前々回からの続きです。
国際化の建前は、世界が経済的、物理的、文化的に小さくなった現在、日本は他の国々と積極的につきあっていかなければならない、という考えに基づいているのだと思います。上に述べた理由で、今の30台半ば以上の人は、多かれ少なかれ、外国(というか欧米)コンプレックスというものがあると思います。そういった人々にとって、日本の国際化とは、即ち、日本人の外国コンプレックスからの脱却そのものに他ならないのではないかと私は思います。コミュニケーション力がどうとか、英語がどうとかいう表面的な問題ではないと思うのです。振り返ってつくづく思うことは、第二次大戦後に、くどいまでに日本人に植付けられた負け犬根性というか、植民地根性に由来する後ろめたさというものは、その当のアメリカでさえ半世紀も効果が持続するとは思ってはいなかったのではないでしょうか。言葉が悪いですが、そんな負け犬世代の国際化とは、アメリカという先生に「よくできました」と頭を撫でてもらえるようになることであって、決してアメリカや諸外国と対等の関係を築いていくということではなかったのだと思います。
年月がたって、インターネットで世界中の情報が瞬時に手に入るようになり、負け犬根性が薄らいだ今の若い世代の人々は、国際化なんて、実はどうでもよいと思っている人が多いのではないだろうかと想像するのです。日本の国の中で楽しく暮らせたら、別に外国人が日本に来なくても良いじゃないか、外国と仕事以外でつきあっていく必要のある人はともかく、一般人は、素直に普通の人間であるだけで十分ではないか、というように考えている人も増えてきたのではないかと思います。世界中からの移民に囲まれ、英語で意思疎通するアメリカ人でも、その殆どは、外国人のことを十分に理解し外国人の立場に立って考えることのできるような「国際人」とはほど遠い人々です。日本では、昔は、洋行して箔を付けたりしたものですが、現在の情報社会で、しかも洋行しない人の方が少なくなってきているような時代に、戦後のアメリカの洗脳政策の呪縛から解かれた若い世代の人が、これまでのような「国際化」などいらないと思い始めているのだとしたら、私は、極めて健全なことのように思います。小学校で英語教育などすることは、日本のアメリカの植民地化には有用かも知れませんが、国際人を育てるという観点からは百害あって一利なし、と私は思います。
ところで、日本が国際化を促進する最も有効な方法は、日本が重国籍を認めることではないかと私は思っています。日本が重国籍を認めないせいで、外国に長期に住む日本人は、日本を捨てるか、外国を捨てるかという選択を迫られることになります。このことによって、日本人の外国と国内との流動性は著しく制限されていると私は思います。例えば、アメリカに住む日本人の場合、アメリカ市民権を取ることで、法律上、日本国籍を離脱しなければなりません。一方、アメリカ市民権を取らないことは、長期的には、居住権の喪失の可能性や社会保障でのデメリット、アメリカ国外での活動の制限などの多くの問題を引き起こしてくる可能性があります。こうした長期海外居住日本人にとって、二重国籍を日本が認めることによるメリットは測り知れません。外国市民と結婚して子供を持った日本人が増えている現在、そういった人々のためにも重国籍を認めるべきであろうと思います。一方、現在の時点で、日本が重国籍を認めることで、どんなデメリットがあるのか、私には、ちょっと思いつきません。特にないのではないでしょうか?だからこそ、多くの先進国で重国籍が認められているのだと思います。お役所が、国際化だの、英語教育だの、言って、大金を使って外国人を呼んでくるぐらいなら、日本人の出入りをもっと自由にする重国籍を認める方が、余程効果があると思います。とりわけ今後、日本経済はますます沈滞するであろうと思います。格差社会でありながら、福祉サービスがどんどん削られ、少子化が促進している現状を見ると、今後、日本はますます、住みにくい国になっていくでしょう。一方、日本人の几帳面さや高いモラルは、外国では、重宝がられると思います。そうなると、日本で食い詰めた高学歴の人は、国籍のしばりがあろうとなかろうと、やがて外国に職を求めるようになっていくのは不可避です。その時に二重国籍を認めないことは、そんな海外で活躍する優秀な日本人が、いざ日本に帰りたいとなった時の道を閉ざすことにつながっていくと思います。それでは、国際人の日本人を日本から閉め出すことになるのではないでしょうか。日本と外国との行き来を易くすることで、優秀な人材を共有することができます。結局、人は金を追いかけて動きます。アメリカが強いのは強い経済に引かれて人が集まるからでしょう。対して前世紀に強かったヨーロッパ諸国は、一旦、アメリカへ出た人材を逆輸入していくことで、一定レベルを保っているように思えます。この十年余り、ヨーロッパ諸国は比較的安定した経済を維持できています。それに対して、20年前世界を驚嘆させた日本の経済力は、今や、見る影もありません。日本は負の螺旋を落ちていくばかりです。日本の経済が沈滞すると、自然に外国人は来なくなります。この日本とヨーロッパの差は何なのか。日本の政治がひどいのははっきりしていますし、この三流、四流の政治が日本の没落の最大の理由であるのは間違いありませんが、これを言い出すとキリがないのでやめます。
