北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【京都幕間旅情】祇園祭山鉾巡行回想録(5)街巡る山鉾タペストリーに描かれる異世界の美麗

2020-10-21 20:01:44 | 写真
■大回し!四条河原町の祇園祭
 祇園祭山鉾巡行が形成された当時は京都の町衆から見た山鉾タペストリーに描く世界各国の情景は正に異世界そのものだったでしょう。

 タペストリーが描く題材は多岐にわたります、函谷鉾は旧約聖書の舞台を示しているという、三井家に並ぶ鴻池家が函谷町には住まいがあったという。この一つとっても、そもそもバテレン追放令やキリスト教禁教令下で、これは許されたのだなあ、と驚いてしまう。

 世界からと云いますが地域の特性もなかなか多岐です、保昌山は中国の官服をタペストリーに仕立てたもの、中国の美術品も数多いのですね。岩戸山を飾るのは18世紀インドの絨毯、ムガル帝国時代のもの。そして太子山のけん装品は孔雀や花々が刺繍されています。

 輸入品を飾って終わるものではないという、例えば太子山のタペストリーですが、模様周囲は金糸で埋められているのですが、江戸時代には白地の織物であったという、そこで当時の町衆が一年間掛けて金糸で刺繍してうめた、のべ1000名の職人が関わった、という。

 大衆を喜ばせるために周りよりも一番美しく、その精神で織り上げたのかもしれません。月鉾は円山応挙の美術がくまれ、ムガル帝国の絨毯が覆う。これをアメリカのメトロポリタン美術館が展覧に貸した際に分析が行われますと、単に価格が高いだけではないとも。

 メトロポリタン美術館によればその歴史的価値、ものによっては現存するものは世界に数点という水準であることがわかりまして、驚いたという。メトロポリタン美術館の視点では基調というよりも製法が失われている為に文化的価値もあり、これが毎年並ぶのか、と。

 安土桃山時代の京都、山鉾が最初から現代の方式だったのかととわれますと、そもそもが八坂神社へ向かう神霊を慕って町衆が幟を建てて行列でついていったのが始まりですので、それこそ平安朝の時代も鎌倉時代ももちろん安土桃山時代も江戸時代も変容している。

 安土桃山時代末期、祇園祭の一つの時代は瓦屋根の建物は少なく、そしてその分外国の方々が多かったという、京都には南蛮寺があり宣教師も多かったという。考えてみれば欧州や中国に天竺とイスラムの品々を並べるには文化的寛容さが必要で、当時京都はそうだった。

 宣教師の南蛮寺によりスペインやポルトガルの人々、勿論中国からの方々も一機する、まあ人数的には今の京都程では何しましても、当時としては国際都市となっていたと考えられる、江戸時代の鎖国と外国船打ち払い令が出された幕末の時代の方が特異とさえいえる。

 フランシスコザビエルも京都にいまして、これは本能寺を定宿としていた織田信長が世界の話を好んで集めるために都市計画を行った、とも。その結果が、新しいものへの好奇心を集めるという勝った意図文化的寛容性、多くのタペストリーに反映されていまして。

 豪商が多く集まりました新町通りでは、豊臣秀吉の影響が色濃く反映されていました。すると、織田信長と豊臣秀吉の時代にも祇園祭が執り行われていました。タペストリー伝来前には函谷鉾などに虎の毛皮、それこそ欧州攻城塔のような構造の時代もあったという。

 織田信長と豊臣秀吉の時代、先ほどの虎の剥製や毛皮というように、武将が好んだ勇壮な猛獣の毛皮などで彩った時代もありまして、時代とともに移ろいます。江戸時代、疾病は雷の伝統行事であった祇園祭は豪商が競った江戸時代に祇園祭を賑やかなものとしまして。

 豪商が力をつける事により町衆文化に根付く祇園祭は栄華を極めてゆきました、たとえば三井財閥の創始者にあたる三井高利は両替商などで成功しますと、美術品を多く有することが呉服商として、京都において目利きとして存在感を示すために不可欠だったという。

 呉服商の美的感覚の発露、それが山鉾のタペストリーだったという。杉本家、かつて呉服店だったとのことですがここで俵屋宗達の屏風などを保管していまして、名品を披露することで目利きであり、ここの呉服は確かなもの、としていわばブランドを高めたのですね。

 伝統や格式、京都はこう思われていますが実際には新しいものに寄せられる、考えてみれば日本初の集合住宅、今でいう文化住宅のアパートの前例は豊臣秀吉が作った町家なのですよね、今でいう町家は応仁の乱の時代には無かった、近代都市としての歴史の方が長い。

 古都、という認識は長い歴史からみれば特殊ともいえましょう。しかし山鉾、江戸時代には建物が低く、山鉾の姿は今とは比較にならないほどに遠方からみられたのかもしれません、その山鉾はひとつ組むにも千両箱が必要だったという。式年遷宮のように建て替えた。

 式年遷宮のように定期的に立て替えた、という視点ですが、これは定格化されていたものではなく焼失によるもの。こういいますのも当時の京都は火災が多く、その都度に豪商が組み直した、鉾建てとは的を射て、豪商の時代故に栄華の祇園祭が形成されてゆきました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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新幹線国際輸出研究【5】アメリカ巨大市場,新幹線衝突事故対策とリニアシステムへの優位性

2020-10-20 20:02:16 | コラム
■リニアシステムへの優位性
 新幹線という高速大量輸送システムを考える場合は最終的に潜在的鉄道上の大きなアメリカ市場へのアクセスを目指さねばなりません。

 新幹線の衝突回避原則、これを国際安全基準とできるかが輸出を大きく左右させることとなるでしょう。Crash AvoidanceとしてJR西日本とJR東海とJR九州、川崎重工と日立製作所は新幹線の衝突事故に耐える車両を開発するのではなく衝突回避のシステムを原則とする基準の国際化を目指す一般社団法人国際高速鉄道協会を2014年に設立しました。

 新幹線輸出を目指すのはアメリカで進む高速鉄道計画です。当時のオバマ政権が温室効果ガス排出削減への切り札として雇用増勢にも繋がる高速鉄道計画を発表しており、本命はフロリダ高速鉄道計画やカリフォルニア高速鉄道計画、テキサス高速鉄道計画です。この中でもカリフォルニア高速鉄道計画は全米有数大都市間を結ぶ重要な高速鉄道計画でした。

 カリフォルニア高速鉄道計画はロサンゼルスとサンフランシスコというカリフォルニア州の二大都市を隔てる840kmを3時間以内で結ぶ計画という高速鉄道計画で、2029年までの完成を目指しています。840kmといえば東京と広島間が894km、新幹線のぞみ号が四時間前後で結んでいます。東京と三原駅間の東海道山陽新幹線が822km、この距離感です。

 2030年時点で年間利用者の当局見積りは6500万名から9600万名を想定しており、現在の鉄道による両都市間の移動には12時間を要するために鉄道よりも旅客機での移動が一般的ですが、最高速度350km/hの高速車両を線形の良い直線線路を最高速度で走行させることで最短二時間半での移動を目指す野心的計画でした。もっとも表定速度の視点から難しい。

 カリフォルニア州高速鉄道局 CHSRAはサンフランシスコ、サンフランシスコ国際空港、レッドウッドシティ、サンノゼディリドン、ギルロイ、フレズノ、ベーカーズフィールド、パームデール、サンフェルナンド、ダウンタウンバーバンク、ロサンゼルス、結び、最終的にサンフランシスコから州都サクラメント、ロスからサンディエゴまで延伸するという。

 カリフォルニア高速鉄道計画、2015年に着工しましたが先日JR東海がこの計画から離脱する方針を示しました。それは国際高速鉄道協会が目指した衝突回避原則をアメリカ側は理解しつつ、しかし万一の事故もあり得るので衝突事故時の乗客安全を図る車両構造の採用を要求したためです。分散動力方式を採用する日本は機関車を緩衝材と出来ない構造だ。

 300km/hという高速運行を行う高速列車は、仮に列車同士が衝突事故を引き起こしたならば、相対速度は600km/hというジェット旅客機並みの衝撃が乗客に加わります。その半分以下の速度で飛行するヘリコプタでさえ、安全性に墜落時の乗員防護を保証するものはなく、一部の戦闘ヘリコプターが戦闘時の墜落に機体構造部品を緩衝材としている程度です。

 国際高速鉄道協会の試みは日本の新幹線が実現している衝突回避原則を国際標準とし、高速鉄道は車両と線路だけで完成するものではなく、安全性を確保する制御システムこそが要諦であるとの認識を一般化させ、線路と制御システムだけでは成り立たず、車両と制御システムだけでも成り立たないように三要素を体系化したものを高速鉄道とする試みです。

 新幹線にて京都から東京へ向かう際、やはり気になるのはもう少し運賃が安ければ頻繁に東京へ行けるのに、というものです。しかし、新幹線の緻密な保線計画と運行管理体制を考えれば、このあたりが妥当な費用なのだろう、と考え直すものです。しかし、これは日本の安全性が常識となっている故で、この常識を普遍化しなければ輸出は難しいでしょう。

