北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ノルウェー軍イージス艦がタンカーと衝突大破, NATOトライデント-ジャンクチャー演習帰路

2018-11-10 20:10:41 | 防衛・安全保障
■ヘルゲ-イングスタッド大破
 事故です、イージス艦ヘルゲ-イングスタッドがタンカーと衝突し大破、一時沈没の危機に曝されましたが座礁し辛うじて水線上を保ちました。

 ロシアによる軍事脅威の増大と飛行妨害などの摩擦が高まる中、NATO北大西洋条約機構は冷戦後最大規模の演習トライデント-ジャンクチャーを先月25日から7日まで実施、北方の某国がNATO加盟国であるノルウェーへ侵攻したとの想定の下、NATO加盟29カ国とスウェーデン及びフィンランドが戦闘車両等1万輌と航空機250機及び艦船65隻の参加を以て展開していました。

 ノルウェー海軍のイージス艦であるフリチョフナンセン級ミサイルフリゲイト、ヘルゲ-イングスタッドはこのNATO演習からの帰路、タンカーソラ号と衝突しました。軍艦とは設計上ある程度の生存性を確保していますが、2012年に観艦式帰路、写真の護衛艦くらま、が貨物船カリナスターに衝突した際に艦首を破損した様に、大型船と衝突した場合無傷では済まない。

 ヘルゲ-イングスタッドは満載排水量5120t、あきづき型の写真を参考に出してみましたがこちらが満載排水量7000t、そしてかなり深く衝突されたようで被害は甚大のようです。船体右舷後部の航空機格納庫と機関部付近の上部構造物及び水線下が大きく破損、沈没の危機がある事から艦長は総員退去を命じ、沈没回避へ近くの浅瀬に座礁しました。独力で座礁したのか、曳船の支援を受けたのかは、現時点で報じられていません。

 事故は現地時間8日0400時頃グリニッジ標準時刻0300時頃、ノルウェーのベルゲンに近い沿岸部の北極海で発生、この衝突により乗員7名が負傷したとのこと。タンカーソラ号はマルタ船籍タンカーで北海油田産原油を積載しスチュア石油貯蔵施設へ向かう途中の事故です。11月の北極海は海象も厳しく、フィヨルドの地形沿岸部での衝突事故発生でした。

 ソラ号は衝突によりわずかな損傷を受けたとの事ですが、懸念された原油流出はありません。衝突事故後、海洋法執行機関による聴取と事故調査の為にタンカーはスチュア石油貯蔵施設へ入港したとの事です。一方で、フリチョフナンセン級ミサイルフリゲイトはイージス艦としては小型であり、その被害は沈没の危険が高いという非常に甚大なものでした。

 ヘルゲ-イングスタッドは辛うじて沈没を避けられたという状況で、これは艦長の的確な判断を瞬時に行った事が背景にあります。大型でないヘルゲ-イングスタッドは機関部近くに衝突した為に浸水が進めば機関停止による航行能力喪失は避けられません、破口は大きく防水区画だけでは防げず、浮ドックでもあれば造船所へ直行できて良かったのでしょうが間に合いません。そのまま大量浸水が続けば沈没か転覆は避けられないでしょう。

 沈没を回避すべく、ヘルゲ-イングスタッドは浅瀬にそのまま進むことを選択したようで、現在は機関停止のまま傾き沿岸部に座礁しています。座礁したならばそのまま沈没する事はありません、しかし、太平洋戦争中の軽巡大淀や空母天城のように大量浸水が続けば沈没は免れても転覆する可能性があります。ヘルゲ-イングスタッドも同様の状況にあった。

 曳船が駆けつけ、ヘルゲ-イングスタッド転覆の危機を阻止したようで、もしくは動力喪失後に曳船が沿岸部へ意図的に座礁させた可能性もあります。BBC報道映像等を見る限り、ヘルゲ-イングスタッド周辺には数隻の曳船が横付けしています。総員退去と共に徐々に浸水が進んだ事で艦尾は水没してしまいましたが、転覆という結果は避けられたかたちです。

 フリチョフナンセン級ミサイルフリゲイトはノルウェー海軍の主力艦で5隻がノルウェー沿岸艦隊に所属しています。基準排水量4680t,満載排水量5120tという、写真の海上自衛隊護衛艦あさぎり型よりも若干大型で、あきづき型護衛艦よりも小型という規模の艦です。ノルウェー海軍はこの他、ミサイル艇や襲撃艇等の小型艦を中心とした海軍編成を執っています。

 イージス艦、フリチョフナンセン級ミサイルフリゲイトはアメリカ製イージスシステムを搭載しており、アメリカ海軍、海上自衛隊、スペイン海軍、ノルウェー海軍、韓国海軍、とイージス艦を保有する世界五カ国の一員です。排水量で海上自衛隊こんごう型の半分程度である事から、アンテナ素子を四割程度として小型化したSPY-1Fレーダーを搭載する。

 SPY-1Fは小型軽量化すると共に出力を抑えており、フリチョフナンセン級ミサイルフリゲイトには艦対空ミサイル用垂直発射装置VLSも8セル分に抑えられています。射程50kmと1セルに4発を収容するESSM発展型艦対空ミサイルを合計32発搭載、艦隊防空ではなく、僚艦防空任務に当るのがフリチョフナンセン級ミサイルフリゲイト5隻の任務です。修理には大変な労力が予想されますが、死者が無かった事は不幸中の幸いでした。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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平成三〇年度十一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2018.11.10-11.11)

2018-11-09 20:07:36 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 ノルウェー海軍のイージス艦がタンカーに衝突され大破、驚きの報道がありましたが皆様いかがお過ごしでしょうか、今週末の行事紹介です。

 豊川駐屯地創設68周年記念行事、愛知県豊川市に所在する第10特科連隊、第49普通科連隊、第6施設群、第10高射特科大隊の駐屯する陸上自衛隊の駐屯地です。昨年は荒天下で挙行されましたが、さて本年はどうなるのでしょう。FH-70榴弾砲は特科連隊縮小により3個大隊まで縮小されてしまいましたが、訓練展示での特科中隊空包射撃の迫力は健在です。

 豊川駐屯地祭、昨年度は悪天候下で第13戦車中隊と第14戦車中隊の74式戦車が観閲行進に参加、第14戦車中隊の74式戦車は訓練展示にも参加し、年度末改編により廃止となった第14戦車中隊74式戦車の有終の美を飾りました。そして本年の豊川駐屯地祭ですが、16式機動戦闘車の参加が予定されているとの事、豊川駐屯地初参加ということになります。

 桂駐屯地創設64周年記念行事、京都市唯一の自衛隊駐屯地です。中部方面後方支援隊本部が駐屯していまして京阪神地区での不発弾事案が発生した際の不発弾処理隊もここ桂駐屯地に駐屯、武器科部隊の中部方面隊総本山というべき駐屯地です。万一雨天の際は1942年建築の巨大補給倉庫内での式典が実施されまして、晴天時は訓練展示模擬戦の工夫が凄い。

 桂駐屯地祭は、阪急でもJRでも直ぐの立地にあり、京都市内という事で一昔は京都での大災害における自衛隊救助拠点と位置付けられていますが、南海トラフ巨大地震の巨大さ伊賀の危険性が真剣に認識される今日では、巨大津波の危険圏外に位置し安全な日本海側北陸方面からの京阪神都市圏救助の最大兵站拠点という新しい役割も期待される駐屯地です。

