTB2無人機による黒海上空哨戒飛行を開始したとのこと。バイラクタルTB2は2020年にアゼルバイジャンとアルメニアとの間で勃発したナゴルノカラバフ紛争においてイスラエル製ハーピー徘徊式弾薬とともに猛威を振るった無人航空機の一つで、150kgまでのセンサーや弾薬を搭載、自爆攻撃も可能というもの。
バイラクタルTB2無人機はウクライナ軍がロシア軍によるクリミア併合を受け2019年に防衛力強化の一環として12機を導入、運用実績の高さから2020年に5機を追加しており、また開発メーカーであるトルコのバイカル社はウクライナへ更に48機の現地生産を目指す合弁会社を創設しています。ロシア圧力が高まるウクライナの防衛への新しい一歩です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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