 新幹線輸出に際して重要な課題は新幹線が大量輸送システムであり、単なる高速鉄道ではないということです、つまり高頻度運転を行える東京新大阪間に匹敵する巨大な旅客輸送需要がない区間には向きません。ただ、単純な高速輸送システムを構築するのであれば、単線新幹線として工費を抑える選択肢がありますし、大量輸送ならば新幹線が最適です。

 しかし、単純な車両システムとしてみた場合、新幹線は加速性能が優れており、開業当初は0系新幹線の加速力が有楽町付近で山手線103系電車の加速力に劣ったことがありましたが、N-700系の加速力で遂に山手線E-231系を抜き、短距離高速連絡鉄道としても、例えばリニア新幹線などと比較した場合でも相応の競争力があることを忘れてはなりません。

 上海トランスラピッド、上海龍陽路駅と浦東国際機場間の30.5kmを最高速度431km/hにより、8分で結ぶ高速鉄道です。世界最速を誇っていますが、一時間当たりの表定速度は228.75km、早い、と思うのですが東海道新幹線は京都新大阪間の39kmを13分で結んでおり、新幹線の表定速度は京都新大阪間に限った場合で実に180kmにも達しているのです。

 ドイツが開発したトランスラピッドはリニアシステムとしては極め得て高い加速性能を有しており、300km/hまでの加速に五分しか要せず、機関車方式を採用するドイツ高速鉄道ICEが同じ速度に達するまで30分を要する点と比較し画期的、としていましたが、この性能からわかる通り、上海線では最高速度に達した時点で終点まで残り3分しかありません。

 N700系の起動加速度は2.6km/h/sというもので、この数値は115秒で300km/hに達することを意味し、同じ速度まで300秒、つまり5分を要するトランスラピッドリニアシステムよりも三分の一近くまで加速時間を短縮しているのです。減速度は常用2.70km/h/s、非常用3.64km/h/s、つまり最高速度から緊急停止完了まで実にわずか82秒しか要しません。

 新幹線は都市中心部から40km程度の郊外にある空港施設まで14分程度で結ぶことが可能、これは単線運行で一編成に乗降時間を含めても20分間隔での運行が可能です。終点駅に2ホームを配置したならば、単線運行で一区間一列車運行を行うとして15分間隔毎時4列車を運行することが可能です。空港と中心部を結ぶ路線としては理想的といえましょう。

 トランスラピッドオーストラリア計画、中止となりましたがドイツ側が提示した建設見積もり費用でビクトリア州複線建設費が1kmあたり3400万豪ドルといい、単純比較はできませんが北陸新幹線工費概算は平野部1km25億円、山間部1km40億円とされています。豪ドルは2008年に最高値104円最安値56円で乱高下していますが建設費はこの程度です。

 車両1両当たりの費用は2000万豪ドル、対して2007年に運行開始となったN-700系新幹線は16両の編成価格で46億円とされ、トランスラピット三両編成よりも安価に取得することが可能です。トランスラピットの高速輸送力は、40km路線で新幹線よりも五分速くなるのですが、それを補って余りある車両単価の低さがあります。近郊輸送の強みは大きい。

 新幹線は長距離輸送用の大量輸送機関である事は繰り返し示してきましたが、この為の高性能車両は高い加速性能と高速運転能力を有しており、例えば高速輸送の代名詞であるものの都市中心部に建設が難しい国際空港と、旅客機到着後都心移動時間短縮を主眼に、都市中心部を結ぶ近郊高速鉄道として輸出実績を積むという選択肢も、あるかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】アメリカLCS計画とLAW軽揚陸艦,中国江凱Ⅱ型輸出とイギリスハリアー就役

2020-10-19 20:18:27 | インポート
■週報:世界の防衛,最新10論点
 今回は各国海軍の水上戦闘艦や空母と全通飛行甲板艦や水陸両用艦艇や哨戒艇等の話題を集めて議論してみましょう。

 アメリカの防衛造船大手オースタル社は9月2日、現在進めているインディペンデンス級沿海域戦闘艦量産計画への建造参画に続き、海軍の水陸両用艦船建造を見越し新たに造船施設の拡張工事への投資を発表した。これは以前取得し子会社化したモダンアメリカンリサイクルアンドリペアサービスの施設跡地に新たに造船施設を建設する為の投資という。

 オースタル社はこの投資で20000t級パナマックス規格船舶用ドックの建設、10平米屋内型艦船修理施設建設費用等が含まれている。オースタル社では現在インディペンデンス級4隻が建造中であり、更にインディペンデンス級4隻の建造計画がある。しかし海軍沿海域戦闘艦量産計画はあと数年程度で終了するが、これに続く海軍からの受注は現在まだ無い。

 FFG(X)計画として海軍ではアーレイバーク級ミサイル駆逐艦を補完する6000t規模のミサイルフリゲイト量産計画を推進中であり、一番艦はコンステレーションとされる。オースタル社も応募していたが選定には至っていない。同社では軽金属を多用する艦艇建造能力に定評があり、万一経営破たんともなればインディペンデンス級の整備にも影響する。同社は小型輸送艦建造参画を希望している。
■ボノムリシャールは放火か
 現在もサンディエゴ基地において事故調査が続き12月まではそのままとされるボノムリシャールについて。

 アメリカ国防総省当局者は8月27日アメリカCNN記者に対し、サンディエゴ基地において7月に発生した強襲揚陸艦ボノムリシャール火災について、原因が放火である可能性を示唆しました。ボノムリシャールはワスプ級強襲揚陸艦で海兵航空部隊のMV-22やCH-53による揚陸を担当するほか、F-35B戦闘機20機を搭載し制海艦としても機能します。

 ボノムリシャール火災は当初乗員が消火に務めたものの停泊中で乗員は僅かであると共に爆発危険が高まった為に総員退去が命じられ、四日間にわたり燃え続けた為、船体主要部が大きく破損し、修理期間は元より修理可能かという水準まで破損区画が広くなっています。なお、アメリカ海軍は現在まだ事件捜査中であり立件はされていない、としています。
■クワンゲドデワン級改修
 金大中大統領が初めて挙行された韓国建国観艦式に旗艦として乗艦したのはクワンゲドデワン級でした。

 韓国国防省は9月7日、海軍の運用するクワンゲドデワン級フリゲイトの近代化改修を完了したと発表しました。今回の近代化改修では情報処理能力の強化が中心となり、レーダーが捕捉した目標情報を従来の三倍程度まで識別追尾が可能となります。また戦術コンピュータの切替えにより一部情報は情報処理速度が100倍まで強化されたと発表しました。

 クワンゲドデワン級はKDX-1計画として一番艦が竣工したのは1998年、韓国海軍初の外洋型水上戦闘艦として竣工し、韓国海軍では初めてシースパローミサイルやヘリコプターを搭載、3隻が建造されています。今回改修が完了したのはクワンデドデワン級のヤンマンチュンで、韓国海軍では2021年までに残る2隻の近代化改修を完了させたい構想です。
■新世代エアクッション揚陸艇
 LCACエアクッション揚陸艇について遂に次世代型が建造されることとなりました。

 アメリカ海軍は8月27日、テキストロンシステムズよりSSC第二世代型LCACエアクッション揚陸艇の一番艇を受領した。LCACはアメリカ海軍に91隻が導入され海上自衛隊でも6隻が運用中だ。しかし、製造終了から長く、初期建造分については老朽化を受け延命改修が重ねられている状況であった。新しいLCACの識別番号はLCAC-101とのこと。

 SSC-LCACは現在12隻が製造されており、将来的に10隻の増勢も検討されている。SSC計画では当初、船体長を延伸させ搭載能力を増強する検討も為されたが、既存揚陸艦との適合性などから齟齬を来すとして見送られ、全長や全幅など主要要目は現行LCACと同様だ。しかし標準搭載量は強化され54tから60tへ拡張、最大搭載量も70tまで可能である。
■アメリカのLAW軽揚陸艦
 LAW,といってもM-72ではありません。アメリカ海軍は海兵隊の機動用に多数の揚陸艦を建造する計画です。

 アメリカ国防総省は8月28日、海軍が進めるLAW軽揚陸艦計画について進捗状況を議会へ報告しました。LAW軽揚陸艦計画は28隻から30隻を建造する計画で、数十両の車両を上陸ではなく海岸や港湾へ揚陸させる為の艦艇で、太平洋島嶼部での中国への対抗が主眼、2021会計予算年度において研究費用や設計作業に3000万ドルが盛り込まれています。

 LAW軽揚陸艦は第一に建造費を抑える事が要求されており、1隻あたりを1億ドル以下とする事を求めています。その上で全長を60mから120mとし、早ければ2023会計年度から建造を開始、2026年には竣工させるという、極めて迅速な建造計画が求められ、安価な調達と素早い建造を念頭に、近く造船事業者へRFI情報要求書を提示する計画とされます。