 別府駐屯地創設61周年記念行事、第41普通科連隊が駐屯しています。別府、寒い季節には特に恋しい季節ですがやや暖かい十一月ですので露天風呂等も急な温度低下をそれ程懸念しなくとも良い季節の駐屯地祭です。駐屯地は元々別府市中心部に所在していましたが1978年に現在の駐屯地に移駐、高台の別府駐屯地は快晴ならば四国も望見できるとのこと。

 第4師団隷下の第41普通科連隊はレンジャー教育を重視しており、訓練展示でもレンジャーの活躍が期待できると共にちびっこレンジャー体験も開催とのこと。当たり前の展示のようですが、昨今は市民団体により怪我の危険があるとして全国で徐々に見られなくなっており、こうした連中が若年層の脆弱化を一方で嘆くという。九州健児の土台は盤石だ。

 武器学校創設66周年土浦駐屯地祭、陸上自衛隊の装備全般の運用と稼動率及び野戦運用を行う整備、この為の武器科隊員の幹部教育及び専門研究や装備法開発を行う武器学校の記念行事です。整備教材として90式戦車や10式戦車といった、なかなか見る事の出来ない装備も少数ですが一通り装備しています。武器学校によれば、今年の土浦は凄いらしい。

 武器学校は目玉装備品として教材に配備されている16式機動戦闘車及びAAV-7水陸両用車を展示し、この他に武器科機能展示として11式装軌車回収車による74式戦車の回収展示が行われ、1929年に日本が初めて量産に成功した国産戦車、八九式中戦車が広報展示されるとの事、この他に武器学校には本土決戦用に開発の三式中戦車等も保管されています。

 さて撮影の話題を。カメラバック、撮影に遠路はるばる進出する際にはどういったカメラバックで荷物を携行するか、という事でその後の行動が大きく左右されるのですが、もう一つ重要なのは折り畳み椅子、最悪の場合には脚立の代わりになりますし、椅子は待機時間が数時間となる際の必須の装備、場合によっては何度かお年寄りに貸し出して休んでもらったりと重宝だ。

 しかし、最近気づいたのですが、カメラマン用ベストやベルトに装着するカメラ器材用サイドバック、これをそのまま折り畳み椅子に装着する、という携行手段があるのですね、一つに纏めてしまえば管理負担軽減、カメラバックと椅子だけに全てをまとめる事が出来ます、試してみると折り畳み椅子にサイドバック装着は形状安定しますし、取りだし易い。

 そして、担いだ際に背中に当たる疲労感を、バックパックのフレームのような構図で楽に背負って歩く事が出来ます、この方式、旅客機や鉄道を利用して移動する際にも楽ですし、サイドバックごとに着換え用と防滴器具用に分けますと、万一の際に直ぐに防滴器具を取りだせる、椅子付背嚢に対抗してバック付椅子、なんてものではありませんが便利ですよ。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・11月11日:武器学校創設66周年土浦駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/ord_sch/
・11月10日:豊川駐屯地創設68周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/10d/butai/sta/toyokawa/
・11月11日:桂駐屯地創設64周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/3d/katsura/
・11月11日:別府駐屯地創設61周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/4d/beppu/top.html

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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INF全廃条約米離脱問題,トランプ政権中間選挙共和党下院敗退後のポピュリズム外交政策

2018-11-08 20:10:50 | 国際・政治
■非合理的なINF全廃条約脱退
 日米関係は重要である故に、アメリカ政治の安定と熟慮を求めたい一方、現在はポピュリズム的政策が主流となっている。先日の議会中間選挙後、潮流はどう動くか。

 アメリカ議会中間選挙が開票され、連邦議会上院は本日日本時間0800時時点で100議席中民主党46議席と共和党51議席、与党共和党が過半数を確保しました。議会下院は民主党224議席に対し共和党201議席となっており、過半数を割り込んでいます。改選前の下院は民主党193議席に対し共和党235議席、開票作業中ですが議席数を大きく減じています。

 上院での優勢は、しかしアメリカ連邦議会上院は半数を改選する為、非改選組では民主党23議席と共和党42議席と倍近い優勢を有している為、民主党が上院において共和党を上回る事は今回の選挙では厳しい状況でした。一方、下院では民主党票数が当初予想ほど伸びなかったとはいえ過半数を確保、連邦議会は今後捻じれ状態として進められる事となる。

 大統領任期半ばのトランプ大統領は議会下院において与党共和党が過半数を割り込む状態において、今後は公約について議会下院の民主党に対し妥協や譲歩を求める事となり、内政以上に外交と通商政策に軸を置き、残り任期を務めてゆく事となるでしょう。条約批准には連邦議会上院三分の二の賛成が必要となりますが、外交指針は大統領権限でも可能だ。

 中距離核戦力全廃条約脱退、米ソ間で締結されたこの画期的な軍縮枠組からのアメリカ脱退、中間選挙前のアメリカがすでにロシアに対しボルトン国家安全保障大統領補佐官を通じてロシアのプーチン大統領へ通知したこの施策も、大統領権限において進める事の出来る外交政策に含まれます。内政の混乱を避け外交重視、しかしこの施策についてはどうか。

 アメリカの中距離核戦力INF全廃条約離脱、アメリカが離脱を掲げる理由は、第一に現在ロシアがこの条約に違反する新兵器を開発しているとの主張、第二に米ロ間の二カ国条約である為に中国等が批准しておらずアメリカがこの分野で後れを取る事への懸念との主張、この二つが離脱根拠としています。ただ、二ヶ国条約からの一か国離脱は破綻を意味する。

 INF条約脱退を掲げるアメリカなのですが、アメリカとしてINF全廃条約が米ロに保有を禁じた射程500kmから5500kmまでの地対地ミサイルを開発装備する可能性があるのか、という。トマホークなどは射程が2200kmあり、一見INF全廃条約に抵触しそうですが、INF全廃条約の対象は地上発射型に限られ、艦載型が主流であるトマホークは対象外です。

 何をしたいのか。アメリカの装備体系を考えますと、アメリカがこの条約枠組から離脱して如何なる恩恵を受けられるのかが全く分かりません、こう表現する背景には陸上配備の中距離運搬手段が制限されている為であり、アメリカは地対地中距離弾道弾を必要とするような状況にない為です。そして必要性も考えにくく、離脱後に開発するとも考えにくい。

 中国などINF全廃条約に加入していない諸国がアメリカが保有できないINF該当の長距離打撃力を配備し、アメリカの安全保障に大きな制約が加わっている、という論点があり、更にロシアもINF全廃条約に違反する兵器を配備している為、アメリカが離脱する、という論調です。しかし、現段階では離脱を政権が表明したのみ、まだ枠組有効ではあります。

 ロシアがINF全廃条約違反の兵器を開発している、という批判が、アメリカのトランプ政権、特に条約脱退を掲げるボルトン大統領補佐官の主張です。その筆頭はカリブル巡航ミサイルコンテナで、カリブルミサイルはロシア版トマホークといった巡航ミサイル、しかしミサイルモジュールがコンテナ化、トラックに乗せ、艦船などに配備できるというもの。

