学問の世界でも嫉妬心というのはある。やはり人間のやることだからであろう。
大学でも嫉妬心から上の人が自分の下の教官をめちゃめちゃに攻撃したとか意地悪したとかいうのはよく聞く話である。そういった自分も経験したような生臭い話は書くことができない。
知人の中にはドイツで哲学を専攻していて、十分に長い間ドイツに滞在していたので取ろうと思えば学位をとることができたのだが、それをとると日本で大学に勤めることができないという理由でわざと学位をとらずに帰国した例を知っている。
またこれは前の例ほど確かではないが、ある元牧師さんの神学を学んだ人で、学位をとって帰国したときにある大学のドイツ語の先生として勤めることがほぼ決まっていたのだが、面接に行ってかその前かに不採用になってしまったという例もある。
どうも採用をするお偉方の気に障ったからではないかと思われる。それが嫉妬心によるものだった可能性は十分にある。
私は少なくとも自分のまわりで人をいじめるというような循環を断ちたいと思っていた。そういう再生産が続くといつまでたっても事態は改善されない。
もっともこのごろは大学全体が忙しくなって人のことなどかまって居れないという風になっているらしい。
いまなら、アカデミックハラスメントなどという言葉があるが、私の若いときにはそのような言葉もなかった。
自分も一生懸命に努力して若い者に負けないようにするか、または若者を励ますことをすればいいものを自分のわがままを通すために若者の足を引っ張るのは自分を顧みて恥ずかしくないのだろうか。
でも人生の生きる知恵としてやはりあまり人の目に付くようなことを控えるというのも一つの処世術かもしれない。しかし、難しいことではある。
もっとも優秀な人はこのようなことを考える必要はまったくないのだろうが。優れた先生や先輩は自分に自信があるから、励ましてくれても人の足を引っ張ったりはしないというのが、私の経験である。