国際化ということに関しては、日本は態度を決めるべきです。もっとオープンな国にして、本当に国際化したいなら、アメリカやシンガポールなみにとことんやらねばなりません。ヘンな外国人が入ってきて困るからと中途半端に規制すると、よい外国人も来てくれません。それが嫌なら国際化など考えずに鎖国すればよいのです。私は鎖国しても、日本の産業構造を第一次、第二次産業中心に変えれば、日本は十分やっていけるのではないかと思っています。そうなれば却って、外国人はビジネスではなく、文化や観光を求めて、来てくれるようになるかも知れません。その方が「良い」外国人が来てくれるようになるでしょう。
追記。
今回のノーベル物理学賞、日本人三人との日本の発表に対して、アメリカでは日本人二人とアメリカ人一人と発表されました。南部博士は日本が重国籍を認めないため、日本国籍を捨てアメリカ市民となっているようで、厳密にいえば日本人三人という表現はもはや正しくありません。どうも南部博士のノーベル賞をアメリカにカウントされたのが原因なのか、日本でも重国籍を認めようという動きが出てきたそうです。重国籍を認めることは、海外に流出した頭脳を呼び戻すための実際的方法として有効であろうと思います。しかし、戦後60年経って、かつては世界トップクラスの経済力を誇った日本で、頭脳流出が引き続いて起こっており、日本の研究環境が全く改善しない(どころか悪化し続けている)のを、何とかしないと根本的な解決にはならないように感じます。
アメリカ大統領選に関する小話。
NBCのコメディーショー、Saturday Night Live(SNL)のTina Feyが散々、サラペイリンを茶化して、話題になりましたが、先週末、なんとペイリン本人がSNLに出演、Tina Feyと競演しました。SNLは過去14年間で最高の視聴率となりました。その様子は、http://www.nbc.com/Saturday_Night_Live/video/clips/gov-palin-cold-open/773761/でどうぞ。一方、週末、ブッシュ政権での元国務長官で共和党のコリンパウエルがオバマをエンドースするという大きなニュースがありました。マッケーンの経済対策とペイリンを副大統領候補として選んだマッケーンの判断力を強く批判しました。共和党でありながら、民主党のオバマを支持するという表明は、オバマにとっては大きな追い風でしょう。このエンドースメントが、オハイオ、フロリダといった民主党と共和党が拮抗している大きな州で、どのような効果をもたらすかは、選挙結果を見てみるまでわかりません。
国際化の建前は、世界が経済的、物理的、文化的に小さくなった現在、日本は他の国々と積極的につきあっていかなければならない、という考えに基づいているのだと思います。上に述べた理由で、今の30台半ば以上の人は、多かれ少なかれ、外国(というか欧米)コンプレックスというものがあると思います。そういった人々にとって、日本の国際化とは、即ち、日本人の外国コンプレックスからの脱却そのものに他ならないのではないかと私は思います。コミュニケーション力がどうとか、英語がどうとかいう表面的な問題ではないと思うのです。振り返ってつくづく思うことは、第二次大戦後に、くどいまでに日本人に植付けられた負け犬根性というか、植民地根性に由来する後ろめたさというものは、その当のアメリカでさえ半世紀も効果が持続するとは思ってはいなかったのではないでしょうか。言葉が悪いですが、そんな負け犬世代の国際化とは、アメリカという先生に「よくできました」と頭を撫でてもらえるようになることであって、決してアメリカや諸外国と対等の関係を築いていくということではなかったのだと思います。
年月がたって、インターネットで世界中の情報が瞬時に手に入るようになり、負け犬根性が薄らいだ今の若い世代の人々は、国際化なんて、実はどうでもよいと思っている人が多いのではないだろうかと想像するのです。日本の国の中で楽しく暮らせたら、別に外国人が日本に来なくても良いじゃないか、外国と仕事以外でつきあっていく必要のある人はともかく、一般人は、素直に普通の人間であるだけで十分ではないか、というように考えている人も増えてきたのではないかと思います。世界中からの移民に囲まれ、英語で意思疎通するアメリカ人でも、その殆どは、外国人のことを十分に理解し外国人の立場に立って考えることのできるような「国際人」とはほど遠い人々です。日本では、昔は、洋行して箔を付けたりしたものですが、現在の情報社会で、しかも洋行しない人の方が少なくなってきているような時代に、戦後のアメリカの洗脳政策の呪縛から解かれた若い世代の人が、これまでのような「国際化」などいらないと思い始めているのだとしたら、私は、極めて健全なことのように思います。小学校で英語教育などすることは、日本のアメリカの植民地化には有用かも知れませんが、国際人を育てるという観点からは百害あって一利なし、と私は思います。