 カリブル巡航ミサイルはシリア内戦ロシア軍事介入に際し、カスピ小艦隊の艦艇上から垂直発射装置3S14-UKSKより投射され、当初は射程300km程度か長くとも500km程度と考えられた射程がイランを越えシリア反政府勢力拠点へ命中した事で射程1500kmを越える事が判明し、大きな衝撃となりました。輸出型が射程300kmに抑えられていた為尚更だ。

 コンテナモジュール化されたカリブル巡航ミサイルは、ヘリコプターを発着させるだけの水上戦闘艦の飛行甲板や多目的区画へ搭載、いや積載というべきか、コンテナごと艦船に載せる事で海上運用が可能となります。基地から基地への移動はコンテナですので鉄道でもトレーラーでも可能です。しかし、アメリカが寄せる疑義はトレーラー牽引や貨物列車からも発射できる、というもの。

 シリア内戦への投入により、地上発射型カリブルについても射程500km以遠のINF全廃条約違反の疑いが突き付けられた訳ですが、逆の表現ではロシア側はINF全廃条約を尊重するからこそのシリア内戦というロシア本土からの陸続きの紛争地へカスピ小艦隊のコルベット艦上からカリブルを発射したものであり、条約枠組軽視ならば行動は違った筈です。

 ロシアの短距離弾道弾、改良によって中距離弾道弾と出来るとの疑義もアメリカは有しています。アメリカ陸軍は第一線火力から短距離弾道弾を廃止し久しく、現在は空軍の打撃力が地上戦闘に影響を及ぼしたことでこの種を全廃し射程350kmのATACMSロケット弾が野戦火力での最大射程のものです。しかし、ロシアはイスカンダル短距離弾道弾のような短距離弾道弾を火力支援用に運用を続けています。

 イスカンダル短距離弾道弾、射程は500kmとなっていますが、輸出型は700kmまで延伸できる事を兵器見本市にて提案しており、これもアメリカがロシアのINF全廃条約違反懸念の一つとなっています。しかし、イスカンダル短距離弾道弾は射程延伸にMiG-31戦闘機からの空中発射弾道弾転用という離れ業を提示し2000km以上へ射程延伸に成功しました。

 キンザール空中発射弾道ミサイルは射程2000km以上、Tu-22M爆撃機から高高度発射した場合は射程3000kmに達するという新兵器ですが、INF全廃条約の禁じた地上発射型はあくまで射程500kmであり、高高度からの発射により射程を延伸するという手法も、ロシア側がINF全廃条約枠内での長距離打撃力確保を期す条約枠組尊重の表れと言えましょう。

 SS-N-33 /3M22ジルコン極超音速対艦ミサイル、ロシアが2012年に開発した最大速度マッハ8の空対艦ミサイルの地上発射型については、実はINF全廃条約違反となる可能性があります。2015年に地上発射試験に成功していまして、地上発射型は500km以内に射程が抑えられているとされますが、高高度を巡航させた場合の射程は750kmに達するとも。

 欧州は最大の影響を被ります。元々INF全廃条約はレーガン大統領とゴルバチョフ大統領の米ソ間での核軍縮条約であった為、西欧諸国にはこの制限がありませんでした。しかし、INF全廃条約発効前では、元々ソ連の中距離核戦力はアメリカ本土まで届かず、欧州NATOの戦略拠点を照準していた為、この条約は欧州にとり非常に大きな意味があったのです。

 欧州におけるINF全廃条約は、チェコスロバキア領内へソ連軍が前方展開したSS-12弾道ミサイル撤去等実際に重要な軍縮機能を有していましたし、その無力化もダミーの廃棄等の偽装が行われないよう、破壊前に米ソ両国の査察官がミサイル本体を実物であると内部検査を行い破壊しました。しかしアメリカの脱退が、欧州核軍縮を御破算にしかねません。

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【京都幕間旅情】時代祭-平成最後の京都三大祭を往く,京都市役所本庁舎の進む耐震補強

2018-11-07 20:06:14 | 写真
■徳川城使洛列と七卿落
 平安神宮へと至る時代祭行列は徳川城使洛列と七卿落へと進んでゆきます。

 時代祭、河原町御池での撮影と共に京都を象徴する近代的建築物の一つ、京都市役所を波形に収める撮影位置に陣地変換しました。時代祭の時代行列は長大であり、その撮影時間は祇園祭を越える程、それならば、撮影位置を時々少し移ってみるのも、また趣き深い。

 京都市役所庁舎、1927年に竣工しました。現存する政令指定都市の市役所では最も古い建築物という。市役所と市会議場の機能を有する庁舎は本庁舎に北庁舎および西庁舎から構成されていまして、重厚なつくりはRC造の地上4階地下1階建として建築されています。

 武田五一博士、大阪現代都市計画で知られる武田博士がこの京都市役所庁舎を設計しました。京都市役所は現在耐震補強工事中です、工事は予定よりも時間を要するとの事で管制は2023年を待たねばならないとも。そしてこの京都市役所は数多の変遷を経て参りました。

 本庁舎は地上4階地下1階建として建設されましたがこの1927年完成の時点では現在の荘園に当る部分が庁舎として用いられたのみであり、実は本庁舎工事は二期に分けて工事が進められてきます、本庁舎工事落成を迎えるのは四年後の1931年を待たねばなりません。

 西庁舎は本庁舎より若干遅れて建設が進められていまして、1931年にRC造地上3階建として落成されています。ただ、京都市役所界隈を散策されますと分かります通り、現在は4階建てとなっています。これは1966年の市役所庁舎拡張工事と共に増築されたものという。

 大阪現代都市計画に大きな影響を及ぼした武田五一博士、1872年の広島県福山市生まれで帝国大学工科大学造家学科出身、イギリスカムデン美術学校へ官費留学を経て1915年に工学博士となりました。桜之宮公園の造営を経て都市計画と公園を組み合わせた事で有名だ。

 都市計画は美観と機能性の調和を尊ぶと共に大阪市営地下鉄御堂筋線の路線画定や中之島開発にも影響を及ぼしたという事ですが、妥協を許さない設計は美観と共に機能性の部分、特に耐震構造を早い時期から研究し、建築に取り入れていたという。そして今も京都に。

 京都帝国大学本館、要するに京都大学ですが、時計台と云われる今日の京都大学百周年時計台記念館は1925年に当時京都帝国大学教授の武田博士が設計したもの、京都らしさの一つ、京都市役所と色彩は異なりますが重厚な気風な何か通じるものがあるかもしれません。

 関西電力京都支店、京都駅前にモダンアールデコ様式、と言えば言い過ぎでしょうか、気風を漂わせるビルがありますが、こちらも武田博士の設計で1937年に落成式を迎えました。京都市役所の管制から10年を経て完成した建物ですが、戦前の重厚さを今に伝えている。

 古都京都ですが、その古刹名所旧跡の保存にも手腕を発揮し、平等院鳳凰堂や鹿苑寺金閣の保存事業、奈良県の法隆寺国宝保存工事所長も関わっています。それもそのはずで、なんと帝国大学の学位論文は“茶室の沿革”といい、和魂洋才の建築博士といえましょう。

 北庁舎についてはもう少し複雑な歴史を辿っていまして、やはり1931年に落成されたシンメトリー様式の建築物となっていますが、京都市の行政能力は人口増大と共に大きく増大し、武田五一博士の没後、やはり戦後1960年代に大きく拡張工事を迎えることとなります。

