百醜千拙草

何とかやっています

米外交姿勢と共和党候補

2012-01-10 | Weblog

先週末、アルゼンチン政府は、アルゼンチンのフェルナンデス大統領は、手術の結果、「甲状腺がんではなかった」という発表をしたそうです。

多分、ウソではないと思いますが、どうでしょうか。

アメリカは、以前から世界各地で裏に表に戦争や内政干渉を仕掛けてきて、その犠牲になってきた世界の国々から並ならぬ怒りと憎しみを受けてきました。レーガン時代には、有名なイラン-コントラ事件がありました。当時、敵国としていたイランにこっそり武器を売り、その売却利益で、中米ニカラグアの反共ゲリラ組織、コントラを支援したという事件です。黒幕は当時CIAの父ブッシュのようですが、このように他の国々に対する傲慢極まりない態度が、とりわけその犠牲になってきた国々、南米や中東の人々の強い反感を買ってきたということに一般アメリカ人は鈍感です。

フェルナンデス大統領が甲状腺がんになったというニュースに対して、以前、ベネズエラのチャベス大統領が、「南米の指導者が続けてがんになっている、これはアメリカの陰謀だ」とアメリカを非難しました。チャベス大統領の頭の中で、南米の大統領ががんになることとアメリカCIAが直結するほどのことをアメリカが中南米に対して行ってきたということです。「フェルナンデス大統領は、がんでなかった」というニュースは多少は、この陰謀論に水を差すものでしょうが、一国の大統領が、陰謀論を堂々と口にするほどの疑念と反感は中南米の国々から簡単には消え去りはしないでしょう。イランのアフマディネジャード大統領は 911テロは、イラク侵攻の口実づくりのためのアメリカの自作自演の陰謀だと何度も公然と非難しています。

冷戦後のイランや他の国々のアメリカに対する態度は一貫していると思います。彼らはアメリカに対して、独立国としての自分たちの国の立場を尊重し平等な関係を目指して欲しい、と言ってきました。自分に都合のよいドグマを他の国に押し付けるな、自分の利益のために他の国に戦争を仕掛けたり、内政干渉をするな、と言っているのです。アメリカが、お得意の「民主主義」をヒラヒラさせて、いつわりの人道主義を押し付けてくるくせに、その実は、すべては己の利益のためであり、そのためには他の国々の一般市民の命や権利など何とも思っていない、そういう汚さにウンザリしているだけのことです。本質的には、彼らは単に、「民主主義」の衣の下に隠れているアメリカ覇権主義、傲慢に他国を侵略してくるアメリカの攻撃から彼ら自身を守りたいと願っているだけなのだと思います。

この辺のことを理解していて、ある程度正直に言っている次期大統領共和党候補者は、多分、ロン ポールだけではないかと思います。一方、他の候補者は、知ってか知らずか、イスラム世界はテロリストでアメリカに害を為そうとする邪悪な連中だ、というスタンスで語っているようです。アメリカ政府は、中東の邪悪なテロリストは殲滅しないとアメリカが危険だ、というフィクションを一般国民に刷り込んできましたし、多くのアメリカ国民は自分たちは被害者だと思い込まされています。これは、多分、日米英イスラエル以外の国々の人々の認識とはほとんど逆でしょう。共和党候補者も、これらナイーブなアメリカ国民神経を逆撫でしてはマズいと思ってはいるので、外交に関しては、アメリカは、邪悪なテロリストや、あるいは不公平な貿易を行う中国の被害者である、という立場で話をするのでしょう。事実は、アメリカがデタラメをやるので、他の国々が自衛のためにやむを得ず、反米姿勢をとらざるを得ないのが実情でしょう。ニューハンプシャーでの討論では、外交に関しては、サントーラムとロムニーが露骨にこういうスタンスで話をするので鼻白んでしまいました。一方、リバタリアンのポールは以前から、アメリカが他国に戦争を仕掛けたり内政干渉すべきでない、という立場をとっています。

これまでの歴史を見ると、ヨーロッパ諸国は、己の欲のために、お互いを殺し合い、アフリカやアメリカ大陸に侵攻して、土地のものを奪い、人々を殺してきました。藤永茂さんが「ヨーロッパの心」と呼ぶ、驚くほど傲慢で残忍な邪悪さがヨーロッパ、そしてアメリカにあります。邪悪な人間は他の人々も自分同様に邪悪だと思っているので、お互いを尊重し信頼することができないのです。アメリカがすべきことは、軍事力を本当の防衛だけに使うことです。アメリカは基本的に攻撃されたことのない国です。にもかかわらず世界最大の軍事力を持っているのは、それを防衛のためではなく、侵略に使うためです。まずは、それをやめないといつまで経ってもテロは無くならないし、立場の弱い国々はますます核武装に励むことになると思います。

先日、財政危機を受けて、オバマが軍事規模を縮小し、軍事戦略はアジアにより重点を置くと言いました。アジアの軍事拠点とは、とりもなおさず、日本のことです。思うに、これは沖縄の基地なら、「基地利権」でアメリカ軍に出て行って欲しくない日本官僚どもが、いくらでも金を出すので、グアム移転が難航しているアメリカにとっては、「安く」海外軍事拠点を維持できるからでしょう。これで、当分、沖縄からの米軍撤退はなくなったのではないか、と思います。

一方、中東オイルに世界経済が依存している現代世界では(日本も近いシベリア油田とかではなく、ワザワザ中東からオイルを輸入しています)、中東を押さえるものは世界を制するわけですから、アメリカが中東からすんなり立ち去るわけがありません。独自に、またはイスラエルを通じて常にアラブ諸国にプレッシャーをかけ続けることになる筈です。

しかし、もしもポールが万が一、大統領になれば、世界は変わるかも知れません。アメリカ国内は緊縮財政で大変なことになるでしょうが、世界はより平穏になるかも知れません。ニューハンプシャーでのロムニーの優位は揺るがないようですが、支持は徐々に下降しつつあるようで、逆にポールの支持がわずかに上がりぎみです。10日の投票結果を見守りたいと思います。

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