人間にとって理性は大事ではあるが、感情もそれに劣らず大事である。そして、感情・喜怒哀楽の世界と切っても切れないのが視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚といった五感。さらに五感は不思議なことに真善美の世界とも深く繋がるようだ・・・
さて、その大事な五感であるが、縄文時代の文化に親しんでいる私は、豊かな縄文時代の土器に触れたり遺跡に行ったりする中で、彼らの五感の確かさに感動することが多々ある。彼らの温もりを5000年とかの時の流れを越えて感じることすらある。そんな経験の中から、私達は五感の使い方で本当に健全なのかと時々気になるようになってきた。特に、自分の五感からよりも与えられた情報を大切にしすぎているのでは、と。美術展や音楽会に行っても、絵画や楽曲より先に説明書きやプログラムに触れ、それは良いかもしれないが、過度となりプログラムを鑑賞しているのか音楽を鑑賞しているのか分からなくなったりする。食べる味覚の世界もそうだ。実際の味や食感よりワインだったらそのラベルがものをいったりする。昔は口にいれて食べるのを辞めたりしたが、今は賞味期限のラベルで判断したりする。
私はもともとIT企業に長年勤めていたこともあり、デジタル化にはかなりなじんできたほうだ。しかし、この20年間は、U先生から心理学を学び、その影響もあって医療・介護・教育といった世界を身近に見るようになったりした。そんな中、コロナ禍でリモートの世界が拡大し、それは我が身にも及んできた。最近はZoomなどのリモートの世界が本当に身近になりそれなしでは生活が成り立たなくなってしまった。
そして、あらためてデジタル化の限界も知るようになる。U先生は心理療法の世界でリモートは問題だと早くから言われていた。さらに、私の知人の医者に尋ねても、診断の場においてはリモートは駄目だと断言されていた。なぜ問題なのかも、わたしも遅まきながら気がついてきた。リアルとリモート。五感がうまく作動しないのか、感情の伝わり方がやはりかなり違うのだ。情報という意味ではリモートは手紙やメール、電話などには負けないかもしれないが、伝わるはずの感情はリアルとは随分違う。そんなことであらためて映画などの映像芸術などを見ても、やはりリアルに比べて伝わらない感情の世界を工夫してつたえようとしていることに気づく。
さて、縄文時代の文化は、戦後岡本太郎さん等芸術家によって発見されたと言ってもよいかもしれない。そして、縄文ブームのような現象が最近起こっている。これは日本だけでなく世界も注目しているようである。また、私も縄文時代に凝り始めてまだ10年も経っていないが、先輩諸氏の熱烈な思いは縄文土器に触ったり、遺構・遺物に五感で直接的に経験していく中で育まれてきたと思っている。
縄文土器。その破片でも良いがそれに触れた瞬間に、何千年か前にその土器を作った人と繋がる。それは五感をとおし、何か真善美を感じる瞬間と言っても良いかもしれない。運が良いことに、縄文時代の情報は、最近分かってきたことが多くなってきたとはいえ、日々の生活で触れる情報過多とも言える世界とは一線を画している。いつ、どこで、だれが何の為に、どのように、何をしたか・・など5W1Hは全くはっきりしない。従って五感でしっかり事物に触れることが認識の基盤に据えられる可能性が高いのだ。
それで良いならいいが、私は生き残るためにも、あるいは真善美に近づきつつ心豊かな人生を送るにも、五感を本当に大事にして生きることが大事だと思う。縄文文化は10,000年以上続いたといわれるが、日本の約1,300年程度の文化、勿論西欧の文化もそうだが大丈夫なのであろうか。
五感体感を大切にすること。感情の世界も大事にすること。これがこれから益々大事になると思う。昔は書を捨て旅に出ようなどと言われたが、今はどうでも良い他人の情報を捨てて、縄文人のように本物に触れよう・・かな。
7/10 心理学の世界と縄文
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森裕行
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