北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

核シェアリング論争(2):軍事論も国際政治上の覚悟も無い日本維新の会馬場代表ロイターインタビュー発言

2023-07-27 20:16:12 | 国際・政治
■政治家としての覚悟
 日本維新の会馬場代表ロイターインタビュー発言は単なる放言として無視されているのかもしれませんが、とんでもない。

 ニュークリアシェアリングについて、現在アメリカがニュークリアシェアリングとしてNATOに供与しているのはB-61核爆弾で、これはオランダとイタリア及びトルコのNATO施設に備蓄されている事が公表されています。ニュークリアシェアリングの理念そのものが、使用国の領域内で投下する、というものですから、この場合日米同盟では難しさが。

 日米安保条約では指揮系統の統合までは踏み込んでいません、するとニュークリアシェアリングを行った場合でもどういった状況で核兵器を日本に供与し使用するのかという枠組みを、指揮系統を統一化しておく必要があるのですが、現在の法制度をどれだけ拡大解釈したとしても、抜本的な新法を制定し日米の指揮系統を統一化しなければ不可能だと判る。

 B-61核爆弾の場合は、ある意味明白な点はありまして、B-61核爆弾は無誘導である為に戦闘機か攻撃機に搭載する他ない、という事です。ドイツ軍はトーネード攻撃機を長らくこの任務に充てていますし、オランダやベルギーなどではF-16戦闘機をこの用途に充ててきました。フランスは独自の核を持ち、長らくミラージュ2000Nを核攻撃専用機としていた。

 ドイツ空軍が次期戦闘機にフランス製戦闘機やユーロファイター戦闘機への統一を断念してF/A-18Eスーパーホーネットを選定した背景には、ドイツ空軍に残るトーネード攻撃機が最後の核兵器搭載能力を持つ航空機であり、この後継機にユーロファイターを採用すると、ユーロファイターにはB-61核爆弾運用能力が無い点が問題視された、ということが。

 ニュークリアシェアリングをドイツ空軍は今も重視しているのか、とある種感慨深い印象を受けましたが、現在、日本維新の会が想定する核兵器のシェアリングは、恐らくこうした自国内で、旭川付近や沖縄本島での自衛隊による核攻撃を想定したものではないという事が分ります。そしてニュークリアシェアリングは相手国首都への攻撃は想定しません。

 ドイツとしてはニュークリアシェアリングにはある程度の意味が在った、それはB-61核爆弾が可変出力核兵器であり、出力を5ktから50ktまで調整できるという点があります、それはニュークリアシェアリングには自国での核兵器使用をその当事国に教養するという半面、その前に相手が自国に侵攻した際に核兵器を用いる懸念がある点が忘れるべきでない。

 B-61核爆弾が可変出力を採用している背景には、相手が15ktの戦術核で攻撃を加えてきたのに50ktの核兵器で報復した場合には相手に過剰な被害をもたらし、更なる報復合戦の懸念が生じます、これが相手に通じるかについては議論の余地はあるのでしょうけれども、可変出力のB-61核爆弾は10ktの核攻撃に10ktでお釣りの無いよう反撃する意図がある。

 ドイツ国内での核攻撃を最小限度とした上で、相手に自国の装甲師団を攻撃する際に核兵器を使わせないように、相手が我が装甲師団に使うのであれば同等の威力で、と備えるものがニュークリアシェアリングにはあり、だからこそ、核兵器の使えないユーロファイターでは意味が無い、とF/A-18を選んだのですね。結局F-35に修正されているのだが。

 さて日本の場合、結局のところ、ドイツのような想定はしていないはずです、しているならば陸上自衛隊はもっと耐核防護装備を重視して装甲化を進めているはずです、核汚染地域に現在の普通科部隊は対応出来ません、ヘリボーンならば汚染地域を越えられるのですが、自衛隊のヘリコプター予算を見ればこれも完全に逆行しています、たりません。

 日本はニュークリアシェアリングを想定しようにも、本来のニュークリアシェアリングが想定する様な国土戦での核兵器の使用は難しく、特に使用した場合は国土が核汚染されると共に、自衛隊にはその核汚染地域を踏破する装備が限られる為、自身の方が被害が甚大と成り得る。ここまで考えずに発言しているとは、政治家として資質を疑わざるを得ない。

 北朝鮮が日本に核攻撃を加える懸念がある状況で、核抑止力が欲しいとするならば、アメリカの核抑止力、日本が核攻撃を受ければアメリカが対応するという日米同盟を仮に信じられないならば、ニュークリアシェアリングは役に立ちません、相手国の核攻撃を想定したものではない、そんなものが成立てば世界の核抑止秩序が核攻撃の代行により破綻する。

 政治家として、核抑止力を欲するならば正面から馬場代表は日本の核武装を主張するべきでした、国内で核実験を行い世界に正当性を主張し想定される経済制裁の影響を国民に納得させ共に耐える為のリーダシップを執るべきだった。しかし、その覚悟が無いからこそ、こういう変な理論を自分に有利に解釈している、そうした政治家は、信用すべきではない。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-M-2ブラッドレイ装甲戦闘車用いT-72戦車撃破とロシアの外国製半導体モルディブ密輸ルート

2023-07-27 07:00:13 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 自衛隊も装甲戦闘車をもう少し広範に機械化歩兵部隊として配備するべきなのかもしれません。

 ウクライナ軍がアメリカより供与されたM-2ブラッドレイ装甲戦闘車を用いてT-72戦車複数を撃破した。これはフォーブスJapanが7月21日付記事として、ウクライナのハンナマリャル国防次官の18日付発表を報じたもので、南部ザポリージャ州での戦闘においてウクライナ軍第47独立機械化旅団が防衛戦闘における戦果とのこと。

 M-2ブラッドレイ装甲戦闘車は歩兵分隊を戦闘の第一線まで輸送し且つ戦闘を展開させる装備で、アルミ合金装甲と増加装甲により車体を防護するとともに、25mm機関砲とTOW対戦車ミサイルを搭載しています。25mm機関砲は湾岸戦争において海兵隊のLAV-25軽装甲車がイラク軍T-55戦車に対して連続した射撃で撃破した事例が。

