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「桃太郎」と言ったって①

2021年05月17日 | 絵本
 今年度のスタートに「桃太郎」を読むことにした。「おかしばなし」(昔話のもじり?)のシリーズが異色で楽しそうだったから、対象の中学年にはウケるだろう。ただ、それだけでなく、ミニブックトーク風に、他の絵本も紹介してみることにした。改めてバリエーションの多さに驚いてしまう。2冊ずつ見ていく。


『桃太郎』(絵・斎藤五百枝  新・講談社の絵本)2001.05


 元祖というべきか、正統派というべきか、表紙絵の姿を見ただけで「昔ながらの…」と表したくなる。筋はよく知っているその通りであり、家来となる犬・猿・雉の格好が武具を付けていることで、描かれた時代を想像できる。勧善懲悪の形をとって、明治期以降の国定教科書の挿絵のイメージを作ったとされている。

 今改めて読むと、登場人物の台詞がはっきり書かれていてストーリー性が高い。さらに擬音語が懐かしい。昔幼い頃に耳に馴染んだ音に近いからだろう。桃が流れてくるときの「どんぶりこっこ すっこっこ」、宝物を車に積んで皆で押すときの「えんやらや、えんやらや」というかけ声。こうしたリズムの良さは不変だ。



『ももたろう』(岩崎京子・文 宇野文雄・絵)フレーベル館 1984.04


 「むかし むかし あるところに じいさまと ばあさまが すんでいましたと」と定番フレーズで始まる。「にほんむかしばなし」シリーズは他の本もそうだろうか。漫画チックな絵で進行する。トビが鬼の悪行を知らせる、長者の娘がさらわれているなど、おそらくこれはどこかの地方に伝わる筋を生かしている。

 桃の流れる様子は「つんぶく かんぶく」、トビの語る「ひんがら ひんがら」などは特徴的だ。場面として詳しく描かれるのは、鬼が島へ上陸し最初の門を突破していくところだ。動きがある。他には、いくつかの場面で地の文がなくて、台詞だけで進行するので、読む場合は声調などに変化が欲しい。それも面白い。