 海兵隊の沿岸連隊、LAW軽揚陸艦は第二次世界大戦後最大の海兵隊改編を念頭に進められています。海兵隊は2030年までに保有するM-1戦車を全廃し、新たに地対艦ミサイル部隊を創設し無人偵察機を増強、太平洋島嶼部にミサイル部隊とその警備部隊という、陸上自衛隊の先島諸島展開部隊のような改編を予定、その為の両用戦艦艇を必要としています。
■パキスタン向け054型進水
 中国は友好国へ廉価な費用で武器を輸出していますが、今回は比較的新しい054型フリゲイトをパキスタンへ輸出するとのことです。

 中国国家造船公社CSSCは8月23日、パキスタン海軍輸出用054A型フリゲイト江凱Ⅱ型フリゲイト一番艦の進水式を発表しました。パキスタン海軍は江凱Ⅰ型フリゲイトについて2017年と2018年に各2隻、合計4隻の導入を発表しており、4隻とも2021年までに竣工する。契約金額は未公表だが友好国価格として1億ドルから4億ドル程度という。

 江凱Ⅱ型フリゲイトは満載排水量4050t、ディーゼル推進方式を採用し射程180kmの中国製YJ-83/CSS-N-8対艦ミサイルと射程50kmのロシア製3K90艦対空ミサイルを搭載し、艦載ヘリコプター1機の運用能力を有しています。ただし上記は中国海軍仕様であり、パキスタン向けの装備は発表されていません。中国海軍は2015年までに配備を完了しています。
■ハーミーズ記念艦化成らず
 歴史的な艦艇は保存の声こそ毎回湧き上がるのですが費用面で相当な準備と覚悟が必要です。

 インド海軍の空母ヴィラート、旧イギリス海軍の空母ハーミーズが8月25日、記念艦への転用を断念し解体される方針である事が発表されました。ヴィラートは2017年、新空母ヴィクラマディーチャに交代する形でインド海軍より除籍されグジャラート州アランに拠点を置くシュリーラムグループがホテルシップか洋上博物館に改装する計画はありました。

 ハーミーズは第二次大戦中の1944年に起工、当初艦名はエレファントとされていましたが1945年に終戦を迎え建造中止、1952年に建造再開となり漸く1953年に進水式、その艦名はイギリス海軍初の空母で1942年に日本海軍により撃沈された艦名を継承し1959年に就役、シーヴィクセン戦闘機等20機を搭載し基準排水量23000tで満載排水量は28700tです。

 バッカニア艦上攻撃機などの運用能力を獲得しつつ1971年にはコマンドー空母へ改修されます、しかしこの際に搭載したシーハリアー攻撃機が1982年フォークランド紛争において大活躍、イギリス海軍旗艦ともなりました。1984年には除籍、インド海軍ヴィラートとなり上掲の通り2017年に除籍されましたが保存成らず解体、船体はバイクの原料となります。
■イギリス海軍新型ハリアー
 ハリアーといいますとVTOL攻撃機を思い出すか乗用車を思い出すかでその人の関心事が分るといいますが、このハリアーは第三のハリアーです。

 イギリス海軍、新無人掃海艇ハリアーが8月21日に竣工したとのこと。ハリアーはアトラスアトランティックUK社により建造されたハザード級無人掃海艇の二番艇で全長は11m、双胴型複合素材製船体を有しています。ハリアーは、イギリス海軍が進める海上無人システム試験部隊MASTT計画の一環として建造、同社では三番艇ハーベが建造中です。

 ハリアーは有人航行と遠隔操作及び完全自律航行何れでも対応しており、曳航式サイドスキャンソナーによる機雷探知と機雷処分弾薬の投射による機雷無力化が可能であるほか、自律航行能力を用いた港湾哨戒任務にも対応しています。海上無人システム試験部隊MASTT計画は2022年までに機雷掃海の作戦能力獲得を視野に進めているとのことです。
■中華民国の装備近代化計画
 中華民国台湾は昨今中国からの急激な軍事圧力に曝され、九州沖縄へ向けられていた中国軍機が中国政府の宥和政策の終りを突き付けられた構図ですが、備えは進められる。

 中華民国台湾は8月9日、巡航ミサイルと機雷増強へ2021年国防費を増額すると発表しました。台湾は中国本土の中華人民共和国より強大な軍事圧力に曝されていますが、今回、新装備の巡航ミサイルと機雷の増強へ14億ドルの追加を発表しました。台湾は独自の雄風Ⅲ型ミサイルを開発していますが、今回増勢されるミサイルはアメリカ製となる可能性が。

 アメリカ厚生長官のアザール長官台湾訪問、アメリカの台湾国交断絶以来最高位の高官訪問となりました歴史的な日の直後に台湾政府が巡航ミサイルと機雷の増強を発表した事から、アザール長官訪台を経て何らかの先端装備供与について合意された可能性もあります。なお、アザール長官訪台に際し中国がJ-11戦闘機を台湾に接近させる一幕もありました。
■フィリピン海軍一挙88隻増強
 中国の軍事圧力に屈しつつあるともされたフィリピンですが小型艇とはいえ88隻を一挙に揃えるという。

 フィリピン海軍はアメリカより88隻の小型戦闘艇及び武装を1億2600万ドルで取得する、アメリカ国務省が七月末、有償軍事供与について承認した旨を発表しました。小型戦闘艇はアメリカのウィラードマリン社製9m型複合艇36隻とウィラードマリン社製10m型複合艇36隻、18m型LSB16隻で、1億2600万ドルの契約は搭載する装備品も含まれる。

 88隻の小型戦闘艇用の武装としてはM-134ミニガン多銃身機銃36丁、M-2/12.7mm重機関銃24丁、M-240/7.62mm軽機関銃156丁、無線機90基と照準装置や航海レーダー、予備エンジンなどを含むもので、小型戦闘艇は近年緊張を増す中国の島嶼部への軍事圧力への抑止が期待され、ミニガンか重機関銃と複数の軽機関銃を搭載する事が読み取れます。

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【日曜特集】中部方面隊創隊五〇周年記念祭【2】荒川龍太郎総監に敬礼(2010-10-17)

2020-10-18 20:04:14 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■大阪府知事,兵庫県知事の祝辞
 中部方面隊創設50周年記念行事伊丹駐屯地祭がいよいよ開始されました。荒川総監が整列した部隊を巡閲します。

 中部方面総監の担当管区は陸上自衛隊の北部方面隊、東北方面隊、東部方面隊、西部方面隊をふくめた5方面隊でもっとも広い。東海北陸地方、京阪神近畿地方と紀伊地区に山陽山陰地方と中国地方に四国、なるほど地方を列挙するだけでも、その広大さが伝わる。

 訓辞と祝辞。国旗とともに旗衛兵は64式小銃を装備しています。2010年の行事ということで当時は陸上自衛隊で64式小銃が現役でした、支援部隊でもまだ89式小銃が配備されていない時代、数年前までは戦闘部隊でも64式小銃が残っている、そんな時代でした。

 橋下徹大阪府知事の祝辞。橋下府政は、当時これはポピュリズム政党なのか新保守の新しい流れなのかが未知数でした、ただ、この2010年当時は維新系統よりも自民党から政権交代した民主党がポピュリズム政党となっていまして、先進国でも早い時代に経験している。

 橋下府知事の祝辞が続く。民主主義の難点は意見集約と政策立案に政治実行という政治プロセスの正当性と正統性の時間がかかる点、独裁政治は迅速ですが正統性と正当性を欠く、しかしポピュリズムは朝三暮四で民主主義と独裁政治の難点とを包含し支持を集めている。

 井戸兵庫県知事の祝辞。2001年から2020年も知事の要職に。自治官僚、自治官房審議官を経て阪神大震災翌年から兵庫県副知事をつとめ、貝塚兵庫県知事の辞職をうけて選挙により知事となりました。貝塚知事は阪神大震災の自衛隊出動遅れを批判している筆頭です。

 井戸県知事の祝辞が続く。貝塚知事、実は阪神大震災において自衛隊災害派遣要請は県知事の権限であると把握せず、県防災訓練に自衛隊を参加させていなかったことで有名でして災害時優先電話制度も知らず批判され、逆に自衛隊は自主的に出動すべきという論調に。

 観閲行進準備の号令が掛かり方面総監部先任曹長らが一斉に駆け足へ。ところで貝塚知事時代、伊丹駐屯地祭祝辞は京阪神知事もちまわりなのですが、貝塚知事は本人がここで祝辞を述べたことはあるのでしょうか、なにぶん当方も90年代記念行事は知りませんので。

 連隊旗が4振り並びますとなかなかに壮観、観閲行進待機位置へ向かう。方面隊行事ということで、第3師団、第10師団、第13旅団、第14旅団、中部方面隊隷下部隊の師団と旅団から普通科連隊が連隊長と一部の中隊を代表で参加する、という方式を採っています。

 中部方面情報隊の観閲行進準備へ、64式小銃が今となっては懐かしい。新編が2010年というこの部隊ですが2010年代には師団や旅団に情報隊が置かれ、スキャンイーグル無人偵察機を装備する事例も、偵察隊は偵察戦闘大隊に強化され、情報重視時代を迎えている。

 第3特殊武器防護隊の除染車が観閲行進に先立ち高圧で経路に散水する。迫力ある情景で、ただ注意しなければならないのは化学兵器を中和するべく本当に高圧放水なので、目の前に除染車が通過するときには気を付けないとカメラも自分も濡れてしまう、ということ。