 T-72戦車については複合装甲を有するために25mm機関砲弾での正面からの撃破は困難と考えられますが、TOW対戦車ミサイルであれば充分に撃破が可能です。今回の発表はウクライナ国防次官の発表、戦時下の発表故に検証が必要ではありますが対戦車戦闘能力を持つ装甲戦闘車の有用性をウクライナ自身が認めている発言といえましょう。
■半導体モルディブ密輸ルート
 北朝鮮の瀬どり監視の様に今一歩踏み込んで世界は関心を持つべきと考えます。

 ロシアは軍用半導体の迂回密輸先にモルディブを選んでいる可能性がある、日本経済新聞が7月21日付記事として報道しました。ロシアは現在、ウクライナ侵攻に伴う経済制裁を受け、半導体の輸入が不可能となり、特に巡航ミサイルや主力戦車及び戦闘機などの生産が一時停滞しましたが、2023年4月ごろまでに回復したと発表している。

 モルディブは2022年にアメリカから輸入した半導体をロシアへ75億円分輸出しており、これは中国とトルコに次ぐ第三位の規模になっています。モルディブの人口は52万人と東大阪市と同程度、国自体は観光立国であり観光業を主体としているため、半導体の需要は殆どありません。このため、余剰分の輸出ではなく完全な密輸経由地といえる。

 ロシアはイランの協力を受けロシア国内に自爆用無人攻撃機工場を完成させており、この工場完成という一点だけをとっても、制裁逃れによる外国製半導体の供給が続くことはそのままウクライナ攻撃用の自爆用無人機が製造され続けることを意味し、また破壊された戦車などの修理や巡航ミサイルの再生産が可能となることを意味しています。

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【京都幕間旅情】貴船神社,平安遷都に遥か遡る社殿とともに考える奈良は唐招提寺の観光客による破損事件

2023-07-26 20:23:03 | 写真
■寺社仏閣と遊興地の分水嶺
 京都を散策していますと日本史や日本社会と価値観や文化の源流が見えるところが面白いのですが、関心と理解が無ければ散策するならば別の場所の方がいいのかもしれない。

 貴船神社、その創建は反正天皇の時代といい、西暦でいえば430年代まで遡ります。十年一昔といいますし、貴船に隣接する鞍馬山の名を冠した護衛艦くらま竣工が1981年ですが、しかしそれと比べても貴船神社の創建は遥か昔という表現では全く、という。

 玉依姫命、神話上の神武天皇その実母が船に乗って淀川から守側とそして貴船川を上ったという故事から、となりますが、すると神話は除いていつ頃からの社殿なのかという事が気になりますが、歴史上残っているのは白鳳6年こと西暦666年の記録まで遡る。

 鞍馬寺、その始まりに際しても東寺を造営していた当時の藤原伊勢人に託宣を行ったのは貴船神社の高龗神とされていますので、高龗神の夢のお告げがそのまま貴船神社と理解するほどには、実は奈良時代には定着していた神社だ、ということがわかります。

 歴史をある程度理解していないと、京都を観光するよりは渋谷や秋葉原でも歩き回った方がいいのではないか。世界のお客様が増える中に在って、ふと京都散歩には、単に見栄えのいい景色だけを巡るならば、日本にはもう少しほかにいい場所がある、と思う。

 唐招提寺、奈良の唐招提寺にて先日起こりました落書きの一例を以て少し考えるところが。また外人か、とおもうなかれ、日本でも沖縄の慰霊碑で悪戯をして放火した地元の若い方の事例がありましたし、京都でもおそらく多かれ少なかれ起きているようにも。

 奈良の一件は七夕の少し後の、つまりつい先日、カナダからの外国人観光客の未成年の若者が、唐招提寺が退屈だったので金堂に爪で自分の名前を刻んだ、という事件があり、ほかの観光客が通報、警察の取り調べにおいて、退屈しのぎだった、と話している。

 文化財保護法違反というれっきとした犯罪なのですが、唐招提寺の詰めによる傷の落書きは10㎝幅で削られたという事ですから、簡単には修復できません、なにしろ鑑真さんが伝法しました奈良時代の建物ですので簡単に板を張り替えるわけにはいかない。

 歴史を知らないと退屈なのかもしれないけれども、変な話、あの太平洋戦争で中国だけでは足りずにアメリカを空母の大艦隊で正面から襲い世界を相手に全面戦争を仕掛けた日本で千年単位受け継がれた寺社仏閣が京都には多い、という周知が必要なのか。

 コロッセオ、ローマでも何年か前に落書きをしたロシア人が逮捕され2万ユーロの罰金をいいわたされた事例がありますし、コロッセオが二千年前の建物だと知らなかった、という謝罪になっていないような謝罪もありました。すると観光客を迎えるのは大変だ。

 参拝者として神社は迎えており、拝観者として寺院は迎えている。ただ、見栄えのいいだけのものを見たければ、大阪城に、昭和天皇を迎えるために陸軍が第四師団司令部庁舎とともに再建した歴史はある建物、こうしたものをお勧めしたほうがいいのかも。

 京都を散策し、寺社仏閣の歴史を紐解くと、日本史や日本文化の見えなくてよい根底部分が見えてくるものです、それは非常に楽しいのだけれども、しかし写真映えするような風景だけを眺めに京都を散策するというのは、本人が満足ならばそれはいいけれど。

 文化財、こう一括りにされるものだけれども寺社仏閣は支えてきた人々の願いがある、家族旅行などで寺社仏閣を世界から敢えて京都を選ぶ際には、唐招提寺のようなことが無いように、と考えてしまうのですね。そうすることで歴史は来訪者を受け入れる。

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【京都幕間旅情】貴船神社,白馬と黒馬へ願い込めた絵馬発祥の神社で想うのは隣県多度大社は上げ馬神事の悲劇

2023-07-26 20:00:03 | 写真
■涼しさの奥に貴船神社
 鞍馬山に隣接する山手故に若干の冷涼感を感じるのは貴船なのですが考えればここからの流れが貴船川から鞍馬川と結ばれやがて鴨川となるゆえでしょう。

 貴船神社、歴史ある社殿は水を司る神社であり、創建は反正天皇の時代、つまり五世紀前半頃、治世は短期間でしたので西暦では430年代まで遡ります。天皇の陵墓は大阪府堺市の百舌鳥耳原北陵、まだ平安遷都までは遥か先の時代に創建された社殿という。

