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二万二千語のあなたへ

2007年02月17日 | 教育ノート
 卒業まであとひと月。六年生が学級文集づくりに入った。担当する子どもからメッセージがほしいと依頼された。
 先日授業した辞典のことを書こうかなあ、と思いながら、ふと「あなた」という言葉が頭をよぎり、題名が決まった。そしたら、悩むことなくすらすらとキーを打つことができ、あっという間に書き上げてしまった。


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 六年生が知っている言葉の数はどのくらいだろうか。
 小学生用とされている国語辞典に載っている見出し語は、たいてい三万前後なので、仮に二万二千語ぐらいではないかと想像した。もちろん人によって多少の差はあるだろう。

 そうすれば、今の君たちはその二万二千語ぐらいの言葉を使って話をしたり聞いたり、文章を読んだり、そして物事を考えたりしていることになる。

 これまでたくさんの言葉を覚えるなかで、君たちは大切なことを学んできた。身体を動かしたり、道具を使ったりして新しい言葉を覚えてきた。それは漢字や計算、たて笛の吹き方、泳ぎ方といったものだけではない。
 この後、中学、高校へ進んでも、仕事につき家庭を持っても、いつも大事に心に留めておかなければならないことがいくつかある。それは、今知っている二万二千語の中に全て入っているのだ。
 これから学ぶことではない。

 例えば、こういうことだ。
 「自分より弱いものをいじめたりしない」
 「元気よくあいさつをしよう」
 「困っている人がいたら、助けてあげよう」

 まだまだあるだろう。しかし、数は多くなくていい。これからの生活で自分が必ず、どんな場合でも守るべきことを、今、もう一度確かめてほしい。

 さて、この後君たちはますますたくさんの言葉を知っていくにちがいない。「よねじろう文庫」として寄贈された国語辞典には、四万五千語の言葉がのっている。

 たくさんの言葉の意味や書き方を覚えることにはもちろん価値がある。しかしもっと肝心なのは、言葉に出会うことだ。出会うとは、心で、身体で、言葉をとらえることだ。

 たとえば「傾注」とは何か。意味を語るのではなく、その体験を語ることができたら、もっとすてきだ。もっと伝わるかもしれない。
 たとえば「森厳」、たとえば「摂理」…君たちには、今は知らない言葉との出会いが待っている。自ら進むことで、その出会いは実現していく。精一杯勉強に励み、精一杯身体を動かして、たくさん出会ってほしい。

 もちろん、読書も忘れたくないことだ。文の中の言葉を深く掘り下げていくことも一つの出会いにつながっていく。

 この文章のタイトルにある「あなた」。
 実は、相手を指す意味もあるが、もう一つ別の意味の言葉として使ってある。これはぜひ実際に調べてもらいたい。

 あなたに知ってほしい「あなた」の意味。
 二万二千語のあなたへ進むあなたに知ってほしい言葉だ。

 卒業おめでとう。 
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