 ヘリコプター編隊15機が遥か摩耶の山頂その奥を飛行しています、ここに海上自衛隊ヘリコプターと航空自衛隊ヘリコプターを編隊に加えて後に編隊飛行を披露するのですが、まだしばらく先の祝賀飛行までは伊丹空港航空管制と重ならないよう兵庫の山間部を飛ぶ。

 中部方面音楽隊が入場、隊長酒井伊知郎3佐は東京芸大大学院出身だ。日本では数少ない、音楽だけで生計が成り立つという職業ともいう。大阪市音楽団も行政の無駄として2014年に解散し現在はOSWOとして公益社団法人へ、日本は芸術を理解している方が少なすぎる。

 観閲台の背景を飛行するヘリコプター編隊、流石にこれから始まる観閲行進を前に摩耶山の方角に注目している人はいないようです。薄っすらとヘリコプターの編隊が、しかしAFが機能する程度に見えるという意味は一つ、今日は素晴らしく天気がよい、ということ。

 府県旗入場、伊丹駐屯地ではこの府県旗行進撮影位置を大事にしている。まえは21府県旗が一列に行進しました。中部方面隊管内には2府19県、全国土の30%を担当し、第3師団管区では、京都府、滋賀県、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県の府県旗が行進してゆく。

 第3師団管区の府県旗、第10師団府県旗に続いて。第10師団管区では愛知県旗、岐阜県旗、三重県旗、石川県旗、福井県旗、富山県旗が行進する。第3戦車大隊の隊区である滋賀は戦車大隊偵察隊統合により伊丹に移るため、滋賀県が第10師団管区になるのだろうか。

 第13旅団管区の府県旗、第13旅団は方面隊最大の管区を担当しています。第13旅団は、広島県旗、岡山県旗、山口県旗、島根県旗、鳥取県旗、が続きます。第13旅団は自衛隊初の旅団として第13師団から改編、その直後に北朝鮮へ日本海側脅威度が高まった、という。

 第14旅団管区の府県旗、香川県旗に徳島県旗と高知県旗に愛媛県旗が、旅団前身の第2混成団創設までは四国は第13師団の管区であり、この広大な管区を防衛するために第13師団の飛行隊は固定翼機を装備していました。徳島県旗は徳島と明記してありわかりやすい。

 82式指揮通信車3両が並び第3師団藤崎護師団長が敬礼します。伊丹駐屯地の所在する兵庫県伊丹市には少し離れて千僧駐屯地に第3師団司令部が置かれています、また、師団隷下の第36普通科連隊や第3偵察隊などはここ伊丹駐屯地に駐屯し、現代の軍都といえる。

 藤崎師団長は第3師団長に続き中央即応集団司令官へ補職されました。中央即応集団は陸上総隊の創設により幕僚機構を移管する形で解散し隷下部隊を総隊直轄部隊へ移管しています、第1空挺団や中央即応連隊と第1ヘリコプター団など空中機動旅団といえる編成だ。

 藤崎師団長と82式指揮通信車を、複数の無線機と作業机を有する車両です、現代ではデジタル機器用に電源や空間、もう少し容量がほしい。この構図は個人的にらしさがでているとおもいまして、82式指揮通信車数多写真の中でも屈指の出来とおもうのですが、いかが。

 第50普通科連隊の観閲行進、徒歩部隊と機械化部隊という行進のながれで進む。第50普通科連隊は第14普通科連隊に二つ目の普通科連隊として創設、それまでは第15普通科連隊を基幹とした混成団時代の編成延長、その連隊も今や第15即応機動連隊となっています。

 連隊旗とともに敬礼を。第14旅団は第15普通科連隊と第50普通科連隊より編成されますが2018年に旅団は第15普通科連隊を第15即応機動連隊へ改編、第50普通科連隊は在来型の普通科連隊編成となっています。ある意味方面航空隊と協力すれば機動力を高め得る。

 石田和成連隊長、第50普通科連隊は2006年新編で石田連隊長は三代目の連隊長となります。新編は善通寺駐屯地で行われ、高知駐屯地に移駐、以前は沿岸部に第14施設中隊の駐屯地がありましたが連隊駐屯にあわせて高台に大きな駐屯地を造営、高知県からの要望も。

 普通科隊員の徒歩行進、中隊長は9mm拳銃を装備しレッグホルスターに。9mm拳銃P-220を装着しています、通常のホルスターとことなりレッグホルスターは素早い運動にじゃまになりそうな印象で、実際、在来型のベレッタ社製ホルスターなどは素早く抜きやすい。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】アメリカAMPV装甲共通車両とスペインピラーニャ-豪州K-9決定,ロシアSDM-1

2020-10-17 20:10:14 | インポート
■週報:世界の防衛,最新11論点
 今回は各国陸軍関係の最新情報を紹介する事といたしましょう。特に装甲車と装甲戦闘車や自走榴弾砲等の戦車以外の装備の最新動向について。

 アメリカ陸軍は8月31日、AMPV装甲共通車両の第一号車を受領しました。AMPVはM-113装甲車を中心として1960年代からアメリカ陸軍において多用されている車両体系を置換える50億ドルの将来共通車両体系でBAEランドディフェンスシステムズ社が開発を担当、アメリカ陸軍で多用されているM-2ブラッドレー装甲戦闘車車体を基本としている。

 AMPVは機甲旅団戦闘団用でXM-1283-GP汎用装甲車522両、XM-1284-MEV装甲救急車790両、XM-1285衛生装甲車216両、XM-1284-MTV自走120mm迫撃砲386両、XM-1286-MCMD指揮通信車993両が調達、開発にはジェネラルダイナミクスランドディフェンス社も提案しましたがBAEランドディフェンスシステムズ社が選定されました。

 BAEランドディフェンスシステムズ社は防衛産業再編によりアメリカ防衛産業大手を傘下に収めており、今回のAMPV生産についてもサウスカロライナ州エイケンやアラバマ州アニストンとアリゾナ州フェニックス及びミシガン州スターリングハイツに現地工場を有しており基本的にアメリカ国内で生産されます。今後40年間の米軍主力車両となりましょう。
■BAE,ブラッドレーFVを近代化
 AMPV計画に並行して既存のブラッドレーFV、装甲戦闘車についても近代化改修が行われ巨額の費用が投入されます。

 BAEシステムズ社はアメリカ陸軍との間でM-2A4ブラッドレー装甲戦闘車159両の改造について2億6690万ドルで契約したとのこと。イラク戦争に投入されたM-2A3は高度なデータリンク能力を有しますが、これにより発電能力の強化などで車内容積が圧迫され重量増大により機動力が低下、M-2A4はその改善型で防弾を強化しつつ機動力を回復した。

 M-2A4ブラッドレー装甲戦闘車についてBAEシステムズ社は既に2018年にM-7A4砲兵観測戦闘車と共に473両について3億4790万ドルの契約を交わしており、今回はそのオプション計画というかたち。六月末の契約ですが、BAE社とブラッドレー装甲戦闘車についてはパワーパック更新に関する話題が在りましたので、その関連として紹介しました。
■ハンガリー,KF-41リンクス
 ドイツの往年の名車であるマルダー装甲戦闘車を応用した次世代装甲戦闘車の話題です。

 ハンガリー陸軍は次期装甲戦闘車としてドイツ製KF41リンクス装甲戦闘車を選定しライセンス生産を行う方針について8月17日、ドイツのラインメタル社との間で契約を締結しました。この為にハンガリーにはリンクスを生産するラインメタル社との合弁企業が設立される。KF41リンクスはハンガリーのほか、チェコ軍とオーストラリア軍で検討中だ。

 ラインメタル社製のKF41リンクスは冷戦時代の傑作装甲戦闘車マルダー1の設計を応用した装甲車として2016年のユーロサトリ兵器見本市に原型のKF31が発表、2018年にKF41が発表されました、基本重量は34tですが増加装甲により戦闘重量は50tまで対応しており1140馬力エンジンにより70km/hを発揮する他、基本装備として35mm機関砲を持つ。

 KF-41リンクス装甲戦闘車は200両程度が量産されるとみられ、ハンガリー軍は20億ユーロの予算を計上しています、ライセンス生産では2024年から遅くとも2025年に潜航量産車は配備され2027年までに最初の運用部隊を編成する方針です。ハンガリー軍は2個旅団を基幹、2019年にレオパルド2A7戦車44両の導入を決定しており近代化を進めていいるところだ。
■ハンガリーKF41リンクス続報
 KF-41リンクス続報です、マルダー1の車体を更新し最新鋭の砲塔を搭載した古くて新しい装甲戦闘車です。この思いきりは日本も89式後継で見習いたい。

 ハンガリー陸軍は9月、次期装甲戦闘車としてドイツラインメタル社製KF-41リンクス装甲戦闘車の採用を決定しました。218両が導入され、その総費用は20億ドルを超える防衛力整備事業です。リンクスはドイツが冷戦時代に開発したマルダー装甲戦闘車車体を応用した新時代の装甲戦闘車で、各国に提案されていますが契約成約はハンガリーが初めて。

