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桜と絵本と豆乳と

個と集団の領域を見つめる

2008年02月24日 | 教育ノート
 年度末も近づいてきて研修関係のまとめもしているが、担任にとって一番大切なのは「授業の反省」だと思う。それも研究授業ではなく日常の授業。
 振り返るためには視点が必要だし、それは多くの場合、その学校の研究主題ということになろう。しかし授業とは何かを考えるとき、この2月に読んだ2冊はやはり有益だった。書き始めて改めてそう思った。


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縷述 「つながる授業」32


 最近、とても読みごたえのある教育書を2冊読みました。

 『一斉授業の復権』(久保齋著 子どもの未来社)
 『図解 よくわかる授業上達法』(上條晴夫著 学陽書房)
 
 どちらも著名な実践家、研究者であり、2冊とも「授業」についての全体像から具体的な場面まで対象となっている本でした。併行して読んでいたら、共通する事項や相対する点など見いだすことができ、「比べ読み」的に考えさせられることがありました。その一端を記してみます。

 前者の本は題名が示すように、「一斉授業」についてその意味と価値、実践的意義を明らかにしながら、いわゆる「新しい学力観」で示された考え方や実践を批判しています。
 後者の本は「タテ力(ちから)」と命名した伝統的指導法、「ヨコ力」と命名した活動中心の授業づくり法の双方を取り上げたものです。両方の本に一つのキーワードとして次の言葉があったことが印象的でした。

 「発達の最近接領域」

 この言葉は心理学者のヴィゴツキーの言葉ですが、簡単にいうと「一人で到達できる段階」と「他者の援助によって到達できる段階」の間のゾーンのことです。教育はその領域に合わせて行うべきだと提唱しているのです。
 久保氏も上條氏もその考え方にそった「課題設定」の重要性を説いています。久保氏は個とともに「集団の最近接領域」をとらえながら、段階を踏んで子どもたちを「飛躍」させていくための学習方法や形態のあり方に言及しています。
 上條氏は「数字を使って学習内容を目標化する」というレベル調整の必要性・有効性を述べています。

 「実態」という言葉が一般的でしょうが、「領域」というとらえ方で個や集団を見つめると、学習のねらいや設定がより明確になる気がしますし、動的なイメージが浮かんできます。
(2/22)
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