講座の趣旨は、福島の原発事故以降すべての原発が運転を停止していたが、このところ原発再稼働の動きが強まってきているが、原発事故以降法制度はどのように変わってきたのか、法は原発の安全性をどこまで確保できるのか、という点について考えてみるというというものだったと理解した。
7月28日(木)夜、北大公開講座「テクノロジーと法/政治」の第2講が開講された。当初、第2講は受講できないと考えていたのだが、やり繰りして受講することができた。
第2講は大学院法学研究科教授であり、公共政策大学院の教授でもある山下竜一教授がタイトルと同じ「原発再稼働と法」と題する講義だった。
福島の原発事故以降、安全性に対する見直しの第一歩が「原子力規制委員会」の設置だった。この委員会は3条委員会といって、それまであった「原子力安全・保安院」や「原子力安全委員会」が内閣との関連がうんぬんされたのに対して、内閣からの独立性が高い委員会として設置されたものである。
法的には、原子炉等規制法が改正され、①重大事故対策の法定化、②最新規制の既存施設への適用、③運転期間制限、などが盛り込まれ、これらに適合するが否かを「原子力規制委員会」が審査することになった、という。
また、新基準では地域防災計画を整備しなければならず、それもこれまでは3層構造の防災計画を5層構造まで整備しなければならないという多重防護の計画が求められるようになった。ところが、第5層の「発電所外の防災計画」=地域防災計画については、法的には適合審査項目外となっているということだ。立地自治体においては、地域防災計画はほぼ作成しているものの、避難計画については未整備の自治体が多いという。
また、立地自治体と原発事業者との「原子力安全協定」は法律上の制度ではないということだ。とはいえ、事業者は立地自治体、周辺自治体とのトラブルを避ける意味からも理解を得る努力をしているが、原発再稼働にあたって法的には立地自治体の了解は必要条件ではないということだ。
さて現実に話を戻すと、その改正された新基準をクリアし、原子力規制委員会が再稼働を認めたのが、福井県・大飯原発であり、鹿児島県・川内原発ということである。
しかし、新たに動き出した原子力規制委員会に全権を委任してよいものかどうか?と山下教授は疑問を呈した。
その理由について、新規制基準は、世界の最新の科学技術を継続的に導入する必要があるが、そうすると、絶えず改正を要する新規制基準を決定するのが、国民でも原子力規制委員会でもなく、世界的機関が決定する可能性が出てくるが、国の原発に関する基本的な決定権が国民(民主主義)になくてよいものかどうか、という疑問が出てくる。
さらには、新規制基準では、活断層等の直上に設置することを禁じたが、そもそも活断層だらけの日本において、それで安全性は保てるのか、という疑問もあるという。
そして、周辺自治体の避難計画が未整備のまま再稼働が行われることは「避難口なきマンション」と揶揄されるように、住民の安全性が担保されているとは言い難い状況ではないか、と指摘した。
※ 福島原発の事故調査は4つの機関がそれぞれ調査し、報告書をまとめたという。
山下教授はその中の一つ、政府事故調の分厚い中間・最終報告書を講義に持参された。
山下教授は原発の再稼働の是非について直接論及されることはなかったが、法的な側面から見たとき、原発の安全性、周辺住民の安全の確保について、現状では不十分ではないか、というトーンで話されていたように私には感じられた。
7月28日(木)夜、北大公開講座「テクノロジーと法/政治」の第2講が開講された。当初、第2講は受講できないと考えていたのだが、やり繰りして受講することができた。
第2講は大学院法学研究科教授であり、公共政策大学院の教授でもある山下竜一教授がタイトルと同じ「原発再稼働と法」と題する講義だった。
福島の原発事故以降、安全性に対する見直しの第一歩が「原子力規制委員会」の設置だった。この委員会は3条委員会といって、それまであった「原子力安全・保安院」や「原子力安全委員会」が内閣との関連がうんぬんされたのに対して、内閣からの独立性が高い委員会として設置されたものである。
法的には、原子炉等規制法が改正され、①重大事故対策の法定化、②最新規制の既存施設への適用、③運転期間制限、などが盛り込まれ、これらに適合するが否かを「原子力規制委員会」が審査することになった、という。
また、新基準では地域防災計画を整備しなければならず、それもこれまでは3層構造の防災計画を5層構造まで整備しなければならないという多重防護の計画が求められるようになった。ところが、第5層の「発電所外の防災計画」=地域防災計画については、法的には適合審査項目外となっているということだ。立地自治体においては、地域防災計画はほぼ作成しているものの、避難計画については未整備の自治体が多いという。
また、立地自治体と原発事業者との「原子力安全協定」は法律上の制度ではないということだ。とはいえ、事業者は立地自治体、周辺自治体とのトラブルを避ける意味からも理解を得る努力をしているが、原発再稼働にあたって法的には立地自治体の了解は必要条件ではないということだ。
さて現実に話を戻すと、その改正された新基準をクリアし、原子力規制委員会が再稼働を認めたのが、福井県・大飯原発であり、鹿児島県・川内原発ということである。
しかし、新たに動き出した原子力規制委員会に全権を委任してよいものかどうか?と山下教授は疑問を呈した。
その理由について、新規制基準は、世界の最新の科学技術を継続的に導入する必要があるが、そうすると、絶えず改正を要する新規制基準を決定するのが、国民でも原子力規制委員会でもなく、世界的機関が決定する可能性が出てくるが、国の原発に関する基本的な決定権が国民(民主主義)になくてよいものかどうか、という疑問が出てくる。
さらには、新規制基準では、活断層等の直上に設置することを禁じたが、そもそも活断層だらけの日本において、それで安全性は保てるのか、という疑問もあるという。
そして、周辺自治体の避難計画が未整備のまま再稼働が行われることは「避難口なきマンション」と揶揄されるように、住民の安全性が担保されているとは言い難い状況ではないか、と指摘した。
※ 福島原発の事故調査は4つの機関がそれぞれ調査し、報告書をまとめたという。
山下教授はその中の一つ、政府事故調の分厚い中間・最終報告書を講義に持参された。
山下教授は原発の再稼働の是非について直接論及されることはなかったが、法的な側面から見たとき、原発の安全性、周辺住民の安全の確保について、現状では不十分ではないか、というトーンで話されていたように私には感じられた。