 リンクスにはマウザー社製30mm機関砲有人砲塔が採用され、調達契約では第一段階として2023年までにドイツ国内で製造された46両のリンクス、そして同時に導入が決まったバッファロー装甲回収車9両が納入、続いてハンガリー国内において172両のリンクスがノックダウン生産される事となっており、合弁会社が既にハンガリーに設立されています。
■ボクサーRCH-155自走榴弾砲
 16式機動戦闘車の車体には設計上で75式自走榴弾砲の砲塔を搭載し火力機動戦闘車と発展させられ得るのですが、この発想をドイツがやった。

 ドイツのクラウスマッファイ社は同社がプライベートベンチャーにて開発を進めるボクサーRCH-155自走榴弾砲の最新試験映像を八月下旬に公開した。これはドイツ軍などへ導入が進むボクサー重装輪装甲車の車体に無理矢理52口径155mm榴弾砲無人砲塔を搭載したもので、クラウスマッファイ社が生産するPzH-2000自走榴弾砲を補完する自走砲だ。

 ボクサーRCH-155自走榴弾砲の開発は2014年に開始され、2020年8月の時点では90秒間の間に行進中から射撃命令を受領し陣地進入、8発を射撃した後に陣地変換へ離脱するまでの水準となっている。なおこの8発の射撃はMRSI射撃という、角度を変えて射撃し8発を目標付近に同時段着させ、相手に陣地などへの退避猶予を与えない射撃を実施した。

 ボクサーRCH-155自走榴弾砲の乗員は2名、主砲はデータリンクによる高度な自動化を誇り、毎分6発から最大8発を射撃、射程は通常榴弾で30km、射程延伸弾で40km、ロケット補助弾で56kmといい、車内弾庫には30発の砲弾を搭載するほか、無人砲塔ではあるが緊急時には手動射撃を可能とする。同社はPzH-2000よりも安価である点を強調している。
■豪州陸軍が韓国製K-9採用
 十年近く延期されていた自走榴弾砲選定が遂に結論が出されました。我が国も99HSPの砲塔システムとKF-41車体の統合型でも提案しておくべきであったかも。

 オーストラリア陸軍は陸軍LAND 8116計画として選定中であった将来自走榴弾砲について、韓国製K-9自走榴弾砲30門とK-10弾薬補給車15両を採用すると発表した。オーストラリア軍は2010年代に選定を進めたが、提示した予算枠ではAS-90やPHz-2000等は不可能で当時実績の無かったK-9や簡易型のカエサルしか不可能で見送った過去がある。

 K-9自走榴弾砲は改良が進められFDC火力調整所よりの情報受領から30秒間で初弾を射撃可能、行軍中に情報受領の際にも60秒以内に射撃開始が可能だ。K-9自走榴弾砲はトルコへの輸出を筆頭にフィンランド軍へも輸出が成約しており、安価ではあるが旧式化が進むM-109を置き換える手頃せ堅実な52口径155mm高性能自走砲として定評を得ている。
■スペイン軍は30mm砲試験
 スペイン軍はピラーニャⅤの採用に向けて前進中です、アメリカ海兵隊のLAV-25を三世代発展させたもの。

 スペイン>ナバンティア社はピラニア装甲車用ティソナ30mm機関砲塔試験を実施したと発表した。ティソナ砲塔は同国が配備を進めるスイス製ピラニアⅤ装輪装甲車に搭載される。30mm機関砲はドイツのマウザー社製機関砲で既にスペインではASCOD/ピサロ装甲戦闘車に採用されている。ASCODとティソナ砲塔の最大の相違点は無人化されたこと。

 VCR/ドラゴン装甲車として導入されるピラニアはスペイン国産のBMR装輪装甲車等を置き換える構想で、ティソナ砲塔システムは30mm機関砲と砲安定化装置及び火器管制装置と電子光学照準システムに同軸連装機銃及び発煙弾自動発射装置を有し、必要に応じ火器管制装置は発射架に追加されるスパイク対戦車ミサイル射撃管制にも応用可能としている。
■ピラーニャからドラゴンへ
 スペイン軍はピラーニャ装甲車をドラゴン装甲車として採用するとのこと。

 スペイン国防省は八月末、ジェネラルダイナミクスヨーロッパランドシステムズ社とサンタバーバラ社の合弁会社との間でピラーニャⅤ装輪装甲車のスペイン軍仕様新型VCRドラゴン装輪装甲車348両の調達契約を締結した、この契約は製造と整備費用及び予備部品費用を含み8億7000万ドルの総額である。同装甲車の原型設計は瑞西のモワク社製だ。

 VCRドラゴン装輪装甲車は八輪式で30mm機関砲安定化砲塔を採用し砲塔にはスパイク対戦車ミサイル発射装置が内蔵される。兵員8名と乗員3名を輸送すると共に四軸の操行装置により高い小回り性能を有し、路上機動性も高い。しかし増加装甲により30t台までの戦闘重量を有し、極めて高い生存性を持つ。348両のVCRは2027年までに納入される。
■英軍はジャッカルを近代化
 イギリスのオープントップ戦闘室を有するジャッカル装甲車の改良を行う。

 イギリス国防省は八月、フォックスハウンド耐爆車両とジャッカル/ジャッカル2偵察警戒車のハイブリッド動力化試験にジェネラルダイナミクスUK(GEUK)社との間で300万ポンドの契約締結を発表した。これらの車両は2000年代のアフガニスタン派遣を契機に導入され、形状は特殊だが、各車は1両当たりの製造費で100万ポンド以上費用を要している。

 国防省はこれら装甲車両のハイブリッド動力化に当って、車体騒音静粛化による被発見性の低減を期すと共に環境省の温室効果ガス低減にも寄与するとしている。装甲車ハイブリッド動力システムはNPエアロスペース社が開発したものをGEUK社が車体に適合させる。この改修により各車は2050年代までの延命が可能になり国防費節約に資するともしている。
■ブッシュマスターを水で防護
 水もタンクに収めて並べれば装甲防御力の一端を担う事が出来るという。

 オーストラリアDST防衛科学技術局は同国陸軍が大量に運用するブッシュマスター耐爆車両の装甲強化に水タンクを応用する新技術研究を8月に発表した。ブッシュマスターはタレスオーストラリア製でM-113装甲車やトラックの後継としてオーストラリア陸軍に大量配備され、大陸砂漠地帯での戦闘に対応するべく大型の飲料水タンクを内蔵している。

 ブッシュマスター耐爆車両の装甲強化について、DSTは大型飲料水タンクの配置と形状や増設を工夫する事で路肩などに敷設された簡易爆発物IEDから車体を防護する最適形状を検討するという。具体的には爆風と破片を任意の位置に指向させ乗員区画へ致命的な衝撃と破片が飛散しない水タンク位置を目指す、重量増大となるが水は飲用などに寄与する。
■125mm砲搭載のSDM-1
 空挺部隊の最新装備として事実上の軽戦車が完成しました。我が国も60式自走無反動砲の後継となる様な装甲戦闘車共通車体に機動戦闘車砲塔を搭載したものが必要やも。

 ロシア陸軍は最新型のSDM-1スプルート対戦車自走砲試作車を8月21日、受領したとのことだ。スプルートはロシア国有企業ロステックにより開発されている。スプルートの任務はロシア軍がソ連軍の時代から配備されるPT-76軽戦車の後継という位置に在り、空挺軍や海軍歩兵といった主力戦車を戦場に輸送する手段を持たない状況での戦車役である。

 SDM-1スプルート対戦車自走砲はその名の通り戦車に対抗出来る軽量な装甲車であり、125mm戦車砲としてT-80戦車やT-90戦車と同じものを搭載している。イタリアのチェンタウロ戦車駆逐車や自衛隊の16式機動戦闘車と似たものだが無限軌道方式の車体であり泥濘などに強い。これはロシアで実績あるBMP-3歩兵戦闘車の車体を利用しているためだ。

 試作車はすでに製造されたスプルートと比較して車体制御装置やエンジン管制装置を改良している他、125mm戦車砲の射撃統制装置もデジタル型の新型となっていて、長距離での戦車戦を有利としている。試作車の試験は2022年まで実施されることとなっていて、マイナス40度から40度、海岸から砂漠や山間部まで過酷な状況で試験され採用が判断される。

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令和二年度十月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2020.10.17-10.18)

2020-10-16 20:12:31 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 今週末も自衛隊関連行事はCOVID-19感染対策により実施されません。そこで懐かしい浜松航空祭の写真とともにウィズコロナ時代における大学の在り方を考えてみましょう。

 大学講義のコロナ時代における危機感、これは前期期間中に北大路機関創設の母校にて、学生の一割が退学を検討している旨が報じられまして、コロナ時代の大学のあり方について深く考えることとなったためです。実際痛感するのは、大学がオンライン化により緊急事態宣言下を乗り切ったのは主として講義のオンライン化だけなのですよね。充分なのか。

