すぷりんぐぶろぐ

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些細なゴキブリ噺

2021年07月21日 | 雑記帳
18日日曜朝。図書館事務室。

同僚が「あっ、あれってもしかして…」と口を開く。
入口ドア下の床に黒く動くものが…
「ゴギブリ?」

自席でPCを開いたばかりの私は「えっ」と腰を上げ、近づいてみると、確かに黒い独特の形状の物体が、せわしく動き廻っている。

「ゴキブリだ。おおう、なんか久しぶりだな」と思わず言ってしまう。
この職場では初めて見たし、自宅内でも幸せなことにここしばらく遭遇していない。



感慨に浸っているわけではないが、しばらくその姿…どこにも潜り込める所がなく、あたふた同じ場所を巡っている様子を見つつ、ロッカー横にかかっている蠅叩きを手にし、一撃した。

あお向けになり弱々しく脚を動かしているが、もはや、その名の通り「虫の息」に近いだろう。
蠅叩きを元の場所に戻し、今日の新聞折り込み広告を手に取る。

きちんと包んで成仏させねば…
何気なくとった広告紙は、なんと「葬儀社K」のチラシ。
いやあ朝から殺生してしまったけど安らかにね、と軽く言いながら片手で柔らかく包み、ゴミ箱へ放る。

「えっ、凄い。さすが男ですね」
と妙な褒められ方をした。

それにしても、核戦争が起こり人類や他の動物が消滅しても、最後にゴキブリだけは残るなどと言われたことがあった。
その生命力がホントかどうか知識はないが、現実に一匹のゴキブリはかくも運命に左右されるものだ。
ゴキブリにはコロナ禍も何もないんだろうなと思って見ると、所詮人間だってどうなるものか…刹那主義に浸りたいような気分で手を洗う。


と、そんな話をその夜に食卓でしていたら、今朝になって家人がわざわざ「珍しい!玄関のところで、ゴキブリが仰向けで干からびていたよ」と知らせに来た。

「えっ」と思う。
ゴキブリ情報のなかった家に、とたんにブームがやってきたか。
もしかして、そのゴキブリとは昨日の奴で、息を吹き返し動いてここまで来て死んだということ?それはないでしょ。
近くのゴミ集積所の中から動いてきたはず…


ゴキブリの名は、「御器齧り(ごきかぶり)」の転とされている。
つまり、「器」をかじるのだ。
些細な始末に人間の器が出るとすれば、少し齧られてしまったか。