北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

3.11:東北地方太平洋沖地震/東日本大震災より三年 現在に残る災厄の影響と次の危機

2014-03-11 22:55:43 | 北大路機関特別企画

◆発災翌月の懸念と今日の懸念

 本日、あの東日本大震災より三年の時が経ちました。まず、犠牲となられた皆様の冥福を祈ると共に、残された方々が我々の一員として新しい日々を過ごせるよう、一人の人間としてお祈りいたします。

88img_1292 東日本大震災の犠牲者は、災害関連犠牲者を含むことで遂に20000を超えるものとなり、第二次世界大戦後最大の災厄となりました。マグニチュード9.0の衝撃、特に引き金となった東北地方太平洋沖地震の発生以降に、1ヶ月間に世界で発生したマグニチュード6.0以上の地震の大半が我が国領域内で発生しており、地学的に見ても稀有な事例であった、といえるとともに、貞観三陸地震という過去の巨大地震との類似性が指摘され、社会的には未曽有であっても、地学的には恒常的な地殻変動であったのかもしれません。

Img_9845  巨大津波が太平洋岸を広く襲い、徐々に増す海岸線の押し波が津波として一挙に防波堤を乗り越えた瞬間、恐怖にに立ち向かう怒号も、手を差し伸べる悲鳴もそのまま、留める者なく続々と内陸へ進み、人々の営みも築き上げた社会も歴史的遺構さえも押し潰すという他ない黒い太平洋の波塊が、一端さえも多くの記憶と出来事を抱えた街を農地を森を呑みこみ、山肌を駆け上ってゆく姿は、寸分を切りとって伝える報道画像を通してでも、身震いするように伝えました。夜空を照らす街ひとつの劫火や翌朝の消えた海岸線と営みを唯一残す土台だけとなった広大な市街地、悪意無き自然は残酷でした。

Img_5039  この国はどうなってしまうのだろうか、と、明日という単語がそのまま昨日と今日の延長であった認識は、福島第一原子力発電所の原子炉水蒸気爆発が報じられ、不鮮明な動画が現実を突きつけた瞬間、やはり多くの方が大なり小なり思ったのではないでしょうか。しかし、最大の不幸の中の僥倖にも当初外電が危惧した犠牲者数と比して多くが逃げたため、そして被災者同士の協力と支援が、諸国が推測した犠牲者の一桁小さな犠牲者のもと、その明日を迎えています。他方で、地震が引き起こす震災は、多分に今日に影響を与えました。

Dimg_4338  今日、我が国を取り巻く安全保障上の課題は南西諸島へ向けられた軍事的圧力ですが、併せて我が国は南海トラフ地震と首都直下地震へ向けられています。幸いにして政権交代を経て、場当たり的な外交と内政政策の連続という悪循環から脱する事は出来た今日ですが、今なお震災の影響は我が国の社会と内政に影響を及ぼし、一部は海外にも影響を及ぼしています。そして不幸にも発災当時記した、復旧は一日遅れれば一ヶ月、復興は一カ月遅れれば一年の影響に繋がる、という懸念は的外れでは無かった、と痛感するところ。

Amimg_1713 復旧は復興への土台となる社会インフラの再整備を示すものですが、今回の東日本大震災は津波の浸水危険地域と原子力災害核汚染地域での、移転か嵩上げか、除染か移住か、という視点を突き付け、此処に政治が主導権を握ることなく主体無き住民自治を強いた結果、形式的民主主義の課題である手続きの問題が表面化し、その結論を見出す事への時間をより長く要することとなりました。この決定を元に政治が動くという前政権の方式では、すでに結果が出ていますが、非常な長期間を経なければ復興に着手できません。

Img_8901 更に計画無き政治主導による浜岡原子力発電所の保証無き稼働停止を強いた当時の内閣の手法は、結果的に原子力行政五十年の土台に国民の疑心暗鬼という亀裂を生じさせ、予想通り他の全原子力発電所の停止へと伝播します。この停止自体は、電気料金の値上がりと操業制限の要請の相乗により、我が国では受け入れられてはいるのですが、巨大な製造業を基幹とした経済を稼働させる代替資源に化石燃料を選ばざるを得ず、結果的に日本資本の生き残るためのエネルギー確保は世界のエネルギー価格を高騰させました。

Aimg_2372_1 こうした大量の燃料輸入は、我が国の貿易収支を継続的に著しく悪化させると共に、原発代替エネルギー確保に端を発する大量の資金は行き場を失い世界の投機市場を駆け巡り、途上国の飢餓から先進国の生活苦につながる、様々な物資の高騰に影響を及ぼしています。これは、脱原発という大義名分を掲げられる以上批判は国内国外からも難しく、直接的な因果関係は証明が難しいため、単なる端緒を開いたに過ぎないとの指摘もあるやもしれませんが、端緒とはいえ影響の一端を担うことは確かです。

Iimg_2072 その一方、極端な貿易収支の悪化は詳細を調べれば多くは燃料の輸入に影響を受けたものなのですが、数値だけを見たならば我が国の国際競争力低下を印象付けるとも見てとれ、結果的に我が国周辺国の政治的軍事的均衡に対する挑戦という情勢を醸成する要素ともなっています。もちろん、主因は他に見出す事も出来ますが、東日本大震災以降、状況によっては近く戦後初の武力紛争に我が国が巻き込まれるのではないかと危惧するほどに南西諸島方面における軍事的緊張が高まっている事も確かです。

Eimg_3501  この懸念は単に逆因果関係であり、主体は鳩山内閣時代からの日米関係の悪化を起因としてその空隙に軍事的緊張が生じただけ、とする視点も成り立ちましょうし、そもそも1972年の沖縄返還の時点で南西諸島防衛警備を重視してこなかった当時の自民党政治に要因を見出す事も出来るかもしれませんが、やはり東日本大震災という地学的出来事を転機として情勢が変化していることは、その要素を排除して考える事こそが、逆に不自然、というべきところではないでしょうか。

Avimg_9983 結果的に大きな影響を残した災厄ではありましたが、この災厄が残した社会的影響が、安全保障上の影響へと展開しつつある可能性を忘れてはなりません。次の危機とは、国家と社会への災厄は必ずしも災害だけに留まるのではない、という点から、備えというものを考えなければなりません。防災という面からは、東日本大震災の反省から大きく進むこととなりました、それでは、もう一方の危機に際しては、と。少なくとも、多大な犠牲があってこその過剰な次への備えを行うのではなく、備えを以て混乱を防ぐよう努力するべきでしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (12)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新護衛艦すずつき・ふゆづき、3月12日・13日に長崎・玉野で自衛艦旗授与式挙行!