 一回生は本当に大変だと思う。高等学校から大学へ、大学へどう入学するかの勉強方法を教えることはできても、大学生とはどういうものかを教えることは高等学校では出来ません。そして大学生、怠惰に過ごす事も勤勉に過ごすことも学生の自主性、裁量に任されているのですが、怠惰と勤勉の定義は学生自身がOJTのように身につけている。今はどうか。

 OJT,オンザジョブトレーニングは学生ではなく社会人が企業教育において用いる手法ですので学生身分には概念としては適合しません、が、講義内容を見極め、その上で専攻に繋がる知識分野の裾野構成、そして研究方法、資料解析からフィールドワークまでの一連の流れは、大学という空間の中で身につけるもので、オンラインには限界があるように思う。

 オンライン教育に限界がある、これは企業で既に強く指摘されている点です。日本では大学生が大学で得た研究結果をそのまま活かせる職場は、もちろん司法書士や弁護士、理系の研究者でそのまま研究室から指定された企業を除けば、少数派です。基本的に企業内教育とOJTにより必要な人材を養成している、これがコロナで無理矢理絶たれている、と。

 実感はあるのか。学生という身分となることはできても、学生という本分を修得できていない、実感の乖離があるように思います。いや、対面講義は限定的に再開しているし、施設利用も緩和している、図書館も開いた、という反論はある、その通りです。しかし、限定的なのですよね。事業評価ではありませんが実感に大学当局の認識と乖離があると思う。

 オンライン自主ゼミは一つの選択肢として前回提示しました。研究に資する資料、体系書でも研究書でも原書でも邦訳体系書でも良いのですが、大学が輪読の場をオンラインに設定し、裾野分野となる論理体系構築に資する知識習得を大学が後押しする機構を構築するのです。そして知識内部化に甘んじるのではなく、大学が評価基準を明確化するべきです。

 本学ではオンライン自主ゼミによる課外活動を重視しており、この学生は、と。要するに輪読に参加した学生の水準を就職活動や大学院進学に際し明確に数字を示せるようにする。大学には負担もあります、第一に広報、企業にその取り組みが周知されなければ通信料の無駄に留まります。HPの容量も負荷が掛かります、がやるべきだと思う。大学の為にも。

 TA、ティーチングアシスタント。大学院生による講義助手制度も拡充が必要となるでしょう、オンライン自主ゼミを実施するといって、輪読が機能しているか方向性が逸脱していないか、教授準教授講師が一人指導する事が望ましいのですが規模が大きくなれば人数が足りません。するとオンライン自主ゼミへTAの支援も必要になり人件費が必要とはなる。

 オンライン留学という制度も必要でしょう。具体的には大学の海外提携校オンライン講義を傍聴し、また評価を得られる制度の構築です。手続きの煩雑さは多々あるかもしれませんが、NHKで海外大学の講義だけを視聴するようなものではなく、大学単位として海外大学の名前を示せるのですから、学生の達成感には大きな飛躍となるのではないでしょうか。

 このままで良いのか。素朴な疑問は此処です。このままでも年内にワクチン接種が開始されるならば問題はありません、いや年度内でもなんとかなる、が、厚労省からのワクチン接種計画は、そもそも全国民接種を挙げても、どこで接種させるのかの大綱もありません、ワクチンは予防薬で治療薬ではない、接種施設で感染拡大しては本末転倒といえましょう。

 ウィズコロナ。一過性ではなく、COVID-19の影響は長期化します。ワクチン完成は早くとも来年、それも一応は安全性を確保しなければ数年後に大規模な薬害訴訟となりかねません。注射が必要で錠剤のような経口ワクチンではないため、全国民分のワクチン接種計画はアベノマスクのような郵便送付だけで終わるものではありません。時間が掛かります。

 打つ手なしではなく、大学は色々模索している話は聞きます、が、充分ではない、少なくとも伝わってこない、大学生が実感できる水準にはほど遠い現実があります。すると多少は対面授業を行っている高等学校から、現状の大学に進学するよりは、コロナ影響が長期化した場合、大学が見放され進路に高卒就職と企業OJTが大学の教育や研究に取って代る危機感がありますね。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・今週末の行事なし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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たいげい(3000t型潜水艦一番艦)命名式,空母狙う新型潜水艦はリチウムイオン電池方式採用

2020-10-15 20:08:51 | 先端軍事テクノロジー
■たいげい,潜水母艦大鯨を継ぐ
 3000t型潜水艦として建造が進められていた新型潜水艦が遂にそのベールを脱ぎました。そうりゅう型の写真などと共に新潜水艦を紹介しましょう。

 たいげい。10月14日、三菱重工神戸工場において平成27年度計画潜水艦、8128号艦3000t型潜水艦一番艦が進水式を挙行し、臨席の岸信夫防衛大臣による命名式において新潜水艦は“たいげい”と発表されました。3000t型潜水艦の一番艦にあたり、たいげい型の一番艦となりました。たいげい、は今後艤装工事進め2022年3月に就役する計画となっています。

 大鯨。旧海軍の潜水母艦名を引き継ぐものです。大鯨は1924年竣工し基準排水量は10000tで、短期間にて航空母艦へ改修できる設計となっていました。1942年に空母へ改修され艦名は龍鳳、太平洋戦争を戦い抜き1946年に解体された幸運艦です。空母を狙う大鯨、意味は違いますが潜水艦たいげい、も空母を狙う任務を担う故に的を射た艦名といえましょう。

 たいげい公表値は、満載排水量のみ推測値ですが、基準排水量3000tと満載排水量4400tで長さ84mに幅9.1m及び深さ10.4m、となっています。比較対象として前型に当る潜水艦そうりゅう型の緒元は基準排水量2900tで満載排水量4200t、全長84.0mであり幅9.1mと深さ10.3m、排水量は若干増えており全長全幅は同じですが吃水のみ若干増大しました。

 そうりゅう型に続く新型潜水艦、一見しますと大きさや全長と排水量では同じようになっています、するとどの部分が新型潜水艦としての新機軸であるのかが興味深い点ですが、本型はリチウムイオン電池を採用した新時代の潜水艦です。世界の通常動力潜水艦は充電方法の多寡はあっても鉛電池が基本となっていました。充電効率は年々進んでいましたが。

 リチウムイオン電池。スマートフォンなどで実感されている方は多いと思いますが、鉛電池全盛の初期の携帯電話と比較し明らかに短時間でも効率の高い充電が可能となっていますが、これは潜水艦動力として見た場合も同様で、何しろ通動力潜水艦は鉛電池時代に完全充電まで十数時間を要しつつ、しかし最高速力では数十分しか航行できなかったのです。

 AIP方式。世界の潜水艦は従来の潜水艦がディーゼル発電機を駆動させて電池に充電し潜航する、発電機を動かすには燃焼の為に酸素が必要、という性能への天井に対して、潜ったまま発電できる燃料電池やスターリング機関を活用しました。尤も原子力へ政治的制約の無い諸国は思い切って原子力推進を採用しているのですが。するとAIPは出力が小さい。

 そうりゅう型潜水艦は川崎12V25/25SBディーゼルエンジンと川崎/コックムス4V-275R MkIIIスターリング機関を採用しています。脅威の少ない海域にてディーゼルエンジンを駆動させ完全充電し、脅威海域において哨戒機の警戒などからスノーケル等を海面上に出せない状況では、スターリング機関により航行、攻撃運動の際等に電池を使用しています。

 川崎/コックムス4V-275R MkIIIスターリング機関はこの分野で先進的なスウェーデンのコックンス社製エンジンをライセンス生産しています。実は海上自衛隊も、うずしお型潜水艦の時代に酸化マグネシウムと淡水を接触させた際の熱反応を利用した独自のスターリング機関を開発していましたが、機関だけで400tを越えるものとなり、開発断念しました。

 そうりゅう型潜水艦の川崎/コックムス4V-275R MkIIIスターリング機関による速力は数ノット、といわれています。2ノットか9ノットかは発表されていません、最高速力20ノットと比較すると低速です、ただ、これまでの潜水艦はバッテリーを使い切ると浮上し降伏するか撃沈、と厳しい選択肢でしたので、数ノットでも心強い性能であった事は事実です。

 おうりゅう。そうりゅう型潜水艦の11番艦ですが、防衛装備庁の研究によればAIP機関である川崎/コックムス4V-275R MkIIIスターリング機関を取り外して、リチウムイオン電池を搭載した場合は、誇張も含むと思われますが、数日の訓練ならば出航して帰港するまで充電が不要、といわれるほど蓄電能力と航続距離が延伸される事が判明し、決断しました。

 おうりゅう型潜水艦、将来にはこう区分されるのかもしれませんが、そうりゅう型潜水艦の最後の二隻はリチウムイオン電池潜水艦として建造されています。しかし、AIP区間等の設計はリチウムイオン電池搭載に特化したものではなく、使い難かった背景があるのかもしれません。たいげい、たいげい型潜水艦はリチウムイオン電池搭載に特化した設計だ。

 日本海軍は潜水母艦として、豊橋、駒橋、迅鯨、長鯨、そして大鯨、剣埼、高崎、と建造しています。実は新潜水艦はリチウムイオン電池推進方式故に軽巡洋艦の艦名となった河川名が冠せられるのかな、と考えていたのですが、思い切って巨大な潜水母艦の艦名を踏襲した新型潜水艦、たいげい進水へ海上自衛隊が寄せる期待が、垣間見えるようですね。