 反正天皇年間に創建された社殿、当時の首府は大阪平野にありましたが、考えれば淀川水系を辿り辿って上れば鴨川の、そしてその源流の最初の一滴がここ貴船神社といいますから、もちろん五世紀にはまだ叡山電鉄もなく、大冒険だったでしょうが所縁が分る。

 高龗神という水の神様を祀った社殿、考えれば大阪平野そのものが沖積平野であり、洪水や干ばつは、なにしろ治水という技術が漸く日本に入り始めたばかり、田畑開発を行うにもため池という概念が未だない時代、水の神様に崇敬を集めるのはある種当然だ。

 白馬を奉じて長雨の鎮定を願い、しかし逆に干ばつの時には黒馬を奉じて、茶馬は御呼ばれすることなくほっと安堵していたのでしょうが、これがいつしか馬型の板に着色して板立馬というもので代用するようになり、これが絵馬になった、と歴史があります。

 多度大社、馬繋がりで思い出すのは多度大社というやはり雄略天皇年間の、絵馬の話とともに思い出してしまうのは同じ神社の話、三重県桑名市の上げ馬神事の話題です。もともと絵馬は生きた馬を奉納する代わりに絵馬を奉納した、というものですが。

 貴船神社では絵馬、要するに馬の代用となったという貴船神社の知恵で。つまり貴船神社創建の少しのちに創建された二千年近い歴史を持つ社殿の話題で、実はこの多度大社の上げ馬神事で今年の五月、馬が骨折して安楽死、という悲しい出来事がありました。

 上げ馬神事、歴史があるかと問われれば室町時代の暦応年間即ち、西暦の1338年から1342年頃に始まった、武家による神事です。毎年五月初旬、京都ではそろそろ葵祭と第3師団祭だ、と心躍らせる頃合いに数百年間行われている多度祭の重要な一幕で。

 絵馬の話題とともに、この今年ありました馬の骨折による安楽死と、これはもう動物虐待ではないかという指摘、それに馬が急坂を登らせる際に叱咤という名の蹴りや鞭打ちが行われていたことで過去に動物愛護法違反による逮捕者も出ているというもの。

 戦車でも使ってみてはどうか。ふと貴船神社を見ていますと、上げ馬神事の話題にこんなことを思い浮かべるのですね、いわば現代の絵馬として。考えてほしいのはもともと武家の神事として始まり、今は騎兵部隊も世界中馬はほぼ用いていません、祝典のみ。

 騎兵部隊は、アメリカの第1騎兵師団などは行事用に馬を残していますが、あとはイギリスの近衛部隊やフランス軍の軽騎兵が例年の革命記念日でパレードするくらい、軍隊ではもう馬は過去のものとなっています。今は戦車や装甲戦闘車が騎兵任務を担う。

 自衛隊に要請するという選択肢はありますが、例えば海外の愛好家に依頼するとか、自衛隊へ輸送費を神社が捻出してその年度に退役する戦車や装甲車を上げ馬神事で上ってもらい、上った戦車や装甲戦闘車を、坂の上で待っていた神馬が祝福する方式でよい。

 サラブレッド、そもそも上げ馬神事は駄馬とイギリス軍に誤解された日本の在来種で行った神事を、木曽馬など在来種が減り登攀に向かないサラブレッドを用いた結果の悲劇ともいう。絵馬発祥の地貴船で、ふと現代風の神事について考えてしまいましたね。

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ウクライナ情勢-ロシアが破棄した黒海穀物合意その再開条件と原潜参加なきロシア海軍記念日観艦式

2023-07-26 07:00:40 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 今朝の話題はウクライナを侵略するロシアに関するものでロシアへの経済制裁は確かに効力を見せつけているという話題を。他方でなんとか穀物輸送船の安全を図らないと重大なリスクと成り得ます。

 ロシアが破棄した黒海穀物合意の再開についての条件は、ロシア農業銀行の国際銀行間通信協会SWIFT国際決済網への復帰と、農業関連機械の禁輸措置解除、ロシア船籍貨物船への船舶保険料戦時国家対象割り増しの解除、全世界のロシア船入港禁止措置の解除、となっています。これは船舶と農業輸出に関する大半の制裁解除要求に他ならない。

 SWIFT国際決済網への復帰要求については、ロシア農業銀行に限定して要求しているもののSWIFT国際決済網排除がロシアに対して如何に効果を示しているかを再確認させるものですが、ロシアの経済的困窮はロシアにウクライナ侵略を断念させる方向には向かわず、世界の飢餓状況を助長させロシアが逆に先進国を脅す飢餓作戦に悪用されています。

 黒海穀物合意は、もともと2022年7月にロシアウクライナ戦争を契機とした黒海海上封鎖により世界有数の小麦輸出国であるウクライナからの小麦供給が停滞したため、トルコと国連がロシアに働きかけ11月までの期限で締結、その後は11月と2023年3月に再延長されたものですが、7月17日にロシア外務省が再延長停止を発表していました。
■ロシア海軍記念日
 キーロフ級原子力巡洋艦退役など昨今ロシア海軍は暗い話題ばかり。

 ロシア海軍海軍記念日観艦式に原子力潜水艦が参加しない方針である、イギリス国防省14日付戦況報告が12日付のロシア国営通信の報道を引用し紹介しました。ロシア海軍記念日観艦式は停泊式観艦式として例年7月30日にサンクトペテルブルクで実施、首都モスクワからは遠いですが内陸部でロシア第二の都市ということで実施されている。

 サンクトペテルブルクでの観艦式は2017年より開始され、しかし原子力潜水艦が参加しないのは今回が初めてとのこと。ロシア海軍の主力は北方艦隊であり、太平洋艦隊よりも充実した艦艇を装備していますが、今回の原子力潜水艦不参加の背景には整備期間や訓練期間確保等稼働率維持のための不参加が考えられるとイギリス国防省は分析する。

 NATOとの関係を類推する場合、今回の決定は逆の意味を持つ可能性があります。北欧のスウェーデンとフィンランドは長らく武装中立国と位置付けられてきましたが、2022年のロシアウクライナ戦争を受け一転、NATO加盟申請を行いフィンランドは加盟へ、スウェーデンも加盟の見通しが出ています。サンクトペテルブルクはバルト海沿岸です。