2014-03-10 22:51:53 | 防衛・安全保障

◆2隻が就役、あきづき型護衛艦4隻体制へ

 防衛省によれば来たる3月12日と13日、海上自衛隊に2隻の護衛艦が就役します。

Aimg_0673  護衛艦すずつき、は護衛艦あきづき型の一隻で、初代艦長は恒益俊春2佐、長崎市の三菱重工長崎造船所にて三菱重工社長宮永俊一氏と佐世保地方総監吉田正紀海将が執行者となり、12日1000時から引き渡し式と自衛艦旗授与式が実施、1225時から1300時に出港見送り式が予定されています。

Aimg_2940  護衛艦ふゆづき、も護衛艦あきづき型の一隻で、初代艦長は北御門裕2佐、岡山県の三井造船玉野事業所にて、三井造船社長田中孝雄氏と呉地方総監三木伸介海将が執行官としてあたり、1200時より引渡式、1205時より自衛艦旗授与式、1400時から1410時まで出港見送り式が行われます。

Aimg_1112  あきづき型護衛艦は、多目標同時対処能力を有するFCS-3射撃指揮装置を搭載し、僚艦防空能力を有する5000t型護衛艦として建造されたもので、射程60kmのESSMを運用し、弾道ミサイル防衛に当たるイージス艦や船団護衛任務を展開する最新鋭の護衛艦として設計されました。

88img_3524 満載排水量は6800tと汎用護衛艦ながら、かつてのヘリコプター搭載護衛艦はるな型と同等の大型艦となっています。弾道ミサイル防衛に当たるイージス艦支援が念頭に整備されましたが、あきづき 型の改良型である5000t型25DDを新型艦として既に2隻発注しており、近代化は継続的に進められてゆくことでしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

榛名防衛備忘録:四輪駆動機動装甲車と即応予備自衛官⑥ 如何に練度を向上させるか

2014-03-09 22:28:18 | 防衛・安全保障

◆競技会と総合訓練、昇進と特務幹部候補 

 学生を対象とした特務即応予備自衛官ですが、年間訓練期間を学生の長期休暇を利用した場合で50日と非常に大きな日程を組むことが出来ます。

Img_0208  従ってこれまでは予備部隊では想定外であった練度の向上が望めるかもしれません。そこで、具体的にどうすれば練度向上を引き出せるか。遣り甲斐と達成感、重要な部分は此処にあると考えます。そこで、競技会と訓練検閲を重視した運用を行う事は出来ないか、と考えるところです。

Gimg_1048  想定している特務即応予備自衛官は全国の普通科連隊を本部管理中隊と普通科大隊に予備大隊と重迫撃砲中隊を基幹とする編成とし、予備大隊は有事の際に地域警備に予備自衛官を招集し残し、本部管理中隊と普通科大隊に重迫撃砲中隊はそのまま機動運用する、という想定です。

Fimg_5433 そこで、予備自衛官大隊は即応予備自衛官基幹の一個中隊と予備自衛官主体の一個中隊に自衛官候補生主体の共通教育中隊を一個置き三個中隊を以て運用するというものです。従って、即応予備自衛官部隊には有事の際に一定の練度が求められるわけですが50日間という期間をどのように駆使するかにより、この一個中隊が有事の際の能力を左右することとなるでしょう。

Dimg_1303  競技会、特務即応予備自衛官は大学生を基幹としていますので、ある程度であれば長期休暇の時期が重なります。その期間を利用し訓練を行う、という想定なのですが、全国の大学の休暇期間が重なるのであれば、即応予備自衛官のみを参加とする射撃競技会や、全国最優秀即応予備自衛官小隊を、射撃や防御に陣地構築と攻撃前進、等の区分ごとで選定する競技会を行うことが出来るでしょう。

Gimg_2360 訓練期間が限られている反面、現役部隊のような小隊待機時間を最大限縮小し、体力練成と戦闘訓練を重視する訓練計画を作成することにより、同じ50日間であっても、現役部隊と同等は無理としても準じる程度の能力は整備することが出来るかもしれません。

Fimg_6469_1 特務即応予備自衛官は軽火器区隊を基本とし、迫撃砲などの重装備は保有しない前提ですが、携帯対戦車火器と重機関銃を装備し、ある程度練度によっては能力が大きくできます。競技会に加えて総合戦闘訓練を行い、競技会の内容を機能別訓練とし、総合訓練に繋げる方策を模索すれば、部隊の訓練水準を上げることが出来ます。

Gimg_9840  特務即応予備自衛官着任の時点で即応予備二等陸士に任官するわけですが、二回生に進むと同時期に必要な検定に合格したという前提で即応予備一等陸士に昇進し、最後の一年となる三回生で即応予備陸士長へ昇進、せいどとしてはこのように運用されると考えることが出来ます。

Img_4128h  それと共に、個人技術に加え即応予備陸士長に昇進する時点では小銃班の機関銃組か対戦車火器組を指揮する立場となるのですし、同じような訓練内容であっても小隊のなかで対応する責務は変化し、もちろん求められる能力も変化してくる。

Img_4330  ただ、此処で重要な鍵となるのは、大学秋季入学制度を採用した大学は、就職活動の本格化をどの時期に持ってくるのか、という部分に左右されます。春期就職を想定する場合、どうしても春季入学よりも半年入学時期が遅い関係上、就職時期が一年遅れるわけなので、この部分へどう影響する制度となるのでしょうか。

Img_1923  前回の提案で博士前期課程に進む要員を陸曹教育課程に充て、昇進させるという選択肢を提示していますが、俺が実現すれば、現在の大学教育では一割程度が大学院に進むということから、一個班より一名が昇進することを意味します。修士課程に進む学生の語学力を、有事の際に第一線で活かす、という方式も考えられるかもしれませんが。

Iimg_0166  博士前期課程は二年間ですので特務即応予備自衛官の任期は三年間、四回生の時に大学院進学を準備しつつ陸曹教育課程を短縮教育で受ける事となります、ただ、陸曹から特務予備自衛官に任官する制度を設けなければ、陸曹が余るという状況は回避できるかもしれません。

Gimg_45750  一方、無駄に任期だけを空費し、実力と意欲の無い要員が出てしまった場合、その対処法を考える必要が出てくるかもしれませんが。如何に利点と意義を強調しても、学費のための自衛隊稼業、という視点からは離れられません。制度設計により練度を高め、建前と本音の使い分けができるようになってほしいところ。

Nimg_8233  この場合、博士後期課程は三年間ですので、特務即応予備自衛官を博士号授与まで最短で二任期務めることになります。任官から実に三任期、博士号授与と共に常勤講師枠を得られるという進路は現実的ではありませんので、こうした人材を活用する方策を考えなければならないところ。

Gdimg_6300  そこで幹部候補生学校にて短期教育を受け特務即応予備自衛官部隊限定の三尉に任官すれば、小隊長から陸士まで即応予備自衛官で揃えられると共に、勤続を続ければそれだけ評価され、訓練も充実、競技会にて発揮できる、遣り甲斐が能力を高めることに繋がるのではないでしょうか。

Iimg_1273  更に現状の制度では即応予備自衛官は最高階級が即応予備2等陸尉まで、となっていますが、最長で学部生一期、博士前期課程・後期課程二期、ポスドク一期もしくは二期、合計12年間から15年間奉職することになりますので、その際、任期満了間近の際には即応予備1等陸尉へ昇進させる、という制度はあっていいのかもしれません。

Iimg_2584  さて、順調に脱線し予定は未定のこの榛名防衛備忘録ですが、次回は意外と大きな問題、先に提示した留学制度と秋季入学制度に特務即応予備自衛官制度の三角関係というべき課題について、意外に重要な問題であることから考えてみたいと思います。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