 2023年に予定されている京都市役所耐震補強工事、西庁舎と北庁舎については建て替えられる事となっています。平成最後の時代祭ですが、今年らしさ、という情景としてはこの京都市役所の変わりゆく姿を、江戸時代行列とともに記録した後、次へと進んでゆきます。

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新防衛大綱とF-35B&EA-18G【23】F-35B艦上哨戒機の検討とE-767早期警戒管制機

2018-11-06 20:11:13 | 先端軍事テクノロジー
■E-767のシーレーン防衛検討
 F-35Bのセンサーノードとしての可能性、これは過去のE-767に関する運用検討から垣間見る事も出来ます。

 航空自衛隊のE-767早期警戒管制機、浜松基地へ配備されています。12時間にも上る滞空時間と共に高高度から一機で数百km以内、高空目標ならば1000km四方を警戒すると共に2000以上の脅威情報を包括管理し戦闘機部隊や地対空ミサイル部隊の要撃管制と戦域情報統制を行う、航空自衛隊の至宝というべき存在で、導入には巨費を投じつつ毎年更に巨費を投じ能力強化を怠らない。

 F-35B戦闘機についても、実はこのE-767早期警戒管制機のような長期的視野から考える必要があるかもしれません。単に艦隊防空戦闘機を必要とするならば、先んじてKC-767空中給油機とF-15C戦闘機を海上自衛隊も導入し陸上基地から運用する、という選択肢が有る筈です。F-15Cの戦闘行動半径は1900km,F-35Bの830km戦闘機より遥かに大きい。

 トーネード攻撃機、海軍が航空母艦を保有しないのに戦闘機等を装備する、という事例は皆無ではありません。実際、冷戦時代のドイツ海軍は航空打撃力が必要となった際に空軍とは別個にトーネード攻撃機を導入、コルモラン空対艦ミサイルを装備させ、航空打撃力として運用しました。少し角度は異なるが空母導入前の中国海軍も戦闘機を装備している。

 E-767早期警戒管制機は導入当時こそ、それこそ識者が叩く防衛費の無駄遣いの象徴のように揶揄されたものでした。もう一つ防衛費の無駄遣いの象徴として叩かれたものがイージス艦、しかし、E-767早期警戒管制機が無ければ現在の南西諸島はもう少し厳しい状況であったでしょうし、イージス艦が無ければ北朝鮮核実験を前に日本核武装論が再燃したやもしれない。

 イージス艦と共に長期的な防衛政策の観点からは、まさに防衛費の余裕がある、つまり戦闘機を一機でも多数を揃えなければならない現在のような状況下へ陥る前に揃えておくことが出来て僥倖であったというE-767早期警戒管制機ですが、この導入当初、必要性として列挙された任務の一つにシーレーン防衛支援があったのはご記憶の方いますでしょうか。

 潜水艦やミサイル爆撃機、シーレーン防衛の脅威というものは基本的にこうしたものが考えられるのですが、E-767とシーレーン防衛、と言いますと何か違和感を受けられる方が要るようです。しかし、これは決して航空自衛隊が早期警戒管制機を揃えたいが為に提示した有象無象の防衛論点ではなく、当時の防衛庁として必要としていた装備運用体系でした。

 護衛艦と哨戒機が展開するシーレーン防衛、特に哨戒機は当時のP-3C哨戒機、まだあの頃は対潜哨戒機と区分されていた時代ですが、決して飛行時間に上限のある対潜哨戒機が近海用で、補給艦から補給を受ければ一ヶ月二ヶ月単位で航行できる護衛艦が外洋用、という訳ではなく、P-3C哨戒機は6600kmの航続距離を以て共同作戦を担う運用が基本です。

 シーレーン防衛へ早期警戒管制機が必要、とされた背景にはイージス艦のSM-2艦対空ミサイルの運用を最も効率的に展開するには、陸上航空基地から長大な航続距離を有し、海上自衛隊行動圏内は任務可能、船団護衛任務に当る護衛艦部隊へ航空脅威が接近する際には即座に警戒管制を行うと共に低空脅威を含め、いち早く長射程のSM-2により迎撃できる。

 ただ、御承知の通りE-767は航空自衛隊が本土防空の切り札として運用しています。実際、航空自衛隊の任務にシーレーン防衛は含まれていませんし、海上自衛隊との艦隊データリンクの形成よりも航空自衛隊戦闘機とのデータリンク構築とその強化が優先されています。虎の子というべき重要な装備故、海上自衛隊情報優位へ協力する余裕が無いのが実情です。

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戦場報道とシリア内戦取材,大手報道機関に求められる使命の自覚と安全取材費用増大の覚悟

2018-11-05 20:01:11 | 国際・政治
■現状フリージャーナリスト頼り
 今回が本論一応の完結編です。戦場報道の重要性は高くとも安全管理を経験の自己過大評価で置き換えて危険な第一線に飛び込む方法は下の下という時代です。

 戦場報道の重要性は高い、だからこそ戦場ジャーナリストという職業と報道方法を否定する事は絶対にしない訳です。しかし、だからこそ慎重な姿勢が求められる。そしてイラクシリアにおいては事実を知られたくない状況がありジャーナリストは敵視される、この中に在って、経験があるからと単身現地へ飛び込む方法以外の施策、模索されるべきです。

 日本の報道機関で忘れられないのはISILが成立当時に評価していた事例があった点です。評価していた、とは言い過ぎかもしれませんが、国家を目指しているという旨の報道、日曜日の報道バラエティ番組の中ではありましたが。なんでも自らの価値観と教育機関に地方自治機構と徴税システムを有していた点を、これは一つの国である、と評価していたものでした。何しろ実態が不明であった為、プロパガンダ報道を真に受けていた、という実態があるのでしょう。勢力過大評価にも繋がった。

 戦場取材は、何しろ平和憲法の国ですので重要です。しかし、戦場取材は費用が膨大である、だから東京から記者を送りには限界があると共に危険性が大きすぎる、戦場保険に加入していないフリージャーナリストの戦場報道は買わない、こうした施策を示す事は所謂“特落ち”リスクもあるのですが、ジャーナリスト被害を回避する必要な施策と考えます。

 社会部偏重の日本報道体系に問題があるのではないか、とも。ニューヨークタイムズはイラクでのISIL武装勢力攻勢が激しかった当時、バクダッドでの取材コストを一日一万ドル、と見積もりを出した話は幾度も示しましたが、この経費、特派員一人で年間365万ドル、取材費年間四億円というのは、ちょっとした全国紙地方局に匹敵する取材費用でしょう。国際報道を展開するには、外電を鵜呑みにするか、覚悟を決め取材費用を考える必要があるでしょう。

 取材費用を考えますと国際報道は高くつく、例えば分りやすい事例、今年の北朝鮮地下核実験施設爆破取材は北朝鮮がメディア一人当たり3万ドルの移動経費と取材経費を要求しました。警察詰の事件記者は基本的にそこまで費用を要しません、すると、国際部だけが一つの紛争地にニューヨークタイムズ並の年間365万ドルの経費をそれぞれ出す、という事は現状難しいという事も理解できるのですが、それこそ第二次大戦中の破甲地雷一つで戦車に向う挺身攻撃ではないのですから、危険に見合った報道体制を組む必要があるのではないか。