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【防衛情報】T-7Aレッドホーク量産機初飛行!遅延重ねたアメリカ空軍次期高等練習機と50年代老兵T-38練習機老朽化

2023-07-25 20:09:04 | 先端軍事テクノロジー
■ボーイング/サーブT-7A
 この練習機は自衛隊のT-4練習機後継機問題に影響を及ぼすのでしょうか、T-7A練習機、写真はまあありものでF-2戦闘機とT-4練習機で誤魔化していますが遅れていたアメリカの練習機の話題です。

 アメリカ空軍次期練習機として開発をすすめていたT-7Aレッドホークが初飛行を迎えました。最新鋭練習機の初飛行は6月29日、アメリカ空軍第416試験飛行隊のブライスターナー少佐とボーイング社のテストパイロットスティーブシュミット主任がその初飛行を実現しました。同時にT-7Aレッドホークは歴史的な遅延にも見舞われていました。

 T-7Aの任務は旧式化がゆきすぎているT-38練習機の後継機です、旧式化、T-38練習機はその派生型としてF-5A戦闘機が挙げられ、決して高性能ではなく空対空戦闘能力では有視界に限られるものの超音速飛行が可能であり対地攻撃にも転用できるとともに兎に角安価ということでアメリカの同盟国、特に途上国へ大量供与された軽戦闘機でした。

 T-38練習機の初飛行は1959年、実に2020年代にあってもアメリカ空軍の高等練習機は、延命改修や補強が行われているとはいえ1950年代の航空機により支えられてきました。しかしこれ以上の改修は限界が来ており、また再生産が可能であるにしても1950年代と2020年代では養成する教育過程そのものが違う事から後継機が切望されていたのです。

 T-7Aレッドホーク練習機の初飛行は遅れている開発計画の取り戻しに一歩前進しました。もともとボーイングT-Xと呼ばれていた航空機開発はボーイング社がスウェーデンのサーブ社のJAS-39グリペン戦闘機設計を一部応用し開発したもので、機体形状は大きく変容し尾翼は一枚から二枚に増大していますが、開発リスクは本来低いはずであった。

 ボーイングT-Xとしては2016年12月20日に初飛行を迎えており、2017年には既に試験機5機の生産が開始されていました、ただ量産機の初飛行は実に6年間の遅延を生み、その背景には第五世代戦闘機養成を重視した新世代練習機のシステム開発とその安全性への調整、そして空軍とボーイングの意思疎通に関する問題が計画を遅延させます。

 初度作戦能力獲得について、当初は2023年が見込まれていましたが量産機の初飛行が2023年へ遅延したことでボーイングは2025年へ計画を下方修正しています。しかしこれも今後の量産機試験が開始されることから楽観的と見られ、2027年の初度作戦能力獲得が現実的と見られています、アメリカ会計検査院は更なる遅延を危惧し調整を求めました。

 アメリカ議会下院の2024年度国防権限法にはT-7A練習機取得加速の要求が盛り込まれています。これはA-10攻撃機やF-15C戦闘機にU-2偵察機とRQ-4無人偵察機とE-3早期警戒管制機などの旧型機の退役を進め、今後も使用に耐える比較的古い航空機の稼働率を高めるとともに新世代機の更新を行う。その為に新型練習機も開発を加速させる。

 T-7A練習機の課題は現在のところ二つあり、飛行制御プログラムの開発問題と射出座席の安全性問題が挙げられています。飛行制御ソフトの開発は修正が利かない規模のものが多く、そのためにソフト改修まで六年間を要しましたが、2023年前半までに改修が完了し、高速タキシー試験を経て初飛行に至りました、問題は射出座席の安全性というもの。

 射出座席については検証することなくT-38開発の数値がそのまま応用されましたが、T-38練習機が開発された1950年代とは異なり2020年代には様々な操縦士練習生が空軍戦闘機操縦要員を目指します、その中には女性割合が大きくなっており1950年代の設計と規格を応用するには無理があり、この為に射出座席と機体の大幅な見直しが実施中です。

 ボーイング社はT-7A練習機の戦闘機型と海外への輸出へ期待しています。この背景にはT-7A練習機の採算性が1000機程度販売できなければ赤字に陥る可能性が指摘されている一方、アメリカ空軍が想定している調達計画は351機であり、採算ラインを維持するにはアメリカ空軍の調達数と同数以上の、倍近いともいう、機体を輸出する必要がある。

 T-7A練習機はF-404エンジンを搭載しており機体設計でもサーブ社が協力した際に同社のJAS-39戦闘機の設計が応用されています。ただ、課題はF-35要員養成を要請するために特化した練習機であり、ラファールやユーロファイターの要員養成に最適化が未知数という点と、主翼強度の面などからミサイルなどの搭載が想定されていない点でしょう。

 T-7A練習機は、しかし複座座席の前席を廃止しレドームを拡張、レーダーを搭載することで単座戦闘機として転用可能ですし、空中給油受油能力も有しています、また主翼強度に限界はありますが胴体にAMRAAMなどの兵装架を追加することは可能なのかもしれません。しかしその為には何よりアメリカ空軍での練習機初度作戦能力確保が大前提です。

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【京都幕間旅情】祇園祭二〇二三,四条御旅所で素戔嗚尊さんと櫛稲田姫命さんに八柱御子神さん奉じる御輿を詣でる

2023-07-25 07:00:56 | 日記
■神々巡る四条御旅所
 山鉾を見上げた宵山の最中に冷涼感を感じ、これぞ御利益かと思いきやオープンキャンパスの隣のビルから冷房の冷気が流れてきただけという、これが縁というものかな。しかし本日はその先のはなし。

 祇園祭、八坂神社の神事である一か月間の祭事は、ご神体で素戔嗚尊と櫛稲田姫命そして八柱御子神を奉じた神輿が主役です。ご利益を賜ろうという訳ではありませんが、せっかくの祇園祭ということで神輿へ詣でに四条寺町の御旅所へ行ってまいりました。

 四条寺町の御旅所、阪急河原町駅のほぼ真上、修学旅行生に有名でちょっとマニアックなホビーショップなどもあります新京極のアーケードからも目の前という。そして鴨川の向こうに朱色の楼門が見えますが、その朱色こそこの祭事執り行う八坂神社という。

