倉庫を片付けていると古い箱からトランジスタラジオが出てきました。あまり記憶にないのですが、東京に住んでいる頃に手に入れた壊れたラジオだと思います。自分で修理しようと忘れてしまったようです。もう1台古いトラジスタラジオがあったのですが、倉庫のどこかにあるはずです。このラジオを直したら次のそのラジオを探して直そうと思います。このところ雨続きのため屋内にいることが多く、久しぶりにラジオの修理をしようと思います。
ちなみにこのトラジスタラジオは昭和30年頃に松下電器から発売されたものです。当時自社でトランジスタを製造できたのはSONYだけだったと思います。その他の会社はアメリカやヨーロッパの会社とライセンス契約していたように思います。ちなみに松下はヨーロッパPhilipsとライセンス契約したようです。このラジオに使われているOCシリーズトランジスタがそうだと思います。
壊れたトランジスタラジオ、古いトランジスタ(OCシリーズ)を使用
使われているトランジスタはJIS規格ではありません。ライセンス生産したOC44,OC45,OC71そしてOC72です。OC44は周波数変換用、OC45は中間周波数増幅用、OC71は高利得電圧増幅用、OC72は小出力電力増幅用です(「トランジスタ活用辞典 昭和34年8月発行」より)。
ところで、このトランジスタラジオの外観はひどいものです。おそらく落としたために、特に裏側に大きな穴が開いています。その欠けた箇所の破片はありません。皮カバーをかぶせると、その穴が見えないのだけはラッキーです。
カバー被せたラジオ ラジオの表側とつまみ 醜く壊れた裏側
今後はラジオ修理のセオリーにのっとり調査などをしようと思います。久し振りに私が自作したシグナルとレーサーやシグナルインジェクターを使ってみようと思います。さらに、私が高校生時代に使っていオシロスコープなども使います。また、受信周波数を測定するためのSGも使おうと思います。この雨で家にいる時間はたっぷりあります。のんびり修理しようと思います。
使われているトランジスタ(松下OCシリーズトランジスタ)
外れていたチューニング糸を元通りに取り付けので、次に筐体,シャーシ,,そして真空管などを掃除しました。まずは、先日トラクターや耕運機のタイヤに空気を入れたエアーコンプレッサーを利用して、積年溜まったゴミをエアーで吹き飛ばしました。
その後、エアーでは取れない汚れを濡れティッシュや雑巾を使って拭き取りました。真空管も規格番号が分かるようにガラス表面の汚れを拭きとりました。その結果、電源を入れるとほんわりとカソードが赤熱するのが分かるようになりました。
エアーコンプレッサーのエアーで積年のゴミを吹き飛ばす
私が中学生の頃まで真空管が全盛期でした。産業的にはトランジスタがすでに普及し始めていましたが、私のような素人にはまだまだトランジスタは高根の花でした。私が初めて手に入れた半導体はセレン整流器でした。トランスにその整流器を繋いで直流の電源を作っていました。
そもそもトランス自体が新品はとても高価でした。そこで、毎日のようにゴミ捨て場に通いました。運が良いと、捨ててある壊れた真空管ラジオを発見します。思わず歓声を上げていました。タダでトランスや真空管が手に入るのです。こうして部品を手に入れていました。ゴミ捨て場は宝の山だったのです。
拭きとり前の汚れた真空管 拭き取り後の真空管12VA6
トランジスタを初めて購入したのは中学二年生の頃でした。通信販売で二個(2SB111)購入しました。そして、そのトランジスタで夏休みの課題として金属探知機を製作しました。しかし、どうしても動作しないのです。後で誤りに気が付きました。購入したトランジスタは低周波用だったのです。金属探知機として動作させるためには、455KHzの高周波で発信してビート音を出さなければなりません。つまり高周波用トランジスタを使わなければならなかったのです。当時、高周波や低周波などの知識が足りませんでした。
真空管のガラス部を掃除 ほんのりと赤熱するカソード
真空管ラジオのシャーシを取り出して調査すると、チューニング糸が外れていることが分かりました。そこで、糸を元通りにプーリーやダイヤルつまみの軸に掛けたりしました。すると、チューニングつまみを回すとスムーズに糸が動いてバリコンが動くようになりました。その後、40年位前に購入したディップメーターを倉庫から探し出しました。そして、そのディップメーターを使ってラジオが正常に電波を受信するかテストしました。