 猛省を促す、といいますか、ISILの徴税システムとは何しろ外国人戦闘員が行う荒っぽいものですので、ATMで現金を引き出す住民からその場で一割を差し引き、ATMへ現金補充が無くなると今度は直接爆薬で金庫を狙う、という、日本赤軍のM作戦をもう少し酷くしたような方式でしたが、実態を知らずにISILは国家、と日本の一部報道機関は伝えた。

 現場を知らなければ、という視点は今回拘束された安田さんの言葉にもありましたが、ISILに限ればその教育機関も酷いもので、自爆攻撃を行うための宗教的価値観植えつけを行う洗脳機関、オウム真理教の独自教育施設を過激化させたようなものであったのですね。当たり前ですが教員資格のない戦闘員が教えられる教育とは不良の舎弟植付、それが限界だ。

 国際報道とは、日本全体の取材費用よりも遥かに高くつくものですが、この取材費用というものを理解していない、私が日本から出ないように日本の記者は海外に出ない傾向があるようにも、社会部と国際部の人員構成をみるとよく分かるでしょう。現場を知らず公式発表を信じるからこそ、その発表媒体の母体への価値観が定まらない際には、こうした洗脳操作を教育、銀行強盗を徴税、と言い換える構図を、検証出来ない状況に相まって鵜呑みに報道せざるを得ない状況が醸成されてゆくのかもしれません。そして、この危険性が示すのは、外国人戦闘員に応募する若者を増やしてしまう、ということ。

 AFP通信が行っている現地記者方式、安全な紛争地取材という方法論を考えた場合、日本の報道でも参考とする点が多いのではないかと考えます。AFP通信の方法は、AFPがシリア領内に元々支局を有していましたので、時事通信や共同通信の現地支局を元に、知人友人と枠を増やしてゆく方式での現地記者、という方法、この他に安全な第三国へ離脱できた難民に取材する事を通じて、という選択肢も。

 シリア難民の方々は欧州やアメリカにも多数居まして、勿論この人たちにカメラを持たせて母国へ帰れ、というわけではなく、母国に残る知人友人から、直接契約ではなく間接契約の形で情報をもらう現地記者、という制度を構築する方法です。勿論、繰り返す通り事実を敵視する地域からの報道は写真などを通じ撮影者本人を特定されない配慮が必要です。

 報道機関の配慮、という視点では、大量に送られてくる写真から報道機関として公平公正を維持できるように撮影がプロパガンダ的なものではないのかの真贋判定、一人の取材者への過度な依存ではなく多くの写真と情報を得られるように情報網を構築する基盤構築、必要となります。勿論費用が嵩みますし時間もかかり、基盤構築には年単位の時間が要る。逆に言うならば、ロクな検証も無しに個人用BLOGやSNSに“どこそこの報道部のものですが写真を使わせてください”との無関係な写真選定を行う事例がありまして、報道ではなく単なる視聴率稼ぎのチャーナリズム、塑像乱造記事の温床になっている印象が。

 スクープ投稿、日本国内で広がるお手軽大衆報道と云いますか、これとは対極のものですね。兎に角現地へ電話を掛けて投稿写真を漁り安価に取材支局の代わりを行う、こんな方法では真贋判定は出来ませんし、現地記者の価値観や作風というものを理解できなければ、喩えで無記名の記名記事を作成するという様な手法でなければ現地報道は成り立ちません。

 最後の手段として現地に入る必要はある可能性について、現地報道を現地記者に依存する場合、真贋判定と云いますか、一度は面通しを行って、取材というよりも記者の面接に近い現地入り、という事でしょうか、必要となるかもしれません。現地記者も本社採用と同じ報酬を支払うならば、この種の面接は絶対に必要となり、これを省けば素人投稿集です、現状は安田氏の行動の無謀云々を討議する現状となっていますが、その前により資金力のある大手報道機関が役割を果たしていない現状の問題が大きい。

 フリージャーナリストに依存する戦争報道、買い叩いた安価な報道で平和の問題や憲法問題を語る現状の我が国報道機関、しかし取材の方法はありますし、記者を現地に赴かせるならば戦場保険人質特約は、こうした状況下でも戦場ジャーナリズムを行う上で身代金交渉を含め、生きて帰ってくる、という目的に特化した保険です。しかし繰り返しますが、フリージャーナリストには資金面で厳しい、掛け捨てであり、掛け金は極めて高額、一か月間で一千万円程度の費用は想定しなければなりません。一日当たりで数十万円の掛け金を必要とする。だから入れないという理由はどうか。

 戦場取材を行うのであれば、大手報道機関が責任を以て資金を負担し自社が選定した記者を派遣するというような、戦場保険人質特約の掛け金に対応するようなスポンサーを確保していくべきである、先にニューヨークタイムズがバクダッドでの取材費用が一日一万ドル、という数字を紹介しましたが、要するにこれだけの経費が認められないのであれば戦場取材を行うべきではない、との視点に帰結する。戦場は誰でも行けるところではない。

 メディアスクラムといいますか、特ダネ合戦、といいますか、戦場取材は安全に行うならば非常に費用を要するために、2001年アフガニスタン空爆や2003年イラク戦争では現地からの電話中継が一秒十万円以上の価値を有していたという背景があります。自社の記者を送るよりもその数十分の一で安価に切り取ったフリー記事を買っておけば体裁だけは整う。すると、高く売れる為に戦場保険の無保険状態で現地入りするフリー記者が、実際いたと伝わります。

 ただ、イラク戦争の大規模作戦時とアフガニスタン空爆の時点では、まだ、有志連合従軍取材というものが成り立っていました、少なくとも有志連合は便宜供与を行っていましたので、戦場報道は、この報道を元に考える方が多いのでしょうか。もっとも、人間の盾としての独自取材などでは結果的に戦況に併せて徐々に状況が悪化する事となっていますが。

 現地記者、AFP通信がシリア取材で行っているような手法も検討するべきでしょう、勿論日本の報道機関は海外に向けて情報配信を行うよりも国内向けの需要の方が大きいので日本人の価値観を記事に盛り込みたいとの思慮もあるのかもしれませんが、それでも危険性を考えれば、日本人だけの記事で全ての紛争取材を行う必然性は無い。どうしても日本人の視点が、と必要ならば上記の通り、戦場保険人質特約等の経費に見合う高い手腕の記者を自社で養成して、現地記者の記事と報道体系を構築すればよい。時代に応じた方式があって然るべきです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【日曜特集】金沢駐屯地創設63周年記念行事(4)戦闘訓練展示状況開始!(2013-09-08)

2018-11-04 20:10:14 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■金沢連隊の戦闘訓練展示
 金沢駐屯地祭、いよいよ今回から普通科連隊の訓練展示、状況開始です。

 情報小隊が先鋒を務めます。この情報に基づき連隊が動く。軽装甲機動車に79式対舟艇対戦車誘導弾と120mm重迫撃砲RT、近年は79式対舟艇対戦車誘導弾に代えて最新鋭の中距離多目的誘導弾配備が全国で始まっていますが、この三装備だけでも陸上自衛隊普通科部隊は冷戦時代より装備が大幅に近代化した、といえます。