 八坂神社はそもそも、京都に疫病が流行した1154年前、牛頭竜王の神霊を京都に分祀することで災厄から京都を守ろうとした際の神事を再現したものです、が、COVID-19感染拡大の際には寧ろそれが感染を広げるとして長期にわたり中止されていたのです。

 山鉾巡行の様子が勇壮であり、なにより長刀鉾はじめ高さがありますので、その様子を祇園祭、と思われる方が多いようですが、山鉾巡行はもともと、この神輿が市中を巡る際に露払いをする神事というもので、前祭山鉾巡行の日の夕刻、神幸祭が行われる。

 神幸祭は八坂神社を夕方に出まして、市中を練り歩き深夜にここ四条御旅所に到着、三座の神輿がどう御旅所に入るかの歓声吶喊とともに湧き上がる熱気が風物詩なのですが、そうして還幸祭にて八坂神社に戻るまで、ここ四条御旅所に神輿はとどまるわけで。

 後祭山鉾巡行はまさしく還幸祭として戻る道中の露払い、という位置づけにありまして、神幸祭還幸祭の時には迫力に気圧される神輿へ素戔嗚尊さんと櫛稲田姫命さんにそして八柱御子神さんへ、ゆっくり手を合わせて平安を願うことができるのがお旅所です。

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【防衛情報】ドイツCH-47大量導入とCV-90markⅣスロバキア導入とリトアニアヴィルカス装輪装甲車増強

2023-07-24 20:00:52 | インポート
■■■防衛フォーラム■■■
 今週は陸軍関連の話題を11論点あつめました。先ず最初は連邦軍の立て直しに苦労しつつ国防緊急基金を立ち上げ消えつつある国内防衛産業の配慮よりもアメリカ製装備を重視するドイツです。

 ドイツ軍が導入するCH-47F輸送ヘリコプター60機の輸出をアメリカ国務省が承認しました。CH-47F輸送ヘリコプター60機の調達は85億ドルという、ヘリコプターに関する輸出契約としては2023年内では世界大大規模となります、今回ドイツへ輸出されるCH-47F輸送ヘリコプターは改良型で最新のCH-47F輸送ヘリコプターblock2仕様とのこと。

 CH-47F輸送ヘリコプター60機、自衛隊が装備するCH-47がJ型とJA型合わせて75機ですので相当の規模となります、この巨額の防衛装備品調達はドイツ連邦軍が冷戦時代に90機と大量導入したCH-53輸送ヘリコプターの老朽化があり、その後継機としてCH-47と最新型のCH-53Kを検討した結果、CH-47F輸送ヘリコプターが採用されたかたち。

 85億ドルの内訳は、機体60機、T-55-GA-714Aエンジン140基、AN/ARC-231A無線機72基、AN/APX-123A敵味方識別装置、AN/ARN-147計器発着システム、AN/ARN-153航空ナビゲーションシステム、AN/AVS-6暗視装置、IRSS機体自衛装置、EO/IR電子赤外線センサー、M-134多銃身機銃マウント、空中給油受油装置などなどが含まれています。
■パンター戦車
 ラインメタル社はドイツ政府によるレオパルド2戦車調達終了による既存車輛改良のみという路線から戦車製造施設を事実上閉鎖しており新規製造に各国への施設整備を進めている。

 ドイツのラインメタル社は数か月以内にウクライナへ戦車工場を建設しパンター戦車を量産する構想を発表しました。これは3月4日のドイツRheinische Post紙にラインメタル社のアルミンパッパーガー最高経営責任者が答えたもので、ウクライナ西部を想定し、工場の建設費用は2億ユーロ、年産400両のパンター戦車量産を目指しているとのこと。

 ウクライナ軍は深刻な戦車不足に悩まされる一方、欧州全体で冷戦終結後の戦車生産工場閉鎖を受け供給力不足となり、いま発注した戦車がフルレート生産を行った場合でも引き渡しは最短24か月後、また戦車生産を優先するためにプーマ装甲戦闘車の生産を中止したうえでの納期となっています。パンターはレオパルド2に続く開発中で新設計の戦車だ。
■ノルウェーNH-90早期退役
 オーストラリアに続いて、だ。やはりUH-60の方がいいのかNH-90は運用費用が高く飛行シミュレータで対応する姿勢をメーカーが示していますがASWやヘリボーンはシミュレータだけでは対応できません。

 ノルウェー軍はNH-90哨戒ヘリコプターを早期退役させMH-60R哨戒ヘリコプターに置き換える決定を下しました、このMH-60Rについて導入は早ければ2025年に実施されるとのことで、現在諸般の事情から2022年6月以降運用を停止しているNH-90哨戒ヘリコプターによる深刻な海上哨戒能力の空隙をいち早く埋めることが求められています。

 MH-60R哨戒ヘリコプターは6機が導入される計画で、主要費用は120億ノルウェークローネ、米貨換算で11億ドルが見込まれているとの事、ノルウェー政府は2023年夏ごろにもアメリカ政府との間で正式導入計画を結びたいとのこと。MH-60については既に2016年にノルウェー軍が導入しており、これを増勢することでNH-90を置き換えるかたち。

 NH-90哨戒ヘリコプター、早期退役を決定したのはオーストラリアに続いて二か国目となります、この背景にはNH-90の運用費用増大が挙げられています、こういいますのもNH-90は当初想定以上に交換部品の劣化が早く、交換部品費用は飛行時間当たりの所要費用がF-15戦闘機やF/A-18E戦闘攻撃機よりも高くなっており、運用国を悩ませています。
■FK-3地対空ミサイル
 日本の装備と比べてどうか、05式水陸両用戦車もタイに輸出されていますが中国製の装備はアメリカや日本もどのような性能を持っているのか興味がある。

 タイ海軍は中国製FK-3地対空ミサイルの受領を発表しました。タイでは地域防空の一部を海軍が担当しており、   今回は海軍最大拠点であるサタヒャップ海軍基地とウタパオ航空基地、そしてその周辺にあるマプタプット工業地帯やレムチャバン港なども防空を担うとのこと。タイは伝統的にアメリカとともに中国製防衛装備品を調達し均衡を取っています。

