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「見て見ないふり」をしない教育の実践

2007年06月08日 | 読書
 先日読んだ藤原和博氏の著書と似た題名の本が、日本標準から発刊されている。

 『校長になろう!』(金山泰博著)

 わずか60ページあまりのブックレットではあるが、なかなか内容が詰まっている。小学校を対象としているだけにより直接的に感じたということもあろう。
 小学校教諭を経て教委へ入り、そして校長職その後また教委へという経歴のある金山氏の考えには、共感できる部分が多かった。行政に携わっていたのでともすれば政策迎合的な見方をしがちではないか、と予想してしまうところだが、現場感覚に根づいていることが次の一言に強く感じられた。

 「本校では徹底して漢字力と計算力と合唱力をつけます」と保護者に話しています
 
 具体的な例として、漢字学習ではその学年にもっともまちがえやすい、覚えにくい漢字を10字程度選び一年間徹底して教え込むという。こうした抽出の作業において、職員は徹底した話し合いをするだろうし、そうした焦点のあて方は一朝一夕にできるものではない。
 全員に保障していくべき内容を打ちだし、なぜそうなのか明確に説明できることは自分たちの実践の自信の表われだとも思う。
 それゆえ、履修制である義務教育における「『見て見ないふり』をしない教育の実践」という言葉を、かなり重く受けとめることができた。

 「合唱」を取り上げることに関しては、身体、声、そうした点への着目が学ぶ意欲との関わりが強く出ているはずだ。文章には多く出てこないが間違いないと思う。
「学習アドバイザー制度」「どらえもんルーム」等のユニークな発想にも感心させられる。

 こうして並べ挙げてみると、藤原氏の和田中学校の経営と似通っているものが多いことに気づく。
 それは、一人一人の学力の保障のためにどんな策を講ずるか、従来のやり方の継続では立ち行かなくなってきていることに正対している姿であり、具体的には重点を明確化した内部システムづくりと校長自ら学校のメッセンジャー、スポークスマン的な役割を果たすことの二つに集約されると言ってよい。

 ぶれのない校長像がそこにある。