すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

まずは缶を蹴る

2021年05月14日 | 絵本
 絵本カテゴリーがなかなか捗らない。学校での読み聞かせが年度替わりで二か月なかったこともある。割り当てが決まり、いよいよ来週から始動する。少し意識して絵本を手に取り、印象に残ったものを取り上げてみよう。ある程度パターンを決め、粗筋→特徴、よさ→ポイントと綴ってみよう。まずはこの一冊から。


『かんけり』(石川えりこ) アリス館2018.09



 学校からの帰り、なかよしのりえちゃんにかんけりに誘われた「わたし」。みんながオニに見つかり、たった一人物置小屋から、じっと様子をうかがっている。いつも助けてくれるりえちゃんが、小さく手をふってわたしの助けを求めている。わたしは、じぶんに「よし!」と声をかけ戸をあけ、かんを目指して走って…。


 「かんけり」…懐かしい響きだ。昭和30年代後半から40年代初め、休日や放課後に小学生が近所で遊ぶ定番の一つだ。この作家の作品は初めてだが、1955年生というからほぼ同齢。だからこそ「かんけり」という素材なのだと納得する。鉛筆と水彩を使った画が、その時代の遊びの姿にぴったりマッチしている。


 かくれんぼ+鬼ごっこの要素を持つが、この「缶を蹴る」という動きが「わたし」の勇気を出す心情とうまく絡んでいる。誰しも経験のあるいつもの自分からワンステップ踏み出したい気持ちを、終盤の数ページで缶を蹴るまでの動きとしてダイナミックに描く。遊びの紹介も含めて、中学年以上に向いているだろう。