極寒の中欧を訪れ、ウィーン大学のフロイト像を見学したり、フロイト博物館を訪れたことは、よい思い出になった。日本に帰ってから、U先生からウィーン大学の像設置に関する裏話や、それを見に行った著名な心理学者の逸話もお聴きできた。
写真はフロイトが実際に使った長椅子であるが、室内に置いてあったので、思わずちょっと触れてしまった。冷たく、何か金属質の感じであったが、臨床心理学100年の歴史というか思いが、何かびりっと伝わったようだった。
ちなみに、フロイトを研究し、現代の心理療法やカウンセリング、傾聴に大きな影響を与えた、カール・ロジャースの有名な6条件の一つに、次の一節がある。難しい表現であるが、カウンセラーがクライアントにどう、状況に応じた愛を表現するかについてである。
「<治療者の感情移入的な理解と無条件の肯定的な関心が、ある最小限、クライアントに伝達される」
この文章で、ある最小限・・・ここが凄いところである。等価変換創造理論のcε(ものごとの本質、単語で表されるような)の理論に似ている。身近なところでは日本の伝統、和歌や俳句のような凝縮された言語表現がある。
回答は本人の中にある。決してカウンセラーや支援者の方にはないのである。cεから、それを自分の中に結晶化し、回答を育てるのは本人なのである。あくまで、最少限のもので、尾鰭をつけない。日本でも有名なフォーカシングの元祖、ユージン・ジェンドリンも日本の和歌や俳句の文化に驚嘆していたという。そんな逸話もシカゴ大学でも学ばれたU先生からお聴きした。
今日は脱線気味だが、万葉集の大伯皇女の次の有名な和歌が浮かぶ。
うつそみの 人なる我や 明日よりは 二上山を 弟(いろせ)と我が見む
謀略の時代を生き、弟の大津皇子を殺された大伯皇女の心境は、1300年以上の時間を隔てても伝わる。
傾聴のポイント 8/10