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共通意思形成は難関

2008年09月25日 | 読書
 『教師のための「クラス・マネジメント」入門』(岡本薫著 日本標準)を読み終えた。
 今まで読んできた著書同様に、ふだん何気なく使っている言葉に対して目を見開かされることが多かった。
 また、漠然と似たような思いを抱いていたことがずばりと言い表わされている(つまり、断言できない自分の弱さに気づかされる)、その点では小気味のよい本だった。

 「プロ」=「お金をもらっている人」ではない

 もちろんこれはテレビ番組で有名人が語るというようなスタンスではなく、もともとの語義から論を進め、日本の教員養成や教職研修の在り方に大きな疑問を投げつけている言葉だ。
 「高度な専門的職能」を意味するプロフェッションを担う者…免許更新制が大きく動き出している現在、それをどう具現化するか、文科省は大きなマネジメントであることを意識しているのだろうか。

 中心をなす「クラス・マネジメント」については、次の言葉が実に明快だ。

 「期間内に達成可能な具体的目標」をつねに持つ

 それがマネジメントの基本であり、また応用範囲の広い枠組みでもあると思う。自分の仕事の振り返りにとっても有効なポイントだ。

 さて、この本は「マネジメントの専門家」である著者が、出版社を通じて延べ45人の教師から意見を聴いて出来上がったものだという。たくさんの具体例もCASEという形で示され、岡本氏のコメントがついている。
 後半に「共通意思形成」が大きく出てくる。校長との共通意思形成、保護者との共通意思形成、同僚との…、子どもたちとの…。

 ここは現実場面として一番難しいところではないか。現状把握から原因特定、そして具体的な目標を設定し、手段も的確に選択するところまではいいが、その次として他者との関係がクローズアップされる。情報を共有するという段階は、そこで初めて登場するわけでなく最初の現状把握から必要なわけで、それを踏まえてこそ納得を得られる、説得力のある説明になってくるのだろう。
 従って、ここに係る労力と時間はたぶん著者の想像を超えるのではないだろうか。

 マネジメントの本質についての理解が進まない世の中であることは、著者の指摘通りである。従ってこの著書もある意味では「共通意思形成」に向けての発信なのだろう。
 十分参考になったが、具体性を持たせるのは自分たちなのだと改めて思う。そのためには正直チェックポイントが多すぎ、絞り込めないものかと悩んでしまう。