今回は、令和3年-労基法問4-D「休業手当・使用者の責に帰すべき事由」
です。
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親会社からのみ資材資金の供給を受けて事業を営む下請工場において、現下の
経済情勢から親会社自体が経営難のため資材資金の獲得に支障を来し、下請工場
が所要の供給を受けることができず、しかも他よりの獲得もできないため休業
した場合、その事由は労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」とは
ならない。
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「休業手当・使用者の責に帰すべき事由」に関する問題です。
次の問題をみてください。
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【 H22-2-B 】
使用者が労働基準法第20条の規定による解雇の予告をすることなく労働者を
解雇した場合において、使用者が行った解雇の意思表示が解雇の予告として
有効であり、かつ、その解雇の意思表示があったために予告期間中に解雇の
意思表示を受けた労働者が休業したときは、使用者は解雇が有効に成立する
までの期間、同法第26条の規定による休業手当を支払わなければならない。
【 H9-4-D 】
使用者が解雇予告をせずに即時解雇の通知をしたため、労働者がこれを誤信
して予告期間中に休業して就職活動をした場合には、その即時解雇の通知が
解雇予告として有効と認められるときであっても、使用者は、解雇が有効に
成立するまでの期間について、休業手当を支払う必要はない。
【 S61-2-B 】
使用者は、円の急騰による輸出不振のため一時休業する場合には、労働者に
労働基準法第26条の規定による休業手当を支払わなければならない。
【 H22-3-E 】
労働基準法第26条に定める休業手当は、使用者の責に帰すべき事由による
休業の場合に支払が義務付けられるものであり、例えば、親工場の経営難に
より、下請工場が資材、資金を獲得できず休業した場合、下請工場の使用者は
休業手当の支払義務を負わない。
【 H26-4-C 】
労働基準法第26条にいう「使用者の責に帰すべき事由」には、天災地変等の
不可抗力によるものは含まれないが、例えば、親工場の経営難から下請工場が
資材、資金の獲得ができず休業した場合は含まれる。
【 H27-5-E 】
休電による休業については、原則として労働基準法第26条の使用者の責に
帰すべき事由による休業に該当しない。
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これらの問題は「休業手当」に関するもので、具体例を挙げて、支払が必要か
どうかを問うものです。
【 H22-2-B 】と【 H9-4-D 】では、
「即時解雇の通知が解雇予告として有効と認められるとき」に、労働者が、
その間、休業をした場合は、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に
該当するかどうかというのが論点です。
このような場合、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」となります。
労働者が勝手に休んだのではありませんから。
ですので、使用者は、解雇が有効に成立する日までの期間、休業手当を支払わ
なければなりません。
【 H22-2-B 】は正しく、【 H9-4-D 】は誤りです。
【 S61-2-B 】では、「輸出不振のため一時休業」の場合、休業手当の支払
が必要としています。
これは、「使用者の責めに帰すべき事由」に該当するので、正しいです。
【 H22-3-E 】と【 H26-4-C 】では、
「親工場の経営難により、下請工場が資材、資金を獲得できず休業した」場合
とあり、
【 R3-4-D 】では
「親会社自体が経営難のため資材資金の獲得に支障を来し・・・休業した」場合
とあり、いずれにしても状況は同じといえます。
しかし、【 H22-3-E 】では「支払義務を負わない」、【 R3-4-D 】では
「「使用者の責に帰すべき事由」とはならない」とする一方で、【 H26-4-C 】
は「使用者の責に帰すべき事由」に含まれるとしています。
この場合は、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に該当します。
したがって、休業手当の支払が必要なので、【 H22-3-E 】と【 R3-4-D 】
は誤りで、【 H26-4-C 】は正しいです。
【 H27-5-E 】は、「休電による休業」とあります。
これは、使用者としてはいかんともしがたい不可抗力によるものです。
そのため、使用者の責めに帰すべき事由による休業ではなく、休業手当を支払う
必要はありません。正しいです。
このように具体例を挙げて、支払が必要かどうかを判断させる問題、これだけ出題
されているので、今後もいろいろなパターンで出題されるでしょう。
ということで、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に該当するのかどうか、
判断できるようにしておきましょう。