 89式小銃に個人用暗視装置とともに先兵小隊が前進する。ここまでは部隊は高機動車で自走します。高機動車、1992年の調達開始ですが、この四輪駆動の野戦車両が後半に装備開始された点でも自衛隊の機動力は大幅に強化されたといえます。冷戦時代は普通科部隊の自動車化が、連隊の輸送小隊が有するトラックだけでは足りず、師団輸送隊の支援を必要としました。

 第10偵察隊の87式偵察警戒車が進む、1980年代は偵察隊が自走していても連隊の大半はトラック機動でした。73式大型トラック、現在の3t半トラックという呼称ですが、24名の人員を輸送可能です。73式大型トラックが9両あれば、数字の上では普通科中隊を同時輸送出来る事となります、勿論、部隊車両について迫撃砲小隊や無反動砲小隊と中隊本部は自動車化されていますが。

 1t半トラック、ミサイルを機動しています、昔はジープでしたが小銃班の機動力を買えたのは中型トラックでした。73式中型トラックが丁度小銃班が一つ丸々乗車できる車両という事で、ジープという愛称で親しまれた73式小型トラックと共に普通科部隊は自動車機動を実施していました、73式大型トラックの方が多数の乗車が可能ですが競合地域でこの車両はいかにも大きすぎる。

 地上偵察と共に空中機動のUH-1Jが進出します。実戦であれば判明した第一線に高機動車が殺到する事だ。1992年に調達された高機動車は、この73式中型トラックの後継という位置づけ、製造はトヨタ自動車で日野自動車が担当していた73式中型トラックと、最終的に高機動車の駆動系など足回りを共通化させた型が開発、文字通り後継といいますか用途は重なりますもの。

 しかし、高機動車と73式中型トラックでは、明らかに高機動車が野戦機動を念頭に車体銃身一つとってもある程度の路外機動を念頭に開発されています。車高も低く、そしてCH-47輸送ヘリコプター機内に搭載できるほどに小型化されており野戦車両の性格が増しました。

 敵BTR-82装甲車を発見、高機動車などの非装甲車両はこういう硬い車両と出くわす数km手前で下車させる必要がある。高機動車は一両で小銃班全員が乗車可能で、しかも乗り心地が上々と現場の評判がいい。かなりの悪路を踏破する愛にも横転などの心配は無く、整備性もトヨタ自動車が世界を席巻した理由が実感できるほどのもので、車体一部がFRP製ではありますが現場支持は厚い。

 87式偵察警戒車が25mm機関砲で威嚇しつつBTR-82装甲車の攻撃から離隔をとる。普通科部隊の友、というべき車両は高機動車、という表現を幾度か聞きましたが、高速道路網を駆使して長距離機動の際にも小銃班のうち操縦要員として運転手と助手席の車長、この2名以外は休息を採る事が出来、これが入る前と後では疲労度が根本で違う、という。

 さあ、先鋒部隊の情報に基づき火力戦闘が始まる。小銃班の必要な装備を全部載せても十分な搭載力がある点が高機動車の支持の背景にあり、加えて段列地区等に集積する携行品等を輸送する際には1/4tトレーラをけん引する能力が高機動車にはあります、設計に余裕があると共にPKO仕様等では防弾板追加も可能でした。

 UH-1Jからレンジャーが展開する。このUH-1は改良型が多数開発されましたが、前述の高機動車も一応改良型は存在する、例えばPKO仕様では駒門駐屯地祭に並んだ国際協力仕様高機動車が車体内部に防弾板を追加し、防弾ガラスも追加、しかし懸架装置は基本型の高機動車のまま重量増加に耐えているとの事で、即ち、自衛隊装備にあって将来発展性の余裕を十分確保できたという装備品の一つ。

 UH-1Jからレンジャーが展開する、躍動感ある写真ですが、同時に迫撃砲部隊の展開も始まっている。120mm重迫撃砲RTは高機動車に併せて配備が開始された1990年代からの陸上自衛隊の新しい看板装備です。フランス製の120mm重迫撃砲RTは最大射程8.1km、射程延伸弾使用時13kmの射程を誇り、旧型のM-2/107mm重迫撃砲の射程4kmよりも大幅に伸びた。

 レンジャーが状況に入っている。フランス軍では砲兵連隊が運用する事例がある程に火力の大きな120㎜重迫撃砲RTですが、普通科連隊の重迫撃砲中隊にはこれを12門装備しています。車輪と一体化しており、重迫牽引車、これは高機動車の派生型ですが牽引する事で素早い機動展開が可能になった。

 重迫撃砲が進出して参りました。重迫牽引車、元々は高機動車の開発はこの用途で開発された、とも言われるものですが、生産数は高機動車と併せ4000両を超えており、普通科部隊の火力支援を新時代へ昇華させました。なお参考までに重迫撃砲牽引時にこの車両は重迫撃砲の付属品扱いになるという。

 偽装網を展開する、重火力ですので効力射を相手に浴びせかけるまでは発見されないようにしたい。105mm榴弾砲の後継という位置づけとしても想定するフランス製重迫撃砲の開発は、フランス軍がアフリカ地域での旧植民地への元宗主国として、地域安定化任務へ担う緊急展開に際し、フランス空軍C-160輸送機等での空輸性に考慮、軽量な大火力が求められました。

 81mm迫撃砲も展開する、こちらはイギリス製のものを名古屋の豊和工業がライセンス生産している。空挺部隊重視のフランス軍は、この120㎜重迫撃砲を重宝すると共に機械化歩兵部隊に随伴可能な軽量大火力としても重宝され、輸出にも成功し、NATO各国での評価も高い装備です。陸上自衛隊の装備開始は冷戦終結後1994年ですが、実に500門近くを導入している。

 FH-70榴弾砲が展開して参りました。120mm重迫撃砲の存在により陸上自衛隊の第一線火力は世界的に見て高い水準となりました、世界には軽歩兵旅団で普通科連隊の重迫撃砲中隊より火力の小さな部隊は存在しており、逆に言えば迫撃砲の特色、瞬発火力が強い120mm重迫撃砲の威力はそれだけ大きい。

 迫撃砲陣地の横では対戦車ミサイルの展開も進む。79式対舟艇対戦車誘導弾、陸上自衛隊では大車輪で中距離多目的誘導弾への置き換えが進んでいます、そして実はこの第14普通科連隊も2015年度末に79式対舟艇対戦車誘導弾の運用が終了、対戦車中隊は第5中隊へ改編されていますが、この装備の配備は大きかった。

 普通科連隊の主要装備が横一列に並ぶ展示ですね。重MAT,と称されるこのミサイルは対舟艇用の爆発力の大きなHE弾頭と対戦車用の装甲貫徹力の大きなHEAT弾頭を選択でき、本体重量が33kgと比較的大威力である点が特色です。アメリカのBGM-71-TOWの弾頭重量が16kgというので、その威力の大きさが分る。

 74式戦車が進出して参りました、直接照準で瞬発交戦能力の高い戦車、やはり勇壮だ。対戦車隊として元々は師団長直轄の対戦車部隊に16セットが配備されていましたが、師団改編により当時の第10師団は全普通科連隊、第14普通科連隊、第33普通科連隊、第35普通科連隊、第49普通科連隊、に対戦車中隊が編成、12セットが配備されていたのです。