ディップメーターを使ってラジオの受信性能を確認
ディップメーターは主に電波の周波数を確認するためのものです。目的の電波が入るとメーターがピクリと下がります(ディップします)。もう一つの機能にOSC機能があり、微弱な電波を発信することができます。周波数を変えたり電波の強さを変えることができます。その微弱な電波を使ってラジオの性能を簡易的に測ることができます。
糸をプーリーに掛ける ダイヤル指針を確認 真空管の光を確認
ディップメーターで確認すると、AM電波の550~1600KHzの電波を受信することが分かりました。その確認中にNHKの第一放送や第二放送などが次々に入ってきました。真空管などの電子部品は正常のようです。次回は、ラジオの隅々を綺麗に掃除して、シャーシをラジオ筐体に元のように収めようと思います。
ディップメーターのコイルを選択 コイルをディップメーターに装着
私が昭和40年中学校入学時(1965年)、両親が購入してくれた真空管ラジオがあります。高校生の時にトランジスタラジオを購入してもらって以降一度も動かしていませんでした。その後、我家の倉庫奥にしまわれていました。約55年ぶりに電源を入れましたが放送局の音がまったく入りません。真空管は光るのですが、チューニングのつまみを回しても指針が動かないのです。ラジオを分解して修理するしか直す方法がなさそうです、やれやれ。
真空管などが載るシャーシを取り外して故障個所を調査
真空管ラジオを修理するのは久しぶりの事です。また、トランスレスの修理は初めてです。100V電源プラグの差込口を間違うと、下手をすれば感電する恐れがあります。まずは、真空管シャーシを取り外すことにしました。固定するネジを外し、つまみを外し、スピーカーを外し、アンテナ端子を外すと、簡単にシャーシが外れました。すると、故障の一つが分かりました。バリコンを回すチューニング糸が外れていました。これでは選局できません。
真空管ラジオの外観 底のネジを取り外す つまみを取り外す
私のラジオ修理室に一台のトランジスタラジオがやってきました。スヌーピーの形をしたラジオで、おそらくOEMではないかと思います。1970年型と刻印されていました。子供の頃に買ってもらったラジオとのことで、音が全く出ないそうです。この使い捨ての時代に、故障した今でも大切にしているようでした。思い出が詰まったラジオなのでしょう。
当時のトランジスタラジオは修理しやすいように蓋を開けることができます。そして、基板上の素子を交換できます。しかし、このラジオは裏蓋を開けても基板が奥底にあるため素子を交換できません。可愛いスヌーピーが売りのラジオで、修理を前提にしていないラジオのようです。
私のラジオ修理室にやってきたスヌーピー型ラジオ、これから診察
ところで、スヌーピー型ラジオの箱もレトロです。中からラジオを取り出すと、屋根の上でスヌーピーが寝ています。スヌーピーは取っ手になっており、手で持ってラジオ本体を持ち運べます。
安定化電源から9Vを繋いでみましたがさっぱり音が出ません。雑音すら出ません。このような故障の場合、経験的にどこかが断線している可能性が大です。なお、断線箇所を探している時に、グラグラしていたイヤホン端子がポロリと外れました。
スヌーピーが入る箱 屋根上のスヌーピー払拭 イヤホン端子がポロリ
最初どこで断線しているか探索しました。分かったのはブラスの9Vは来ているのに、電源のマイナスが来ていないのです。つまり、電源からのマイナスがどこかで断線していることが分かりました。
そこで、マイナス電源から順に故障個所を探索しました。黒いマイナス電源端子のコードを試しに引っ張ると、なんと断線していた箇所がするすると抜け出てきました。故障原因は断線です。次は、断線したコードを繋ぐ修理をしようと思います。
修理に使った可変電圧機(9Vに設定) 断線していた9V電源端子
2年ほど前に中断していたトランジスタラジオの修理を再開しました。中断していた理由は、コロナ惨禍で東京秋葉原に行けないことが原因です。秋葉原に行けないとそのスイッチ部品を購入できないのです。
去年コロナの合間をみて秋葉原に行ってみましたが、探していたスイッチ部品はもう製造中止でした。秋葉原の裏通りなど探してみましたがありませんでした。そのため、分解修理したスイッチを再利用するしか手立てがなくなりました。
分解修理した製造中止の2接点4回路スイッチ