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新幹線国際輸出研究【4】高速運行と遠隔安全管理-各国高速鉄道事故と新幹線運行システム

2020-10-14 20:01:32 | コラム
■本日十月十四日は鉄道の日
 新幹線を安価に安全で、とした場合に単線を提示しましたがその遠隔安全管理と保守システムの管理が一つの課題となりましょう、どうするか。

 F-35戦闘機の技術を将来新幹線N-700Xに、という表現は少々大袈裟ですが日本の新幹線が海外輸出とともに日本国内で進む少子高齢化に対応するにはF-35戦闘機が有する列線整備能力の自動化の手法から学び採らねばなりません、列線整備においてF-35戦闘機は機体にタブレット端末を接続することで整備部分をかなり自動化し、迅速化省力化しました。

 F-104戦闘機のブレーキ技術が東海道新幹線0系の開発に応用された、と都市伝説があります。F-104をライセンス生産した三菱重工小牧南工場と0系新幹線を製造した日本車両豊川工場が同じ愛知県に所在していたことで、技術交流の中で醸成されていったようで、F-104の制動装置が0系新幹線に転用された訳ではないのですが、こうした表現があります。

 0系新幹線の流線型の車体形状が旧海軍陸上攻撃機銀河の設計に影響を受けてはいたようですが。しかし、完全模倣ではなく技術協力を受ける事で次世代車両開発へ応用することは重要です。タブレット端末を利用した車両状況把握が可能となれば、まだ、職人芸という領域が若干残るものですが、先端機器と自動化技術を開発出来れば、大きな進歩です。

 本論の視座である新幹線輸出に際しても、例えば自動化を行う事で熟練作業員でなくとも車両整備を十分行う事が出来れば、日本人職員のアフリカや東南アジア、南アジアや中央アジア、南米での運行支援に直接派遣せず対応できるでしょう。鉄道車両に重要な車輪部分も摩耗や微細損傷についてもタブレット端末での写真撮影解析技術が打開策となりうる。

 保線業務についても、無人航空機技術を応用したならば、運行時間内での線路保線が可能となりますし、徒歩による設備検査やドクターイエローの愛称で親しまれる新幹線923系電車のような専用車両を新規に導入せずとも最小限度の補選は可能となるでしょう。また、駅業務自動化は自動券売機の技術により日本で培った駅業務システムを輸出に応用できる。

 日本の新幹線輸出に対し、中国が全面的な鉄道運行システムを運行人員から教育までパッケージ化し提案しているのに対し、日本がJR職員の世界規模での派遣体制を組むことは、そもそもJRにそれだけの余剰人員は無く、そもそも労働人口での日本と中国の規模の違いから限度があります。したがって、日中が同じ土俵で技術を競う事にも意味はありません。

 JR西アフリカ、JR東南アジア、こうした子会社を創設する事にも無理があります、できたとしても日本での本社採用要員を派遣するには限界があるでしょう。それならば、どこまで運行支援や整備支援を自動化できるのか、という枠組みで対抗するほかない。そして、その技術構築は日本の少子高齢化に伴う労働力不足へも将来的に大きく寄与するでしょう。

 東急電鉄、今年に入り架線トラブルによる火災事故等、人身事故には至らないものの長時間の運休を強いられる技術トラブルが相次ぎ、国土交通省が原因究明を命じました。これに対し東急電鉄は鉄道事業者の労働力不足が影響しているとの非公式回答を示しています。やはり、保線や架線維持等への自動化は輸出以外、日本の鉄道維持にも欠かせないのです。

 輸出という視点からこの論点を整理してまいりましたが、合わせて日本国内に資する視点が必要であり、この為にも海外へ簡単に運用できる体制と自動化の技術を、日本国内の鉄道線維持に関する技術に応用させる形で構築してゆくのならば、総益性ある輸出事業となるでしょう。また、中国高速鉄道方式に対抗する日本型新幹線システムとできるでしょう。

 新幹線システムの衝突事故回避への安全性をどのように考えるか、またその安全性をどのように輸出事業に際し理解させるか、これは非常に重要な施策です。実のところ高速鉄道事故は在来線事故とは比較にならない大規模な人的被害を確実に引き起こします。また数百km/hの車両同士の事故において衝撃を吸収する技術は、現代技術では実現できません。

 日本の新幹線システムは1964年の開業以来、脱線事故を起こしていません。正確には負傷者は出ていませんが2004年新潟中越地震での新幹線とき325号脱線事故、2011年東日本大震災での東北新幹線回送列車脱線事故、2016年熊本地震での九州新幹線脱線事故が発生しています。震度六強から七では脱線事案が発生しましたが停車が間に合い、幸いでした。

 新幹線は衝突回避原則、1995年の阪神大震災において直下型地震により山陽新幹線高架崩落事案が発生しており、営業時間外であり列車脱線事案は起きていません。また、信号装置と自動列車制御装置により衝突事故を開業以来半世紀以上発生させていませんが、世界の高速鉄道でここまで安全性を徹底している国は逆に例外的と言え、これが理解されない。

 1998年ドイツICEエシェデ鉄道事故ではICE-1型車両が200km/hで高速走行中に車輪が金属疲労で変形し競合脱線を誘発、この結果編成の中間部分が脱線したまま先頭車にけん引されている状況を運転士が気付かず、橋梁通過時に橋脚部分に脱線車両が高速で衝突、先頭車はそのまま走り続け5km先で停車、結果101名の犠牲者が出る大惨事となりました。

 2011年温州市鉄道衝突脱線事故ではCRH1B型特急電車が停車中に高速走行中のCRH2E型車両が追突し、中国政府は犠牲者が40名を超えたところで救出活動を終了し、捜索が完了していない変形した事故車両を事故現場に埋める措置を取りました。四日間で事故車両すべてを高架下に埋葬を完了、今も中国高速鉄道安全性へ世界から疑義が向けられている。

 2013年スペイン国鉄サンティアゴ・デ・コンポステーラ列車脱線事故では240名の乗客が乗る730系高速列車アルビア号が急曲線区間にて脱線転覆した事で79名が犠牲となりました、制限80km/h区間を190km/hで進入した事による脱線事故で、運転士が列車運転中に携帯電話にて通話を行っていた事による速度制限見落としがその事故原因となっています。

 ICE事故では日本の分散動力方式新幹線車両では脱線したまま高速走行を継続することは動力装置断線を通知するためにあり得ません、中国高速鉄道高速事故では新幹線の制御システムでは停止している車両に後続列車が衝突することはあり得ません、スペインアルビア号事故も自動列車制御装置を搭載する日本の新幹線では起こり得ない事故と断言できる。

 しかし、日本の制御システム程確実な制御システムはむしろ常識外であり、それよりも頑丈な車両により万一の高速車両同士の衝突事故に際しても人命を保護できる方策が求められます。こんなものは先頭車と最後尾を機関車とし、機関車両の3両から4両程度を貨物車として衝突時の衝撃緩衝材にでもせねば、墜落しても安全な飛行機と同程度に難しい。

 衝突しても安全な列車を求める趨勢はアメリカ高速鉄道建設計画において受注条件に示され、JR東海は高速で衝突した場合にも安全性を確保できる車両を開発することは不可能であり、列車制御システムにより衝突事故を回避するほかは安全な高速列車の構図はあり得ない、として辞退しています。日本の安全性を世界に理解させる事が輸出可否の要諦です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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検証:防衛省令和3年度概算要求5兆4897億円(2)いずも型護衛艦へのF-35B戦闘機搭載改修

2020-10-13 20:01:18 | 国際・政治
■いずも型改修へ231億円要求
 日本の防衛は日本からはるか離れた地域での周辺国プレゼンスが影響する時代となり、自衛隊は友好国と連携を強化するプレゼンスオペレーションを開始しています。

 全通飛行甲板型護衛艦へのF-35B搭載、一昔で有れば将来的に必要な装備であると考えられつつ、防衛予算に盛り込むには概念研究や識者意見などを募るという印象があり、明確に現防衛大綱へF-35B戦闘機、垂直離着陸が可能であり護衛艦から運用可能となる航空機の導入計画が明示され、42機の配備が明確化された際には早いと驚かされたものでした。

 いずも型護衛艦の改修として231億円が要求されています。これは飛行甲板の耐熱改良を行うとともにF-35B戦闘機を安全に運用するべく艦首形状を四角へ変更する予算として要求されています。堂々とF^-35Bを護衛艦から運用する、こう明言されるようになったことは時代の変化を感じるというものですが、そのままでは最大限性能が発揮できないとも。

 F-35Bは既に航空自衛隊に配備されているF-35Aの短距離離着陸型で、機体にファンを追加したために、その分燃料搭載量が圧迫され航続距離は若干小さくなっていますが、垂直離着陸さえも可能となっています。ただ、垂直離陸は非常に多くの燃料を消費し、特に搭載装備品が重ければ重いほどこの状況は顕著となり、これはあのハリアーでも同様でした。

