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「君の椅子」プロジェクトの想いを聴く

2017-07-18 21:21:04 | 大学公開講座
 「君の居場所はここにあるからね」…、なんて心優しいフレーズだろう…。旭川発「君の椅子」プロジェクトは、子どもの誕生を喜び、子どもの命を慈しむ思いが形となった取り組みだという。今、「君の椅子」プロジェクトは静かに、そして確かな広がりを見せているという。

 7月12日(水)午後、札幌大学公開講座「地域創生入門」の第13講が開講された。この会は北海道文化財団理事長の磯田憲一氏「君の居場所はここにあるからね ~「君の椅子」の12年~ 」と題して話された。

                    
                    ※ 熱い想いを語る磯田憲一氏です。

 磯田氏は多彩な顔を持つ方である。元北海道副知事にして、現在の肩書である北海道文化財団理事長、北海道農業企業化研究所理事長、NPO法人アルテピアッツァ美唄代表、旭川大学大学院経済学研究科客員教授などなどである。

 その磯田氏が旭川大学において磯田ゼミの学生と取り組んだのが「君の椅子」プロジェクトである。「君の椅子」誕生のストーリーは次のようなことだそうだ。
 磯田ゼミのある学生が秋田県の大曲花火大会を観て感動して帰ってきたことが発端ということだ。花火の話から、北海道の小さな町では子どもが誕生した時に花火を上げて祝う地域があることが話題になったという。それは小さな命の誕生を地域挙げてお祝いするという心温まる話としてゼミの学生たちは受け止めたようだ。
 親が我が子の人権・人格を殺めるような世情になったことに心を痛めた磯田氏と学生たちは、自分たちにできることを1年間かけて検討しあったという。その結果、地域産業である旭川家具を活かして作る「君の椅子」を誕生した子どもに贈るという「君の椅子」プロジェクトだった。

               
               ※ 実際に贈った椅子を前に語る磯田氏です。

 小さな椅子を贈るとはいっても一脚数万円する椅子(デザインなどによって違いますが3~4万円するそうです)を大学生が贈れるはずがありません。
 磯田ゼミでは、この話を旭川地方の自治体に呼び掛けたところ、いち早く東川町が手を挙げて、このプロジェクトは動き出したという。
 この取り組みは東川町で子どもを産んだお母さんたちから大好評で迎えられ、翌年から心待ちするお母さんたちの声が役場に次々と届いたそうだ。
 そして周辺の自治体にもその輪が広がり、現在では東川町、剣淵町 、 愛別町、 東神楽町 、中川町、そして長野県の売木(うるぎ)村と6町村が参加しているそうだ。

 また、2011年3月11日に被災した岩手、宮城、福島の三県で3月11日に生まれた98名(実際には104名誕生しているそうだが)に1年後に「希望の君の椅子」を贈呈したそうだ。このことはマスコミでも大きく取り上げられた。

               
               ※ 東日本大震災発生時に誕生した子どもたちに贈った椅子の裏書きです。

 磯田氏は言う。ゼロ歳児に贈る椅子に、敢えて「君の椅子」と名付けたところに意味があると…。それは例えゼロ歳児ではあっても、一人の人間としてその存在を慈しみたいという思いが込められているという。
 磯田氏たちの想いに賛同する有名デザイナーや、名もなき旭川家具の職人たちなど多くの協力者が現れたという。
 そして今、磯田氏たちの想いは、静かに、そして確かな広がりを見せているという。
 磯田氏はけっして功を焦らないという。「時を味方に付けよう」、「時を重ねて熟成するが故に価値が出てくる」ことを信じていると…。

               
               ※ 椅子のデザインは毎年違うそうです。歴代の椅子を集めた写真をウェブ上から拝借しました。

 講義の冒頭で磯田氏は、「経済的には一周遅れの北海道であるが、生き方においてモデルとなる北海道になろう」と話された。
 磯田氏たちの実践は、まさに素晴らしい生き方のモデルを全国に発信してくれた好例であると思う。