 79式対舟艇対戦車誘導弾、展開完了だ。ミサイル運用はジープ、つまり73式小型トラック車上に発射装置と誘導装置を搭載し、弾薬輸送車等を随伴、射撃時には地上に発射架を降ろして運用します。車上からは射撃できない、という原則との事ですが、出来るはず、という様な見解もありまして、情報は多い。

 軽装甲機動車が攻撃前進へ進出してきました。79式対舟艇対戦車誘導弾は機動力に限界があるのですが、この軽装甲機動車は01式軽対戦車誘導弾を車上から射撃できます。車上射撃の可否が陣地変換の所要時間を大きく変えますが、陣地変換の射撃陣地が掩砲所構築の時間的余裕があるならば、こちらの方が生存性は高くなります。ただ、例えば車体重量の大きな高機動車等に発射架を置き車載運用は出来なかったのか、興味は湧きますね。

 01式軽対戦車誘導弾が広く配備され、こちらのシュア亭は1.3kmという。自衛隊最初の対戦車ミサイルは64式対戦車誘導弾、通称MATの後継として導入されたものでMATは射程1.6kmですので重MATの射程4kmは大きな延伸といえます。ただ、MATは車上から射撃が基本でしたので、重MATは陣地変換に要する時間が長くなっていまして、何とかならないのかな、と。

 第2世代ミサイルで赤外線半自動指令方式という、つまり射手が目標を照準し続ける事でミサイルへワイヤーを通して目標情報が伝達され続け命中する。ただ、ミサイルはこの誘導方式の限界であまり速度が出せず、秒速200m、最大射程4kmの飛翔には20秒を要する。この種のミサイル攻撃を受けた場合は、この特科火砲が白燐弾で煙覆し、その後に効力射で叩き潰す。

 重MATは1セットに発射装置と照準装置を搭載し、弾薬輸送車には予備弾8発を搭載、8発が一基数ということになり、段列地区に更に一基数集積する事で中隊は192発を携行する事となります。ミサイルが大型である分、携行数に限りありますが頼もしい装備でした。

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【くらま】日本DDH物語 《第五〇回》ひえい竣工に大型艦は航空巡洋艦か拡大改良型の論争

2018-11-03 20:08:27 | 先端軍事テクノロジー
■しらね型護衛艦建造への道
 くらま、に至る海上自衛隊ヘリコプター搭載護衛艦建造の歴史は、決して平たんであった訳ではありません。

 ひえい竣工と共に護衛艦はるな型を更に量産するのか、新型に移行するのか、これは当時ヘリコプター搭載護衛艦は二隻で一つの護衛隊を構成し対潜任務に当る為で、はるな型2隻では一個護衛隊群しか充足できません、既に1974年には第4護衛隊群が新編されており、海上自衛隊は2個護衛隊群を最新鋭艦で固める方針、ヘリコプター搭載護衛艦は4隻要る。

 船体を8m延伸するだけで格納庫に余裕が生まれますのでHSS-2規模の航空機も4機搭載することが現実的となります。これは一例ですが、飛行甲板下に格納庫を配置するだけでもやはり全長はそのままでも6機を搭載する容積を確保できます。ここで再燃するのは、はるな建造の際に飛行甲板をもう少し長く採り2機同時発着機能を配置する可否が再び。

 ヘリコプター搭載護衛艦はヘリコプターの運用が最重要です。格納庫容積を拡張し航空機運用能力を高めた場合でも発着機能はそのままで良いのか、という視点に展開してしまう。HSS-2の搭載能力を8m船体を延伸し、機関部のファンネルやマック構造を再配置するだけで、2機を並列に並べる格納庫内の配置を前後に2機並べることが出来ましたら、どうか。

 8mの船体延長、それだけで4機のHSS-2を搭載できるのですが、はるな型の飛行甲板長では1機づつしか発進できません、すると更に飛行甲板を10m延伸することで飛行甲板は理論上2機同時発着が可能となります。しかし、この変更を盛り込みますと、18mの延伸が必要となる、全幅も大きくなりますので必然基準排水量で6000t級後半までに拡大する。

 はるな型護衛艦にターターシステムを搭載し艦隊防空を担うという建造前の設計時点で検討がありましたが、6000t級後半といいますか、多数のヘリコプターを搭載し複数の航空機同時発着能力を有するように強化されますと、航空攻撃の一撃で機能不随となってはたまりませんので防空能力を強化する必要がある、今度こそターターミサイル、という訳です。

 はたかぜ型ミサイル護衛艦のMk13発射装置配置を思い浮かべていただくと早いのですが、例えば52番砲をターター発射装置に転換するか、艦首に波除けのブルワークを配置し、51番砲の位置にターター発射装置を搭載するなど、考えられるでしょう。すると、ターターシステムは当時でも高価でしたので、必然、護衛艦の建造費を押し上げることとなります。

 3機のHSS-2でどの程度のことが可能であるかを冷静に判断する、妥協案としては問題解決の順延です。運用研究をもう少し続け、その上で納得のいく護衛艦を設計するという。しかし、順延にも限界が生じました、それは高度経済成長の終焉です、1973年の第四次中東戦争を契機としたオイルショックにより日本は高度経済成長という急成長の終焉は痛い。

 毎年10%台の急成長、10%成長すれば7年間でGNP/GNI国民総生産は倍増する訳ですので石油危機は致命的だ。この急成長が突如翌年にマイナス成長となった衝撃は劇的なものでした。マイナス成長と共にインフレによる物価の乱高下が経済を悪化させ、右肩上がりの戦後という理念が瓦解してゆきました。するとやはり防衛計画も長期見通しが立たない。

 こうしますと、3機のHSS-2を搭載したヘリコプター搭載護衛艦の能力を見極める、という以上に第四次防衛力整備計画の計画未達成をどのように予算措置をおこなうのか、という難題を突きつけられました。その結果、高見を目指す大型艦の建造という視点よりも、現在ある装備で自衛隊はどこまでのことが出来るのか、と視点を転じることとなります。

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平成三〇年度十一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2018.11.03-11.04)

2018-11-02 20:02:19 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 台風26号はフィリピン北部を蹂躙、そのまま大陸へ向かっていますがかなり勢力は弱まっている模様、こうした中で今週末の行事紹介です。

 入間基地航空祭2018、11月3日文化の日は入間基地航空祭の日ですが、本年は土曜日と重なりましたので例年より若干混雑するかもしれません。C-1輸送機編隊飛行が名高い入間基地航空祭、C-1輸送機は美保基地へも配備されていますが、美保基地は順次C-2輸送機へ機種転換が進み、輸送機の基地は、C-130の小牧、C-1の入間、C-2の美保、となりました。

 60周年の航空祭、中部航空方面隊司令部が置かれ首都圏と京阪神地区を含む本州四国全域の防空を担う司令部が所在する入間基地、首都圏とあって人は多い。最も混雑する事から、人間基地航空祭、コミケか入間か、と呼ばれる程の活況といますか混雑の入間基地、西武線で都心から程近く西武新宿線より基地周辺から見物するか、基地に入るか、どちらにしても混雑します。