今回は分解修理したスイッチの接点が治っているかチェックしました。チェック方法は単純です。接点にテスターを当てて導通するかどうかです。導通するとブザー音が出ます。ただ、接点形状が複雑なため正しい接点の導通表を作らないといけないことに気が付きました。部品が製造中止だと、その部品そのものを修理までしなればなりません。このラジオの修理にはまだまだ時間がかかりそうです。
導通するとブザー音が出るテスター 接点にテスター棒の先端を当てて検査
寒くて天候が良くない日は、外で野良仕事をすることができません。そんな時は、部屋で小さな機械の修理をするに限ります。音が出るかどうか分からない古いトランジスタラジオがあるので、久しぶりに修理することにしました。
使われているトランジスタの型番からみて、このラジオは昭和30年代に製造されたようです。私が小学生の頃です。まだ真空管ラジオが幅を利かせていました。当時の我家には、テレビ,電話,そして自家用車がありませんでした。水道はなく井戸でしたし、煮炊きは釜戸でした。そんな貧清な時代でした。
トランジスタラジオ TR-609の筐体内のラジオ基板
当時のSONYのトランジスタは半導体構造が他社とは違っていました。他社はPNPタイプでしたが、SONYはNPNタイプでした。その理由はSONYは自社でトランジスタを開発できたのに対してい、他社はアメリカかヨーロッパからの技術導入だったからです。他社は莫大な特許料を払ったのではないかと思います。自社開発したSONYは先行利益を受ける事になり、今に至るSONYブランド発展の原動力になりました。
小型ラジオTR-609全体像 裏ブタのネジを外す TR-609の筐体内部
修理する前に、裏のネジを回して上蓋を取り外しました。すると、当時の電子回路が分かる電子基板が見えてきました。その基板を見ると電子機器発展の歴史が良く分かります。
例えばエアバリコンです。まだボリバリコンは使われていません。現在はさらに進んだ電子チューナーになっています。またトランジスタはこれまた懐かしい2SCの1桁番号です。高周波増幅用の2SC73,2SC76、そして低周波増幅用の2SD66です。さらに、OSCコイルがシールドされていないのも時代を感じさせます。
小型に作られたエアバリコン シールドされていないOSCコイル
真空管ラジオを修理するため部品を購入しました。ところが、私が想像していた部品とは大きく様変わりしていました。例えば、電解コンデンサは同じ耐圧でとても小さくなっていました。そして、ブロックコンデンサは売っていませんでした。売ってはいても高価でした。また、抵抗も様変わりしていました。同じW数でも小さくなっていました。
私が真空管を使った工作を始めた60年前頃の部品と比べて、とにかく小さくなっていました。唯一変わっていなかったのはパイロットランプやラグ板だけでした。元々あった部品を使いつつ、壊れた部品は今回購入したものに変えようと思います。まずは、部品配置図を作ってから部品を取り付けようと思います。
赤,橙,緑,青の四角が購入した部品
購入した部品を見て、真空管ラジオ用の部品がもう無いことを悟りました。例えば真空管ラジオに使われていた皮膜抵抗,オイルコンデンサ,そしてマイカコンデンサなどはもう売っていませんでした。ブロックコンデンサも同様で、あってもとても高価でした。ストック品だから高いのではないかと思います。購入できた部品は、みなトランジスタラジオ用の部品です。なるべく今ある部品を生かしながら、これらの部品を使って真空管ラジオを修理しようと思います。
購入した抵抗(皮膜抵抗は今やなし) 購入したコンデンサ類
他の仕事や野良仕事が忙しくて、真空管ラジオの修理がなかなか進みません。今日は同ラジオの修理を続行することにしました。今回は、シャーシ内の抵抗やコンデンサなどの受動部品をすべて取り外しました。昭和20年前後の部品ばかりなのでとても傷んでいます。そのため、すべての部品を新品と交換します。特にコンデンサと抵抗は総取り換えします。この真空管ラジオは何度か修理した跡があり、醜い部品が取り付けてあったり交換してあります。丁寧にニッパで取り外しました。
すべての抵抗やコンデンサを取り外したシャーシ内部
部品以外にも電線も取り外しました。電源コードは布巻き式なのですが、布がほつれて銅線が露出しています。また、スピーカーに繋がるコードも同様です。ダイナミックスピーカーではなくマグネチックスピーカーなので高圧の電圧が通る電線です。これまた取り外しました。電線も新品に取り替えます。
ニッパで部品取り外し 電界コンデンサ取り外し シャーシの上側
