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「暇つぶし」を乗り越えて

2021年05月03日 | 読書
 『マイノリティデザイン』の著者はさすがにコピーライターだけに、言葉のセンスに溢れていると感じた。キーワード化し、プレゼンする術に長けている自分の強みを存分に発揮している。しかし、こんな齢の読者にも響くのは、昨日書いたように、常にその一つ一つに「本質への希求」があるからにほかならない。


 「第4章 自分をクライアントにする方法」は、見出しそのものが典型だ。そこで提案されるのは、まず「マイ・ベスト・喜怒哀楽」の整理である。それは節目で更新されながら、「自分らしさ」を見出す秀逸な方法だと思った。「喜・楽」だけでなく「怒・哀」の感情を大切にしすべての感情を未来へ役立てる思考だ。


 次に「自分の役割」を見つめるための「貢献ポートフォリオ」。会社・自分・家族・友人といった項目に対し、時間や労力をどのくらい費やしているか数値化してみる。当然その作業をするなかで自己分析が進み、「得意技」や「苦手」が浮かび上がる。この気づきを今の仕事や立場に重ね合わせてスタートが決まる。


 そして「自分をディレクションする」。つまり方向づけや演出だ。端的に「なにをやるか」なのだが、同じくらい大切なこととして「なにをやらないか」を挙げている。ここだ!と改めて思う。バリバリとやりたい事、やるべき事を頑張っていても、「やってはいけないこと」を決めていないと、その価値が崩れる時がある。


 広告とは「外へ遠くへ」を意識するものだが、著者はその矢印を自分に向けて「内へ近くへ」と提案する。そうすると「マイノリティデザイン」とは、決して他者ではなく当事者として成立させる課題になってくる。「人生はしょせん暇つぶし」とよく耳にし頷きもするが、著者の示す次の姿勢は、それを乗り越える。

 秒単位の「暇つぶし」ではなく、長生きする「生態系」を