すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

「命の教室」という意味

2009年07月07日 | 読書
 久しぶりに児童書を読み入った。

『命の教室 動物管理センターからのメッセージ』(池田まき子著 岩崎書店)

 本県にある施設が取り上げられている本である。数年前本校で出前授業を行った経緯があり、子どもの感想文が載せられたこともあってか、著者からの贈呈という形で学校に届いたものだった。

 動物管理センターとは、保健所から送られてくる犬を収容し、結果多くを「殺処分」する施設といっていいわけだが、その施設が始めた「命の教室」という出前授業の記録がもとになって、この本ができた。

 ある大切なことをわからせるためには、それを言葉で発して耳に届けても、目に届けても、そこから中に入っていくために、手や足や皮膚や鼻や…そうした身体全体で受け止めさせる活動が強い役割を果たすという自明のことを改めて考えさせられる。
 その意味では、すばらしい教育実践の記録としても読めると思う。

 もちろん児童生徒向けのやさしい表現ではあるが、エピソードの多くは胸に迫ってくる。
 犬が大好きで就いた仕事が、安楽死処分を手伝うことであったという保坂さん、その仕事を辞めずに務め上げるという気持ちとは、いかほどであったか。
 子どもたちに生き方を考えさせる中で、自らの生き方を問い直し、県職員を早期退職して新しい道に踏み出した坂本所長、今からでも遅くないと夢を手繰り寄せる気魄に頭が下がる。

 犬や猫の殺処分を発端に、命の尊さのメッセージを訴える内容には違いないが、「命の教室」の意味が、関わった人々の生き方と幾重にも重なっていると、私には読みとれた。