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田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 142 地球交響曲 第八番 後編

2015-10-16 17:43:16 | 映画観賞・感想

 「地球交響曲(ガイアシンフォニー)」第八番は、樹には精霊が秘んでいるとの言い伝えを監督・龍村仁が汲み取り、「樹の精霊」に働きかける三名の方々を登場させ、「樹の精霊」が発する声に耳を傾けてみようと訴えかけている。

          

 映画「地球交響曲(ガイアシンフォニー)」の制作を続ける監督・龍村仁は、第八番の制作にあたって、次のようにコンセプトを語っている。

 太陽系第3惑星、地球に初めて生命が誕生して以来38億年、生命は何度も宇宙的規模の大災害に遭遇し、大絶滅の危機に瀕しながら、その都度奇跡のように甦り、新たなる進化を遂げて、私達人類は今、ここにいます。
 宇宙は、自らが生んだ生命を“可能な限り永く生かせ続けたい”、という意志を持っている様にさえ思えます。この“宇宙の意志(Universal mind)”を地球上に体現しているのが樹です。
 樹は何億年にも渡って地球の大気中の酸素濃度を21%という数値に保ち続け(ガイア理論)絶滅と進化を繰り返してきた多様な生命を生かし続けてくれたのです。世界中の全ての文化の中に、樹齢数百年の老大樹の中には、精霊が秘んでいるという言い伝えがあります。「樹の精霊」とは、「宇宙の意志」の顕われなのかも知れません。
 私達日本人の身体(からだ)の中には遥か縄文の昔から1万年近くに渡って聴き続けて来た樹の精霊の歌声が、かすかな残響波となって今も響き続けています。世界の人々が称賛する日本の伝統文化の美は樹の精霊との出会いに依って育まれ、洗練されて来た、と言えるでしょう。
 東日本大震災から3年、人智を遥かに超えた宇宙的な力に依ってもたらされた崩壊と苦難から立ち直り、真の復活を遂げる為に、私達日本人は今、何に気付き、何をなさなければならないのか!
 「樹の精霊の声、すなわち宇宙の声を聴く力を甦えらせなければならない」
と気付いた日本人達がいます。
 地球交響曲「第八番」では、この人々の想いと活動を世界に向かって発信します。地球の未来の全ての生命が健やかに、末永く生き続けることを願って…。
 

 龍村が語るコンセプトに、私が全面的に傾倒しているということではない。龍村の思考は宇宙的に拡がりをみせながらも、日本は、日本人は特別だ、と言っているように聴こえてならないのだ。そうした想いを世界に向かって発信するとしているが、果たして世界はそのことを理解してくれるだろうか?
 実は龍村の映画に通底しているのは神道への傾斜である。(といっても私は八本のうち三本しか観ていないのだが)神道がダメだと言っているのではない。果たしてそうした想いが世界で通用するのだろうか、という疑問である。
 とは言いながら、私は「地球交響曲」という映画に魅かれるのである。

          

 龍村は、この第八番において「樹の精霊」に働きかける三名の方を登場させた。
 それは、「樹の精霊に出会う」と題して、能面「阿古父尉(あこぶじょう)」を復活させた能面打の見市泰男氏とそれに関わった人たち。

          

 次に、「樹の精霊の声を聴く」と題して、東日本大震災で破壊された民家の木材を活用してヴァイオリンとして蘇生させた世界的ヴァイオリン製作者の中澤宗幸氏と彼の妻でヴァイオリニストの中澤きみ子氏。

          

 そして、「心に樹を植える」と題して、大震災前から豊かな海を取り戻すために漁民による広葉樹の植林活動「森は海の恋人」運動を続け、震災にあっても逞しく起ち上がったカキ養殖業者の畠山重篤氏とその息子・信氏。

 実は「阿古父尉」の復活の物語の背景としても、大震災と同じ2013年9月の紀伊半島大豪雨災害で、能面「阿古父尉」が眠る奈良県吉野の山奥にある天河大辯財天社は大被害を受けていた。
 ということから、今回の三つのストーリーには大災害から復活する礎として、そこには「樹の精霊」が秘んでいる、ということを龍村は言いたかったと理解した。
 樹の生命力、それは屋久島の縄文杉を筆頭として、日本各地にたくさんのストーリーが伝えられている。確かに大木、老木を目の前にした時、私たちはある種荘厳な気持ちにさせられるのも事実である。龍村の言いたいことを少しは分かったような気がしたのだが…。

          

 制作・監督の龍村仁氏は当年確か75歳のはずである。旺盛な制作欲でこれまで八作を世に出してきた。果たして「地球交響曲」第九番はあるのだろうか?