 FK-3地対空ミサイルは中国の輸出仕様地対空ミサイルですが、人民解放軍装備の輸出仕様であり、設計や運用実績は確立されている装備です。その最大射程は100㎞に達し、27000mの高高度を飛翔する目標に対しても有効との事です。ミサイルは一個中隊がレーダー射撃指揮装置1両と4連装ミサイル発射装置3基より構成されミサイルは垂直発射可能です。
■TR-85戦車の近代化
74式戦車も古いものでしたがT-55かあ。

 ルーマニア陸軍は旧式化が進むTR-85戦車の近代化改修を開始します。TR-85は冷戦時代にルーマニアがソ連製T-55主力戦車をライセンス生産したもので、基本設計が車高の低さ以外見るところの少ないT-55戦車ではあるのですが、いまのところ将来戦車計画が具体化しておらず、まだ当面はT-55系統の戦車を改良し運用し続けなければなりません。

 TR-85M1戦車が54両、TR-85戦車が103両、T-55AM戦車が220両、ルーマニア軍は357両と比較的多い戦車を保有していますが、全て旧式です。ただTR-85M1はルーマニアのNATO加盟に際しNATO標準戦力に対応するべくエンジンをドイツ製830hpに換装し火器管制装置もルーマニア製Ciclopへ換装、増加装甲を装着し重量も50tに増大した。

 後継戦車は検討されてい入るようですが、まだ。TR-85戦車が今回近代化改修の対象となる見通しで、熱線暗視装置の追加、主砲安定化装置追加による行進間射撃能力の付与、ルーマニア軍が新しく導入したピラーニャ装輪装甲車とのデータリンク性能の付与などが行われる見通しです。近代化改修は早ければ2024年にも先行試作車が製造される構想です。
■スロバキアCV-90markⅣ
 陸上自衛隊の少子高齢化時代を考えると普通科隊員は一人ひとりが重要ですので有事の際に損耗から守るための装甲戦闘車を連隊規模を見直してでも必要だ。

 スロバキア国防省はBAEシステムズ社とコヴェルシステムス社との間でCV-90装甲戦闘車の生産契約を締結しました。スロバキア軍は旧式化したソ連製装甲車の後継としてCV-90markⅣを80両導入しますが、巨額の防衛装備品調達であり、全てをBAE社参加のBAEヘルグント社から直輸入するには抵抗があり、自国内での組み立てとなりました。

 CV-90markⅣの製造は主要コンポーネントについてはBAEヘルグント社が供給しますが、最終組み立てはコヴェルシステムス社が、また維持部品や車体構成部品もスロバキアのZTS特殊車両製作所が担当することとなっています。CV-90markⅣは35mm機関砲と対戦車ミサイルを搭載し、スロバキア軍では戦車の代替として装甲戦力の中枢を担います。
■空軍JLTV統合軽戦術車両
 航空自衛隊の基地警備用の軽装甲機動車みたいな。

 アメリカ空軍はJLTV統合軽戦術車両の運用を開始しました。これは空軍第90ミサイル保安中隊に配備されたものです。JLTV統合軽戦術車両は耐爆車両M-ATVを原型にアメリカ軍が装甲ハンヴィーを置き換える装輪装甲車として大量配備を開始しているもので、巨大な四輪駆動の車体に高度な防御力とRWS遠隔操作銃塔を搭載する汎用装甲車です。

 空軍第90ミサイル保安中隊、この部隊はアメリカ空軍のICBM大陸間弾道ミサイル部隊を警備する部隊です。従来は敵特殊部隊などによるICBM基地攻撃を警戒し空軍は装甲ハンヴィーを運用していましたが、この装備では対戦車ミサイルなどの攻撃に耐えられません。JLTVの導入は貴重なICBM部隊を“その時”が来るまで防衛するため配備されました。
■コルトIAR-6940
 自動小銃というアサルトライフルよりはオートマチックライフルをしめすみたい。

 シンガポール陸軍は次期小銃としてコルトIAR-6940を選定しました。これは現在使用しているウルティマックス100Mk2分隊機銃をおき代える標準装備となります。シンガポール陸軍は歩兵用としてブルパップ式SAR-21小銃を装備していますが、コルトIAR-6940はIARインファントリーオートマチックライフルとして、分隊支援用に用いるとのこと。

 コルトIAR-6940、世界各国で採用された事例はありません、そもそも海兵隊の分隊支援火器として施策されたものですがH&K-M27-ISRが選定されコルトIAR-6940は量産されませんでした。ウルティマックスはMINIMIを軽量化したような支援火器で、コルトIAR-6940は30発弾倉を用いて精密な短連射による歩兵戦闘支援を主眼とした装備です。
■ヴィルカス装輪装甲車
 自衛隊はパトリアAMVを96式装輪装甲車の後継に選びボクサーも良い装甲車なのだろうと思いつつAMVは水に浮くしなあと。

 リトアニア陸軍は現在配備中のヴィルカス装輪装甲車を更に120両追加調達することを発表しました。ヴィルカス装輪装甲車はドイツのボクサー装輪装甲車へ無人砲塔型30mm口径のMk-44S機関砲及び対戦車ミサイルを搭載したもので、小国であるリトアニアには対戦車火力と非常に高い機動力を備えた有力な装輪装甲車として運用されています。

 アイアンウルフ旅団にリトアニア軍は68両を集中配備しており、間もなく導入される23両の納入を以て第一次契約分にあたる91両が配備完了となります。ただ、アイアンウルフ旅団には4個の歩兵大隊が編成されており、91両では2個大隊所要、残る2個大隊はM-113装甲車を装備しています。今回の追加により全てをヴィルカスで編成するのが狙い。
■TAM-2CAC中戦車
 TAMはマルダーの車体を応用した軽戦車で開発当時はそれ程はやりませんでしたが、フィリピンと続いてアメリカが装甲戦闘車由来の軽戦車的なものをつくっている。

 アルゼンチン陸軍は改良型のTAM-2CAC中戦車の評価試験を実施中です。5月13日にはアルゼンチンのホルヘタイアナ国防大臣もマグダレナ演習場において行われるTAM-2CAC中戦車の射撃試験を視察しています。第二世代の時代に開発された中戦車であるTAM中戦車をアルゼンチン陸軍はTAM-2CACへ改修し当面第一線で運表します。

