田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

アルプス観光文化の変遷

2015-10-29 16:06:19 | 大学公開講座
 スイスアルプスが世界的な観光地になったのはそう遠い昔の話ではないという。山は人々に忌み嫌われる存在だったそうだ。それがどのようして今のような世界的観光地へと変貌を遂げたのか?変遷の足跡を辿ると共に、観光文化について考えた講座だった。 

 北大観光学高等研究センター主催の「記憶をめぐる観光論」の第4講が10月22日(木)夜に開講された。第4回目は「風景と記憶 風景から読み解く観光文化」と題して観光学高等研究センターの小林英俊客員教授が講師を務めた。

                   

 正直に吐露して、今回の講義はその趣旨を理解することがとても難しかった。その要因のほとんどは受講する側にあるとは思うのだが…。それでもなんとかレポートしてみたい。
 小林氏はまず、ヒトの記憶について話された。
 ヒトの記憶には、「短期記憶」と「長期記憶」があり、短期記憶は7ケタまでの記憶が可能であるという。ヒトはその短期記憶を編集して長期記憶とするということだ。
 ここで扱うのは、もちろん「長期記憶」についてである。

           

 小林氏はスイスアルプスの観光の変遷について次のように紹介した。
 14~16世紀、人は野生の自然について、全く無関心であり、拒否感すら抱いたそうだ。
 それが16世紀末になって、ヨーロッパ人の山岳観に変化が表れ、それまで山頂や渓谷が呪われた場所と思われていたところ、そうではないらしいと思われ始めたという。
 18世紀に入り、信仰面での教養の広がりがあったという。(この点については、当時絶大な権力を誇っていた教会の考え方の変化を指しているものと思える…私の解釈)
 18世紀後半になって、科学者や作家がアルプスの価値を発見することで、「美の新しい規範」が誕生し、「ピクチャレスな美」が尊ばれるようになり、アルプス観光はヨーロッパ人に定着していったようだ。
 このことを、小林氏は「景色」は「価値が変わる」ことによって「見方が変わる」とした。つまり「観光は文化的な行為である」と…。

 ここで小林氏はサイモン・シャーマの言葉を紹介した。
 「風景とは、木と水と岩に投影された人間の創造力そのものなのだ。それは自然である前に文化であり、人間の心が創りあげたものにほかならない」

           

 観光が文化であるとすると、そこには時代の価値観が反映されてくるという。ということは、スイスアルプスの観光も当然時代の価値観を反映して変貌していかねばならない。スイスアルプス観光にもすでにその萌芽が芽生えているという。
 それは「環境に負荷をかけない生き方」ということだ。したがって、これからの観光のキーワードは「環境問題」、「健康・長寿」、「QOLへのこだわり」、「精神的充足」、「持続可能な社会づくり」、「伝統工芸、巧の技の評価」などなどであるという。

 観光の在り方が変わってきた、という報道は最近よく見聞きすることである。本講座「記憶をめぐる観光論」もそうした観点から論及されている講座だと受け止めている。