私が中学生の頃に読んでいた真空管に関わる教科書や雑誌を参考にして、新品部品に交換しようと思います。ちなみに、私が中学生の頃は真空管とトランジスタが入れ替わる時代でした。そのため、まだまだ真空管に関わる本が出回っていました。夏休みの工作に真空管ラジオを提出する生徒がたくさんいました。
取り外したすべての抵抗やコンデンサ
私が中学三年生の夏休み、初めて手に入れた2個のトランジスタで金属探知機を作りました。二つの発信回路を作り、そのビートの差を利用して金属を探知する装置でした。発信回路は真空管の中間周波トランスを利用して455KHZを発信するはずでした。しかし、うまく動作しませんでした。今考えれば当たり前ですが、高周波回路に低周波用のトランジスタを使ったからです。高周波用のトランジスタは中学生にはとても高価だったのです。オシロスコープが欲しかったのですが夢でした。当時持っていた測定器はテスターだけでした。
昭和40年頃の真空管関連教科書 今回参考にする真空管ラジオの回路
最後に電源周りの回路を調べてみました。整流管は懐かしい12Fです。この真空管は、私が中学生の時にスタンダードな半波整流管でした。直熱管で、電源が入るとほのかにヒーターが赤熱します。10分程度経つと真空管は暖かくなります。昭和30年代、火鉢しかない私にとって密かに手を温める暖房でした。そこが、真空管が好きな理由の一つです。
さて、整流周りの回路で特徴的なのは、巨大な箱型平滑電解コンデンサです。四端子の電解コンデンサでした。子供の頃、この箱型電解コンデンサを分解し、巻かれた茶色の油紙に挟まれたアルミ箔を取り出して遊んでいました。
懐かしい半波整流管12F、直熱管のほのかな赤熱が暖かい
このラジオの平滑回路は極めて平凡でした。整流時の波形を平滑するために、チョークではなく抵抗が使われていました。配線を調べていると、人が手を加えられたことが分かりました。その一つが、平滑用電界コンデンサです。端子の一つが切断されていました。ショートしたか容量低下したのではないかと思われます。箱型の平滑コンデンサの容量は、初段が6μFで平滑抵抗後の2段目が4μFでした。容量が低いのでハム音が大きかったのではないかと思います。この平滑コンデンサは廃棄します。新しく購入して、かつ容量の大きいもの(10~30μF 耐圧350V)にしようと思います。
平滑回路部の配線 切断された平滑コンデンサ端子
回路図を調べていますが、私が中学生の頃に作った並三ラジオより古いようです。そのため、特にコンデンサ類は容量が低いにも関わらず大きいのです。容量も減っているかも知れないため、すべてのコンデンサは新しいものに交換します。なかでも困ったのは、大きな箱のような形をしている四端子平滑用電界コンデンサです。箱型の電解コンデンサはもう売っていないと思います。そのため、円柱型の電解コンデンサに取り替えます。
これで、回路図を調べ終わりました。シャーシ内の素子をいったん全て取り払って綺麗に掃除します。そして、あらためて抵抗やコンデンサ類を取り付けようと思います。仕事の合間の気が向いた時に、のんびり作業しようと思います。
電源部の回路、真空管12Fによる半波整流と平滑回路
低周波増幅する真空管(3YP1)周辺の回路を調査しました。その結果、マグネチック型スピーカーが使われている以外は標準的な回路でした。変わっているのはヒーター電圧が2.5Vの真空管(3YP1)位でしょうか。ヒーター電圧が2.5Vの真空管と言えば2A3位しか知りませんでした。後継が6ZP1なので、一世代古い真空管ではないかと思います。
LEDランプや虫メガネを使ってシャーシ内の配線を調査
この真空管ラジオのリバースエンジニアリングが難しいのは、配線がとても雑で汚れているためです。さらに、抵抗やコンデンサの値が経年変化で読めないこともあります。抵抗は仕方なくテスターで測定しています。コンデンサは測定しようがないため、全てを交換する予定です。この高一並三の回路構成は、当時としては進んだ回路だったようです。それまでは並三が中心的な回路だったようです。その後、優秀な五極真空管が開発されたことによって高一並三に置き換わっていったようです。
低周波増幅真空管(3YP1)周りの配線
私が子供だった昭和三十年代は、より進んだ五極スーパーが標準回路になっていました。でも、中学校での技術家庭科では並三回路を組み立てました。五極スーパーより並三の方が習得しやすかったからでしょう。
