主演のメリル・ストリープの噂通りの演技力に圧倒された映画だった。メーキャップの力を追い風にしているとはいえ、現役時代と引退してからのサッチャーを演じ分けるメリルの演技力は一人の人間が演じているとは思えないほどの迫真の演技だった。
※ サッチャー役を演ずるメリル・ストリープです。この場面が映画の広告には最も使用されているようです。
当初この映画を観る予定はなかった。
主演のメリル・ストリープが今年のアカデミー賞主演女優賞を獲得していたことを知ってはいたが、なぜか観に行こうという気持ちにはならなかった。
ところがある映画評で評論家が「あ、これはもう降参だ。認めるほかない。根負けといえば失礼だが、ここまで技を磨かれたら、兜を脱ぐほかない」と映画「マーガレット・サッチャー」の中のメリル・ストリープを評している。
この一文を読んだとき「これは見なければ!」という思いになり、映画評を読んだ翌日の4月25日、シネマフロンティアに遅ればせながら足を運んだ。映画は封切られてから日が経っているため一日に一回の上映(16時20分から)になっていた。
※ サッチャーの若き日に夫デニスとダンスを場面です。サッチャー役はもちんメリルではありません。
映画は政界を引退し、老いてしまったサッチャーが現役だった首相時代の回想シーンを織り交ぜながら進行する。
サッチャーは西洋において初めて女性として一国のリーダーになった人であり、その在任期間も最も長いリーダーとして知られている。
サッチャーはけっして名門の出ではなく、自らの才覚で政界をのし上がっていくのだが、それは英国保守党の中にあって、自らの信ずる保守思想を妥協せずに実施しようとする姿勢が評価されたからであった。
鉄の女“強いサッチャー”をメリルは鮮やかに演じている。その姿は現役当時のサッチャーを連想させるに十分な颯爽としたものである。
対する現在を描くサッチャーの姿は老いさらばえ、認知症気味の老女となり現役時代を回想するのだが、その表情、その動きをメリルは現役当時のサッチャー役以上にリアルに演じていて、評論家氏が言うように脱帽ものである。
※ 素顔の? いやサッチャー役ではないメリル・ストリープです。気品のある顔立ちですね。
ストーリーとしての映画「マーガレット・サッチャー」の評判はイマイチなのだが、メリル・ストリープ一人の演技力によってこの映画が注目される映画になったといって良い映画になったと云える。