 TAM-2CAC中戦車は主砲こそラインメタルRh-105-30の105mm砲のままですが、既存のTAM中戦車と比較し火器管制装置の改良と暗視装置の換装、また補助動力装置の追加によるエンジン停止状況での砲塔火器管制システムの作動等をもりこんだもので、装甲防御力を除けば旧式の中戦車を第三世代戦車相当まで能力向上することがこの改修の狙い。
■ISV歩兵分隊車両
 要するに高機動車とパジェロの中間だ。

 アメリカ陸軍はゼネラルモーターズディフェンス社との間でISV歩兵分隊車両の本格生産契約を発表しました。この契約は4月7日に結ばれたもので、アメリカ陸軍はハンヴィー高機動車の後継として量産が開始されている大柄なJLTV統合軽量戦術車両とは別に空挺部隊や空中機動部隊などに幅広く運用が可能となるISV歩兵分隊車両を配備します。

 ISV歩兵分隊車両は民生車のシボレーコロラドZR2ピックアップトラックの車体を応用しており、車体部品の90%は民生車両と同じものを用い、歩兵9名を緊急展開させる軍用車両を開発しました。この車両の利点は軽量さであり、CH-47輸送ヘリコプター機内に搭載できるほか、UH-60多用途ヘリコプターでの吊り下げ空輸にも対応しています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-ロシア軍第58諸兵科連合軍イワンポポフ少将突然の解任とワグネル処遇巡る混乱

2023-07-24 07:00:27 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 日本としては志方さんの北部方面総監時代のビックレスキューが自民党内一部で不評を買ったという話を聞いていますので政軍関係については何とも。

 ロシア軍第58諸兵科連合軍のイワンポポフ少将が突如解任されました。これはイギリス国防省ウクライナ戦況報告15日付分析として、特筆すべき内容と記され、具体的にはポポフ少将が解任に際し部下への訓示として部内公開した動画情報が外部に漏えいし、その中でロシア国防省のウクライナ戦争指導部を批判した内容が収録されていたため。

 ロシア国防省の戦争指導体制については、ウクライナ侵攻から最初の初夏まで、ウクライナ特別軍事作戦に関する作戦司令官を任命しないなど、恰も個々の軍隊が同時に侵攻した様な作戦始動の拙さが有り、また兵站計画や占領計画などがそもそも場渡り主義的となり、これが第一線のロシア軍部隊にウクライナ軍防御戦による甚大な損耗を強いてきました。

 ロシア軍では第一線でのウクライナ戦争に真剣に取り組む指揮官に対して、事実上の戦争を特別軍事作戦と言い換え、兵站や動員体制と後方支援体制に不満を持つ将校将官と、この戦争に対しあくまで局地戦という認識から動かないロシア国防省上層部との軋轢が生じており、今回のポポフ少将の解任は不満を上申したためと考えられています。
■ワグネルの処遇
 ワグネルの髑髏マークを掲げていますがこの写真の方々は自衛隊の訓練展示における仮設敵です。

 ロシアの民間軍事会社ワグネルグループについて、今後の処遇がロシア国内においてまだ不確定要素があるもよう、16日付イギリス国防省ウクライナ戦況報告に分析がありました。先ず、ワグネルは戦車や火砲などの2000以上にも上る重装備を12日までにロシア軍へ返還し、15日までには少数のワグネル戦闘員がベラルーシへ移動したとのこと。

 ワグネルの処遇について難しいのは、ワグネルはロシア軍が国際法上若しくは国際政治の観点から正規軍を派遣できない地域へのロシア軍プレゼンスを担う組織として成長し、特にアフリカ地域では鉱山警備から始まり、資源開発については事実上の経営を伴うなど、ワグネルを仲介して多数の資源獲得やプレゼンスの行使などを行ってきた点です。

 ロシア政府としては反乱を起こしたワグネルを従来通りの地位に位置付ける事には無理があるものの、一方でワグネル解体を優先しワグネルにより得たアフリカ地域や中東地域の権益を手放す事には難色が有る様で、いわば資源と権益を代償にロシア国内ではワグネルの存続とロシア国内での位置づけ要望を受け入れる余地がある可能性も指摘されます。

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【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【14】次回の観艦式は防衛大学校会場を検討すべき(2012-10-08)

2023-07-23 20:20:23 | 海上自衛隊 催事
■次の観艦式を考える
 70周年観艦式が昨年実施されましたのでもう陸上自衛隊中心の中央観閲式と航空自衛隊を中心に航空観閲式が行われれば次はすぐ。

 海上自衛隊60周年記念観艦式、過去観艦式は巨大台風直撃とCOVID-19感染拡大により二回連続で一般公開が中止されていますので、最後に公開された観艦式は2015年という8年も前の観艦式でした。この時の観閲艦はヘリコプター搭載護衛艦くらま、でした。

 安倍総理大臣が観閲官を務めた、といいますと観艦式の一般公開が遥か前の話ということがわかります。実際、見せられない国威発揚行事、というのはどういうものなのだろう、と考えるのですね。すると、もう少し多くの人に見せる工夫が必要ではないか。

 オンラインで見せている、こう反論されるかもしれませんが、すると自衛官志願もオンラインに限る、となりかねません。応募はオンラインでも可能と反論しますと、皮肉の様にいや勤務もテレワークでしか志願しません、となりかねない。見せる必要があるのだ。

 自衛隊観艦式について、フリートウィークに留まらないもう一つの後方も考えるべきではないのか、と最近考えるのです。例えば、サンフランシスコ艦隊週間のような陸上から見学できるように会場を配置しますと、5万人10万人は見学者を増やせるでしょう。

 観艦式は一般乗艦券の倍率がものすごいことになっていますからそれだけ関心がある行事なのです、そしてフリートウィークでも多数の来場者が集まっていますので、この広報機会を逃しているのはもったいないように思う。乗れないならば陸から、ということ。

 サンフランシスコ艦隊週間は有名なゴールデンブリッジを中心に出入港を行い、その様子を陸上から見るというもの。それこそ一般招待者を中心に行う観艦式は日本以外は韓国海軍が行う程度、韓国海軍の招待者枠も限られていてしかも観艦式は十年に一度のみ。