榛名防衛備忘録:四輪駆動機動装甲車と即応予備自衛官⑤ 指揮官と男女参画の課題

2014-03-08 22:05:36 | 防衛・安全保障

◆予備役は必要だが課題は山積するばかり

 前回に続いて、今回のこの大学生を対象とした特務即応予備自衛官制度案の課題について、見てゆきましょう。

Uimg_4714  課題は他に、大学生を秋季入学以前に訓練したとして一等即応予備自衛官の他に二等即応予備自衛官という制度を構築しなければなりませんが、その小隊を誰が指揮するか、指揮官の問題が出てくるわけです。他の陸曹即応予備自衛官を陸曹教育隊出身の人員を確保しなければなりません。

Simg_4171  四月五月六月七月、十月十一月に他の即応予備自衛官を訓練すればいい、と前述しましたが四月五月六月七月、十月十一月には陸曹と幹部だけが訓練し、休暇の期間に応じ一月二月三月八月九月十二月に二士一士士長が訓練する、という方式では部隊訓練になりません。

Img_4450  いっそ、特務即応予備自衛官経験者で研究者志望の大学院進学者を中心に休学期間を設定し陸曹教育隊にて教育を行い大学院生の特務即応予備自衛官を陸曹とする制度、その後のポスドクや非常勤講師を中心に博士号を授与されたのちに幹部候補生学校に進ませるという方策はどうか、と。

Mimg_1508  戦前の帝国陸軍じゃああるまいし、学位を予備将校に連動させるなど何と時代錯誤な考え方なのか、という指摘はあるかもしれませんが、特務幹部というかたちで、常備自衛官と連動させない方策として、考えてみる価値はあるのではないでしょうか、その場合、最大任期をどのくらいとするべきか、という視点はでてきましょうが。

Timg_3888  その場合、雇用企業給付金は本人に給付、非常勤講師を中心に訓練期間を年間三十日間の即応予備三尉に任官させれば、ある程度、学部生と非常勤講師で多少は大学の休暇と訓練召集応召可能時期は重なるのかもしれませんが。自分でも何を考えているのかわからなくなってくる。

Simg_6622  課題は最後に、戦闘職種には女性自衛官が入ることが出来ないため。女性特務即応予備自衛官制度をどう展開するか、ということ。男女平等は行きすぎないようにとの指摘もあるでしょうが、やはり21世紀、女性自衛官への門扉を閉ざすことは制度として難しく、しかし、教育隊の区隊は男女を統合する事は出来ません。

Pimg_9539  すると女性自衛官教育隊と即応予備自衛官として輸送隊等の部隊を置く必要があり、制度を複雑化させます。特務即応予備自衛官制度の定員は、管区普通科連隊第二大隊の即応予備自衛官中隊に配属させる前提として、試算を進めてゆきましょう。

Simg_2842_1  更に女性自衛官を仮に防衛出動に際し絶対必要となる輸送力不足の解消などへ輸送隊等を特務即応予備自衛官で編成するべく方面隊隷下の方面混成団に所属させるとして所要中隊数は多く見積もって50個中隊程度、定員は基幹要員を現役自衛官で充足するとして概ね最大で9000名、というところ。

Mimg_2655  ただし、脱落者を想定し特務即応予備自衛官応募の自衛隊候補生定員枠は12000名、毎年の応募枠を4000名、とするべきでしょうか。厚遇のつもりではありますが、広報を相当徹底しなければ必要な人員は集まらないかもしれません。

Nimg_0949  広報の徹底、現在の広報では大学進学率が一定以上の水準に或る高校では説明会を開いていないという状況があり、特にこの制度が目指すものは四年制大学の秋季入学を目指している大学生ですので、説明会の批准と実施校を現状とはもう少し踏み込んだものに考えてゆく必要はあるでしょう。

Mimg_2201  ただ、課題には秋季入学大学と春季入学大学を閉眼し、秋季入学大学ではなく春季入学大学の方に進学してしまった場合、この制度の根幹である大学入学前の着隊に、前期教育も後期教育も受けることが出来なくなるという制度上の非常に大きな難点があります。

Mimg_2519  予備自衛官補という公募制の制度はありますが、残念ながらその手当は学費を賄うほどのものではありません。我が国の秋季入学制度は、まだまだ一部の大学、国際的な教育水準に合致するべく留学生の批准を高めている改革の一端として行われている程度で、現状多くはありません。

Img_7542  折角特務即応予備自衛官候補生課程に合格したのに、これではもったいない。学費の心配をするのならば、元々春季入学の大学を選ばなければ、と思われるかもしれませんが、やはり滑り止めは必要となります、まあ、三月のこの時期に行う話題ではありませんが、ね。

Img_4424  人件費もかなり大きなものがありますので、これも課題の一つ。年額121万2000円、ボーナスはつきませんので二等陸士よりは俸給は少なく、衣食住の保障もありませんので、待遇は常備自衛官ほどではないのですけれども、やはりこの水準で人員を増やすとなると厳しいものがあります。

Kimg_0836  このように、課題だけは色々と考えられるわけです。しかし、予備役を確保する、それも現状の年間訓練期間五日間という限られた練度しか維持できない予備役制度ではなく、ある程度実任務に対応できる要員を確保する、というものならば、検討の価値はあります。次回は、指揮と教育の課題などを考えてみましょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

平成二十五年度三月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2014.03.08・09)

2014-03-07 23:01:54 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 雪の道帰路歩むのもゆきのみち、3.11が今年も、という今日この頃、皆様如何お過ごしでしょうか。

Aimg_7414  今週末ですが、年度末も迫り、自衛隊行事などは予定されていません。海上自衛隊基地一般公開については、佐世保基地倉島桟橋一般公開は護衛艦じんつう、が8日と9日に公開、呉基地日曜日一般公開は護衛艦あぶくま、が一般公開予定、舞鶴基地一般公開は8日と9日に行われますが、桟橋一般公開のみで甲板上の一般公開は行われません。

Eimg_0568  佐世保基地と呉基地は一般公開の受付時間が厳格に定められていますので、時間に余裕を持って足をお運びください、舞鶴基地はこの季節積雪があった場合には安全管理上の観点より公開を注視するとのことですので、最新の気象情報を元に御計画下さい。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

  • 自衛隊関連行事はなし

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

榛名防衛備忘録:四輪駆動機動装甲車と即応予備自衛官④ 訓練期間設定と現役期間

2014-03-06 23:14:19 | 防衛・安全保障

◆大学毎に異なる休暇期と僅か半年間の現役

 教育ローンというべき貸与制奨学金の頸木と自衛隊の予備役不足、自衛隊と学生の大きな問題といえるでしょう。

Eimg_1160 貸与制奨学金に依存しすぎれば卒業後十年単位で大きな負担を追うことになりますし、予備役が少なければ継戦能力に大きな限界を背負う事となってしまう、学生と自衛隊の課題です。これを同時に解決する提案として示したのが秋季入学時代を念頭に入学前に半年間任官し、在学中に予備役を担う制度を提示しました。

Img_8285a  学生ならではの長期休暇を活かした年間50日間の訓練、従来の予備自衛官制度の十倍の訓練期間を想定した特務予備自衛官制度を仮に実現させれば、予備役は訓練不足、という従来の概念を大きく覆す事となるでしょう。若さしかなく、技能は経験が少なくとも、普通科を念頭に置いたこの制度、体力が補う部分は多いことでしょう。

