A quitter, c'est un peu mourire. とはフランスのことわざである。日本語でいえば、「別れはちょっと死に似ている」とでもいった感じなのだろうか。
日本でも気のきいたことわざや言い方はあると思うが、これはなかなかしゃれた言い方である。いつだったか大学に在職中に卒業式の後の祝賀会でスピーチをする必要があったときにこれを引用してお茶を濁したことがあった。
一般にスピーチは苦手である。特に人の前に立って話すのは長く話せば話すほど自分の底の浅さが思い知らされる。そういうこともあっていつも短い話しかしなかった。フランス語をやったことのある人はドイツ語よりも少ないから何を言っているかわからなかっただろう。
このことわざをはじめドイツ語で聞いたのだった。昔、ドイツから日本に帰るときにあるドイツの化学者の先生からこれをドイツ語で聞いた。Absieds ist ein bisschen tot.というのがそれである。あまりにもそのときそれに私が感心したので、その先生がフランス語にことわざがあると教えてくれたのだった。しかし、それも30年ほど前のことである。
そういったささいなことがいつかしらずしらずに思い出されるのも歳のせいかもしれない。