「クマほど劇的に食性を変えた動物はいない」と講師の坪田教授は言う。環境に適応するために肉食から草食へ、さらには冬眠中の出産と、クマの非常識とも思えるに生態について学んだ。
講座関係のレポはなかなか直ぐには取り掛かれない。講義を受講してから、私の中で整理するまでに時間が必要なケースが多いのだ。特に北大関係の講座は私の中で咀嚼するまでに時間が取られる。本講座も実は7月6日(木)に受講したものである。
北大公開講座「『非常識』が照らし出す私たちの未来」 第2講は、北大獣医学研究院の坪田敏男教授が「クマに学ぶ ~草食を選んだ肉食獣~」と題して務められた。
クマはもともと肉食獣であったことは誰もが想像がつくのではないか?事実、クマの歯列を見ると現在も鋭い犬歯が健在である。
しかし、いつの頃からか(坪田教授でもその時期は特定できないようだ)クマは草も食べるようになったという。これは、ヒグマもツキノワグマにも言えることだそうだ。
特にヒグマについていうならば、従来はシカやサケ、あるいは昆虫などの動物性の食物が中心の生活だったものが、北海道が開発され、サケ漁が行われたり、クマ自身によるシカの捕獲が難しくなったりする中、それに代わるものとして植物が彼らの食生活の中心となっていったようだ。
ツキノワグマの年間に食するものを見てみると、春季にはブナの種子、ブナの新芽、あるいは草本類、秋季にはブナの種子、クリの種子、果実類などをその年の植物の出来によって食しているということだ。(講師の坪田教授は岐阜大学在任期間が長く、ツキノワグマの研究にも長く携わっていた)
※ ヒグマの写真をウェブ上から拝借しました。
ところがクマはもともとが草食性でないため、草食の場合はその消化率が良くないそうだ。草食性の牛やシカが約70%の消化率に対して、ジャイアントパンダの場合18%ということだ。それでも、クマは少しでもその消化率を上げるために奥歯が草を噛み潰しやすいように平らな歯を獲得するという進化を遂げているそうだ。
北海道に生息するヒグマは完全な草食性ではなく、遡上するサケを捕まえたり、シカの死骸も食したりすることから、雑食性ということが言えるが、ツキノワグマの場合は草食の割合が相当高くなっているということだ。
続いて、クマの冬眠については良く知られるところだが、出産・哺育も冬眠中に行っているという。なぜ冬眠中に出産するという不思議な習性について、その正確な理由は未だ謎らしいが、坪田氏によると生まれたコグマを天敵であるオオカミから護るためではないか、ということだった。出産・哺育する母グマの冬眠は浅いのではないか、とも坪田氏は言及した。
※ こちらはツキノワグマです。
最後にクマたちが近年人里に出没するようになったが、その要因を次のように指摘した。
①自然環境、とくに森林の構造変化 ②堅果および液果類の豊凶 ③自然災害、とくに台風の影響 ④ナラ菌によるナラ枯れ ⑤里域の管理不足 ⑥分布域と個体数変化 ⑦新世代クマの出現 ⑧保護管理(担い手)の不足 以上はツキノワグマを念頭においた傾向のようだが、ヒグマについても同じようなことが言えそうだ。
ツキノワグマに比して、ヒグマの出没、被害はまだ少ない現状だが、同じような注意、対策が必要であろう。
私たち人間に直接危害を与える危険性のあるクマだが、彼らの生育環境の変化が、食性や生態の変化を呼び、さらには人間との接点を近くしているという現状のようだ。
この現状に対して、私たち人間は彼らの生育環境をこれ以上変えることが無いよう、彼らの生育環境を護るという視点から対策を講じていくことが必要になっているということなのかもしれない。
講座関係のレポはなかなか直ぐには取り掛かれない。講義を受講してから、私の中で整理するまでに時間が必要なケースが多いのだ。特に北大関係の講座は私の中で咀嚼するまでに時間が取られる。本講座も実は7月6日(木)に受講したものである。
北大公開講座「『非常識』が照らし出す私たちの未来」 第2講は、北大獣医学研究院の坪田敏男教授が「クマに学ぶ ~草食を選んだ肉食獣~」と題して務められた。
クマはもともと肉食獣であったことは誰もが想像がつくのではないか?事実、クマの歯列を見ると現在も鋭い犬歯が健在である。
しかし、いつの頃からか(坪田教授でもその時期は特定できないようだ)クマは草も食べるようになったという。これは、ヒグマもツキノワグマにも言えることだそうだ。
特にヒグマについていうならば、従来はシカやサケ、あるいは昆虫などの動物性の食物が中心の生活だったものが、北海道が開発され、サケ漁が行われたり、クマ自身によるシカの捕獲が難しくなったりする中、それに代わるものとして植物が彼らの食生活の中心となっていったようだ。
ツキノワグマの年間に食するものを見てみると、春季にはブナの種子、ブナの新芽、あるいは草本類、秋季にはブナの種子、クリの種子、果実類などをその年の植物の出来によって食しているということだ。(講師の坪田教授は岐阜大学在任期間が長く、ツキノワグマの研究にも長く携わっていた)
※ ヒグマの写真をウェブ上から拝借しました。
ところがクマはもともとが草食性でないため、草食の場合はその消化率が良くないそうだ。草食性の牛やシカが約70%の消化率に対して、ジャイアントパンダの場合18%ということだ。それでも、クマは少しでもその消化率を上げるために奥歯が草を噛み潰しやすいように平らな歯を獲得するという進化を遂げているそうだ。
北海道に生息するヒグマは完全な草食性ではなく、遡上するサケを捕まえたり、シカの死骸も食したりすることから、雑食性ということが言えるが、ツキノワグマの場合は草食の割合が相当高くなっているということだ。
続いて、クマの冬眠については良く知られるところだが、出産・哺育も冬眠中に行っているという。なぜ冬眠中に出産するという不思議な習性について、その正確な理由は未だ謎らしいが、坪田氏によると生まれたコグマを天敵であるオオカミから護るためではないか、ということだった。出産・哺育する母グマの冬眠は浅いのではないか、とも坪田氏は言及した。
※ こちらはツキノワグマです。
最後にクマたちが近年人里に出没するようになったが、その要因を次のように指摘した。
①自然環境、とくに森林の構造変化 ②堅果および液果類の豊凶 ③自然災害、とくに台風の影響 ④ナラ菌によるナラ枯れ ⑤里域の管理不足 ⑥分布域と個体数変化 ⑦新世代クマの出現 ⑧保護管理(担い手)の不足 以上はツキノワグマを念頭においた傾向のようだが、ヒグマについても同じようなことが言えそうだ。
ツキノワグマに比して、ヒグマの出没、被害はまだ少ない現状だが、同じような注意、対策が必要であろう。
私たち人間に直接危害を与える危険性のあるクマだが、彼らの生育環境の変化が、食性や生態の変化を呼び、さらには人間との接点を近くしているという現状のようだ。
この現状に対して、私たち人間は彼らの生育環境をこれ以上変えることが無いよう、彼らの生育環境を護るという視点から対策を講じていくことが必要になっているということなのかもしれない。