ところで、日本が国際化を促進する最も有効な方法は、日本が重国籍を認めることではないかと私は思っています。日本が重国籍を認めないせいで、外国に長期に住む日本人は、日本を捨てるか、外国を捨てるかという選択を迫られることになります。このことによって、日本人の外国と国内との流動性は著しく制限されていると私は思います。例えば、アメリカに住む日本人の場合、アメリカ市民権を取ることで、法律上、日本国籍を離脱しなければなりません。一方、アメリカ市民権を取らないことは、長期的には、居住権の喪失の可能性や社会保障でのデメリット、アメリカ国外での活動の制限などの多くの問題を引き起こしてくる可能性があります。こうした長期海外居住日本人にとって、二重国籍を日本が認めることによるメリットは測り知れません。外国市民と結婚して子供を持った日本人が増えている現在、そういった人々のためにも重国籍を認めるべきであろうと思います。一方、現在の時点で、日本が重国籍を認めることで、どんなデメリットがあるのか、私には、ちょっと思いつきません。特にないのではないでしょうか?だからこそ、多くの先進国で重国籍が認められているのだと思います。お役所が、国際化だの、英語教育だの、言って、大金を使って外国人を呼んでくるぐらいなら、日本人の出入りをもっと自由にする重国籍を認める方が、余程効果があると思います。とりわけ今後、日本経済はますます沈滞するであろうと思います。格差社会でありながら、福祉サービスがどんどん削られ、少子化が促進している現状を見ると、今後、日本はますます、住みにくい国になっていくでしょう。一方、日本人の几帳面さや高いモラルは、外国では、重宝がられると思います。そうなると、日本で食い詰めた高学歴の人は、国籍のしばりがあろうとなかろうと、やがて外国に職を求めるようになっていくのは不可避です。その時に二重国籍を認めないことは、そんな海外で活躍する優秀な日本人が、いざ日本に帰りたいとなった時の道を閉ざすことにつながっていくと思います。それでは、国際人の日本人を日本から閉め出すことになるのではないでしょうか。日本と外国との行き来を易くすることで、優秀な人材を共有することができます。結局、人は金を追いかけて動きます。アメリカが強いのは強い経済に引かれて人が集まるからでしょう。対して前世紀に強かったヨーロッパ諸国は、一旦、アメリカへ出た人材を逆輸入していくことで、一定レベルを保っているように思えます。この十年余り、ヨーロッパ諸国は比較的安定した経済を維持できています。それに対して、20年前世界を驚嘆させた日本の経済力は、今や、見る影もありません。日本は負の螺旋を落ちていくばかりです。日本の経済が沈滞すると、自然に外国人は来なくなります。この日本とヨーロッパの差は何なのか。日本の政治がひどいのははっきりしていますし、この三流、四流の政治が日本の没落の最大の理由であるのは間違いありませんが、これを言い出すとキリがないのでやめます。
国際化ということに関しては、日本は態度を決めるべきです。もっとオープンな国にして、本当に国際化したいなら、アメリカやシンガポールなみにとことんやらねばなりません。ヘンな外国人が入ってきて困るからと中途半端に規制すると、よい外国人も来てくれません。それが嫌なら国際化など考えずに鎖国すればよいのです。私は鎖国しても、日本の産業構造を第一次、第二次産業中心に変えれば、日本は十分やっていけるのではないかと思っています。そうなれば却って、外国人はビジネスではなく、文化や観光を求めて、来てくれるようになるかも知れません。その方が「良い」外国人が来てくれるようになるでしょう。
追記。
今回のノーベル物理学賞、日本人三人との日本の発表に対して、アメリカでは日本人二人とアメリカ人一人と発表されました。南部博士は日本が重国籍を認めないため、日本国籍を捨てアメリカ市民となっているようで、厳密にいえば日本人三人という表現はもはや正しくありません。どうも南部博士のノーベル賞をアメリカにカウントされたのが原因なのか、日本でも重国籍を認めようという動きが出てきたそうです。重国籍を認めることは、海外に流出した頭脳を呼び戻すための実際的方法として有効であろうと思います。しかし、戦後60年経って、かつては世界トップクラスの経済力を誇った日本で、頭脳流出が引き続いて起こっており、日本の研究環境が全く改善しない(どころか悪化し続けている)のを、何とかしないと根本的な解決にはならないように感じます。
アメリカ大統領選に関する小話。
NBCのコメディーショー、Saturday Night Live(SNL)のTina Feyが散々、サラペイリンを茶化して、話題になりましたが、先週末、なんとペイリン本人がSNLに出演、Tina Feyと競演しました。SNLは過去14年間で最高の視聴率となりました。その様子は、http://www.nbc.com/Saturday_Night_Live/video/clips/gov-palin-cold-open/773761/でどうぞ。一方、週末、ブッシュ政権での元国務長官で共和党のコリンパウエルがオバマをエンドースするという大きなニュースがありました。マッケーンの経済対策とペイリンを副大統領候補として選んだマッケーンの判断力を強く批判しました。共和党でありながら、民主党のオバマを支持するという表明は、オバマにとっては大きな追い風でしょう。このエンドースメントが、オハイオ、フロリダといった民主党と共和党が拮抗している大きな州で、どのような効果をもたらすかは、選挙結果を見てみるまでわかりません。