Img_6665  しかし、課題は多いです。まず、即応予備自衛官は現役期間一年間を務めなければ任官できません。ですから、高校を卒業し秋季入学までの半年間では高校卒業と同時に直ぐ任官し、仮に教育訓練を受けたとしても即応予備自衛官任官資格を得られないのです。

Nimg_15060  そもそも即応予備自衛官の階級は即応予備一等陸士からですので、2士では任官できなくなりまして、これも任官期間を示すものと言えるところ。秋季入学制度とはいえ、ガイダンスも事前研修を行う可能性もありますし、入学式の翌日からは基礎科目の怒涛、さて、この問題をどうしたものか。

Limg_8587  それならば、一年間入学を遅らせ、春季入学制度に対応させる制度を構築すべきと思われるかもしれませんが、現役自衛官を一年間勤めつつ大学入試の準備を行うことは現実的ではありませんし、日中は訓練がありますので高校の夏季休暇中などの平日に行われる大学入試説明会や訓練によっては入試そのものへへ赴く事も出来ないでしょう。

Fimg_6478_1  それならば、入学と当時に休学申請を出し、その後に自衛隊に志願し一年間自衛官として勤務する制度も考えられなくはありませんが、余りに多くの休学者が出てしまいますと講義定員を大学側が把握できなくなり、本末転倒となってしまうでしょう。休学者の発生をどの程度見込んで大学は入試を行うか、その仕組みそのものが崩れかねません。

Gimg_9127  例えば秋季入学に合わせ秋季卒業が基本となれば、春季の入社時期に合わせ半年間を再度現役自衛官として任官する、現役期間の分割制度を構築し対応するか、最大限年間50日程度の訓練召集を行い教育期間と訓練期間を確保するか、もしくは入学直後ではなく在学中四年間の半年分を休学期間とし訓練期間とするか。

Aimg_2354  課題には、即応予備自衛官を兼任する大学生の居住地域と部隊が離れている場合の想定です。大学が首都圏や京阪神であっても部隊が北海道や九州ではなかなか訓練出頭を行うことが難しく、最寄地本から部隊までC-1輸送機等で輸送する、という選択肢もあるかもしれませんが、難しい。

Adimg_7419  即ち、大学休暇期に訓練が集中することを考えますと、輸送には限界が生じるかもしれません。特に夏季は師団等協同転地演習が行われているため、輸送力が切迫している時期ですし、この時期に訓練を設定してしまうと、原隊が遠ければ遠いほど非常な負担となってしまうこと間違いなし。

Img_7046  訓練日程をどう確保するのかについて、どの号か失念しましたが、過去の某軍事専門誌において、識者には毎日課外時間を訓練召集に充当できるのではないかという離れ業を提言される方もいました、一限目は0900時から、五限目を履修していれば終了は1900時近く。

Eimg_6041  昼休みの数十分を利用し駅前の地本ビル屋上で戦闘訓練、ということならば、まあ、不可能ではないでしょうが、サバイバルゲームサークルではあるまいし、現実味がありません。兎に角、訓練部隊と大学が相当近く無ければ対応できない制度でして、解決策を考えたいところ。

Fimg_6623  もっとも、座学で実施できる訓練を特務即応予備自衛官に貸すのであれば、大学や地方協力本部の一室を借りて行うことは、不可能ではありません。ただ、特務即応予備自衛官は半年間の訓練を経て、つまり前期教育と後期教育を受けていますので、座学の比重を大きくする、というのも難しいでしょうし、原隊と大学をどう結ぶのか、課題です。

Mimg_0004  課題に加えるものは、大学によって夏季休暇はともかく、冬季休暇と春期休暇の時期が異なる事です。四月五月六月七月、十月十一月は旧国公立大学と私立大学で基本的に休暇が設定されておらず、この期間の訓練召集は基本的に行えません。これは入試の時期が異なるためなのですが、召集に地味ながら大きな影響を与えるもの。

Img_63_81  更に特務即応予備自衛官基幹の部隊は、大学が休暇にならなければ訓練を設定することが出来なくなります。大学が忙しいときは部隊に閑古鳥、となるわけでして、この期間、現在の即応予備自衛官を訓練すればよいだけの話ではあるのですけれども。そうした設定を行えるのか、という問題、これも大きい。

Gimg_3522  更に大学生は休暇期を活用し短期留学する選択肢を即応予備自衛官登録することで実質的に失います。制度上の限界というべきもので、即応予備自衛官の海外留学を行う場合、まさか領事館を通じ訓練出頭し、自衛隊機で本土の駐屯地へ空輸するわけにも行きません。

Dkimg_7325  すると、即応予備自衛官登録を行う際、留学を大学生活の選択肢から省くか、留学前に休学期間を設け、その期間中に年間教育訓練を集中し行う必要が出てくるでしょう。予備自衛官にその年間だけ転換することも考えられますが、その費用ねん出が困ってきます。

Img_6256  予備自衛官手当は年間48000円、訓練召集手当は年間40500円です。予備自衛官雇用企業給付金年間50万円、即応予備自衛官手当年額19万2000円、年間50日程度の訓練として訓練招集手当52万円、合計121万2000円で予備自衛官と50日訓練の即応予備自衛官、学費を考えた場合、この違いは大きい。

Img_5461_1  課題はこのほかにも幾つかあるのですが、現役期間をどう確保するのか、休暇を訓練に充てるとして大学毎に異なる休暇の時期をどう調整するのか、優先順位は大学生が即応予備自衛官を行っているのかその逆なのか、任官してしまえば最早短期留学は不可能であるのか、とりあえず、これだけの問題はある訳です。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

榛名防衛備忘録:四輪駆動機動装甲車と即応予備自衛官③ 特務即応予備自衛官の生活

2014-03-05 22:26:36 | 防衛・安全保障

◆年間訓練日数は初年度50日間を想定

 特務即応予備自衛官と兼務の学生は、どのように日常を送るのかについてのモデルを本日は提示してみます。

Cimg_6561  大学入学後は最初の休暇での訓練召集において大型車両免許を取得し、高機動車や3t半トラックの運転資格を得、不合格であれば予備自衛官に格下げし、合格者のみを特務即応予備自衛官を兼任する大学生として生活を送ります。の、これは選抜ではなく練成という意味合いを重視するべきでしょう。

Cimg_0985  最初の訓練召集に続いて毎年夏季に週休二日前提で四週間20日間の集中訓練を、春期休暇に二週間10日訓練を冬季休暇と分割し二回行うか春期休暇に四週間20日間の集中訓練を、その他週末に二日間か一日の教育訓練を年間で10日間実施します。

Cimg_4398_2  50日、と驚かれるでしょう、1セメスター15週間ですので、年間30週間に試験日、此処に訓練が割り込みほとんど休暇が全部飛んでしまいますが、そもそも即応予備自衛官は一年以上の在職期間がなければ志願できませんので、それを高校卒業後の秋季入学までの半年間の訓練を経て志願するわけですし、即応予備自衛官の30日間よりも多くの経験を積んでもらわねばなりません。

Cimg_3799  二年目からは訓練期間を30日、とする選択肢は検討されるべきです。専攻専修を決定する大学の重要な時期ですので、夏季休暇と春期休暇に二週間10日間の集中練成訓練を行い、分割で二日間程度の週末を利用した訓練期間を設定します。

