十七日
あかつきに枚方を舟出して、ひるごろ、大坂につきぬ。
十八日
大坂にあり、よべより雨ふりつゞきて、難波わたりの月も見えざり
ければ、
いとゞなほ旅のやどりのさびしきにあはれをそふる夕暮の雨
ながめんと思ひし夜半のかひもなく難波の月は雲にへだてゝ
十九日
きのふの雨をやみなくふる、明方に大坂のやどりたちいでゝ、西の
宮のむまやに、志ばしやすみて、二里あまりゆきしに、そらよく晴れ
ぬ、このわたり、岸和田といふ處なりと、人々のいひければ
音もせで志ら波よするきしの和田いり日も遠くうかぶ夕なぎ
ほどなく、兵庫のむまやにつきぬ。
廿日
そらくもりぬ、卯の刻ばかりに兵庫のやどりをたちいづ、一の谷を
通りすぎて、舞子の濱といふ處は、あまたの松枝をたれて、ひろき眞
砂ちりなうして、けしき又たぐひなければ、この處の志ばしやすら
ひて
眞砂路によせくる波のはまきよみみるめにあかぬ松の村だち
すこし行きしに、道の側に日向大名神とて社あり、たるみの神とな
ん申すよし聞へければ
あふげなほをさまる御代はつきせじと跡をたるみの神の玉垣
ほどなく、明石のむまやに来りぬるに、そらはれぬ、淡路島をうちな
がめて、
あかしがたきりも波路にきえはてゝながめぞあかぬ淡路島山
行き/\て申の刻ばかりに、加古川のむまやにつきぬ。
廿一日
けふも、そらくもりぬ、あかつきに加古川をたちて、姫路のむまやに
て、ひるのかれいひつかふうちに、そらよく晴れぬれば、道のほども、
いとあつくなりぬ、志ばし松の木陰にやすらひて、
たび衣いざ立ちよらんあつさをもわするばかりの松風mのこゑ
ほどなく、鵤のむまやもうちすぎて、室山をこゆれば、申の刻にもな
りぬ、室の津には、むかひの船とも、あまた来つとひて待つめいr、この
處は、室の明神の宮居たふとく、むかし、わがこのやしろにまうでし
こと思ひいでゝ、なほ船路をいのるとて、
こよひはもさこしの浦に船よせて波のうきねに夢もむすばず
二十二日
卯過ぎるころに、さこしのみなと船出せしに、そらよくはれて、海づら
のけしきもよければ
志ら鷺のゆくへもみえて海ばらや志ほ路はるけき沖のしま山
こぎいでゝとまりはいずこ白波のしづけき浦に船やつながむ
風もなく、終日おし船にて、申過るころに、備前の国出崎といへる湊
に船つなぎぬ
あかつきに枚方を舟出して、ひるごろ、大坂につきぬ。
十八日
大坂にあり、よべより雨ふりつゞきて、難波わたりの月も見えざり
ければ、
いとゞなほ旅のやどりのさびしきにあはれをそふる夕暮の雨
ながめんと思ひし夜半のかひもなく難波の月は雲にへだてゝ
十九日
きのふの雨をやみなくふる、明方に大坂のやどりたちいでゝ、西の
宮のむまやに、志ばしやすみて、二里あまりゆきしに、そらよく晴れ
ぬ、このわたり、岸和田といふ處なりと、人々のいひければ
音もせで志ら波よするきしの和田いり日も遠くうかぶ夕なぎ
ほどなく、兵庫のむまやにつきぬ。
廿日
そらくもりぬ、卯の刻ばかりに兵庫のやどりをたちいづ、一の谷を
通りすぎて、舞子の濱といふ處は、あまたの松枝をたれて、ひろき眞
砂ちりなうして、けしき又たぐひなければ、この處の志ばしやすら
ひて
眞砂路によせくる波のはまきよみみるめにあかぬ松の村だち
すこし行きしに、道の側に日向大名神とて社あり、たるみの神とな
ん申すよし聞へければ
あふげなほをさまる御代はつきせじと跡をたるみの神の玉垣
ほどなく、明石のむまやに来りぬるに、そらはれぬ、淡路島をうちな
がめて、
あかしがたきりも波路にきえはてゝながめぞあかぬ淡路島山
行き/\て申の刻ばかりに、加古川のむまやにつきぬ。
廿一日
けふも、そらくもりぬ、あかつきに加古川をたちて、姫路のむまやに
て、ひるのかれいひつかふうちに、そらよく晴れぬれば、道のほども、
いとあつくなりぬ、志ばし松の木陰にやすらひて、
たび衣いざ立ちよらんあつさをもわするばかりの松風mのこゑ
ほどなく、鵤のむまやもうちすぎて、室山をこゆれば、申の刻にもな
りぬ、室の津には、むかひの船とも、あまた来つとひて待つめいr、この
處は、室の明神の宮居たふとく、むかし、わがこのやしろにまうでし
こと思ひいでゝ、なほ船路をいのるとて、
こよひはもさこしの浦に船よせて波のうきねに夢もむすばず
二十二日
卯過ぎるころに、さこしのみなと船出せしに、そらよくはれて、海づら
のけしきもよければ
志ら鷺のゆくへもみえて海ばらや志ほ路はるけき沖のしま山
こぎいでゝとまりはいずこ白波のしづけき浦に船やつながむ
風もなく、終日おし船にて、申過るころに、備前の国出崎といへる湊
に船つなぎぬ