 ワスプ級やアメリカ級、F-35Bは既にアメリカ海軍やイギリス海軍において運用されています。そこでアメリカ海軍では強襲揚陸艦における運用で90m前後の距離を短距離発艦させる方式を採用しています。イギリス海軍ではハリアーの時代から12度前後の"スキージャンプ台"を設置し跳躍させていますが、アメリカ海軍では制海艦時代からこの方式です。

 いずも型護衛艦は満載排水量27000t、全長248mあり、F-35B戦闘機を短距離発着させるには十分な長さを有しています。しかし艦首形状は中央に沿って台形形状となっており、もちろん強襲揚陸艦は22ノット、護衛艦は30ノットですので艦が進むことで発する合成風が大きく、加速分の揚力を艦が稼ぐ為、もう少し短くともよいとも考えられたのですが。

 艦首形状変更の背景とは。F-35Bを発進させる際、短距離滑走を行うとしますと、今の美しい形状、DDHカーブと勝手に命名しているのですが、これでは船体軸線の中心を滑走する必要があり、飛行甲板に次発艦機の待機場所が確保出来なくなる、という考えなのかもしれません。艦首を四角とすることで舷側に短距離発艦経路を確保出来ることとなります。

 来年度予算概算要求には含まれていませんが、いずも型とならぶ海上自衛隊もう一つの全通飛行甲板型護衛艦、ひゅうが型の去就についてF-35Bの搭載が触れられていません。実は既に事業評価書において、おおすみ型輸送艦、ひゅうが型護衛艦、いずも型護衛艦、以上三型が検討された際、おおすみ型は過小となっていますが、ひゅうが型には余地が。

 ひゅうが型護衛艦、海上自衛隊は四個護衛隊群編成を護衛艦隊の基本編制としており、第一護衛隊群いずも、第二護衛隊群いせ、第三護衛隊群ひゅうが、第四護衛隊群かが、という配備状況となっています。ひゅうが型にF-35B搭載を度外視するのであれば、護衛艦隊を構成する護衛隊群の各々の任務遂行能力について大きな格差が生じる事となるのですね。

 あさしお。ひゅうが型の艦過小が指摘されたのに対し、例えば船体を延長するという選択肢はないでもありません、ロシア海軍が空母アドミラルクズネツォフに対し検討したことがありますし、海上自衛隊では潜水艦あさしお、がディーゼルエレクトリック方式からAIP潜水艦へ改修される際に船体を15%延伸しています。この可能性はあるのでしょうか。

 ひゅうが型全長は198m、これは接岸や出入港に際し200mを越える場合は手続きが煩雑になるという、道路交通法から自衛隊の装甲車が2.5m車幅に拘るのと似た背景があるのですが、対して次型いずも型は248mです、198mでは200mと同等の港湾規則を要求されたという事情故なのですが、ここで15%のブロックを挿入できれば、全長は228mとなります。

 船体延伸が可能ならば実用性は高くなりますが、しかし復元性などの問題から簡単に延伸できるものではなく、すると、将来的に護衛艦ひゅうが型を今後護衛艦配備が本格化する掃海隊群へ移管し掃海輸送ヘリコプター母艦やコマンドー空母として水陸機動団輸送支援、そして指揮統制中枢艦として運用され、護衛艦は別枠で建造される可能性もあります。

 いずも型護衛艦への改修、231億円の要求が同型二隻に対するものなのか、一隻分であるのかについては明示されていません。ただ、艦首部分の形状変更は必然的に年単位の造船所での工事となり、二隻を同時に実施する事は全通飛行甲板型護衛艦の運用ローテーション、各護衛隊群へ一隻のみ配備されている現状からは考えにくく予算配分は大きな関心事です。

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北朝鮮版ストライカーMGS開発か?朝鮮労働党結党七五周年軍事パレード,日米対抗を強く意識

2020-10-12 20:01:45 | 先端軍事テクノロジー
■BTR-60派生型の機動砲型か?
 自衛隊の同系統の車両にて代替しますが、10月10日の夜間に北朝鮮が大規模な軍事パレードを実施しました、その際に注目すべき幾つかの装備が初公開されています。

 ストライカーMGSに酷似した車両が北朝鮮により量産され10.10朝鮮労働党記念日軍事パレードに参加している。こんなお話しをお寄せいただきました。丁度当方は曼殊院門跡でも散策するべく準備していたところですが、朝鮮中央通信が大量の軍事パレード写真を開示しており、確かに多数のロケット兵器や新型戦車と共にそうした車両がありました。

 陸上自衛隊の軽装甲機動車に酷似した装備も指揮官車として登場、フランスのVBLやロシアのティーガー等とは違ってボンネット形状や扉の形状、後部ハッチの位置まで類似というよりはそのまま、という装備の登場に、なるほど、遂に日本製の装備品も模倣される水準になったのか、ようやく軽装甲機動車が模倣された、少し感慨深いものはありましたが。

 北朝鮮の新型兵器はストライカーMGSのような新型装備を開発し得るのか。ストライカーMGSとはM-1128ストライカー機動砲でありM-68/105mm戦車砲と自動装填装置を一体化させたものをストライカー装輪装甲車に搭載、毎分6発から10発程度の自動装填による射撃が可能でありM-900徹甲弾を用いた場合、2000m以遠でT-72戦車を撃破可能です。

 M-68戦車砲の原型はロイヤルオーディナンスL-7戦車砲であり、これは陸上自衛隊74式戦車の主砲としても知られるものです。ただ、北朝鮮軍事パレードは朝鮮中央通信以外本年は北朝鮮がCOVID-19対策により外国人記者は勿論政府使節を含め入国を禁止している事から、鮮明ではあるものの拡大難しい朝鮮中央通信の公開画像の他、画像がありません。

 北朝鮮の新型装甲車、ストライカーMGSとは異なる形状だな、と感じたのは車長が敬礼する様子からみてとれました、操縦手の隣に立って敬礼しているのですね。ストライカーはじめ原型のスイス製LAVはフロントエンジン方式を採用し操縦手の隣はエンジンです、従って此処に車長用ハッチを置く事はできないのですね。すると何か原型車があるのですが。

 BTR-60装甲車かBTR-80装甲車、北朝鮮はこの改良型としてM-2010、これは北朝鮮が型式名を公開しない為に便宜的にアメリカ国防総省が冠したコードですが、BTRシリーズを国産化しています。恐らくストライカーをコピーしたのではなくソ連製RTRシリーズの車体に増加装甲を配置し、ストライカーと共通するような形状に成形したものでは、と。

 D-30/122mm砲に似ている。北朝鮮の新型装甲車、車体が車長のハッチ位置からBTR系統の車両であると推測したならば、では車体上に設置されている砲は何なのか、という事になります。画質が悪い為に見えにくいのですが、自動装填装置を備えているようにもみえれば、砲手を護る防盾にも見える、しかし大きな照準装置が確認できません。すると何か。

 ソ連製D-30榴弾砲に良く似ている、122mm野砲です。野砲ですので射程も15.4kmと長い。砲身上部の形状がD-30榴弾砲の駐退機と共通しているのですね、そして砲口制退器の形状ともにている、ただ、砲身の中部に排煙器のようなものが確認できまして、ここがD-30とは違います。しかし、D-30系列では中国のPLZ-89/89式自走榴弾砲が排煙器を追加しており、その系譜だとはいえます。

 装輪自走榴弾砲ではないのか。北朝鮮のストライカーMGSに似た新型車両はBTR系統の装輪装甲車にD-30榴弾砲を搭載した装輪自走榴弾砲ではないか、と考えます。自動装填装置のような無理な機構は有さず、恐らく車内に弾薬庫と砲員区画を有している、こう考えると車体後部が一段下がっているのが確認でき、BTRの戦闘室の上に砲を載せたかたち。こうしてみてみるとBTR-60の特徴である側面乗降扉も確認できる。

 自衛隊の16式機動戦闘車と比較した場合はどうか。発想としては96式装輪装甲車に60式自走無反動砲のように106mm無反動砲を搭載したもの、という発想ですので、恐らく対装甲戦闘は想定していません。実はこのBTR-60に様々な装備を載せる発想は、キューバ軍が古くから実施しており、PT-76軽戦車の砲塔や23mm双連機関砲搭載型があります、この流れといえましょう。

 装輪装甲車に搭載する意味とは、どういったものでしょうか。砲兵火力としては勿論、更に前線での直接照準による火力支援を視野とした車両ではないか。122mm砲は対戦車砲としても運用される野砲です。分離式弾薬を採用し、発射速度は毎分10発程度ではあるのですが、122mm砲弾は命中さえするならば韓国軍のK-1戦車に対してもある程度有効です。

 ストライカーMGSそっくりの装備品、その開発の目的はどういったものが考えられるのでしょうか。もっとも考えられるのは現在の在韓米軍主力の第2歩兵師団が事実上ストライカー旅団戦闘団一個だけです、ストライカー装甲車へ対抗手段誇示が目的として考えられます。この種の装備は火器管制装置が重要なのですが、その命中精度は別とすれば、口径と射程は、野砲ですから長く、アメリカの砲よりも強力だ、と政治的な誇示は出来るでしょう。

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