Cimg_0186  職種については、普通科職種を基本とします。任期は三年間で、三回生に満期除隊となるかたちですが、四回生時における学費と生活費については、特務即応予備自衛官任官は前期教育中と後期教育中の期間に俸給の一部を四回生次における生活費の一部へ充当し、対応することが考えられるでしょう。

Cimg_1497  在学中は特務即応予備自衛官として登録、在学中に大規模災害や防衛出動などの任務があれば応召義務を負う、という想定で応召義務を怠った場合には特務即応予備自衛官では即応予備自衛官と異なり罰則を科す、具体的には卒業後の一任期入隊か俸給一部返還を科すべきです。

Cimg_1596  特務即応予備自衛官について、その在学中の動員について、比較され得る要素を備えたアメリカのROTC制度においては学徒の召集は免除されるのですが、この今回提示した方式は在学中のみ任官しているわけですから、在学中に出動免除されるのであれば出動の機会は訪れませんので、応召義務を負う、としました。

Cimg_4127  一方、在学中に防衛出動待機命令などが発令され、召集される際に大学は休学ということになるのですが、この間の家賃補助や休学を要因とした留年等が生じた際には、その部分の学費と生活費を防衛用は特別会計から負担する、という枠組みが必要となります。

Cimg_4971  併せて、特務即応予備自衛官の召集は、訓練召集日程を新年度前に一年分を通知し授業受講計画に配慮したものとし、大学の受講シラバス発表後に可能であれば訓練日程を調整出来る要しなければなりません。特に休暇日程が大学により異なりますので、場合によっては可能な限り大学毎に班を設定する必要があります。

Cimg_5523  また、特務即応予備自衛官は召集に際し、防衛大臣の命令を以て出動させるとし、防衛召集については自衛隊法に基づく防衛出動もしくは防衛出動待機命令が発令された場合のみ、災害派遣については原子力災害対策特別措置法に基づく原子力緊急事態宣言が発令された場合か、災害対策基本法に基づく災害緊急事態の布告、警察法に基づく緊急事態の布告、以上に際し防衛大臣が命じた場合に限るべきでしょう。

Cimg_4985  召集を厳格化した背景には、例えば自衛隊では慢性的に人員が不足しており、駐屯地業務隊の人員不足や、備品等紛失に伴う演習場捜索、演習場の着弾延焼防止での草刈、大規模演習支援等など一人でも人手が欲しい実情があり、そのたびに召集されては、という視点があります。もちろん、訓練召集期間中にこの支援に当たる、という方式ならば、問題はありません。

Cimg_6363  こうして奉職する予備役は三年で満期除隊、最後の一年間の学費だけは前述の積立金、これが不足する場合において、自弁か貸与制奨学金制度を利用、一般企業への入社を前提とするのであれば就職内定後を前提に秋季卒業後の春季入社までの期間に、希望した場合に限り任期制自衛官として勤務し、貸与制奨学金の返還に充てる事も出来る、というもの。

Cimg_8165  更に、在職中に国家公務員一種試験等に合格した際には退官時に幹部自衛官処遇を行う高等文官試験制度の方式を復活させると共に、大学卒業後に一般幹部候補生課程へ進む場合は部内選抜試験に準じた別制度を設け、一般大学出身者とは一定区分を行う、特別待遇ではなく経験者としての対応です。もっとも、相応の経験を積んでいるのですからこの処遇に反論は余り出ないでしょうが、ね。

Cimg_0398  その上で、本人が希望する場合には特務即応予備自衛官退官後に年間訓練期間30日間の即応予備自衛官もしくは年間訓練期間5日間の予備自衛官へ転換しさらに最大で二任期を務めることが出来る、ただし、就業先の同意を得られない場合には、任期中に除隊することもできる。

Cimg_2232  特務即応予備自衛官を一任期奉職し、退官せず即応予備自衛官もしくは予備自衛官に任官し一年未満に希望した際には特務即応予備自衛官の勤務状況などに問題が無い場合に限り陸曹候補生として常備自衛官に任官することが出来、陸曹候補生履修前教育を履修する権利を得る、とします。陸曹候補生の難易度を考えれば厚遇過ぎないか、といわれるかもしれませんが、特務即応予備自衛官の選抜試験を相応に厳しくすればよいでしょう。

Cimg_4398  こうしたうえで、特務即応予備自衛官としての勤務に問題が無ければ、陸曹候補生課程と3曹昇任試験に初級陸曹特技課程を経て任官できる、とすれば、部隊としては訓練応召の割合を高めることが出来るでしょうし、大学生としては万一就職活動に失敗した際の最後の保険ともなりえます。この方式の問題点などについては次回に。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

榛名防衛備忘録:四輪駆動機動装甲車と即応予備自衛官② 大学生と兼務の予備役制度

2014-03-04 23:22:07 | 防衛・安全保障

◆基盤的防衛力構成する特務即応予備自衛官部隊

 普通科連隊を二個大隊基幹とし、一個大隊を常備自衛官基幹の動的運用に対応したものとし、もう一個大隊は即応予備自衛官と予備自衛官に充てるという前提で、それならば即応予備自衛官をどう確保するか、という視座に立っています。

Cimg_4934  この問題領域への着眼背景には、奨学金と呼ばれる教育ローンと大学卒業後の返済への苦慮という報道をよく見かける昨今、そもそも給付制奨学金以外のものを教育ローン呼ばず奨学金という呼称を用いているところに若干の疑問符を感じつつ、学費と卒業後の返済のことをある程度考えずに大学生活を送るためには何らかの方法は無いのか、という視点が一つ。

Cimg_0302  更に予備自衛官不足という現状に対応する方策について考えた、以上の二つの視点がのが始まりで、特に東日本大震災において日本通運法に基づく国営企業としての出発点を有する国策企業的会社や在外公館警備対策官へも人員を出向させている企業であっても、全員の召集に応じることが出来なかった状況を踏まえ、何らかの対処はできないか、というもの。

Cimg_2445  その打開策として学生を予備役へ、という思い切った施策を提示したもの。大学生であれば訓練応召の柔軟性は一般企業の会社員よりは無理が聞きますし、災害ボランティアへ赴くよりは即応予備自衛官の方が社会貢献できます。訓練の環境から、即応予備自衛官とは区別し、詳しくは後述しますが訓練期間の関係から特務即応予備自衛官と仮称します。

Cimg_3767  そして、大学入学時には特務即応予備自衛官として任官するわけですが、秋季入学後、春季入学大学生よりも半年遅れて始まるであろう就職活動に際しては即応予備自衛官任期が三年ですので就職時には元即応予備自衛官となるのですから、採用企業は予備自衛官を雇用し訓練日程に配慮する必要も無く、予備役不足と学費への不安に対応できます。

Cimg_2739  特務即応予備自衛官任官への流れは、高校三年の時点で大学入試センター試験と同程度の内容を以て試験を行い、任期制自衛官試験とは別枠で募集します。そういうのも、半年間での予備役編入を前提とした区隊と一任期の任官を前提とした区隊の教育は、共通する部分が多くともその後の対応が違うため、前期教育の三ヶ月間は共通していても後期教育の三ヶ月間は別の部隊で実施しなければなりません。

Cimg_38990  加えて、訓練期間から軽火器区隊以外の選択肢が少なく、前期教育と後期教育での小銃を転換する時間的余裕が無いため、前期教育で64式小銃を使用しているならば後期教育は戦闘職種であっても64式小銃で、前期教育で89式小銃を使用するならば後期教育は後方職種であっても89式小銃で行うべきでしょう。

