百醜千拙草

何とかやっています

No Nukes! (3)

2011-03-25 | Weblog
地震の後、ずっと事態の進展が気になって、なかなか本業に集中できません。やっぱり、研究というのは、平和な時代でなければできないことだなあと思います。地震の後の一週間は、やらねばならないことは機械的にこなしてきましたが、頭はウワの空で、論文のただの一本も読みませんでした。久しぶりに行き来の電車の中で、研究関連のものを読み始めました。ほっとします。平和の有り難さをしみじみと感じると共に、被害にあわれた人々の苦しみや悲しみを想像すると、本当に心が痛みます。

降雨のせいだろうと思いますが、東京の水道にも放射性物質が検出され、この原発事故の広がりと今後が懸念されます。政府マスコミは相変わらず「安全だ、心配ない」と言っていますが、「危険だ」とはもちろん言えないわけですから、その辺りは、国民自らが情報を集めて判断する必要があります。日本人は隣人の行動を基準にして自分の行動を決める傾向がありますが、隣りの人が呑気にしているから自分も大丈夫だろうという判断ほど危険なものはありません。赤信号でもみんなで渡っているから恐くないと思っていると、根こそぎやられます。

「原発は安全だ」というキャンペーンを数十年にわたって続けて来た一方で、度重なる、放射線事故を起こしては、隠蔽してきた政府と発電当局です。彼らの言うことがどれぐらい信頼性があるかは推して知るべしでしょう。少なくとも、外国のメディアで、日本政府ほどの脳天気な見方をしているところはないと思います。ドイツでは原発を全て即時停止を決めましたし、スイスでは国民の9割近くが原発反対という調査、アメリカでは原子炉の安全性問題に取り組んで来たマサチューセッツの議員のEd Markeyはオバマ政権に対して地震の危険性のある場所での原子炉建設中止を促しました。

原子力技術には、私、絶対反対です。とくに「もんじゅ」を始めとしてプルトニウムを使う技術は、直ちに永久的にシャットダウンすべきです。プルサーマルなど、もってのほかです。大事故が起きて日本が永久にただれた焼け野原になるのを待っているようなものです。

さらに、現在、すでに、処理に困っている大量の放射性廃棄物、その一部が作り出す放射能だけで、日本中の人間全員を殺すのに十分な量の危険物をどうするつもりなのか、この日本には、誰も責任を持つ人間がいません。それらが人類全体を脅かす大問題になる頃には、自分たちはとっくの昔にあの世に行っているので、知ったことか、と思っているのでしょうか。死ぬ時はみんないっしょだから恐くないと思っているのでしょうか。

昨日の「内田樹の研究室」に次のようにありました。
「貧しい環境」において、日本人は知性的で、合理的になる。「豊かな環境」において、感情的で、幼児的になる」
その通りだと思います。そして今、現在の状況を多くの人が戦中、戦後に喩えているように、大本営発表を繰り返し国民を欺いていた政府、未曾有の災害によってあらわになったこの国の政府の無能を見て、私もこの災害が太平洋戦争での核爆弾とだぶって見えます。内田さんは、歴史の演繹によって、「私はこれは近代史で三度目の、「日本人が賢くふるまうようになる機会」ではないかと思っている。、、、だから、日本人はこれで「眼を覚ます」だろうと私は思っている。私たちにとってもっともたいせつなものが何かを思い出すだろう。思い出さねばならない」と述べています。

私もそうであって欲しいと思います。しかし、私はそう楽観的になれません。原子力政策を含む日本の政策は、日本人の問題では既にないからです。これらの災害は、人間の意志を越えたオートノミーを得て怪物化してしまった世界規模の資本主義経済がもたらした末期がんの部分症状として必然的に現れたに過ぎないと私は思っています。このような原子力事故が起こることは十分、想定できたことでした。もう50年も前から世界中で原子力反対の運動が繰り返されて来て、事実、過去にも大勢の犠牲者を出した事故が何度もあったのにもかかわらず、原子力発電はどんどんと推進されてきました。毎年、原爆の恐ろしさを語り継いで来たはずの被爆国の日本に、なぜ不要な原発が林立しているのか、海水を暖め、海中からのCO2放出させて地球温暖化を促進し、かつ、長期にわたって極めて有害な廃棄物を量産し、地域住民に癌をおこし、海の生物に奇形をおこしてきた「破滅」という二文字が明らかに点灯している原子力発電が地震国の日本で推進されてきたのはなぜなのか、思うに、それは世界規模の資本主義に基づくAutonomous Greedとでも言うべきものが、あたかも坂を転がるボールのように加速度をつけて「わかっちゃいるけど、やめられない」レベルにまで達してしまったからではないでしょうか。ここで、日本人が賢くなっても、地球の他の国の全員が賢くなっても、この破滅へと向かって転がるGreedを止めるのは容易い事ではない、と私は悲観的に思うのです。
三度目の正直で、この原発事故が契機になって、原発廃止へと転換して欲しいと私は心から望んでいます。
コメント
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