物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

Sidney Colemanの講義

2021-07-14 17:09:14 | 物理学
大栗さんの『探求する精神』(幻冬舎新書)を読んでいて、Sidney Colemanの方々の夏の学校とか冬の学校とかでした講義を集めた書”Aspects of Symmetry” (Cambridge Univ. Press)のことが書いてあって、Colemanが優れた講義者であったらしいことの一端が触れられていた。

Colemanは難しいことでもわかりやすく話をすることのできるいい教師だったらしく、どこの夏の学校でもよく招待されていたらしい。

あまり詳しくは触れられていないが、その一端は私も彼の講義録を一つか二つ読んだことがあるので、わかる気がした。

そういう教育の才のある人にイスラエルの研究者のLipkinがいる。"Lie Group for Pedestrians" (North Holland)は友人と一緒に読んだことがある。これはいわゆるプログレスPTPのIOOの論文を読んでもあまりよくわからなかった後で読んだ。

その後、わかりやすい講義ノートやテクストは他にも出まわるようになったが。


高校で学ぶ物理の参考書

2021-07-14 13:33:01 | 物理学
高校で学ぶ物理の参考書を推薦してほしいという電話が知人から昨日妻のところに入ったらしい。

これは私が元大学の物理の先生であったことから妻の知人から入った電話である。

もう受験などということから遠ざかって久しいのだが、急遽インターネットの物理の高校参考書を検索して見た。

何人かの予備校の人気講師が書いた本が推奨されているのだが、現物を見ていないので、はっきりとはどれがいいとかわからない。

極端に言うとどれを読んでもそれが読めさえすれば、いいのかもしれない。もっともそれが読めるかどうかが問題なのであろう。

いや困った困った。

橋元、為近、浜島、それにもう一人の方が高校物理の受験参考書の著者としてよく読まれている4人の講師らしい。いずれも有名な予備校の名物講師である。

それに私にとっては旧知の山本義隆さんの本を入れておこう。山本さんの本は私も持っているが、微積分を使って書かれているので、私のようなものにとっては読みやすい。ただ、高校生にとって読みやすいのかどうかは私にはわからない。

つまらない、こぼれ話

2021-07-14 12:11:22 | 物理学
学問の世界で生きている人は学位をみんな持っていると思っていたが、著名な人でも例外があるということを大栗さんの『探求する精神』で知った。

これは量子電磁気学で有名なF. J. Dyson教授である。彼は終身、プリンストンの高級研究所の教授であったが、博士の学位をもらう機会を逃した人だったという。

もちろん業績は優れた学者だったので、学位をとらないうちにCornel大学の教授となり、その半年後か1年後にはプリンストンの高級研究所の教授になったという。

普通の人ならば、周りから博士の学位をもっていないから、教授に任命するのは反対だととかいう人がでるのだろうが、さすがにそういう反対をする人はいなかったらしい。

もちろん、FeynmanとSchwingerの量子電磁気学の同等性を数学的に証明した業績で特に有名な方である。

1965年のTomonaga, Schwinger, Feynmanのノーベル賞受賞の中には入らなかったが、それと同等以上な業績があると思われていた。

どこかでちらった読んだことがあるのは、そのときのノーベル物理学賞の選考委員会は別のテーマで彼、Dysonにノーベル賞の受賞の機会があるのではないかと考えていたとか。

Dysonは数年前に95歳で亡くなったが、そういう人がおられるとは思わなかった。このこぼれ話はまた大栗さんがまだ博士の学位をとる前にすでに注目される学者であったことを示していることだ。というのも彼はまだ学位をとる前にプリンストンの高級研究所でポストドクとして研究していたからである。

彼の場合にはプリンストンからシカゴ大学に移る前に博士の学位をとるので、Dysonのようなことは起らなかったのだが。

(2021.7.15付記)  博士号をとることは研究者の世界では普通のことだが、あまりにも早熟の秀才にはその学位をとるよりも、すでに研究に注目されてしまうということが起こりうるのだという話である。だから博士号を持たないからといって、それだけで価値があるわけではない。



『探求する精神』

2021-07-14 11:48:16 | 本と雑誌
『探求する精神』は物理学者・大栗(おおぐり)博司さんのいわば自伝である。

1962年生まれの世界的に活躍する物理学者である。有名な賞はほとんどもらっておられるような方である。

それらの賞の由来を知っているわけではないが、その彼の自伝ともいうべき書を3/4くらい昨日読んだ。

他の仕事はほぼうちゃって読んだ。どこがどういうおもしろさなのかはなかなか簡単にいうことができないが、独創的なことをする人は過去の学問でもよく学ぶらしい。

私などは彼の学んだという本の中の一部しか読んだことしかない。彼はほぼ独学的である。もちろん、大学には行っているのだが、独学的である。

大学時代には友人と自主セミナーで一緒に読んだ本もあるらしいが、それでもランダウの理論物理学教程などをほとんど一人で読むなど学力が飛び離れている。

今日は彼の本の残りの1/4を読むつもりである。