Cimg_4383  更に奨学金以上の厚遇で学費を国庫から負担する以上、努力が求められ、必要な検定に不合格であり、自衛官体力検定で一定以上の成果を出せない隊員は特務即応予備自衛官に任官させず、大学入学を辞退し任期制自衛官に進むか退職の道を、ということに。特務即応予備自衛官に任官し、併せて大学に進学する。

Cimg_4204  大学在学中の三年間は特務即応予備自衛官とし、本土武力攻撃事態が発生し防衛出動命令が発令された際にはアメリカのROTCのような免除期間はそもそも在学中しか予備役とならないわけですから設定されず、大学へ自動的に休学届を出し、所属する原隊へ出頭せねばなりません。

Cimg_4491  原隊は普通科職種の基盤的防衛力として管区連隊の留守部隊を構成し、基本的には普通科連隊の管区内へ侵攻されない限り、戦闘には参加せず警戒任務に当たる。警戒任務には軽機関銃と無反動砲を搭載した高機動車と重機関銃を搭載した1t半トラック(所謂パジェロ)、を運用する。

Cimg_9631_2  利点として留守部隊が予め設定されているため、常備自衛官基幹の第一大隊は全ての人員を以て展開出来、第一線になくとも予備大隊は増援部隊の中継地点としての支援にもあたる。この行動を以て敵勢力に戦力空白を見せず第二浸透を防ぐ抑止力としての能力が期待できるところ。

Cimg_6201  管区内への侵攻兆候が見られる場合は野戦部隊として陣地構築を行い、対戦車戦闘と対空挺対処を主眼とした戦闘任務を展開する。大規模災害時には管区内の災害であれば防衛大臣命令を以て動員令を発令、現役部隊と共に災害派遣に参加することは考えられるでしょう。

Cimg_7079  もちろん駐屯地を空にして全員出動する、というものでは当然なく、後詰め部隊となる予備自衛官部隊の召集を待ったうえで予備自衛官部隊が警備隊を立ち上げると共に即応予備自衛官部隊も第一線部隊への編入や被災地支援の後方支援部隊への編入が行われる、と想定します。その間、駐屯地業務隊支援を行い、増援部隊の支援に当たることも考えられるというところでしょうか。

Cimg_8089 そうしたうえで防衛出動が長期化した際には即応予備自衛官部隊は自治体の国民保護活動の支援や重要施設警備へ派遣され得る、ただし輸送部隊として常備自衛官部隊や戦闘支援物資を駐屯地から後方へ輸送することがある。と、まあ、任務はこうしたものが考えられます。

Cimg_9631 訓練期間をどう確保するのかというところや現役期間の設定と大学縫う額や学生生活の両立、特務即応予備自衛官退職後の在り方、そもそもこの制度はどの程度の人員確保を検討するのかなど、課題は色々とあるのですが、それら課題については次回以降に改めて検証することとしましょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (11)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ウクライナ騒乱ロシア軍事介入、危機発生へのNATO機構対応に関する軍事的考察

2014-03-03 23:51:07 | 国際・政治

◆破綻したNATOの重装備軽視域外対応戦略

 ウクライナのヴィクトルヤヌコーヴィチ親ロシア政権に対する反対運動は暴動に展開、政権が崩壊し大統領はロシア国内へ脱出、暫定政権の親欧路線を警戒したロシア軍が軍事介入、非常な緊張状態となっています。

Pimg_3079  北大路機関では自衛隊の新防衛大綱に基づく戦車300両体制への転換について、その選択肢に現在示されている機甲師団一個の維持に加え、戦車の北海道取集配備による少数の戦車部隊維持ではなく、戦車と協同する装甲戦闘車を編成に加えた機械化大隊を全国に配置し、装甲機動部隊という意味での機甲部隊を維持する苦肉の策を提示してきましたが、特に重装備を過度に軽視することは有事の際の選択肢を狭めるのではないか、という懸念も示しています。この危惧について、今回のNATOがウクライナ危機に際し執った方策を検討しますと、やはり改めて重装備部隊の意味合いを考えてみるべきでは、として一筆取りました。

Pimg_4732 今回の事案とこれに対応するNATO各国の対応から、学べるものを見てみましょう。我が国として我が国は冷戦時代、日本海と宗谷海峡を隔てソ連軍と対峙、陸上自衛隊は戦車師団を含む4個師団を北海道に駐屯させ、本州より3個師団の増強準備を以て有事に備えていました。これが現在、師団を縮小し戦車や火砲等の重装備を冷戦時代の四分の一にまで縮小する政策を実施中ですが、NATO加盟国は我が国以上の縮小を実施しています。もちろん、同時に共同交戦能力の強化など一連の情報共有能力強化への施策と並行しているため、全体としてはその作戦能力は重装備の削減と比例しないのですが、抑止力の内容は変化してしまったというべきでしょうか。

Pimg_2581 今回、完全に裏目となったのはNATOが冷戦終結後、新冷戦時代とも呼ばれるテロとの戦いの時代においてNATOの主任務を欧州加盟国での防衛戦闘から、欧州域外での域外対応戦略へ転換し、今後冷戦時代型の大規模戦争は生じないという前提の下で、欧州周辺地域での地域紛争が欧州へ危機を及ぼす前に迅速に対処するとの戦略へ転換を進めてきました点で、言い換えれば初動で紛争が拡大する前に何らかの措置を採って抑止を行わなければ、緊急展開部隊の初動失敗を後から抑える重装備部隊が縮小しているため、対処が難しくなている事を意味し、現状がまさにそれに当たるといえるでしょう。

Pimg_2535 NATO圏内での防衛戦略から欧州域外での危機対応戦略への転換、これが意味することは重装備を以て侵攻を迎え撃つ冷戦時代の方式から緊急展開能力を強化し打って出る新冷戦時代の方式へ転換したことを意味しまして、同時に戦車や火砲といった敵主力の阻止撃滅に用いる重装備から空中機動と装甲戦闘車といった機動力と秩序回復を目的とした装備体系への転換を意味するところ。NATO加盟国では冷戦末期に1000両以上の戦車を保有したオランダが戦車を全廃するなど戦車部隊の縮小が進み、ドイツ連邦軍の戦車保有数もかつての2800両より350から300両まで縮小する方針が示され、全ての加盟国が縮小へ転換しています。

Pimg_3900  反面、武装ヘリコプターから高度な戦闘ヘリコプターへの近代化や装甲兵員輸送車の代替に大口径機関砲と高度な火器管制装置を装備した装甲戦闘車への近代化が進められ、特に域外の紛争地へは戦車を政治的に送り込みにくい状況に配慮した装甲車両の充実が行われてきました。冷戦時代にAH-1という専用ヘリコプターを保有していたのはトルコ陸軍等NATOで限られていましたが、現在はAH-64やEC-665、A-129といった戦闘ヘリコプターの装備国が増えていますし、装甲戦闘車も冷戦時代はマルダーのほか、FV-510にAMX-10Pくらいしか無かったものが現在はCV-90にASCOD等、採用国が増えているところがこれを端的に示しています。

