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ウクライナ情勢-反転攻勢における戦訓,自衛隊機械化部隊と専守防衛に依拠した本土防衛に資する考察

2023-06-14 07:00:41 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 ロシア軍の防衛線をウクライナ軍が数カ所で突破し7から11の村落を奪還したとのことですが、ロシア軍は前哨陣地8kmと主陣地12kmの重厚な防衛線に第1親衛戦車軍による機動防御部隊が待機しており、これからが厳しい。

 ウクライナ軍反転攻勢を見ていますと、ウクライナ軍第33機械化旅団の戦闘正面とされる映像にM-2ブラッドレイ装甲戦闘車に相当数の被害が出ており、レオパルド2戦車についても被害が生じていますが、同時にフィンランド等から供与されたレオパルド2R-HMBV工兵戦闘車も複数両、供与されたのが若干数なので全数に近い、被害が出ているもよう。

 湾岸戦争のサダムライン突破以来と表現した今回の攻撃ですが、考えればロシア軍の防御陣地への正面突破は第二次世界大戦における独ソ戦以来の事例となり、防衛線に隙間が無い限り、つまり迂回が出来ない限り突破となり、戦車や機械化歩兵といった近接戦闘部隊の損耗は避けられないのですが、1200kmもの防衛線に隙間が無い事が驚かされた点です。

 自衛隊が学ぶ点としては、自衛隊は戦車を冷戦時代の1200両から現在300両へ削減途中ですが、少なくとも現在68両しかない装甲戦闘車を戦車と1:2の数まで、つまり600両まで増強し、装甲戦闘車の火器管制装置には対空型兼用のものがある為、無人機攻撃や対戦車ミサイル部隊に対して3P弾など調整散弾型の大口径機関砲弾で支援する能力が必要です。

 戦闘ヘリコプター、ロシア軍は今回、ホーカムやハボックなどの戦闘ヘリコプターを前哨陣地が破られた地域へ集中投入しウクライナ軍に大損害を与えています。自衛隊はAH-64D戦闘ヘリコプターを廃止する方針ですが、戦闘ヘリコプターには空対空戦闘能力があります、高射特科部隊も有用ですが即座の戦闘能力を考えれば、これら装備の有用性は大きい。

 施設作業車、自衛隊に致命的に不足しているのは戦闘工兵装備ですが世界中を見渡して高い機動力を持つ第三世代戦車の速力に呼号可能な障害処理力を持つ戦闘工兵車は存在せず、戦車の車体を応用した戦闘工兵車も70km/hの速度で地雷原を処理しつつ前進する能力無く、すると最低でも戦車車体応用の戦闘工兵車にアクティヴ防護装置を載せたものが要る。

 砲兵火力についても、現在自衛隊は師団旅団の特科部隊を廃止し方面特科連隊へ移管する改編を進めていますが、方面隊の重厚な兵站能力に依存するならば簡便な19式装輪自走榴弾砲ではなく、99式自走榴弾砲の自動装填装置を備えたスウェーデンのアーチャー自走榴弾砲のような装輪型か、99式自走榴弾砲改良型で300両の定数を満たす覚悟が必要です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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