しかし、その頃になるとトランジスタに置き換わり始めました。私が初めて手にしたトランジスタは、切手を同封して通信販売で手に入れた2SB111でした。300円位だったでしょうか。豆粒ほどのトランジスタに感動を覚えたことを記憶しています。しかし、真空管が電圧バイアスに対してトランジスタは電流バイアスです。その考え方の切り替えがうまくできず、当時使いこなせなかったように記憶しています。
低周波増幅真空管(3YP1)周りの回路図
ラジオの修理をするためには回路図がないと始まりません。そのため、高一+並三ラジオ テレビアン PM-8のリバースエンジニアリングを進めています。真空管UZ57周りの配線がだんだん分かってきました。かなり雑な配線のように思えます。このラジオはハム音がかなり出たのではないかと思います。また、再生回路が単純なので発信しやすいのではないかと思われます。
数年前に真空管関連の展示会や真空管アンプ関連の講演会や演奏会を開催しました。開催者の私が作った真空管アンプも展示しました。著名な真空管製品の配線は美しく芸術的とさえ思いました。
真空管UZ57周辺回路を調査
このラジオの回路を調査するため、シャーシを裏返ししました。そして、配線,抵抗,コンデンサ,コイルなどの回路を調べました。困ったのは抵抗値を調べようと何度か動かしていると、線が破断してしまうのです。また、コンデンサはペーパーコンデンサのため表面がろうで覆われています。値が読みにくいのには困りました。表面のろうを削ることによってようわく値が分かりました。再生コイルなどのコイル類は、抵抗やコンデンサを全て外した後に調べるほかありません。このラジオは、抵抗やコンデンサの配置が醜いです。私は真空管ラジオやアンプを作ったことがありますが、このラジオの配線は美しいとは言えません。
傷んだ抵抗やコンデンサなどが醜い配置
今回修理する真空管ラジオに使ってある真空管(UZ58A,UZ57,3YP1)のヒーター電圧は2,5Vです。しかし、ヒーター電源6Vの真空管(6D6,6C6,6ZP1)のラジオ回路図しか持っていません。そのため、ヒーター電源6V真空管の回路図を参考にしました。調べていますが、一致している所は違っているところがありました。今回修理する真空管ラジオの回路は、少しばかり単純のように思えました。昭和20年以前の製品と思われ、半田付け技術、配線の取り回しなどが雑に思えました。
参考にしたヒーター電源6Vの真空管(6D6,6C6,6ZP1)のラジオ回路図
ラジオ内部の天板や横板などに、回路図が貼り付けてあることが多いものです。しかし、このラジオには、剥がれてしまったのか回路図がありません。修理に回路図は必須です。そのため、現物の素子やその配置を見ながら回路図を復元しようと思います。リバースエンジニアリングと言ったところでしょうか。
真空管の種類から高周波増幅段、再生・検波段、増幅段、整流段の四つの構成になっていると思われるます。そこで、私が中学生時代に読んでいたラジオ製作本に載っていた回路図を参考にして、抵抗値やコンデンサ容量値を確認する作業をしました。まずは高周波増幅段を調べました。すると、私が持っているラジオ製作本の回路図とほぼ同じであることが分かりました。
古い真空管ラジオのシャーシ裏、これを元にリバースエンジニアリング
最初に高周波増幅段の二個のコンデンサを調べました。懐かしいべーバーコンデンサでした。容量値を調べるため取り外しました。すると、0.1μFと0,05μFでした。耐圧は共に1000Vです。古いコンデンサは容量が減っているケースが多いため、交換する必要があります。
ペーパーコンデンサ ペーパーコンデンサ 真空管UZ58A
0.1μF 0,05μF ソケット
続いて抵抗値を測定しました。すると、抵抗値は私が持っていたラジオ製作本の回路の値と同じでした。ですが、巻線抵抗や被覆抵抗で表面が剥がれていたり線が切れそうだったりと状態は良くありません。W数は分かりませんでしたが、大きさや形状からみて1W位です。コンデンサと同様に抵抗も新品に取り替えようと思います。次は、再生・検波段の回路を確認してみようと思います。
テレビアン PM-8の高周波増幅段の回路
電源を入れる前に電源トランス周りを念入りに確認しました。まず最初に保護ヒューズを確認しました。ラジオ内の例えばトランスなどを守るための保護ヒューズです。この保護ヒューズは針金が半田付けされていました。そのため、過電流が流れても切れないかも知れません。0.5Aのヒューズ管を購入して差し込んでおきました。私事ですが、子供の頃に100Vのコンセントに針金を突っ込んだらどんな事になるのか試したことがありました。すると、閃光と共にバチッとすごい音が出ました。そして、コンセント周りが焦げてしまったのです。