Pimg_2574  一方で、今回のウクライナ騒乱に際しては、緊急展開部隊を派遣する準備期間さえも有効に活用できませんでした。ご承知の通り、NATO理事会が対応を協議している最中にロシア軍が介入、現時点でNATOは人道支援を含めた行動を行えば黒海でロシア軍と対峙することとなり第三次世界大戦へ展開する危険さえもあるため、今となっては採り得ない選択肢が多くある訳です。即ち、採りえる選択肢は時機を逸し、ロシア政府の情勢判断と介入への政治的な速度戦にNATOは完敗したといえるかもしれません。

Pimg_4205 BBCが日本時間今朝までに報じた情報をまとめますと、ロシア軍は黒海艦隊基地の置かれたクリミア半島を中心に展開しており、クリミア半島南西部サキ市のカチャ基地にはMi-24攻撃ヘリコプター11機が強襲し占拠、半島中央部のシンフェロポリ市近郊の民間空港にはIl-76輸送機5機が空挺部隊を展開しています。黒海艦隊の展開する南部のセバストポリ基地にはロシア本土からIl-76輸送機13機がやはり空挺部隊を展開させ、市内には2S1自走榴弾砲4両が展開、南部のヤルタ近郊にはティーガー軽装甲車の護衛を受けた自動車化部隊が進出、南東部の黒海沿岸フェオドシヤにはエアクッション揚陸艇が上陸し、沿岸部を占領中です。東部のケルチ等ではMi-28攻撃ヘリコプターの編隊を見たとの情報もあり、展開部隊は既に6000名となるもよう。

Pimg_2683 もちろん、NATOは最初からウクライナ介入という選択肢を行使する事は出来ませんが、政権打倒の暴動が発生した際に親ロシア政策を採るヤヌコヴィッチ政権を人道支援名目で支援するなどの名目で、暴動がソフトランディングさせる選択肢を執って、艦艇による人道支援を進めていたならば、現状は違ったものとなっていたかもしれません。しかし、EUのウクライナ支援策とNATOのウクライナ危機対応策が一致点を探る前に、上記の通り、ロシア軍が大規模介入を開始してしまった、というかたち。

Pimg_4057 冷戦時代にはプラハの春軍事介入等が実施されていますが、我が国としてはこうした迅速なロシア軍の展開について、軍事的な教訓を見出さなければなりません。無論、例えば次の我が国選挙とその結果がロシアからの介入を招く可能性というものは考慮する必要などないのですが、NATOの緊急展開部隊重視と重装備軽視の視点が、結局緊急展開部隊を必要な時に逡巡無い政治決断の下で介入させる、言い換えれば緊急展開能力の速度に見合った政治決断を採れない場合、軽装備の緊急展開部隊では如何ともしがたい状況に陥った際の次の選択肢が無くなってしまう、という厳しい現実を見る必要があるのではないでしょうか。

Pimg_4325 特に我が国では危機の正面となる地域は南西方面であり、この島嶼部防衛任務に際し必要となる機動力を重視する体制へ転換を続けています。同時に必然的結果として機動力重視への各種装備主として航空機ですが、その導入を進めた結果、重装備の保有数が手薄となっています。もちろん、機動力が無ければ緊急時への迅速な展開が出来ないため、有事の際に拡大する状況を阻止し地域紛争が全面戦争に展開する事となってしまうのですが、緊急展開部隊を支える重装備部隊というものがなければ、全体の戦力均衡を破綻させ、引いては抑止力体系そのものを破壊してしまう、という視点は、今回のNATOの対応から見てとるべき重要な部分です。

Pimg_4068 軽装備の緊急展開部隊は初動の火消し部隊です、緊急展開部隊では重装備の脅威に対応する事は出来ません。初動で出動するかどうか検討し、大火災となった地域へ消火器を抱えて駆けつけても無意味なのです。この部分について、特にNATO加盟国であるポーランドは、ウクライナ情勢が隣国であることから非常な懸念を以て推移を見守っています。これは、ウクライナ南部へ現在のところロシア軍が展開している状況ではあるのですが、北部の首都キエフへロシア軍が介入するというような状況に展開すれば、ポーランド国境付近へ紛争が拡大する可能性がありますし、ポーランド軍はドイツ製レオパルド2戦車などで近代化を進めてはいるのですが、全体の戦力として、仮にウクライナ情勢が内戦に展開した場合の備えは充分とは言い難い。

Pimg_2542  NATOは機甲部隊の縮小に対し、一応戦闘機ではEF-2000タイフーン戦闘機の開発を筆頭に、航空戦力の近代化を進めており、冷戦時代から航空阻止任務を重視したNATOは、必要であれば機甲部隊だけではなく航空阻止任務を戦闘機に実施させ、必要な打撃力を構成することは、勿論可能です。しかし、ここでも今回この選択肢を執れるか、と言いますと、航空戦力では戦車のような抑止ではなく、飛行させ打撃を加えなければ機能しません。ところが、この選択肢を執れば確実に航空戦闘となり、全面戦争となることから、やはり選択肢として採る事は出来ない。現時点のNATOは手詰まりそのもの。

Pimg_4404 NATOの戦略はウクライナ情勢が暴動になる以前にEU等を含めた政治的介入により、親ロシア政権を維持する結果となってでも長期的視野に立ち、暴動による親欧暫定政権の樹立を回避する方策を採り、暫定政権が樹立した際にはロシアに対する政治的牽制ではなく、国際平和維持活動や選挙監視団派遣など共同展開の方策を模索するべきでした。ロシア軍がウクライナ国境周辺での軍事演習準備を開始した際にはNATOは緊急展開部隊を準備し、以上の通り共同歩調を模索することで、ロシア軍単独の展開を抑制する方策を目指すべきでしたが、現時点となっては不可能な選択肢です。緊急展開部隊重視となっているため後詰めの重装備部隊が無く、そもそもNATOの現状が重装備の圧力に空軍力などの打撃力を以て応える事しかできず、重装備には重装備に威圧で対応する方式が採れなくなっている。

Pimg_4423 我が国としても、特に南西諸島有事を想定した場合、如何に緊急展開部隊を整備したとしても、緊急展開部隊の進出速度に見合った政治意思決定能力を制度面として整備しなければ対応できません。着上陸の兆候を敵両用戦部隊が出港する以前、港湾に展開し空挺強襲部隊が空軍基地に集合する時点で自衛隊は緊急展開部隊が対向規模での演習を実施し、場合によってはそのまま防衛戦闘に展開するような態勢を政治的に、国会の場で迅速かつ的確な判断が出来なければ無意味になってしまう、ということ。

Pimg_2978 ただ、これが現実的に展開できるのかと問われれば、非常に懐疑的なものとなります。我が国は専守防衛を国是としていますので、防衛戦闘を主体的に展開、言い換えれば攻撃兆候を感知した時点で予防的に攻撃を行うことが憲法上不可能であるのですから。また、制度面以外でも実際にイラク戦争に際しアメリカが展開したような専制的自衛権の行使は支持を集めにくく道義的にも行うべきではありません。すると、緊急展開部隊を重視し重装備を軽視する方策は、かなりのリスクを抱える事となるようにも。

