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岐阜-日野基本射撃場で自衛官候補生が乱射!2名死亡1名負傷,1984年山口事件以来の自衛隊不祥事

2023-06-14 20:20:13 | 防衛・安全保障
■自候生同僚へ乱射!
 89式小銃が人に発砲され人命を奪う初の事例となりました、それも発砲の相手は同じ日本人の同じ自衛官に対してです。

 本日0908時頃、岐阜県岐阜市の陸上自衛隊日野基本射撃場において10代の自衛官候補生が射撃訓練中に同僚に向けて発砲、射撃を受けた52歳と25歳の自衛官が死亡し一人が負傷する事件が発生しました。発砲した自衛官候補生はその場で取り押さえられています。自衛官が同僚へ故意に発砲し殺害、これは1984年に発生した山口事件以来の不祥事です。

 殺人事件を起こした自衛官候補生は名古屋市の守山駐屯地に司令部を置く第10師団隷下の第35普通科連隊の自衛官教育隊にて教育中の自衛官候補生で、日野基本射撃場ではこの日、自衛官候補生70名と教官ら50名の120名が夕方まで射撃訓練を行う予定でした。この事件を受け急遽陸上自衛隊は全国で本日一杯、全ての実弾射撃を中止したとのことです。

 山口事件以来だ。自衛官が故意に発砲し死傷させる事例は今回が初めてで貼りませんが、前回は1984年に発生した山口事件、それ以前には記録が有りません。山口事件は1984年2月27日、山口駐屯地第17普通科連隊の21歳の2等陸士が64式小銃を射撃場で後方に振り向き乱射、1名が死亡し3名が重軽傷を負わせジープで逃亡、山口市内で逮捕された。

 何が有ったのか。発砲した隊員は0930時に岐阜県警が到着し、演習場を管理していた自衛隊警務隊から身柄を引き渡されました。岐阜県警は殺人未遂の疑いで逮捕、警察と自衛隊の協定では自衛隊施設内での事件捜査は警務隊が当たる事となっており、警察と自衛隊警務隊の合同捜査が行われる事となりました。現在は岐阜県警が取り調べを行っています。

 52歳の教官が狙い。NHK報道によれば警察の調べに対して発砲した自衛官候補生は、52歳の教官が狙いであったと供述しています。発砲した小銃は89式小銃で5.56mm弾を用います、使用される89式5.56mm普通弾はNATO規格SS-109型の5.56mm弾で鉄弾芯と中空構造を採用し、跳弾や貫通被害を抑える一方で人体に命中すると致命的となるもの。

 自衛官候補生とは。自衛隊ではかつて入隊するとすぐ任官し新隊員として教育を受けましたが、2010年の制度改定により任官し新隊員教育前期教育を修了する3カ月間は自衛官の定数外とし、方面混成団教育大隊か各連隊や大隊に臨時編成される教育隊に所属、部隊に配属され受ける後期教育の開始に際し自衛官に任官し2等陸士を拝命することとなります。

 原因は、捜査中です。人間関係などが第一に考えられますが、こうした問題は捜査が進むまで分りません。供述では52歳の教官を狙ったとしていますが、自衛隊は教育訓練について民間の新入社員教育とは異なるところがあり、また民間では考えられない程に教育帰還中には外出制限や門限、遅刻などについては服務規程違反で懲戒の対象となるのです。

 18歳という、高校卒業後そのまま志願したと考えられる逮捕された自衛官候補生ですが、考え方によっては、高校入学と同時にCOVID-19新型コロナウィルス感染症が広がり、一斉休校措置や学校行事制限などが行われていました。そして三年間の高校生活中が感染症法2類相当のまま、考えれば人間関係が薄い三年間を経て卒業し自衛官に志願している。

 前期教育は、三カ月間で執銃訓練とともに小銃の分解結合を全て覚えねばなりませんし、体力練成などもあります、そして何より集団生活ですが、寝室まで集団生活というのは全寮制野球部のある高校の野球部員など一部の例外を除けば2020年代には経験するものではなく、向き不向きがあるという。もっともそれを理解して志願するのですけれども、ね。

 如何に理由が有ろうとも発砲は許されません、現在の少年法では18歳以上は特定少年となり、従来のような少年法ではなく刑法が適用されます。そして警察の取り調べに応じている事から心神喪失ではありません、2名を殺害していますので、ほぼ、裁判では、自衛官宣誓の上で2名を殺害したということは重く受け止められ、厳しい判決が予想されるのです。

 任期制自衛官であった。難しいのは曹候補学生ではなく、任期制自衛官という2年で退官する自衛官であるということ。2任期まで継続任用を受ける事が出来て任期満了金という退職金を支給され退官します、これが曹候補学生ですと7年以内に3曹に昇進できなければ退官するために素行などが特に注意しなければならないのですが、任期制自衛官でした。

 事件の一報を聞き、思い浮かんだのは、アメリカ陸軍が全ての二等兵に個室貸与を先週発表し、先行して個室化を終えているドイツ連邦軍が新たにWifiの兵舎での整備を全面的に進める施策を前に発表しましたので、もう昭和どころか平成でさえないのだ、待遇改善を、という事は思い浮びましたが、なにか、すれ違いが生んだ凶悪事件という印象なのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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1 コメント

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無題 (軽トラックの稲妻)
2023-06-15 05:43:38
はあ、嫌な事件が起きましたね。これから操作が済むんでしょうけど、巻き込まれた20代の隊員が気の毒。
そして多くの真面目な自衛官にとって頭痛の種となるでしょう。亡くなった方に弔意を評します。
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