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マイノリティデザインという光

2021年05月02日 | 読書
 FBだったかお気に入りのサイトだったかは失念したが、直感的に選びネット注文をかけた一冊だった。年間に数度あることでもちろん中にはハズレもある。しかしこの本はアタリだ。まだ40歳になっていない著者の発想や行動からエネルギーを得られる感じがした。いわゆる「障害」の見方が拡がったと言ってよい。


『マイノリティデザイン』(澤田智洋  ライツ社)



 障害を克服せねばならないものから利用し生かすものへ…こういう発想は時折目にしてきた。しかしここまで徹底していると気持ちよく、心にすうっと入ってくる。発端は著者の息子の視覚障害がわかったこと。その現実と向き合うなかで、自身がコピーライターとして仕事の本質へと迫る展開は、勇敢さを感じた。


 「社会的弱者」は「発明の母」という考えに唸る。諸説ありと記されているが、ライターや曲がるストローは、片腕の人でも火を起こせるようにしたい、寝たきりの人が自力で飲み物を飲みたいという発想で生まれた。同じように今誰しもが使う道具はあるだろう。その考えでスポーツやイベントも出来るのではないか。


 そして生まれたのが「切断ヴィーナスショー」「041」「爺-POP」「ゆるスポーツ」などだ。特に視覚障害者の道路横断等に使うロボット「NIN_NIN」は感心した。障害者の肩に乗る忍者型ロボットが、様々な情報を与えてくれる。そしてその指示はAIではなく、モニター越しに見ている寝たきり状態の人がするのである。


 ベッドで寝たきりの人が家にいながら視覚障害者に教えていく。これは障害者同士がいわば目と足をシェアしている仕組みである。そして単に障害の不便さ解消だけでなく「孤独」や「無力感」への回答にもなり、障害の有無に関係なく、社会に光を提供するあり方ではないか。「仕合わせ」という語が思い浮かんだ。