静かに燈った真空管のフィラメント(カソード)
電源を入れる前に、電源コード側からテスターで抵抗を測定しました。この測定値が0Ωならば危険です。電源コードの抵抗は23.6Ωでした。OKです。注意深く電源コネクタをコンセントに差し込みました。しばらく待つと真空管のカソードがやんわりと燈りました。各真空管のフィラメントの燈り具合を確認しました。すべて正常に燈っています。二極管の12Fだけは直熱型のためフィラメントが筋になって燈っていました。ただしPL(パイロットランプ)が点灯しませんでした。フィラメントが切れているかコードが切れているのだと思います。
空長短端子とアース端子 保護ヒューズ 電源トランスの100V抵抗
アンテナ端子も確認しておきました。空長端子と空短端子がありました。そして、アース端子がありました。次に、前面パネルのつまみを確認しました。下左の画像で、A:チューニングつまみ、B:電源スイッチつまみ、C:再生バリコンつまみ、そしてD:音量つまみです。電源スイッチつまみはやや硬いため掃除する必要があるようです。次回は、具体的に回路を調べようと思います。
前面パネルの各つまみ 二極管の直熱型フィラメント
次にシャーシの真空管を抜いてみました。そして、その真空管の型名を調べてみました。型名が分からないと、その真空管の規格が分からず修理もおぼつきませんので。まず、驚いたのはフィラメント電圧が2.5Vなのです。私が中学生時代に扱った真空管はどれも6.3Vでした。2.5Vで覚えているのは、2A3と呼ばれるオーディオ増幅用の著名な真空管ぐらいです。この真空管ラジオは、もしかして昭和20年以前に製造されたラジオではないかと思われます。そもそも真空管が4本しか使われてしませんし、中間周波トランスを使っておらずスーパー方式ではないラジオです。ちなみに、私は中学生時代の技術家庭科の授業で、ST管を使った再生方式の並三ラジオを組み立てたことがあります。それによく似ています。
同調コイルと真空管(UZ58A)グリッド間のコード外れ
まずは、使われている4本の真空管を調べてみました。すると、同調と高周波増幅は五極管UZ58A,同調再生と検波は五極管UZ57,低周波増幅は五極管3YP1,そして整流管として二極管KX12Fでした。これらの真空管は、私が中学生の頃に使っていた真空管6D6,6C6,6Z-DH3AそしてKX-12FKに相当するするのではないかと思います。違いはフィラメント電圧とカソードが直熱か傍熱かの違いです。
さて、初段の真空管UZ58Aの第一グリッド,バリコン,そして同調コイルを繋ぐ線が切れていました。原因は同調コイルのハトメが折れているか半田が外れているようでした。これは簡単に直せそうです。
使われていた真空管(ST管)5本 UZ58Aのソケットのピン配置
使われている真空管はST管です。この真空管はソケットのピンの数や配置がバラバラです。二極管KX12Fではピンの数は3本です。七極管6WC5ではピンの数は6本でさらにグリッドピンが頭頂に付いています。真空管の歴史で言えば、ナス管、ST管、GT管,ミニチュア管,サブミニチュア管と進歩しました。最後に作られた真空管はトランジスタに対抗して作られたニュービスタ管です。しかし、このニュービスタ管でさえトランジスタに負けてしまいました。真空管はフィラメントを使うため熱効率がトランジスタと比べて圧倒的に悪いのです。しかし、電子レンジなど限られた用途に今でも真空管が使われています。
昭和10~30年代に使われたST管の規格表
ちなみに、真空管UZ58Aは高周波増幅もしますが可変増幅管として使えます。可変増幅とはグリッドのバイアス電圧を変化させて増幅度を変える機能です。下図のBでは増幅率が低く、Aでは増幅率が高くなります。この例では、グリッドのバイアス電圧-6Vを-2Vにすると増幅率がぐっと上がります。下の左の真空管はそのようなできません。グリッドの形状を変えることによって可変増幅機能を持たせています。
ちなみに、トランジスタでも似たようなことができます。リバースAGCやフォワードAGCと呼ばれ、バイアス電流を増減させて増幅率を変えます。なお、真空管やFET(電界効果トランジスタ)は電圧がバイアスですが、通常のトランジスタは電流がバイアスです。
左は普通の増幅管の特性、右は可変増幅管の特性