以前にもある医事講演を聴いて感じていたことだが、今回の講座をお聴きし改めて医学の進歩には驚かされた。お話を聴いていて、今や最先端医療に携わる方々は単に医学に長じているだけではなく、機械工学、電子工学などあらゆる分野に精通していなければならない職業のように思えてきた。
※ 登壇した小林理事から2024年に柏葉脳神経外科病院は平岸に新築オープンすると語られ、その外観を示された。
6月21日(水)午後、道民カレッジが主催する本年度第2回目の「ほっかいどう学」かでる講座が開講され参加した。今回のテーマは「SDGsとは?AIとは?最新治療FUSとは?~各専門医が解説します~」というものだった。
講義をされたのはいずれも社会医療法人 柏葉会「柏葉脳神経外科病院」に勤務する専門医の先生方だった。講義順はテーマの順とは真逆にFUS、AI、SDGsの順での講義だった。
※ FUSについて講義された成田拓人医師です。
トップバッターは「ふるえの治療~集束超音波治療(FUS)について~」と題して集束超音波治療副センター長の成田拓人氏が講義された。
ふるえ(振戦)には、①生理的振戦、②安静時振戦、③動作時振戦の3種があるが、動作時のふるえ(振戦)の場合は病気の場合があるという。その代表的な病気として❶本態性振戦とパーキンソン病があるそうだ。❶本態性振戦とは、両側の上肢のふるえと、頭部、音声、下肢のふるえが伴うことがあるそうだ。
本態性振戦やパーキンソン病の場合に薬物治療があるが、効果が得られない場合外科治療を施すことになる。そうした場合、脳内の視床の部分に働きかける外科治療が必要となってくるという。
外科治療としてこれまでは、DBS(脳深部刺激術)やRF(高周波凝固術)、GK(ガンマナイフ)という外科治療法があったが、そこにFUS(集束超音波治療)という方法が開発されたそうだ。このFUSが講師の成田医師が取り組んでいる治療法である。DBSやPFが開頭術や穿頭術という頭部を傷つける手術法に対して、FUSは超音波を照射し原因となっている部分を熱凝固させる方法だという。
言葉でいうと簡単だが、脳内の原因となっている部位を確実に照射するためには機器を熟知し、繊細な機器操作が必須となる。改めて現代医療の最先端で活躍する医師には様々な分野に通じる能力が求められていることを教えられた思いである。
※ AIについて講義された松澤等医師です。
続いて登壇した先端医療研究センター長の松澤等氏は「人工知能(AI )とは?」と題しての講義だった。AIは今や医療の世界だけではなく、あらゆる分野において既成概念を覆すほどのインパクトを与え、その利活用、あるいは弊害について最もホットな話題を提供しているワードである。私はどのようなお話が聴けるのかと、かなり期待を抱いたのだが…。
松澤氏のお話では、その計算力の速さからこれまでとは比べものにならないくらい医療の発展に寄与する可能性についてお話された。しかし、今はまだその可能性についてお話されたが、具体的なことに言及はされなかった。しかし、近い将来において医療の世界が画期的に進展する可能性を述べられたと私は理解した。
※ SDGsについて講義された古林浩之医師です。
最後に登壇した小林浩之氏は集束超音波治療センター長を務められている方だが、一方で医療法人柏葉会の常務理事という立場から「当院におけるSDGsの取り組み」と題して、医療機関の社会的役割について柏葉脳神経外科病院が取り組んでいることを話された。
病院というところは大量のエネルギーを消費し、二酸化炭素排出再生ができない大量のゴミを発生させている機関だと現状を話された。特にコロナ禍においては感染性廃棄物を大量に発生させたという。しかし、病院という枠組みの中で二酸化炭素の排出を抑制させることは現実的には困難であるという。そこで柏葉会としては「カーボンオフセット」事業に積極的に取り組むことにしたそうだ。つまり、病院を経営することによって生ずる二酸化炭素の排出量を、植林・森林保護・クリーンエネルギー事業などに協力することで埋め合わせることに取り組んでいるという。
SDGsの活動は単に二酸化炭素の排出を抑制することだけではない。柏葉会としては、「食」に関連して「フードロスの取組み」、「食を通して地域と繋がる」こと。また「女性と仕事」に関しては病院という女性が活躍しなければ成り立たない職場として、女性の活躍を促し病院を発展させていきたいとした。さらには「社会の一員」として地域の教育、スポーツ、文化活動に積極的に貢献したいとした。
わずか2時間という時間的制約の中で、地域の中核的医療機関として進展する社会医療法人「柏葉会 柏葉脳神経外科病院」の意気込みを見る思いがした講座だった。