すぷりんぐぶろぐ

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犬には感じ得ない口惜しさ

2007年06月12日 | 雑記帳
 NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』の感想である。
 もう放映されてから二ヶ月近く経つのだが、盲導犬訓練士・多和田悟の回の放送が今もって心に残っている。
 どうして、その回にこだわっているか自問してみた。
 
 一つは、犬の訓練という仕事と教育との共通性について考えたからであろう。

 ハーネスを犬が取りにいくように仕向けることのできない訓練生に換わって、多和田が見本を見せたときの、周到なステップとテンポに納得がいった。
 犬の興味を惹きつけながら、次第に目的であるハーネスに近づけていく指導(調教と呼ぶべきか)は見事の一言だった。
 また「グッド」と声をかけるタイミングのこと。これは犬が行動を起こそうと動き始めたときにすかさず誉めるという。行動より心を誉めるという、これも示唆にとむ考えである。人を育てる場においても、ある段階でとても重要なことではないだろうか。

 そしてもう一つは、犬の訓練と、訓練生への指導との違いについてである。
 もちろん、そんなもの端から違うといえばそれまでだが、犬に寄り添う指導を続けている多和田だけに、生徒への接し方の厳しさが余計に際立つような気がした。
 
 課題を与え、突き放し、悩ませる。
 そして何より人間と犬がパートナーになるための最善の配慮をし、たとえもうすぐ訓練終了といった場面であっても、容赦なくストップをかける。
 そこには、犬の訓練とは明らかに違う信念に基づいた教育を感じた。

 犬には感じ得ないこと、理解しがたいこと。そんなところに人間の教育の本質を垣間見た気がする。
 途中でストップをかけられた女性訓練生が涙を見せた場面で、ナレーターが発したメッセージは、たしかこんな言葉だった。

 口惜しさだけが 人を磨く