物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

水沢の一夜

2012-03-02 12:59:59 | 芸能ネタ

昨日、県民文化会館(ひめぎんホール)で前進座の公演があった。その中の一つの演目が「水沢の一夜」であった。

幕末の蘭学者で医師の高野長英が獄に入っていたが、火事に乗じて放免されたときに数日中にまた獄にはもどらず、逃亡生活を続けるが、母親の美也に一目会いたくて出身地の水沢を訪れるという筋の新劇である。

鶴見俊輔さんの『高野長英』によれば、母親の美也は当時水沢には住んでおらず、母親の弟の住んでいた前沢に住んでいたというから、水沢を長英が訪れたというのはこの演劇の台本を書いた脚本家のフィクションであろう。

それに長英には息子はいたが、娘がいたようには思えないので、さらにフィクションが重なっているように思える。しかし、長英役の主演の嵐芳三郎さんがおわり頃に語る台詞に「宇和島藩にはシーボルト先生の相弟子の敬作がいる」と語るときには、なんだか伊予の人に誇らしげに語りかけるような感じだった。

そのときの気持ちを本人に聞く機会があるわけではないので本当のところはわからないが、多分主演の芳三郎さんはこの台詞を語るときには、多分に愛媛の公演では観衆に親しく語るという感じを強くもっていたことだろう。

愛媛県では昔の卯之町、今の行政区分では西予市の出身の方とかその近くの宇和島の出身の方とか、はたまた愛媛県人は二宮敬作のことを知らない方はおられないだろう。

昔、司馬遼太郎の「花神」というNHKの大河ドラマがあったが、このドラマではシーボルトの娘のイネを育てたのはこの敬作であったと思う。そして、その当時宇和島藩に召抱えられていた、村田蔵六(大村益次郎)の恋人役で、浅丘ルリ子さんがイネを演じていたと思う。また村田を演じたのは現在、前進座の会長である、中村梅之助であった。

鶴見さんの高野長英の評伝を読む機会をこの公演のお陰で持てた。こういう機会がないと私などは高野長英の伝記など読み機会がなかったろう。


2 コメント

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「長英逃亡」(吉村昭、新潮文庫)でも、母親とは... (春風)
2012-03-12 22:10:29
「長英逃亡」(吉村昭、新潮文庫)でも、母親とは前沢で会ったことになっています。母親が居た水沢は長英が立ち寄る可能性が高く取り締まりが厳しいので、支援者が母親を前沢に移してそちらで会わせたとのことです。長英の子供は2男(融、理三郎)、1女(もと)がいたとのことです。吉村昭は詳細に史実を調べて書く作家として定評がありますので、信頼おけると思います。
また、イネが苦労して長崎から卯之町へ行き二宮敬作に多くを学んだことは「ふぉん・しいほるとの娘」(吉村昭、新潮文庫)にも詳しいです。
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春風様 (あおやま)
2012-03-13 11:28:56
春風様

コメント有難うございます。では長英に娘さんがいたことは確かなのですね。鶴見さんもそのことを書いていたのかもしれませんが、うろ覚えだったので。

吉村昭の小説はどれもあまり読んだことがありませんが、朝日新聞の連載の小説は読んでいました。

大学の元同僚だった、Iさんからも一度吉村昭の小説を読んで御覧なさいと言われていますが、まだ読んだことありません。

そのうちにいつか読んでみます。
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