田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

日ロ経済問題を再び考える

2012-04-26 21:49:37 | 講演・講義・フォーラム等
 某氏から「ロシアの極東重視政策と日ロ経済の活性化」という恐ろしくお堅い講演会のお誘いを受けた。私には理解が難しいのではと思いつつも、怖いもの(?)見たさに出かけてみた…。 

          

 4月21日(土)午後、北大学術交流会館においてNPO法人「ロシア極東研」が主催する講演会があった。
 講師は商社員(丸紅)として18年、外務省の現地日本センター所長して10年のロシア滞在歴を有する朝妻幸雄氏という方だった。

 朝妻氏は冒頭、日本人の対ロシア観がマスコミ報道によって歪められていると指摘した。
 そう指摘されてみると、私のロシア観も他のヨーロッパ諸国を見る目とは違い、なんとなく警戒していることに気付かされる。朝妻氏はロシア人は友好的であり日本の経済力を評価していると言う。

          

 そして朝妻氏はロシアの経済だけではなく、さまざまな分野からロシアを観察・分析した結果を私たちに紹介した。
 しかし、氏は在ロシア28年という長さからか思い入れも大きいようで、用意したパワーポイントの資料が多すぎて90分の時間ではとても説明しきれないほどの量だった。
 そうした中から、主だった言葉を紹介することにします。

◆プーチン大統領(一・二期目 2000~2008年)はロシアを経済危機から脱出させ高度成長に導いたとしてロシア国民から絶大な支持を得た。
◆この高度成長は原油価格の高騰期と重なるという幸運があった。
◆プーチンはまたロシアの国際的な威信を回復させたということもロシア国民の支持を得た要因である。
◆今後のロシア経済は安定期に入るものと想像される。
◆三期目の大統領に就任するプーチンは、ロシア経済を石油依存体質からの脱却を図ろうとしている。すなわち付加価値を付けるための製造業などの振興である。
◆そうしたとき、日本の技術や生産のノウハウはロシア経済を支援する大きな力となる。

          

◆これまでのロシアにとって極東部は人口比も小さく重要視されていなかったが、これからは①アジア太平洋の玄関口として、②アジアにおける地位確保の橋頭保として、③さらには地球温暖化によって北極海航路が拓かれる見通しが出てきたことなどから、極東重視策に舵を切るとみられる。

◆そうした状況下で朝妻氏は北海道の摂るべきアクションとして次の5点を提案した。
 ①欧露部を更に積極的に攻めよう。(極東部に比べて大きな市場)
 ②ロシアのニーズを把握して、効率的に攻めよう。
 ③大企業と中小企業、全国区と地方区が連携してロシアを攻めよう。
 ④北海道ブランドを認知させよう。
 ⑤北海道の強みを活かそう。(ex.寒冷地技術を売る。ウラジオストクを窓口にしてetc.)        

 経済には素人(全てに素人なのだが)の私には猫に小判的な話であるが、関係される方々には参考になる提案が多々含まれていたのではないかと思われた。
 さまざまな意味で一線から退いた私であるが、こうした話を伺うだけでも頭の体操にはなっている。

 ところで、今年はロシアに関する講演会を聴く機会が増えたように感じている。
 1月には「ロシアを知るセミナー」、3月に入って「ロシアの新しいリーダーと極東戦略」というシンポジウム、そして今回の講演会と続いた。実はレポートできなかったのだが、この他にも「ロシアの政治・経済の現状と課題」という講座も3月に受講している。
 こうしたことはロシアの視線がアジアに向いてきていることの一つの証しとも受け取れる。私たちにとって近くて遠い国だったロシアが文字どおり隣国としてその存在感が増してきた証拠であり、それに対して経済的にはもとより、政治的にも日本はどう対応すべきかが今鋭く問われているということが言えそうである。