Pimg_3028 重装備だけあればそれで何とかなる、というものではありませんが、元来我が国は冷戦時代より輸送ヘリコプター部隊を重視し対戦車ヘリコプターも専用機を整備するなど重視したものとなっています。すると、冷戦時代末期の自衛隊装備体系であっても、実のところ機甲重視というものではなく、空中機動重視の体制を採っていたのではないか、という視点にも至るところですので、重装備について、二割三割削減し航空重視を強化する選択肢はあったのかもしれませんが、現状では行き過ぎているようにも感じます。重装備を一定数保有していれば政治が重装備の鈍重な機動力程度の判断速度しか発揮でき無い場合でも防御力で持ちこたえることが出来ますが、緊急展開重視の部隊にはそれに見合った政治判断の迅速化が、それこそ不可欠、ということ。

Pimg_3047 もちろん、ここで島嶼部防衛の特殊性を無視してはいけません。そのため、水陸両用と空中機動能力は必要となります、此処で重要なのは極端がよくない、という事です。また、今回のNATOの対応は、緊急展開部隊を域外に展開させるという戦略が、政治的に展開しにくくも欧州周辺部に位置する地域がある、という事を如実に示しました。我が国の場合、海洋が隔てていますが、我が国周辺事態に際し、現状では警戒を強化することまでしかできず、緊急展開部隊を如何に強化してもその能力を以て我が国に波及する以前に対応するという選択肢はとりにくい。

Pimg_4476 こうして考えますと、島嶼部防衛へ緊急展開部隊を重視し重装備部隊を大きく省いたとしても必要な防衛力を発揮できるという考えは、余りに近視眼的といえるのではないでしょうか。この点で、打撃力に航空打撃力と洋上打撃力を整備したとしても、打撃力は同じく抑止力を代替する事は出来ません。単純に火力指数だけで防衛力を考えますと、その特性上抑止力で紛争を防ぐのではなく実戦で撃破するという状況と同義になってしまい、これでは国家を戦争から守る事は出来ません。ウクライナ危機は現在進行中で対応を考えなければなりませんが、一方で今回のNATOの状況はこのように色々と考えさせられるものでした。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (96)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

榛名防衛備忘録:四輪駆動機動装甲車と即応予備自衛官① 大学秋季入学制度を活用する案

2014-03-02 21:42:22 | 防衛・安全保障

◆大学秋季入学制度に合わせた新制度案

 いよいよ脱線が本格化してきている今日この頃、本日の話題は普通科連隊の現役一個大隊を動的運用前提の防衛力に、予備役一個大隊を基盤的防衛力とする二個大隊編制案の延長で一つ。

Img_5153 現役大隊と予備大隊の隊員で普通科連隊を編成する案を提示しましたが、これは即応予備自衛官を確保出来なけれあ始まりません。そこで、今回提案するものは、国際基準に合わせた大学の秋季入学制度が今後本格化する場合、現在の即応予備自衛官制度を改良した大学生を前提とした特務即応予備自衛官制度を創設し、予備役不足の現状に一石を投じることが出来ないか、というもの。

Img_4392 現状では予備自衛官補制度がありますが、第一線での運用はもちろん、将来的に小銃の更新や車両の近代化が行われる際、現状の予備自衛官制度では年間五日間しか訓練召集の制度が無いため対応できません。年間五日間の訓練では第一線で対応できないからこそ、予備自衛官有事の際、弾薬輸送や駐屯地警備等に充当されている、という点も無視できません。

Img_2430  そこで考えてみたいのは、一定以上の訓練期間と主に大きな能力が期待されつつ、制度上訓練期間を非常勤公務員と一般社会人との両立が難しいと指摘されている即応予備自衛官を、拡充する事は出来ないか、という部分に、新しい秋季入学制度と併せて考えてみよう、というところ。

Img_6381a  秋季入学制度の定着を目指す動きに合わせ、防衛省は高等学校卒業の三月から大学入学の九月までの期間に前期教育と後期教育を済ませ、大学在学中の三年間を即応予備自衛官として登録、大学院進学と就職活動が本格化する四回生期には退官か曹候補士への選択を行える制度を提示し、少ないとされる予備役を充足させる一方式とする方策は、無理でしょうか。

Fimg_5433  この視点背景には即応予備自衛官の不足と制度上の問題と共に、奨学金返済への苦慮という報道や学費負担の大きさをどうにか解消することはできないものか、という視点があります。学生には秋季入学で時間があるが学費と奨学金返済の不安がある、自衛隊には即応予備自衛官制度に合致する人員がたりない。

Cimg_7126  そこでまず、春期の高校卒業から秋季の大学入学まで、自衛隊へ入る、という仮定です。二等陸士には月額15万7500円の俸給が出されますので、半年間の勤務と最初の賞与金で入学金と入学時の準備に必要な積立を行うこともできるわけですし、選択肢の一つとはなるでしょう。

Img_1509  即応予備自衛官手当は毎月16000円、雇用企業給付金が42700円、訓練召集手当が10400円から、ですので、この制度を応用する場合は雇用企業給付金を大学に納入します。従って、雇用企業給付金を大学に充て授業料一部に充当させることが出来れば旧国立大学と公立大学程度の学費であれば八割前後相当に当たります。

Fimg_6179  ここに即応予備自衛官手当を含めれば医学部などの一部例外や私学以外ならば、なんとか学費に相当し、いわゆる奨学金と呼ばれる教育ローンへの依存度を低め、将来設計とすることができます。一部の人からは、教え子や子供たちを戦場に送るな、と反発するかもしれませんが、学費や奨学金返済の負担を反発する人が代替してくれるわけではありません。

Eimg_1160  年間訓練期間は即応予備自衛官で30日、一般企業ではこの期間を派遣することが非常に難しく、訓練出頭が出来ない場合に手当や任務報奨金を停止されるため、自衛隊協力企業であっても応召を完全に行うことは決して楽ではありません。即ち、我が国の雇用環境と労働環境では非常に成り立ちにくい制度ではあるのです。

Bimg_2283  しかし、この点について大学生ならば、もっとも当方は優秀では無かったことで学部生の頃週末と夏季休暇が研究と自主ゼミで潰れていたことを思い出すのですが、一般論として自衛隊側が訓練日程を休暇期間に集中する配慮を行えば、対応することは充分現実的となります。

Fsimg_7751  訓練期間について。春期休暇と夏季休暇、旧国公立大学では春期休暇と冬季休暇に分かれ、入学試験時期の影響が顕著ではありますが、文科省は二期十五講義を念頭に講義体系を組むよう求めているため、40日間程度、最大限年間50日程度の訓練召集を行う事も不可能ではありません。

Aimg_159_2  もっとも、部隊側が休暇外期間に訓練召集を行うという事を大規模災害時への待機期間などの例外を除き最大限避け、学生が夏季集中講義などへの登録を行わなければ訓練に参加できるよう、配慮することが求められます。

Gimg_4436  もちろん、即応予備自衛官は日当が出ますが駐屯地営内居住を求められますので一時間あたりに割れば非常に少なく、併せて即応予備自衛官は現役自衛官以上に教育時間が課外に設定されているので、安易に学費を稼ぐ目的で任官する事を薦めるのは出来ませんが、一つの選択肢として提示する事は出来るかもしれません。

Fimg_6220  それでは、具体的にどういった制度方式を採用するのか、その制度上の問題点は如何なる部分が想定されるのか、即応予備自衛官制度の根幹への疑問も含め、今週は、“四輪駆動機動装甲車と即応予備自衛官①”を考えてみましょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする