百醜千拙草

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Makedonsko Devojce、ジプシー音楽

2019-01-15 | Weblog

バルカン半島の旧ユーゴスラビアの一部であった小国、マケドニア共和国が国名変更予定とのニュースを見ました。
ギリシャの北部を含むバルカン半島南部はギリシャのアレクサンダー大王の紀元前の時代からマケドニア地域と呼ばれておりますが、その地域の北部に後年、スラブ系などの他民族が移り住んで国家が作られ、そして旧ユーゴスラビア解体の後、マケドニア共和国として独立しました。しかし、そこに住むスラブ系の人々は本来のギリシャ系マケドニア人とはつながりもないことから、ギリシャがマケドニア共和国に対して国名の変更を要求してきました。今回、マケドニア共和国で国名を「北マケドニア共和国」に変更する方針が先週末に決定したということです。

この国については、旧ユーゴスラビア時代のマザーテレサの出生地ということぐらいしか私は知らなかったわけですが、ここしばらくこの地域の音楽を聴く機会があり、マケドニアの音楽のなりたちについて多少関心をもっていましたので、今回のニュースに目がとまりました。

私の学童期はソ連は健在であり、ロシアはソ連とほぼ同義であって、ウクライナもベラルーシもバルト海三国もソ連の田舎という認識、ユーゴスラビアも一社会主義国家という感じでした。世界地図は比較的シンプルで、共産圏というイデオロギー的に区別された地域の中にロシアを中心にスラブ系国家や中国が存在していました。大まかに、国々は資本主義圏と共産主義圏、その他に分かれていました。極端に言えば拝金主義と理想主義、しかし理想主義者もメシを喰っていかねばならず、また人間の根源的欲望は理想よりもはるかに強いわけで、社会システムは徐々の腐敗し、結果、メシの喰えないイデオロギー国家は支持を失い、ソ連は崩壊し、民族主義によって旧共産圏は再編されました。

しかし、そもそも国を持たず、小さな家族単位で移動しながら国家という枠組みのない生活を営んできた人々もおります。イスラエル建国までのユダヤは別にして、例えば、ヨーロッパでジプシーと呼ばれる彼らは明らかに共通の文化を共有していますが一定の場所に落ち着いて国家を形成するということはしませんでした。といって彼らの民族意識が低いわけではありません。その辺の話はまた次の機会に。

ジプシーの起源は北インド、パキスタン辺りの移動生活民族のようで、現在、ロマと呼ばれている人々が主ですが、活動は中東からヨーロッパ各地に広がり西洋に文化的な影響を与えてきました。とりわけハンガリーでの音楽的活動は有名で、ジプシー音楽に曲想を得たリストのハンガリアン ラプソディーや、ブラームスのハンガリー舞曲、サラサーテのツィゴイネルワイゼン(ジプシーの旋律)、それからモンティのチャルダシュ など、哀愁を帯びた官能的なメロディーは昔から多くの音楽家を魅了してきました。

しばらく前に、マケドニアのJovano Jovankeという曲を紹介しましたが、ハンガリー音楽同様、バルカン半島の音楽もジプシーの音楽と重なります。先日、ジプシー音楽の多国籍グループ、Barcelona Gispy balKan Orchestraの曲を聴いていて、なんとなく懐かしい感じのした曲が気になっての楽譜を探してみたら、これもマケドニアの音楽でした。曲名が「Makedonsko devojce(マケドニアの少女)」なので自明なのですけど。

調べてみると、この曲は1964年に「新民謡」のスタイルで作曲されたとあります。なぜこの曲が気になったのかな、と考えてみると、曲調が私の子供の頃の日本の歌謡曲っぽいのです。つまり、高度成長期の日本、豊かな生活を目指して、みんながむしゃらに働いていた頃です。実際、その頃の作曲です。日本では、焼け野原にされての敗戦という屈辱からようやく立ち直り、明るい未来を思い描けるようになった頃。そんな人々が折々に感じる虚しさや寂しさへの共鳴するような音楽です。基本的に短調で、泣きとコブシが入る情緒的な曲。この曲もメロディーや和音進行がそんな昭和の歌謡曲を思わせます。

昭和の後半期は、戦後の混乱期を経て経済発展の真っ最中、ドルも固定相場制の1ドル360円が終わり変動相場制に変換、奇跡の経済発展を可能にした円安の時代が終わり始めました。一億が一丸となって戦後の復興と経済発展のためにがむしゃらとなっていた時代でしたが、子供の私には関係ありません。その頃のことは単に懐かしい記憶の断片として残っているだけです。のぼり調子で活気がありました。

さて、このマケドニアの新民謡、昭和の歌謡曲と違うのはリズムの躍動感と音階で、それが大きな魅力となっています。楽譜を見ると、Jovano Jovankeと同じく7拍子の変則リズム。この7/8のリズムというのは他の民謡ではあまり見たことがないのですけど、この地域の伝統的なリズムなのでしょうか。農耕民族はイチ、ニ、イチ、ニの田植えのリズム、騎馬民族は馬の早駆けのリズムで3拍子の曲が多くあります。この曲ではこれは三拍子の最初の一拍の後に半拍の余分な拍子が挿入されているように聞こえます。つまり3+4の複合リズムというよりは、3泊のリズムが針飛びしたような、早駆けの馬がけつまずいたような感じです。そして、このリズムの上に修飾音とこぶし回しの多いメロディーが乗っています。

ネットで見つけた各種、Makedonsko devojceを

オーソドックスな演奏


昭和の歌謡曲的演奏、こぶし回しが独特、演歌も歌えそう。


Barcelona Gipsy balKan Orchestraのドイツ公演でのライブ。


プーチンのピアノ


詳細不明、日本のおじさんおばさんの民謡の会での様子。


演奏スタイル、アレンジとボーカルがちょっといま一つですが、日本のジプシーバンド、ピラミドスのライブでの模様。日本語歌詞。


歌ってみたい人用、カタカナ歌詞付きのカラオケ


オマケ。バイオリンとチェロの官能的なチャルダッシュの演奏。
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