 防衛大学校に観艦式一般会場を設置して、自由公開としてはどうだろうか、こんなことを思うのですね。もちろん、琵琶湖花火大会大津駐屯地一般開放のような、単に見るだけの一般公開ではなく、東部方面総監と中部航空方面隊司令官に臨席して執り行う。

 防衛大学校ならば小原台の高台にありますので出入港の艦艇がよく見えます。観音崎から撮影される方も多いようですが、見るだけの観艦式ではなく、陸上会場というれっきとした観艦式の一場面に自由に参加できる、という方式を整えることがのぞましい。

 横須賀地方総監は、横須賀基地での式典支援任務があり参加できないでしょうが、舞鶴地方総監か呉地方総監、総監クラスが参加して陸海空行事を陸上でも行う、という方式を採れれば望ましい。式典の様子はWeb中継をオーロラビジョンに映せば理想的です。

 FH-70榴弾砲による礼砲射撃、礼砲は観音崎砲台に76mm砲が置かれていますが、せっかくの国威発揚行事ですので203mm自走榴弾砲は退役する故無理にしても、FH-70榴弾砲を一個大隊準備して礼砲射撃を行うくらいは、防衛大学校でも可能ではないか。

 礼砲は国賓19発、閣僚や大使と大将が17発、公使と中将が15発、海軍提督に当たる少将や陸空軍少将は13発、総領事と准将が11発、そして領事が7発となっています。通常礼砲に用いる廃棄装備の105mm砲ではなく、ここは155mm榴弾砲を使いたい。

 三浦半島とはいえ小原台から浦賀水道まではかなり距離はあります、ただ、艦船は意外と近くに見える、細部をみるには厳しいところですが、観艦式となれば数が多い、海上でアナウンスにより説明するには苦労するほど多数が航行しますので、見ごたえはある。

 礼砲とはいえ空包の迫力はかなりのもの。発砲焔も大きく、多分浦賀水道を航行する艦艇からも一閃の発砲焔は肉眼で見えると思います、そして十秒程度遅れて砲声が聞こえる筈だ。一個大隊並んだFH-70は陸上自衛隊広報としてもよい情景となるでしょう。

 観音崎砲台はどうするのか、と思われるかもしれませんが、海上自衛隊観艦式ではなく自衛隊観艦式という自衛隊記念日行事、つまり陸海空自衛隊の祭事なのですから陸上自衛隊が特科部隊を参加させてもなんの不思議もありません。航空機は参加しています。

 国際観艦式の時代なのですから、外国艦艇に対しては礼砲の機会がありますし、護衛隊群司令は海将補、将官クラスが多数観艦式には参加しますので、FH-70の空包射撃は、陸上でなければ見られない迫力、という展示にはならないでしょうか。このほかには。

 16式機動戦闘車による礼砲というものもあっていいでしょう、通常は野砲を用いますが数が数ですから。10式戦車や99式自走榴弾砲の空包射撃はクラッカーのような最小限の音しか出ませんので、礼砲として視覚から認識できない可能性があり、適しません。

 小原台の防衛大学校前を艦艇が航行するのは0730時から0900時にかけて、そして観艦式を終えて横須賀や横浜に船橋や木更津に艦艇が戻ってくるのは1500時から1630時にかけてです。すると、0900時から1500時まで六時間はさてなにをするのか、となる。

 祝賀飛行はそのまま防衛大学校の直上を飛行してもよいのではないかと思う。羽田管制空域に隣接する地域であり過密空域ではあるのですが防衛大学校開校祭ではブルーインパルスが飛行展示を行った事例もあり、観艦式の一環として立ち寄れない距離ではない。

 P-1哨戒機やF-35戦闘機とSH-60K哨戒ヘリコプターの編隊飛行、観艦式で飛行する航空部隊の規模は小さな航空祭よりも大きく、観閲部隊上空を飛行した後編隊を可能な限りそのまま三浦半島に転進するならば、固定翼機は10分も掛からず到達可能です。

 SH-60K哨戒ヘリコプターやAH-64D戦闘ヘリコプターにCH-47輸送ヘリコプターは固定翼機よりも巡航速度が限られるのですが、六時間中の10分15分程度の離隔時間ならば、それこそ6時間の待ち時間ならばそれほど気にならないのではないでしょうか。

 ブルーインパルス飛行展示、もう一つは観艦式の一環として飛行するブルーインパルスが観閲部隊上空での飛行展示を完了した後に、観音崎上空で飛行展示を行い、陸上会場からみられるようにできないか、ということです。短時間でも大きな広報効果と思う。

 ブルーインパルスについては燃料の関係上、また航空管制という立地の関係上で行える飛行展示には限界があることは認識していますが、水平系の飛行展示に限って短時間でも行うならばT-4練習機の航続距離はそれほど短くはありません、十分可能な範囲だ。

 ブルーインパルス、こう強調するのは陸海空自衛隊の行事ということを陸上でも体験できるように、という点です。具体的には礼砲を陸上自衛隊の特科部隊を、そして総監と航空方面隊司令官を、と記した通り、陸であっても陸海空の式典だと強調できるため。

 防衛大学校に観艦式陸上会場を設置した方がよい、こう思うのは繰り返しますが、国民の関心の高さに対して、乗せられる人数が限られているという厳しい現実です。そして忘れてはならないのは、広報が募集広報だけでなくより広い意味があるということ。

 広報については、しかし知っている人ほど労働基準法の枠外にあって、しかも昔の風習が残っているてんが特にここ21年間の予算不足をなんとか繕うような勤務体制が敷かれて厳しいことになってはいることを周知してしまうのですけれども、まあそれは。

 防衛予算は膨大かもしれないが適正に使われている、こう強調するというのは国民の防衛力への信頼にも直結しているのです。結局のところ民主主義国家に在って国民の支持というものが無ければ政治は何もできないのですから、広報は平時の実戦なのです。

 観艦式参加艦艇は横須賀基地と横浜港に船橋港と木更津港に分かれて停泊しますが、結局観音崎と防衛大学校の目の前を通らなければ相模湾の観艦式に参加できないのですから、出入港の膨大な艦艇、これを広報機会として活用しては、とおもうのですね。

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