本棚を整理していたら天水町(現玉名市)の紹介冊子「桃源郷・小天 『草枕の里』を彩った人々」が顔を出した。
わざわざ注文して購入したものだから、挨拶状やら、新聞の切り抜きのコピーやらが添えてある。(これが有難い史料である)
購入したのは平成2年の12月だった。処で改めて読み進めるうちに、主題の温泉の歴史が取り上げらていないことに気付いた。
寺本八左衛門の「古今肥後見聞雑記」に、小天・野出についての記事があるのだ。「本は読むべし」である。
一、明和元年甲申年夏の比飽田郡白濱村邊玉名之内小天村との間に海邊に湯涌出ス同年秋に至て小家出来るよし
今の小天温泉の始まりとも目される記述である。夏目漱石の「草枕」で一躍有名になったが、こんな歴史的事実を漱石先生や半藤先生に教えて差上げたかった。
漱石先生の孫娘、半藤一利夫人は夫君と共に小天をおとずれ、那古井館に宿泊されたらしいが、温泉宿が一軒しかなかったことに驚かれたらしい。
尤もな話である。漱石先生が滞在した「前田温泉」は100mほど離れた山手となるが、夫人ものぞきにはお出でに成ったろう。
今頃は山は色ついた蜜柑で賑やかに彩られていることだろう。車の免許を返納してしまったから、小天へ足を延ばすこともないのかなと思いつつ・・・・