 航空学校創設66周年明野駐屯地祭、日曜日に挙行されます。陸上自衛隊ヘリコプター部隊の駐屯地で、三重県伊勢市に位置する航空学校明野本校の創設記念行事です。航空学校本校のほか、中部方面航空隊第5対戦車ヘリコプター隊、第10師団隷下の第10飛行隊も駐屯しています。伊勢市、ということで近鉄線にて行く事が出来まして明野駅が最寄り駅だ。

 AH-64D戦闘ヘリコプターの九州での墜落事故、OH-1観測ヘリコプターのエンジンタービンブレード換装改修、代替機無きままに耐用年数限界を超え部隊定数割れの対戦車ヘリコプターや多用途ヘリコプターに観測ヘリコプター、陸上自衛隊ヘリコプター部隊は厳しい状況が何年も続き、危機とも表現し得る非常に憂慮すべき現状ですが、精一杯の行事を期待したいですね。

 施設学校創設67周年勝田駐屯地祭、施設学校として陸上自衛隊施設科要員の幹部教育及び戦術研究及び新装備評価試験を一手に担う教育機関の駐屯地です。茨城県ひたちなか市に所在、装甲ドーザや地雷原処理装置等戦闘工兵装備から架橋装備に舗装器材と建設工兵装備まで一通り揃っていますので、稀有な装備とこれら駆使した訓練展示等に期待が高まる。

 さて撮影の話題を。74式戦車は撮れるうちに撮っておいた方が良い、北海道の74式戦車は第2戦車連隊から引退し完全置き換え完了となりました。岩手駐屯地に2個中隊、大和駐屯地に1個中隊、富士地区に4個中隊、今津駐屯地に4個中隊、日本原駐屯地に1個中隊、玖珠駐屯地に1個中隊、90式戦車よりも当たり前ですが74式戦車の方が用途廃止で少数派となりました。

 記念行事や富士総合火力演習に東名高速道路で散々撮ったよ、というお話もありますが、なにしろデジタルカメラ、現代の記録手段はフィルム時代ほど費用面や撮影機会の制約はありませんので、この角度あの情景その背景かの迫力、と撮影してみるのもいいでしょう。部隊の方も思い入れがありますので、その時が迫る程、展示の磨きがかかる印象もある。

 105mm戦車砲は実弾射撃を一般公開する事例は非常に少ないのですが、訓練展示での空包発砲焔は非常に迫力がありますし、74式戦車は戦車を集中運用する設計思想である為、訓練展示でも固まった戦車部隊としての展示が行われます。戦車が集団で戦闘を展開する様子、空包の迫力ある発砲焔、普通科部隊との連携、撮れるうちに撮っておきたいものです。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・11月04日:施設学校創設67周年勝田駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/shisetsu/es-hp/
・11月03日:入間基地航空祭2018…http://www.mod.go.jp/asdf/iruma/
・11月04日:航空学校創設66周年明野駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/akeno/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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新防衛大綱とF-35B&EA-18G【22】F-35B艦上哨戒機の必要性とSH-60哨戒ヘリコプター

2018-11-01 20:10:37 | 先端軍事テクノロジー
■ポストハープーン時代への備え
 海上自衛隊は単に防空戦闘機を欲している訳ではないと考えます、それならば先に戦闘機陸上配備でも事足りる。目指すのはポストハープーン時代への備えなのかもしれません。

 ハープーンは海上自衛隊を筆頭に自由主義圏の主力対艦ミサイルとして多数が整備されましたが、もともと対艦ミサイルは小型艦艇に艦砲並の射程を持たせる対水上打撃力を装備させるという設計であったものが徐々にその射程を延伸させており、ハープーンミサイルの射程はかつての艦砲を遥かに上回っています。そしてこれも次世代を迎えつつある。

 F-35Bについて、海上自衛隊は対水上戦闘の観点からその必要性を認識している事は明らかです。海上自衛隊は世界的に見ても早い時期から艦載機としてヘリコプターを多用しており、HSS-2を護衛艦はるな艦上において運用開始したのは1973年のこと。そのHSS-2後継機に導入されたSH-60Jは原型機が元々水上戦闘艦のセンサーとして開発されました。

 海上自衛隊が艦対艦ミサイルの運用を開始したのは護衛艦いしかり、そして量産成った艦隊護衛艦の、はつゆき型により一挙に対水上戦闘の主力が艦砲からミサイルへ転換するとともに、射程200kmという艦対艦ミサイルの索敵は護衛艦の艦載レーダーでは水平線の向こうを索敵出来ず、その任務にはヘリコプターの搭載レーダーが必須となっている訳です。

 しかし、ヘリコプターの難点は広域防空艦に対する脆弱性でした。護衛艦あまつかぜ、たちかぜ型護衛艦、はたかぜ型護衛艦とターターシステムを搭載する広域防空艦が相手ならば、当初ターターシステムと連動するターターミサイル射程は18kmで、ヘリコプターはターターミサイルの射程外から目標情報を母艦に伝送、ハープーンでの攻撃が可能でした。

 ターターミサイルは射程38kmのスタンダードミサイルへ換装されますと、ヘリコプターの飛行高度からスタンダードミサイル射程圏内に入らないよう索敵情報を母艦に伝送する事は困難ではありませんが危険を伴い、陸上の航空基地からの高性能長航続距離のP-3C哨戒機との協同を重視し、大まかな目標座標情報に依拠し索敵を行う戦術を構築しています。

 イージス艦の配備はこの状況を一変させました。対抗演習においてその有無は劇的と言えまして、スタンダードSM-2は実質100kmの射程を有しており、P-3CもSH-60も水平線上の見通し線上に展開した瞬間に航空機はイージス艦のSPY-1レーダーにより捕捉され、特に100kmの長射程対空ミサイルの圏外から哨戒飛行を行う事はほぼ不可能となりました。

 P-3C哨戒機には電波探知能力強化に関する近代化改修が行われると共に、護衛艦隊は将来、イージス艦に該当する広域防空艦脅威が世界的に拡散する想定を行い、新たに開発のP-1哨戒機にはその搭載レーダーに超長距離索敵機能が付与され、更に電子情報収集機等の情報収集機を増勢する事で能力向上を行っています。しかし、必ずしも十分ではありません。

 ポストハープーン時代というべき対艦ミサイルの長射程化、海上自衛隊は新たにNSSM艦対艦ミサイルを量産が決定した3700t型護衛艦から搭載が開始されますが、将来的には射程350kmのVL-JSM配備が想定されます。これはスタンドオフミサイルとして自衛隊へ配備が決定しているJSMミサイルの艦載型で、ハープーン後継へ米海軍がOASuWとして国際共同開発を進めているもの。

 艦対艦ミサイルの長射程化は世界的に進んでおり、200km前後の射程では用途が限られる可能性が高く、まさにポストハープーン時代というべきもの。一方、そこまでの長射程化したミサイルをSH-60が誘導するには限度があります。こうした中、2017年12月ごろから政府部内においてF-35B戦闘機を導入し海上自衛隊の張りコプター搭載護衛艦艦上において運用する方針が示されており驚かされる。

 ただ、ロイター通信や読売新聞報道では政府部内においてF-35Bを艦載運用する際、主任務として南西諸島防空を考えている旨が示されており、これでは海上自衛隊の運用とかい離します。これまで海上自衛隊は都市防空を含めた地域防空を航空自衛隊任務と割り切っており、まさか海上自衛隊が南西諸島防空へ参画を求められるとは想定外だったでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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