4年ほど前に石臼の取っ手を修理しました。その後、石臼の製粉能力が落ちてきたように思います。今回久しぶりに石臼を修理(目立てなど)して調整し、製粉能力を回復することにしました。石臼が日常的に使われていた明治・大正時代は、数年に一度必ず修繕していました。当時は石臼を修理できる職人がいましたが、今そのような方はいるでしょうか。30年以上前に山梨県の雑穀などの山村農業調査中に古老から石臼の修理方法を学びました。また、店をたたんだ古い鍛冶屋さんから、石臼の目立て用金槌をいただきました。まさか今、その技術を郷土館の石臼修理に生かすことになろうとは思いもよりませんでした。石臼の修理は次の工程で行います。
石臼をひっくり返して上臼と下臼を分離、付着した粉を掃除機で吸引
最初、石臼が置いてある台に散らかる粉を掃除します。今回は掃除機でその粉を吸引しました。その昔は、刷毛で粉を寄せるようにして取り除きました。続いて、下臼の上に乗る上臼を取り外します。重いので注意して外します。下臼には製粉途中の粉が残っていますので、同じようにして取り除きます。粉を取り除くと、下臼の中心の芯棒を取り外します。
石臼周りの粉を取り除く 上臼と下臼を分離 下臼の芯棒を取り外す
これからが石臼の修理の一番難しい所です。それは摩耗した上臼と下臼の溝を再生する工程(目立て)です。石臼用の金槌(無ければロックハンマーで代用可)で、溝に沿って軽く打ちます。リズミカルに軽く叩くようにすることが肝心です。打っていると、極小の石粒が顔に飛んでくることがあります。そのため防護メガネが必要です。グラインダーで溝を掘った石臼を見たことがありますが、もうその石臼は使い物になりません。グラインダーなどの道具を使うことは厳禁です。
下臼に残った粉を取り除く 下臼と上臼の溝を再生
溝の再生ですが、石臼の中心部はやや広く深くします。逆に石臼の周辺部はやや狭く浅くします。そうすることによって、石臼の周辺部に押し出された粒はより細かく製粉されます。石臼によっては周辺部に溝がないものがあります。つまり、溝が無くなり石の重みでより細かい粉になります。石臼は何年も使っていると溝などがすり減ります。すり減った石は粉に混じります。昔の人はその混じった石を粉と一緒に食べることによって、自然にミネラルを摂取していたのかも知れません。
なお、上臼と下臼は逆方向に溝が彫ってあります。上臼が回転することによって上臼と下臼の溝の交点が外側へ外側へと移動します。つまり、交点にある粒が外側に押し出されるのです。そのため、石臼を逆に回すと、粒は製粉されず石臼の中心部に集まってしまいます。そのような原理を頭に入れながら金槌を叩いて溝を再生します。
石臼の溝の方向と溝の深さと幅、※上臼と下臼の溝方向は逆
溝の再生は無理な姿勢で1時間以上かかり大変ですが、とても大切な工程です。日本語の「辛抱する」はこの作業「芯棒する」から来ているのかも知れません。溝の再生が終わると、上臼がずれないように、また軽やかに回るように芯棒の高さを調整します。それが終わると、上臼を下臼の上に注意深く載せます。
再生したばかりの溝ですので、回転させると再生前よりも重く感じます。小麦などを入れて製粉すると、製粉された粉が一種の潤滑になります。そうなれば、子気味良く石臼が回るようになります。製粉されることを確認して修理は終わりです。約半日かかった石臼修理でした。少々疲れました。
芯棒の高さ調製 小麦を試しに製粉 製粉されることを確認
最新の画像[もっと見る]
- 耕運機のクラッチ修理(2/2) 8時間前
- 今年最初の放課後学習 成器塾 クルミの皮細工 1日前
- 快晴、日差しを浴びながら麦踏み 2日前
- 耕運機のクラッチ修理(1/2) 3日前
- 山裾の倒木整理や草刈り 4日前
- 今年最初の少年少女発明クラブ 5日前
- ドラム缶で焚火、暖を取る 6日前
- 東京から帰ってきました。やれやれ疲れた!(3/3) 1週間前
- 玄関前の庭木を荒く剪定 1週間前
- 東京から帰ってきました。やれやれ疲れた!(2/3) 1週間前
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます